

主題歌協力
田坂健太

2007年にソニーミュージックグループ入社、
アニメ主題歌のコーディネーション業務などを担当。
主な担当作品は『ガンバレ!中村くん!!』、『魔法科高校の劣等生』シリーズ、『ソードアート・オンライン』シリーズなど。
現在の主なお仕事
僕の主な仕事は、アニメ主題歌のコーディネーションです。アニメ作品とレーベルのあいだに立ってやりとりを進め、各所と相談をしながら、主題歌を担当するアーティストの選定や楽曲の制作のサポートを行っています。
というのも、アニメにはアニメならではの世界観や作り方、アーティストにはアーティストならではの考え方や表現があるもの。それぞれの文化や世界観を尊重しながら「タイアップ」という取り組みを成立させるためには、お互いを理解しながら橋渡しする存在が必要です。僕は、そんな両者の思いを汲み取りながら繋いでゆく“通訳”のような役割をしています。
スタッフクレジット
「主題歌協力」とは?
楽曲制作に対してアイデアを出すこともありますが、実際に楽曲を作るのはあくまでもアーティストの皆さん。僕はスタッフクレジットで「主題歌協力」と表記されることが多く、いわば “仲介役”や“調整役”といった役割を担っています。
“仲介役”として担うのは、コミュニケーション面の役割。「こんな人を起用したい」というアニメ作品とアーティストを繋いだり、スタッフやクリエイターから出る「ここをもう少しこうしたい」といった要望を、相手に分かりやすく、気持ちよく受け取ってもらえる伝え方で橋渡ししたりしています。
“調整役”としては、ビジネス面のやりとりを。「楽曲を使ってアニメ作品の宣伝をする」、「アニメのキャラクターイラストをジャケットとして使用した主題歌CDを発売する」といった相互に協力をするシーンでは、お互いの権利や条件を確認しながら企画を進める必要があります。そうした様々なバランスを整えながら、双方が気持ちよく進められるように調整していくお仕事になります。
いくつもの“仲介“が
同時進行する毎日
いろいろな作品がいろいろな段階で進んでいる中で“仲介役”をしているので、ずっと誰かと話をしたり電話をしたりしています。たとえばいまは、放送中のTVアニメーション『ガンバレ!中村くん!!』のプロモーションについて相談を受けながら、さらに先に放送を控えている作品の主題歌の選定をしたり制作の進行サポートなどをしています。中には主題歌を担当するアーティストまたは楽曲をコンペ形式で集めている段階のものもあります。
作品によって、アニメ制作側・アーティスト側の進め方やスケジュールが様々なので、僕自身も毎日違った作業を同時並行して進めることになります。アニメは映像制作にとても時間がかかるので、放送が始まるかなり前から主題歌づくりが動き出しているんです。

TVアニメーション
『ガンバレ!中村くん!!』
珠玉の名曲が彩る、
週替わりエンディングテーマ
企画の始まり
TVアニメーション『ガンバレ!中村くん!!』の主題歌コーディネーションは、制作プロデューサーから相談をいただいたことをきっかけに、エンディングテーマの企画から動き始めました。作品のキャラクターデザインや作品に漂う空気感が1980年代の漫画やアニメを思わせるレトロなテイストだったことから、「80~90年代の名曲を、毎週変わるエンディングテーマとして流したら面白いのではないか」というアイデアが出たんです。『ガンバレ!中村くん!!』はもともと海外で人気のある作品でしたし、近年、昔の楽曲やシティポップが海外で再評価される流れもあったので、「アニメを通して、旧譜が新しい視聴層に広がっていったら面白いのではないか」と、企画が進んでいきました。
岡村靖幸さんとのタッグが動き出す
エンディングテーマ企画を進めていくなかで、「この作品には岡村靖幸さんの楽曲がピッタリなのでは」と候補が挙げられました。現在、岡村さんはソニーミュージックグループ所属ではありませんが、過去にリリースされた旧譜の一部はソニーミュージックが管理しています。そうしたご縁もあり、まずは「旧譜を使わせていただけませんか?」とご相談したんです。そのやり取りの中で、なんと新しい楽曲でご一緒できるチャンスも出てきまして、それを実現させるために企画を進めていく形になりました。

岡村靖幸・中島健人の
“中村コンビ”による
オープニングテーマ
『瞬発的に恋しよう』の実現
オープニングテーマ『瞬発的に恋しよう』で実現した“中島健人さん”とのコラボレーションは、前述の新曲制作を進めるなかで生まれました。「せっかく岡村靖幸さんに新曲を作っていただけるのであれば、これまでにない新しい取り組みができたら」というご相談から、企画のインパクトとしても、クリエイティブとしても素敵な取り組みになるのではないかとコラボ案が動き出したんです。岡村さんはこれまでにも様々なアーティストの方とコラボされてきたこともあり、「次はどんなアーティストと新しい表現ができるだろう」と候補を考えるなかで名前が挙がったのが、中島さんでした。
視聴者の方にも「岡“村”さんと“中”島さん、二人合わせて“中村”くんだ!」と楽しんでいただけていて(笑)。そこまで狙っていたわけではなかったのですが、とても素敵なコラボになって嬉しいです(笑)。

『ガンバレ!中村くん!!』
×
岡村靖幸×中島健人
3つの個性が重なり合う魅力
岡村靖幸さんの持ち味の一つは、思い通りにならない恋愛や心のモヤモヤを発散させるような、魅力的な表現へと昇華する力だと思っています。そこが、TVアニメーション『ガンバレ!中村くん!!』の面白さと通じていて。誰もがどこかで感じたことのある“うまくいかないもどかしさ”を、ポップに描いていることが大きな魅力なんです。そして、今回コラボ相手となった中島さんは、まさにそんな思いをよせられる対象として、象徴的な存在でした。アイドルとしての華やかさがありながら、新しい表現にも貪欲に挑戦されている姿勢が、岡村さんのクリエイティブと重なるものがあるとも感じています。それぞれがもつ個性や共通する魅力が、上手く重なり合うタイアップになったのではないでしょうか。
主題歌のコーディネーションは
作品とアーティストの
〈接点〉を見出す仕事
今回に限らず、主題歌のコーディネーションは、別々のジャンルであるアニメ作品とアーティストの〈接点〉を見つけていくお仕事です。アニメ作品とアーティストのあいだに、メッセージや世界観、関係性など、どこか根っこの部分が繋がっていないかを探しながら作品側やアーティスト側とコミュニケーションをとっていきます。
どんな流れで決定していくかはケースバイケースで、作品側から「このアーティストにお願いできませんか?」と具体的な希望をいただくこともあれば、「どんなアーティストが合うと思いますか?」と相談があることもあります。それぞれのリクエストを伺いながら、「こんなテーマが共通しているのではないでしょうか?」「こういう組み合わせだからこそ面白くなると思います」と、お互いにとって良いものづくりになるかたちを提案しつつタイアップへと繋げていくんです。
繋がりつつ、重なりすぎない
タイアップに理想的な距離感
シリーズ作品で長く同じアーティストと組み続けているタイアップでは、ファンの皆さんからアーティスト自身がすでに受け入れられていて、最初から高い熱量でスタートできる強みがあります。一方で、初めてのタイアップでは、作品とアーティストの双方がそれぞれのファンを連れてくる面白さがあります。双方のファン層が重なりすぎていると、新しい出会いに繋がりにくいこともあって。だからこそ、離れすぎず、近すぎず、それでいてどこか繋がりのある組み合わせが理想ですね。相性の良い出逢いがあると、タイアップをきっかけに作品やアーティストを知っていただいたり、話題を呼んだりする良い機会になるんです。

良いタイアップを作り出すために
していることは…?
重要になるのは、自社のレーベルにいるアーティストのことをよく知ること、そして社内スタッフと日頃から密接にコミュニケーションをとることです。具体的な仕事の話をするわけでなく、なんとなく社内をフラフラしながら雑談をする時間が、意外と新しいアイデアや次のタイアップに繋がったりします。「調子の良いところには自然と人が集まる」と言うように、数字だけでは言い表せない空気感や勢いのようなものがあるんです。
共通言語としての音楽知識
もちろん、音楽市場全体の状況もある程度は把握しておかなければなりません。最新の音楽チャートでどんな楽曲が聴かれているのか、どのアーティストがどのくらい再生されているのか。トレンドや数字といった情報収集もしています。その音楽知識が、アーティストやスタッフと会話をする際に「こんな楽曲のイメージで」「こんな雰囲気にしたい」と感覚を共有するための“共通言語”にもなるんです。特別なスキルや専門知識が必要というわけではありませんが、クリエイターの皆さんとすれ違うことなく楽しく会話をするためには、音楽のことが好きで、音楽のことを知っていることは必要。「この人と話していると面白いな」と思ってもらえることが次の仕事に繋がることもあるので、会話のしやすさも大切にしています。

田坂さんが直面した、
“やりたい仕事”と“できること”の
ギャップ
会社に入ってから一度、大きく挫折した瞬間がありました。もともと音楽制作の仕事がしたくてソニーミュージックに入社し、入社7年目でようやく念願だった制作に携わることができたのですが、そこで“自分がやりたいこと”と“自分ができること”のギャップに直面したんです。
僕は音楽が大好きだったので、音楽制作の仕事を通して新しいアーティストや音楽を見つけ、たくさんの人に共有していくことができたらいいなと思っていました。そんな当時、タイミングに恵まれてレーベルで制作を担当することになり、仕事をしていく中で、担当していたアーティストの魅力に触れてさらに惹かれていって。ただ、大好きになったのにもかかわらず、自分の引き出しのなかから「こんなことをしてみたらいい」「こうすればもっと魅力が伝わる」と、制作面でのアイデアを出すことができなかったんです。大好きなバンドの魅力を伝えたいのに、自分が担当することがバンドにとってマイナスになってしまうかもしれない。そう気づいたとき、心が折れてしまって。制作に携わるということはそのアーティストの人生を預かることにもなるので、簡単な気持ちでは向き合えないと思っていたところ、もともと所属していた宣伝の部署へ異動することになりました。
この挫折が自分自身を冷静に見つめるきっかけにもなりましたが、やはり自分に対する期待に自分が応えられなかったことは、とても苦しかったですね。

仕事をしていてやりがいを感じる瞬間
音楽はもちろん、アニメや小説、漫画なども好きなので、自分が仕事で関わることによって、その作品に少しでも貢献できることが嬉しいです。また、携わった作品の放送が始まり、SNSやイベントでお客さんから反響をいただいたときは「やってよかった」とやりがいを実感します。タイアップしたアーティストの方のライブを観に行った際、自分が担当した作品の主題歌で会場が盛り上がっていたりすると、本当に嬉しいです!
田坂さんから
この業界で「働きたい」と
願っている読者へ
たとえば「将来、音楽の仕事をやりたい」と思っていたとしても、入社前から音楽制作の勉強をする必要はあまりない気がしています。それよりも、自分の好きなことをとことん深掘りしておくことのほうが、将来役に立つと思うんです。少し人と違う趣味があると話の会話のきっかけにもなりますしね。ちなみに僕は大学院まで生物学の研究をしていたので、音楽業界で働く人のなかで一番「プラナリア」という虫に詳しい自信があります(笑)。そんな、損得を考えずに夢中になれる、自分だけの〈好き〉を突き詰めてみるのが大切なのではないでしょうか。

田坂さんの一日
11:00
出社
12:00
社内会議
14:00
アニメダビング立ち合い
16:00
レーベルとの楽曲打ち合わせ
18:00
資料制作
19:45
通常業務終了
取材協力:株式会社アニプレックス

TVアニメーション『ガンバレ!中村くん!!』
毎週水曜24:30よりTOKYO MX、とちぎテレビ、群馬テレビ、BS11ほか各局にて放送中!
毎週水曜24:30よりHuluにて地上波1週間先行・見放題最速配信!
ほか各配信プラットフォームにて毎週水曜24:30より順次配信
【CAST】
小林千晃 榊原優希
江口拓也 ファイルーズあい 野津山幸宏 田丸篤志 小市眞琴
舞原ゆめ 笹 翼 山口勝平 竹内順子
大地 葉 武内駿輔
【STAFF】
原作:春泥『ガンバレ!中村くん!!』(ヒーローズ刊)
監督・脚本・キャラクターデザイン:梅木 葵
監督補佐:吉邉尚希/
シリーズ構成・脚本:蒼樹靖子(スタジオモナド)/
コンセプトディレクター:畳谷哲也
美術監督:李 天馥(ST.BLUE)/
色彩設計:大野春恵(MADBOX)
撮影監督:若林 優(ENISHIYA)/
ビジュアルディレクター:神田智隆/
編集:上野勇輔(柳編集室)
カラースクリプト:ゆえ/
プロップデザイン・2D ワークス:永木歩実/
衣装デザイン:中村ユミ
音楽:辻田絢菜/音響監督:岩浪美和/
アニメーション制作:ドライブ
【主題歌】
『瞬発的に恋しよう』(作詞・作曲・編曲:岡村靖幸)
岡村靖幸・中島健人Produced by 岡村靖幸
Staff Credit
編集:Asaka.T
インタビュー:満斗りょう
記事:Suzu
ページ運用:Mo.et



