【北村匠海】映画『スクロール』テレビ朝日『星降る夜に』生きること、死ぬこと、そして〈愛〉の話

北村匠海

映画『スクロール』
テレビ朝日『星降る夜に』
生きること、死ぬこと、そして〈愛〉の話

現代社会を静かに不器用に生きる〈僕〉と、星のきらめきを感じながら前を向いて生きる柊一星。2つの作品で2人の青年の人生を生きる役者・北村匠海に、2作品のテーマにもなっている〈生〉、〈死〉、〈愛〉について尋ねた時、最初に口にしたのは「その3つは僕の生きるテーマでもあります」という言葉。続けて、いたずらっ子のように「さそり座って、そうなんですって」と笑った。これは「さそり座のB型なので」なんて、ちょっぴり不思議な話し出しから始まる、【僕】のお話。

映画『スクロール』

映画『スクロール』
©橋爪駿輝/講談社
©2023映画『スクロール』製作委員会

-Story-

〈僕〉のもとに、学生時代に友だちだったユウスケから友人の森が自殺したという報せが届く。就職はしたものの上司からすべてを否定され、「この社会で夢など見てはいけない」とSNSに想いをアップすることで何とか自分を保っていた〈僕〉と、毎日が楽しければそれでいいと刹那的に生きてきたユウスケ。森の死をきっかけに“生きること・愛すること”を見つめ直す二人に、〈僕〉の書き込みに共鳴し特別な自分になりたいと願う〈私〉と、ユウスケとの結婚がからっぽな心を満たしてくれると信じる菜穂の時間が交錯していく。青春の出口に立った4人が見つけた、きらめく明日への入口とは──?何者にもなれない4人が、ひとつの死をきっかけに、明日への一歩を踏み出す。私たちが目にするのは、4人の中にきらめく、私たち自身の欠片。痛みを知る者にしか見えない光を描く、絶望を抱きしめる希望の物語。

テレビ朝日『星降る夜に』

テレビ朝日『星降る夜に』

-Story-

なんだか息苦しい毎日の中、本音を暗闇の中に押し込めて生きる《彼女》の前に突如現れ、ちょっと強引な性格と不意のキスでまばゆい光をもたらしてくれたのは…どこまでも自由に生きる《10歳下の彼》だった――。

北村匠海

Theme1:生 /
「心臓が動くこと」と「生きること」

LANDOER:2つの作品を観て「心臓が動くこと」と「生きること」の違いを感じました。北村さんにとって「生きる」とは、どう在ることだと思いますか?

北村匠海(以下、北村):僕、今の社会を「生きること」って結構難しいことだと思うんです。それが『スクロール』では色濃く描かれている気がします。「心臓が動くこと」、それは一個の事象に過ぎなくて、社会を「生きること」って、さらにその奥に在るものなんじゃないかな、と。息をしていることが前提で、その先に「どう人生を生きるのか」が「生きること」として存在しているといいますか。

LANDOER:現代は“変わりゆくもの”と“入ってくるもの”のスピードが速く、社会を生きてゆくハードルが、さらに上がっているように感じます。

北村:そうなんですよね。昔に比べて目に入ってくる情報が多すぎるんだと思います。本当は、自分の持っている「もっとこうしたい」「こう思った」という感情が正解であればいいのに、どこか世の中や他人に左右されたり、勝手に縛られたりしているような風潮があるのかな、と感じます。でもそれって僕たちにも言えることで、どうしても評価や数字を見てしまう。心では気にしていなくても、腹の底ではどうしても気になってしまう、それは“辛い”というより“息苦しい”という感覚に近くて。「生きること」って難しいですね(笑)。

LANDOER:『スクロール』の〈僕〉も、生まれた感情を外部に搾取されたり押し込まれたりしたがゆえ、今をスクロールしているように見えました。

北村:ある種、スクロールすることって“逃げ”なんですよね。現実をスクロールしていった先で〈自分〉を見つけたのが〈僕〉だと思いますし、スクロールした先で自分の信じていたものを失ったのがユウスケなんじゃないかな、と。そういった意味で〈僕〉とユウスケは表裏一体なんです。『スクロール』の〈僕〉のように息苦しさを感じることがある一方で、『星降る夜に』の一星のようにキラキラを感じることもあるのが「生きること」なんじゃないかな、と思ったりします。

LANDOER:DISH//の『Starting Over』の「うまくいかないことばかりに思えて たまに涙が出るくらい嬉しいことだってある」という歌詞が好きなのですが、まさに今、北村さんのおっしゃった「生きること」とリンクするな、と思いながら頷いていました。

北村:『Starting Over』好きですか、良いですよね。本当にそうで、キラキラしている出来事があるからマイナスが目立つ、そんなバランスで〈生〉があるのだと思います。

北村匠海

北村匠海

Theme2:死 /
同じ一つの出来事なのに、広すぎるもの

LANDOER:2作品とも〈死〉の当事者の周りの方が丁寧に描かれています。その描写を受け取って〈死〉は決して終わりではないものだと感じました。役者として様々な作品で〈死〉と向き合ってこられた北村さんの考える〈死〉とは、どういった存在ですか?

北村:〈死〉は誰しもが経験すること。「生き物すべてに共通することって何ですか?」と聞かれたら〈死〉かな、と思うんです。そんな〈死〉に関わるシーンで僕が好きだと思ったのは 、『星降る夜に』で一星が遺品整理中に言っていた「案外楽しい人生だったのかもね。俺もこのおじいちゃんみたいになりたいな」というセリフ。きっと〈死〉にはたくさんの種類があると思うんですよね。

LANDOER:そうですね。命の数だけ〈死〉の姿があると思います。

北村:僕が身近な人が亡くす経験をした時に一番に考えたのは「最後くらいワガママになれたのかな」ということ。その時に「悲しい」という感情だけで一括りにすることはできないものだと感じました。みんなに共通して起こる一つの同じ出来事だけれど、あまりにも広すぎる概念を含んでいるのが〈死〉だと思います。僕にとっては「生きること」と「死ぬこと」はほぼ同じ、同義語ですらあるんです。

LANDOER:生きている限り誰も経験できない、見えないのに広すぎる概念があるからこそ、人間の永遠のテーマなのかもしれないですね。様々な作品で〈死〉が多角的に描かれている理由もそこにある気がします。

北村:割とそうですね。僕『君の膵臓をたべたい』(2017)以降、出演作で登場人物が亡くなることが多いんです。ゆえに〈死〉は、僕が必然的に考えなければいけない一つのテーマでもあって。いろいろな作品でフィクションとはいえ、限りなくリアルに〈死〉を目の当たりにしてきましたから。その度にいろいろな涙も流しましたけど、〈死〉を理解してしまったら終わりだな、とも思うんです。〈死〉って「生きる」よりも言葉としてすごく強いし、大きいし、くっきりしているのですが、やっぱりどこかファンタジーでどこまでいってもフワッとしているんですよね。

LANDOER:様々な作品で〈死〉を目の当たりにして、〈死〉について感じたことがあって、だけれど他の作品ではやっぱり違って…といったように模索されてきたんですか?

北村:それが〈死〉に関しては、降ってくる感情がどれも同じなんです。作品のストーリーも相手も、自分自身の役柄も違うけれど〈死〉に直面した時の感情は共通している。それがすごく不思議で。観てくださる方のほうが、作風やストーリーに応じて〈死〉が違うように見えているんじゃないかと思います。

北村匠海

Theme3:愛 /
〈愛〉は水。僕は“水”を注ぐ人

LANDOER:作られる音、紡がれる言葉から〈愛〉を感じる北村さん。〈愛〉を表現に落とし込まれていく中で、「自分の中の〈愛〉に対する、この考え方だけはブラさない」など意識していることはありますか?

北村:「愛すること」は、平等であるべきだと思っています。〈愛〉の大小は、僕はあまりとりたくないな、と。作品に対しても人間に対しても、もっと大きく世界に対しても同じだけの想いで伝えていきたいんです。自分の持っている〈愛〉の大きさが常に変わらないのは、ブレのない部分かもしれないですね。

LANDOER:「ここはこのくらい」、「この人にはこのくらい」ではなく、まるっとなんですね。

北村:そうですね。〈愛〉を分けるという感覚がなくて、あくまで自分の中にある一つのもの。その一つを「今日は現場に置いて」「今日はここに置いて」みたいな(笑)。その中で圧倒的に、難しいのが自分に〈愛〉を向けること。「もっと自分を愛しなさい」とよく言われるのですが、誰かに向けるほうが得意なんですよね。持っている一つをアンパンマンのように分けて渡すんじゃなくて、「はい!」と顔ごと渡しちゃうのが僕なんです(笑)。

LANDOER:「まるまる一個食べてください」ですね(笑)。

北村:はい(笑)。だからなのか「愛が大きいね」と言っていただくことが多いのですが、僕としては適当なんだと思います(笑)。「僕はこの〈愛〉しか持ち合わせていませんよ、どうぞ」って。その不器用さが許されるのが〈愛〉なんだろうな、と。

LANDOER:不器用だからこそ〈愛〉は多種だし、受け取る〈愛〉が違うからこそ、人は満たされてゆくのかもしれませんね。

北村:うん、あげる側はとにかくあげるだけ。受け取った〈愛〉をどのくらい食べるのかは、受け取る側の裁量だと思います。全部食べる人もいれば、一口で終わる人もいるだろうし。受け取る側の感じ方や生き方でかなり形が変わっていくのが〈愛〉なんじゃないかな。

LANDOER:確かに、その時に受け取る側が必要としている〈愛〉は各々で違いますもんね。

北村:〈愛〉ってきっと、受け取る人が形にしていくものなんです。与える側が形作らないほうがいい。あくまで“水”みたいなものであって、注がれる人がどんなグラスを持っているかで変わってくるといいますか。僕は、歌でも芝居でも発信する側なので、あまり形にしすぎない意識を持っています。いろんな言葉や角度で伝えてゆくけれど、僕の仕事は “水を注ぐこと”、ただそれだけ。だから「これはどんな作品ですか?」と聞かれたら、「みんなはどんな作品に感じましたか?」と、ちょっぴりいじわるな質問をしちゃいます(笑)。

北村匠海

北村匠海(25)

きたむら たくみ

1997年11月3日生まれ。
強いも、脆いも、愛おしいも、
“人間”という無限の〈海〉でありのままに遊ばせるDOER

映画『スクロール』
全国公開中

出演:北村匠海 中川大志 松岡茉優 古川琴音 ほか
監督・脚本・編集:清水康彦
脚本:金沢知樹 木乃江祐希
原作:橋爪駿輝「スクロール」(講談社文庫)
配給:ショウゲート

映画『スクロール』
©橋爪駿輝/講談社
©2023映画『スクロール』製作委員会

テレビ朝日『星降る夜に』

テレビ朝日『星降る夜に』
毎週火曜よる9時~

出演:吉高由里子 北村匠海
   千葉雄大 光石研 水野美紀 ディーン・フジオカ ほか
脚本:大石 静 
監督:深川栄洋 山本大輔

Staff Credit
カメラマン:田中丸善治
ヘアメイク:佐鳥麻子
スタイリスト:鴇田晋哉
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:古里さおり