

BUMP プロデューサー
藤田結衣

関西の大学を卒業後、上京しテレビ番組の企画制作を行う制作会社に新卒で入社。地上波ドラマの助監督やアシスタントプロデューサーを経験し、プロデューサー、監督となる。担当作品は、テレビ東京「駐在刑事」シリーズ、「推しを召し上がれ」、テレビ東京&WOWOW「ダブルチート」など。2025年2月、emole株式会社に入社し、BUMPショートドラマのプロデューサーとして企画制作を行う。
ショートドラマの
プロデューサーの仕事
ショートドラマのプロデューサーの仕事は、まず企画を立ち上げるところからはじまります。企画が決まったら、ご一緒する制作会社、監督、キャストを集め、作品を作るためのチームを編成。会社によってプロデューサーの業務範囲は異なりますが、BUMPの場合は撮影から編集、配信、宣伝、そして予算管理にいたるまで、すべての工程にプロデューサーが深く参加していきます。
次から次に新作がリリースされる
ショートドラマ市場
企画の立ち上げは
どのように行われるのか
BUMPには社長を含めて4名のプロデューサーが在籍しており、それぞれの企画を精査し合いながら企画の立ち上げを行っています。ショートドラマの最大の強みは、企画の立ち上げから配信までのスパンがとても短いこと。最短だと、わずか3ヶ月ほどで世に出る作品もあります。だからこそ「いま流行っているもの」や「いまSNSで話題になっているもの」を、タイムリーに物語のなかに組みこみやすいんです。ショートドラマならではの武器を活かすためにも、SNSなどで常に情報をキャッチし、新しい企画の種を探すようにしています。
BUMPの場合だと、女性同士の舌戦や正体隠しモノ(主人公が素性を隠して周囲を見返す物語)がヒットしやすいので、脚本家の方と協力して、互いの情報を交換しながら簡単なあらすじと登場人物表(=企画書)を作成していきます。
企画書が完成したら、社内のコンセプト会議で社長や他のプロダクションメンバーに「こういった作品を作りたいと思っています」と提案し、「パッケージ(作品全体の方向性)に引きがある」とみんなの賛同を得られた段階で、ようやく各話の具体的なストーリー構成(=プロット)を作りはじめます。

企画会議を通過したら、
いよいよ物語の作成へ
企画会議を通過したら、全話のプロット(脚本よりも簡易的な、A4用紙で5~6行ほどの各話のあらすじ)を作成し、社内の評価委員会に提出します。ここでの評価によって、再提出になるか脚本制作へ進むかが決まるので、評価というよりは“審査”に近い感覚です。
具体的な評価基準は明かせませんが、BUMPの場合はSNSやYouTubeなどの切り抜き動画からアプリにユーザーを呼び込んでいるため、「キリヌキとして使える箇所はあるか」「その動画がどのくらい再生されそうか」といった視点も、大事な判断材料の一つとなります。
そして何よりも大切なのが、「お金を払ってでも観たい話になっているかどうか」という点です。評価シートには、「無料なら観るが、課金するほどではない」といった段階的な評価項目があり、委員会のメンバーからプロットに対してリアルなコメントをもらっていきます。
無事に評価委員会からGOサインが出れば、ようやく脚本制作のフェーズへ。ここからは脚本家と何度も打ち合わせを重ね、脚本を書いてもらっては再び評価委員会に提出する、というプロセスを繰り返します。企画の立ち上げから撮影にいたるまで、何度も試行錯誤をしながら作品を作り上げています。
現場に入り、
作品が世に放たれるまで
そばで見守り育む仕事
脚本が完成したあとも、プロデューサーは撮影、編集、配信といったすべての工程に立ち会います。制作会社のプロデューサーや監督と一緒にキャスティングを行い、撮影現場にも毎日足を運ぶほか、監督や技術スタッフが仕上げてくれた映像のチェックも欠かしません。
「BUMPだとこういったものがヒットする」という法則を熟知したプロデューサーが細部まで監修を行うことで、作品の世界観とクオリティをしっかりと担保しています。

各パートとのやりとり、
予算のすり合わせなど
円滑な条件整理も
プロデューサーの役目
どの職業でも同様だと思いますが、企画が決まるまで、そして企画の決定からチームを編成し、実際に現場が動き出す(撮影)までの期間が一番大変です。「この作品をうまく映像化してくれそうだな」と思う監督に依頼して、脚本が完成したあとは、現場をより良く動かすことがプロデューサーのメイン業務となるため、クランクイン(撮影開始)前の準備やセットアップはおこたりません。
ショートドラマは視聴者に課金して観ていただく仕組みなので、作品全体の予算も課金額を試算しながら調整していきます。制作過程のなかで「このシーンをやりたい」と制作会社から希望が出てきたとしても、予算を上げればその分回収額も上がってしまう。作品のクオリティと課金率(視聴者が課金する割合)のバランスを見ながら、最終的な予算を決めていくのもプロデューサーの仕事です。
大変な業務の先で生まれる、
脚本の文字が
目の前に広がる“ときめき”
セットアップや予算調整など大変なことも多い仕事ですが、自分の企画や脚本家と一緒に作った企画がいざ目の前で動き出したときは、「やってよかった」と思います。編集作業などがすべて終わり、視聴者の皆さまに届く映像のことを完パケと言うのですが、完パケを観たときは本当に嬉しくて。「やりきったー!」という気持ちになります(笑)。

藤田さんが
BUMPプロデューサーになるまで
もともと「東京へ行って、テレビの仕事がしたい」という漠然とした目標があり、京都の大学のメディア学科に進学したのが、この業界に触れたきっかけです。大学卒業後、就活でテレビの制作会社に入社し、そこから10年ほど、キー局(全国ネットの主要局)のバラエティー番組や連ドラの助監督、AP(アシスタントプロデューサー)、プロデューサー、深夜の連ドラの監督など、さまざまな仕事を経験したのちにいまの会社への転職を決めました。
転職の理由は、“発注元として自分でゼロから作品を作りたかった”から。前職でも自分の思いは作品に投影していたのですが、発注を受ける側の制作会社にいる以上、どうしても制作費を出す発注元の意図を優先して反映することになるんです。そういった環境のなかで働くうちに、だんだんと「次は、制作費を出資する発注元の立場になって、会社としての方向性や自分の想いがより深く浸透している企画をドラマにしたい 」という想いが強くなってきて。自社サービスとしてBUMPを運営し、オリジナル作品を制作している株式会社emoleであれば、その想いが叶うと思い転職を決めました。

テレビとは違う時間軸で進む
ショートドラマの現場
先ほども触れたように、BUMPのショートドラマは最短で企画から配信まで約3ヶ月ほどで進む作品もあるくらい。いざ現場に入ると、3~4日の短期間で撮影を行うので、キービジュアルの撮影や本読み(脚本を声に出して読み合わせること)は、キャストが事前に集まれる衣装合わせの日などにまとめて行うことが多くなります。各プロデューサー、平均して4~5本の作品を抱えているんじゃないかな。
撮影期間はテレビドラマとは大きく異なりますが、準備期間のほうが撮影期間よりも長い点は、テレビ・ショート関係なく共通していると思います。「芸能人に会って、撮影をして」と多くの方がイメージされているプロデューサーの仕事よりも、地道に何度も脚本を修正したり、各契約の確認や宣伝周りのリリース作成などのデスクワークのほうが圧倒的に多いのが現実です。
藤田プロデューサー最新作
『ラウンジ嬢の本指客2』
この作品の前シーズンとなる『ラウンジ嬢の本指客』は、BUMP出資の完全オリジナル作品。実はオリジナル作品のシーズン2を制作するのは、BUMP史上初なんです。3人のラウンジ嬢たちが一人のハイスペ男性を取り合うというお話なのですが、他の作品と大きく違うのが“3人全員がメイン”だというところ。シーズン1を制作していた当時、ちょうど社内で「企画ガイドライン」を策定していて、ガイドライン上では“メインキャラクターを1人置くこと”が決められていたんです。そのため、3人をほぼ平等に扱い、しかも全員にモノローグ(登場人物の心の声)を入れていくというフォーマットは、かなりの挑戦で。正直不安だったのですが、いざ完成すると切り抜き箇所も多く、作品自体もヒットしたので、これを皮切りに「メインキャラクターを増やしてもいいんじゃないか」「群像劇っぽい切り抜きが増えてもいいんじゃないか」といった方針に変わっていきました。

プロデューサー視点の本作の魅力
これまでのショートドラマは、“最後に主人公が倒す敵”について描いていく構成が多かったのですが、本作は最後まで誰が勝つかが分からないんです。それこそがこの作品の〈味〉だと思います。社内だけでは出てこないようなアイデアを、外部のクリエイターと組むことで広げていく——。本作のように企画の立ち上げ自体を脚本家と一緒に進めるときは、自分の企画というより二人三脚で作っている感覚になります。同じ脚本家と組む作品もあれば、別の方と組むこともある。チームごとに変わる作品や現場の〈色〉に触れるたびに、改めて“作ること”の楽しさを感じています。
藤田さんから
プロデューサーを目指す読者へ
この仕事に向いているのは、
“〈節操〉をもって、
ミーハー魂を仕事に向けられる人”
「テレビのプロデューサー」と聞くと、華やかな世界をイメージされる方が多いと思いますが、実際は裏の作業が8割を占める仕事です。私が働いていた制作会社では、毎年新卒から中途までたくさんの方を採用していたものの、一年で多いと約7割が辞めてしまうことも。そのくらい、実務内容とイメージの乖離が大きい業界なんですよね…。AD(アシスタントディレクター)時代は、現場が立て込んでいると家に帰れないこともしょっちゅうで(笑)。そんな環境のなかで一度も「辞めたい」と思わなかったのは、ある種“テレビが好きなミーハー”だったからだと思います。
私が思うこの仕事に向いている素質は、“〈節操〉をもって、ミーハー魂を仕事に向けられること”。好きだから過酷な仕事に耐えられるし、好きだから頑張れる。ただそこで、〈節操〉をもてるかどうかが本当に大切で。最近はスタッフが内部の情報をSNSに流して炎上する・・・なんてこともありますが、そんなことをすれば当然、好きな仕事を追われることになってしまいます。そうならないためにも、きちんと〈節操〉をもって、好きなものに対するミーハー心を武器に仕事をする覚悟が必要です。
あとは、お金のためというよりも「仕事を趣味として働きたい」という方にも、とても向いている仕事だと思います。ショートドラマは特にトレンドの移り変わりも早いので、いち早く流行を作品に落とし込んだり、 スピード感をもってクリエイティブをしていきたい方にも、ショートドラマ業界はおすすめです。

エンタメ業界を目指すなら、
「いろんなことに興味をもって、
引き出しを豊かに」
個人的な意見になりますが、エンタメ業界を目指すのであれば、“趣味をたくさん作って、とことん遊んでほしい”と思います。「Photoshopが使えます」とか「Premiereが使えます」というよりも、知っていることの引き出しが豊かなほうが、クリエイティブの種がたくさん生まれるんです。技術は後からいくらでも身につけられるけど、経験という蓄えはいましか得られないもの。時間があるうちに、自分の引き出しを好きなものや経験で満たしていってください。ちなみに私は、学生時代に戻れるなら英語と韓国語をもっと頑張りたいです(笑)。

プロデューサーの一日
11:00
出社
11:00~12:30
社内Productionメンバーでの打ち合わせ
12:30~14:00
連絡や資料作成などのデスクワーク
14:00~17:00
脚本打ち合わせ
17:00~18:00
社内 他Dvi.との連携打ち合わせ
18:00~21:30
企画書作成、別作品の脚本打ち合わせ準備、契約業務など
取材協力:emole株式会社

BUMPオリジナルドラマ『ラウンジ嬢の本指客2』
出演:下京慶子 大和田南那 宮崎あみさ
水瀬紗彩耶、佐伯大地 他
監督:のむらなお 脚本:満斗りょう
エグゼクティブプロデューサー:澤村直道(emole)
プロデューサー:藤田結衣(emole)
寺地真一 牛奥学
Staff Credit
編集:Asaka.T
インタビュー:Suzu
記事:満斗りょう
ページ運用:Mo.et



