【Color.8】カラースクリプト ゆえ 「“色の設計図”を描き、物語を伝える TVアニメーション『ガンバレ!中村くん!!』の カラースクリプトの仕事」

カラースクリプト ゆえ

アニメーター兼イラストレーター

ゆえ

カラースクリプト ゆえ

2001年島根県生まれ。商業アニメから児童書や教科書のイラストの仕事まで幅広く活動している。

Chapter 1

カラースクリプトのお仕事とは?

「カラースクリプト」は、アニメーションの色のイメージを統一するための“色の設計図”のような資料を作る仕事です。アニメーションは監督や演出家が描いた“絵コンテ”をもとに制作されますが、絵コンテの段階では基本的に色がついていません。そのため、それだけでは「どんな色で、どんな雰囲気のシーンなのか」を共有することができないんです。たとえば“夕方のシーン”といっても、15時半くらいの明るい夕方なのか、18時くらいの暗い夕方なのかによって表現される雰囲気や心情も大きく異なるため、監督や演出家の頭の中にある光や色のイメージを共有するために絵を描くお仕事が、カラースクリプトです。

カラースクリプト ゆえ

お仕事をする流れ

絵コンテが完成した段階で、監督から「このシーンのカラースクリプトを制作してほしい」と依頼が来ます。カラースクリプトは物語の大事なシーンや時間帯や光の印象が大切になる場面ごとに制作するため、話数ごとに描く場面が異なるんです。それぞれの場面のイメージを監督と擦り合わせ、確認と修正を重ねてカラースクリプトを作成していきます。そして、出来上がったカラースクリプトをもとに、色彩設定や背景美術のスタッフが具体的な打ち合わせを行い、アニメーションがカタチになっていきます。

ゆえさんがこの仕事に至るまで

物心ついたときから絵を描くことが大好きで、小学生のころは「うごくメモ帳」(任天堂)というパラパラ漫画のように動画を作ることができるソフトで遊んでいました。中学校では美術部に入り、美術系の高校へ進学。高校生のときに、京都アニメーション制作のアニメ映画『たまこラブストーリー』(2014年)を観たことをきっかけに、アニメーターを志すようになりました。

高校卒業後、アニメーターに特化した専門学校で学びながら、趣味でSNSにイラストを投稿していたところ、次第に企業からイラストの依頼が届くようになって。その後、アニメーション制作会社でアニメーターとして働く傍ら、児童書や教科書の表紙絵など、イラストの仕事を広げていきました。

そしてフリーランスとして独立後、以前からお仕事で関わりのあったドライブの吉川プロデューサー(吉川貴哉)とのご縁をきっかけに、本作のカラースクリプトのお話をいただきました。イラストで培ってきた光や色の表現と、アニメーターとしての動きを描く経験が、今回のお話に繋がったのかなと思います。

カラースクリプト ゆえ
Chapter 2

カラースクリプトへ初挑戦となった
TVアニメーション
『ガンバレ!中村くん!!』

実は、カラースクリプトを担当するのは本作が初めて。普段はフリーランスのアニメーター兼イラストレーターとして活動しています。今回のTVアニメーション『ガンバレ!中村くん!!』では、カラースクリプトに加え、アニメーターとして本編の原画やアニメーション制作、さらにオープニングとエンディングの背景も担当しました。

初挑戦のカラースクリプトは試行錯誤の連続でした。これまでは自分の感覚でイラストを描くことが中心でしたが、カラースクリプトの作成では、監督からの「こうしたい」という意図や、作品全体のバランスを踏まえながら色を設計する必要があり、悩むことも多かったです。

特に注目してほしいシーンは…?

カラースクリプトを作成したなかで特に悩んだのは、12話と13話。それまでのエピソードは日常的なラブコメでポップな雰囲気でしたが、中村くんがある出来事に直面した12話・13話は空気が大きく変わるんです。この2話は、テレビアニメ作品というよりも劇場版作品のような画を意識して制作しました。こだわって描いたカラースクリプトをもとに、色彩設計さんや撮影さんが魅力的に画面へ落とし込んでくださって、個人的にもとても印象に残る仕上がりになったと感じています。

また、カラースクリプト以外の部分でぜひ注目していただきたいのは、オープニングです。私が担当したのは、すごろくのような背景。実は、「ザラっとした質感にできたら可愛いかな」と思い、実際にクレヨンで描いた絵をスキャンしてデジタル化しています。普段はiPadで制作が完結するのですが、今回のすごろくを一度デジタルで描いてみた際に少し物足りなさを感じたため、クレヨンで描くことに決めました。アナログならではの質感をデジタルの画面に馴染ませることで、より楽しく、印象に残る画面になったのではないでしょうか。

カラースクリプト ゆえ

梅木監督と細かく重ねた試行錯誤

カラースクリプトは、梅木監督(監督・脚本・キャラクターデザイン:梅木葵)と何度も意見を擦り合わせながら仕上げていきました。たとえば第6話の課外授業で広瀬と中村くんが友達になるシーンは、当初やや明るい夕方をイメージして描いたところ、梅木監督から「もう少し深い時間帯にしたい」とフィードバックをいただき、現在の色へと調整しています。梅木監督は色の使い方に長けており、細かなニュアンスまで丁寧に共有してくださる方。作業場での席が隣ということもあり、直接やりとりを重ねながら、納得のいくカラースクリプトを制作できました。

Chapter 3

やりがいを感じるのは
“仕事が画面に映った瞬間”

自分の手がけた仕事が実際の画面に映ったときにやりがいを感じます。制作中は「大変だな」と思うこともありますが、完成した作品や、それを観た方のコメントや反応に触れると「また頑張ろう」と思えるんです。

カラースクリプト ゆえ

限られたスケジュールのなかで
制作する難しさ

一方で、難しさを感じるのはスケジュール管理です。時間をかけてこだわりたいと思っても、仕事にはたくさんの方が関わっているため、自由に時間をかけることができません。反対に「1日で終わるだろう」と思っていた作業が実際は3日かかってしまうこともあり、見通しの甘さに焦ることもあります。限られた時間の中で、自分の納得のいくクオリティを保ちながら期日に遅れずに制作を進められるよう、見通しを立てることの難しさを日々感じています。

この仕事に向いているのは、
絵が好きで、
人とのコミュニケーションを
大切にできる人

この仕事に向いているのは、やはり絵を描くことが好きな人だと思います。それに加えて、“たくさんの人が関わって作品ができている”ということを忘れずに仕事に取り組める人。仕事は一人ではできないからこそ、感謝の心をもって、丁寧にコミュニケーションをとれることが大事です。

アニメーション業界を目指す方にとって絵をたくさん描くことはもちろん大切ですが、絵を描くことと同じくらい、仕事をするうえではコミュニケーションが大切。自分はコミュニケーションが苦手なので、学生のうちにアルバイトを経験して、仕事上の人と話すことに慣れておけばよかったな、と感じています。イラスト以外の仕事をしたことがないので、飲食店のようなまったく違う分野のアルバイトも経験してみたかったですね。

カラースクリプト ゆえ

ゆえさんから
この業界で「働きたい」と
願っている読者へ

自分が楽しいと思える環境を全力で作ってみてください。それが一見、夢や目標とは関係ないものだとしても、必ずどこかで夢へと繋がると思います。

夢や目標を実現するために大切なのは、とりあえずやってみること。まずやってみることで、「もっとこうしたらいい」と反応が返ってきたり、自分の方向性が磨かれたりするはずです!

ゆえさんの一日

10:00

起床とともに作業開始

11:00

出社(在宅作業の時もある)

13:00

昼食

14:00

打ち合わせ(リモート)

15:00

作業再開

21:00

作業終了(集中力がきれるまで)

21:30

夕食

23:00

就寝前に抹茶をたてて羊羹を食べるのがマイブーム

23:30

就寝

取材協力:株式会社アニプレックス

TVアニメーション『ガンバレ!中村くん!!』

TVアニメーション『ガンバレ!中村くん!!』
毎週水曜24:30よりTOKYO MX、とちぎテレビ、群馬テレビ、BS11ほか各局にて放送中!
毎週水曜24:30よりHuluにて地上波1週間先行・見放題最速配信!
ほか各配信プラットフォームにて毎週水曜24:30より順次配信
【CAST】
小林千晃 榊原優希
江口拓也 ファイルーズあい 野津山幸宏 田丸篤志 小市眞琴
舞原ゆめ 笹 翼 山口勝平 竹内順子
大地 葉 武内駿輔

【STAFF】
原作:春泥『ガンバレ!中村くん!!』(ヒーローズ刊)
監督・脚本・キャラクターデザイン:梅木 葵
監督補佐:吉邉尚希/
シリーズ構成・脚本:蒼樹靖子(スタジオモナド)/
コンセプトディレクター:畳谷哲也
美術監督:李 天馥(ST.BLUE)/
色彩設計:大野春恵(MADBOX)
撮影監督:若林 優(ENISHIYA)/
ビジュアルディレクター:神田智隆/
編集:上野勇輔(柳編集室)
カラースクリプト:ゆえ/
プロップデザイン・2D ワークス:永木歩実/
衣装デザイン:中村ユミ
音楽:辻田絢菜/音響監督:岩浪美和/
アニメーション制作:ドライブ

【主題歌】
『瞬発的に恋しよう』(作詞・作曲・編曲:岡村靖幸)
岡村靖幸・中島健人Produced by 岡村靖幸

Staff Credit
編集:Asaka.T
インタビュー・記事:Suzu
ページ運用:Mo.et