【Color.14】カメラマン 映画『ラブ≠コメディ』撮影・宮本亘 「思い通りに進まない撮影現場で、 〝理想のワンシーン〟を生み出す職人⸺ 映像カメラマンの仕事」

カメラマン 宮本亘

株式会社アップサイド

宮本亘

カメラマン 宮本亘

東京都出身、撮影監督、カメラマン。
主な撮影作品に、映画「モテキ」「バクマン。」「しゃぼん玉」「弱虫ペダル」など。
最新作は「ラブ≠コメディ」2026.7.3より公開中!

Chapter 1

映像カメラマンの仕事

僕の仕事は“映像の撮影”です。ケースバイケースではありますが、たいていは脚本を受け取るより先に、監督やプロデューサーと「この作品はこういう風にしていきたい」といった作品全体のイメージをすり合わせます。そこから脚本を受け取り、撮影に必要なスタッフの編成や機材の選定・調達を行っていき、クランクインを迎えるというのが一般的な流れです。

クランクインまでのカメラマンの仕事

先ほど言ったように、クランクイン前は「スタッフをどうするか」「機材を何にするか」といった、撮影に向けての準備を進めていきます。そのタイミングで監督から「このシーンはこういうトーンにしたい」という要望があれば、それに応えられるような機材を選んだり、予算内に収まるかを計算したり。技術面を担保すること、そしてカメラ機材にかかる予算の考慮・交渉も僕らの仕事です。

カメラマン 宮本亘
Chapter 2

嬉しい瞬間は
“チームとともに
作品に関わっている時”

映画『ラブ≠コメディ』でも描かれているように、エンタメ業界の現場は大変なことも多いですが、やっぱりチーム一丸となって撮影している時間はとても楽しくてやりがいを感じます。

主演・中島健人さんが開催した
「ファミリーデー」

本作の撮影中、主演の中島さんが「ファミリーデー」という、スタッフのお子さんや家族を現場に呼んでいい日を設けてくれたんです。

中島さん側からすれば、ずっとファンサービスをしなければなりませんし、休む暇もなく大変なはずなのに、我々の仕事を家族に見てもらえる機会を作ってくれて。僕も娘を呼んだのですが、父親の働く姿を初めて目にして僕の株が少し上がったようでした(笑)。普段は人に見られる仕事じゃないからこそ、そういった機会を通じて “仕事を分かってもらえる”というのは嬉しいものだなと思います。

映画『ラブ≠コメディ』

宮本さん最新作
映画『ラブ≠コメディ』
この作品が
「エンタメ業界への興味」を
広げる作品になれば⸺

この作品は業界や現場のリアルがとても繊細に描かれていて、出てくる問題や課題も、実際に現場で直面するものばかりです。スタッフ一人ひとりの描かれ方もとても緻密で、カメラマン役の宮崎吐夢さんは、仕事中の僕をビデオに撮ってお芝居に取り入れてくれていたほど。少しメガネを下げてかけているのも、僕のマネなんです(笑)。宮崎さんに限らず、どの役者さんも周りのスタッフをかなり観察してご自身の役を演じられていました。

撮影の現場はほとんど計算通りに進まないことが多いのですが、そんな状況の中で「どう形にしていくのか」というのが、僕らカメラマンの腕の見せ所。カメラマンだけでなく、映像に関わる他の職業の皆さんにもそういったプライドがあるはずです。そんな、さまざまな仕事のリアルと誇りを知っていただける作品だと思うので、本作を観てスタッフ側に少しでも興味をもっていただけたら嬉しいなと思います。

映画『ラブ≠コメディ』
Chapter 3

宮本さんがカメラマンになるまで

高校卒業後、大学受験に落ちてしまい1年間浪人をしていたタイミングで、もともと好きだった映画関連の仕事をしたいと思い、専門学校への入学を決めました。

映像関連の専門学校は入学して1年目はみんな同じカリキュラムを受け、2年目からコースが分かれていくことが多いのですが、その際に僕が選択したコースは「カメラマン」ではなく「録音」のコースでした。当時、僕が通っていた専門学校では録音コースの生徒が少なかったため、先生から「入ってくれ」と頼まれたんです(笑)。

在学中、映画が好きという気持ちはさらに強くなっていき、1日1本は映画を観ていました。年間360本観た年もありましたね。

専門学校卒業後、カメラマンの道へ

専門学校を2年で卒業した後、実は監督になりたくてテレビ局に履歴書を送ったのですが、最終面接までいって落ちてしまい、音声(現場での音声収録を担当する職種)として映像技術会社(撮影・照明・録音などの専門スタッフや機材を提供する会社)に就職をしました。ところがいざ入ってみると、音声ではなくカメラマンの助手として働くことになり。そこで初めて、カメラマンとしてキャリアが始まったんです。

しかし、始まったはいいものの、専門学校で習っていたのは録音のこと。当然、すべてを現場で学ぶことになります。先輩に聞いて教えてもらうことは少なく、「好きなのだから自分で覚えろ」といった環境で技術を学んでいきました。映画の情報誌で紹介されている高評価の作品をピックアップしては、「盗めそうな技術は盗んでいく」という気持ちで何本も映画を観続けて。過言ではなく、映画鑑賞からカメラの技術を習得していきました。

多忙ゆえの退職
しかし辞められなかった
“エンタメ業界の強い引力”

技術会社で2年ほどがむしゃらに働いたものの、あまりの多忙さに退職することを決めました。かれこれ30年ほど前の話なので今はだいぶ働きやすい環境になっているのですが、当時は3日間眠れないこともざらで。

会社を辞めた後はしばらくフリーで仕事をしたり、誘っていただいた会社に入社したりと転々としながらカメラマンを続けていました。カメラマン自体辞めるつもりで最初の会社を退職したのですが、結局は仕事がつながっていきこの業界から抜け出せなかったんですよね。何だかんだカメラマンの仕事が好きだったのだと思います。30年経った今でも、自分の中にある「好き」という気持ちとともに、「辞めさせない」というエンタメ業界の強い引力に掴まれている感覚があります(笑)。

カメラマン 宮本亘

フリーランス期間で実感した
“人とのつながり”の大切さ

その後、フリーでの仕事を続けていく中でさまざまなご縁がつながって、多くのプロジェクトに携わらせていただきました。

この業界に入るハードルは割と低く、学歴なども関係ありません。どちらかと言えば、大事なのは“人付き合い”。僕自身、お世話になった先輩が口を利いてくれたり、過去にご一緒した監督やプロデューサーの方から声をかけていただいたりしながらチャンスを手にしてきました。

最初からフリーとして仕事を始められる方もたくさんいますが、その場合は人付き合いだけで仕事を獲得していかなければなりません。もし業界未経験なのであれば、個人的には技術会社からキャリアをスタートさせることをおすすめします。お給料も出ますし、いろいろな面できちんと保証もされていますから。

Chapter 4

正義を打ち出す戦いもある⸺
現場での“あり方”が作品を左右する

この業界はコミュニケーションが非常に大事です。技術を磨くうえでもそうですし、監督や現場のスタッフとのすり合わせも、すべてコミュニケーションで成り立っています。

製作現場で意見の衝突があった際には、他方からの意見と自分のこだわりのバランスをきちんと考えることが大切。若い頃は意見がぶつかる度に戦っていたこともありますが、今は戦わずして“共に作る”ことに重きを置いています。

ただ、戦うことで得られるものがあることも事実。エンタメ業界には「数字が良ければ、それが正義」という側面があるので、現場によっては、戦ってでも自分のこだわりを通すことが評価につながる場合もあります。

経験を経て見えてくる
“こだわり”と“好み”の違い

若いうちは“こだわり”と“好み”の違いが分かりにくかったのですが、今になって思うのは、違いは「自己満足で終わるかどうか」にあるのではないか、ということ。

我々の仕事は人に伝わりづらい技術が多いので、たとえ「自分の意見は好みではなくこだわりだ」と思っていたとしても、それを貫いたところで仕方がない結果になる場面もあります。現場の意見を汲み、自分との折り合いを付けて“こだわりの線引き”をどう引くのか——こればかりは経験を積まないと見えてきません。

そのため、若いうちは戦っていいと思います。“こだわり”は大事なものだからこそ、「この業界でどのように持ち続けるべきか」という現実を知ってもらう必要があるな、と。

カメラマン 宮本亘
Chapter 5

映像業界の時代変化

僕がアシスタントで映像業界に入った30年前からは、かなり環境が変わったと思います。映画の現場であれば『映適』(映画製作の労働環境改善を目的とした適正化のための制度)というものが取り入れられて、撮影時間もきちんと管理されるようになりましたし、よくドラマで観るような現場で怒鳴る人も今はいません。

以前は「背中を見て学べ」という風習だった技術面に関しても、今はきちんと先輩が後輩に教えるようになってきました。配信サイトなどで技術について説明している方もいらっしゃいますし、ある一定の水準にはすぐ到達できるようになったんじゃないかという印象です。

もし、〈好き〉の想いと
現実が乖離してしまったら⸺

この業界は体力も技術も必要なので、そのどちらかが欠けている状態だと「自分は向いていないんじゃないか」と思いやすいのは事実です。30年以上この業界にいる僕からアドバイスをするとすれば、単純に朝が早いとか、なかなか現場に慣れないという悩みは時間が解決してくれるので、「一度少し休んで体力が回復したらまた仕事する」くらいのスタンスでいればいいと思います。

一方で、会社に残ることが絶対的な正義ではないとも思っていて。もしかしたら辞めた先で楽しいことが見つかるかもしれない。そこは自分の人生なので、気持ちと身体を大切に選んでほしいなと思います。

宮本さんが思う、
カメラマンに向いている人

「こんな人が向いている」というのは特にありませんが、長くこの仕事を続けている方たちを見ていると、僕も含めてみんなちょっと頭が悪いような気がします(笑)。それは悪い意味ではなくて、〈好き〉に実直という意味で。

なので、強いて向いている素質を挙げるのであれば、「好きの想いをどれだけ貫けるか」と「どれだけ好きでい続けられるか」が大切なのかなと思います。

カメラマン 宮本亘

宮本さんから、
カメラマンを目指す読者へ

カメラマンを目指す方は、映画をたくさん観ておいたほうがいいと思います。自分もそうだったのですが、最初の頃って結局何かのマネをすることしかできないんですよ。たいていはみんな、現場に入っていきなりオリジナリティのある表現をするのではなく、「過去に観たことがあるシーンのマネ」などから入ることがほとんどなんです。そのためには、引き出しを多く作っておくことが大事。いろいろな作品を観て、マネできる技術をストックしておくことをおすすめします。

あとは英語も勉強しておくといいと思います。

日本の機材もとても素晴らしいのですが、やっぱり技術的にはアメリカが一番進んでいるので、新しい機材について勉強しようと思うとマニュアルが全文英語のことが多いんです。動画を探そうと思っても、その動画も英語のことが多くて。アメリカからいろいろ情報を仕入れたいと思ったときに言語の壁がネックになってしまうので、若いうちに英語の勉強をしておくといいと思います。きっと今後は、撮影現場でも役に立つ場面がどんどん増えてくるはずです。

プロデューサーの一日

04:30

起床

06:00

都内に集合 ロケ場所へ出発

08:00

撮影開始 お昼休憩や交代、夜休憩を挟みながら撮影

21:00

撮影終了

23:00

帰宅

取材協力:株式会社ストームレーベルズ 
株式会社ライブ・ビューイング・ジャパン 
株式会社アップサイド
 株式会社ガイエ

映画『ラブ≠コメディ』

映画『ラブ≠コメディ』
出演:中島健人 長濱ねる
   板谷由夏 塩野瑛久 本多力 前野朋哉
   今野浩喜 野村麻純 宮崎吐夢 磯山さやか
   岩井拳士朗 信川清順 工藤美桜
   今野大輝(B & ZAI) 北代祐太
   アパッチ長男 / 菊田竜大(ハナコ)
   三石琴乃 光石研 / 財前直見
監督:紙谷楓 脚本:大北はるか 音楽:宮崎誠
主題歌:中島健人「Fiction Love」(Sony Music Labels Inc.)

Staff Credit
編集:Asaka.T
インタビュー・記事:満斗りょう
ページ運用:Mo.et