【松尾太陽】1stAlbum『ものがたり』「歌を物語る、そんな表現を極めたい」24歳の歌うたいの決意

松尾太陽A

1stAlbum『ものがたり』
「歌を物語る、そんな表現を極めたい」
24歳の歌うたいの決意

松尾太陽、24歳。彼の、歌の世界を見つめ、口角を上げて紡ぐ優しい音が好きだ。「届けたい」という想いが伝わる眼差しが好きだ。「平坦な道ではなかった」と笑顔で話す姿からは、幾つもの涙を越えて「太陽であり続けよう」と決めた凛々しい覚悟が垣間見える。とある肌寒い雨空の日、スタジオに降り注いだ太陽の〈ものがたり〉。

1st Album『ものがたり』

『ものがたり』ジャケット写真

¥3,080(tax in)/ZXRC-2080
【収録曲】「Magic」「体温」「ハルの花」他、
全10曲収録予定

今回の 1st フルアルバムには、オルタナティブな音楽が武器のシンガーソングライター OHTORA、オレンジ髪の Chi- によるパンクなソロユニットのカメレオン・ライム・ウーピーパイ、1989 年生まれの 3 人によるニューノスタルジックバンド THREE1989、さまざまなカルチャーを飲み込み咀嚼する異色のポップスバンド BIALYSTOCKS、アーバンでスタイリッシュな男女 3 人組 macico ら、いま作も新進アーティストたちが参加する。

ミニアルバム『うたうたい』から約1年。
待望のフルアルバムリリースですが、
リリースのお話を聞いた時の
率直な感想を教えてください。

2021年の頭から「配信リリースの段階を踏んで、その延長線上でアルバムを出したいな」と考えていたので、大きなスケールのフルアルバムを出せると聞いた時は嬉しかったですね。実は「2021年にフルアルバムを作る」という目標が僕の中にあったんです。いままでの活動を何かしらの形にして出したいな、と思っていて。配信リリースは手軽に聴くことができて良いと思うのですが、やっぱり僕はCDに収める作業が好きなんだと再認識しました。

アルバムに収録されている曲順で聴いてこそ
分かる世界がありますよね。

本当にそうなんですよ。いまはプレイリストで自分の好きな曲を自由自在に聴くことができるけれど、僕はアルバムのようにパキッとしたパッケージで世界を作っている感じが好きなんです。その作業は僕たちにとって神聖なことであり、曲ひとつ並び替えるにしても、たった一曲の曲順ですべてが決まる場でもあるんですよね。繊細な感じがたまらなくいいな、と思います。

松尾太陽A

今回の『ものがたり』の曲順は
松尾さんが決められたんですか?

今回はいろいろと話し合って決めました。『ものがたり』の収録曲は楽曲の世界観がそれぞれ全然違うんです。だからこそ様々な世界を通って〈物語〉を堪能して欲しいな、と。僕自身も今回のアルバムで、いろんな世界が混ざっているのを聴いて「平坦な道ばかりじゃなかったな」と思い返すことができました。僕にとって納得のいく曲順になったと思います。最初は曲順に聴いていただいて、それからは自分の好きな曲を見つけて自由に聴いてください!

歌詞からも世界観の違いを感じました。
曲のふり幅がとても大きいな、と…

そうなんです。今回もたくさんの方に楽曲提供していただいているのですが、それぞれのアーティストの方によって曲のテイストも作り方も持っている世界観も違うので、各曲ごとに全く違う色があって。曲の世界観のちぐはぐな部分を繋げることによって〈物語〉が完成する。単にスーッと「良い曲だったな」だけで聞き流されてしまうのが勿体ない、そんな素敵な楽曲ばかりになったと思います。是非曲を聴き終わったら一旦停止して「この曲は…」と味わってもらえたら嬉しいですね。一曲一曲、持っているものが違うので、分析しながら聴いていただけたら、更に楽しんでいただけるはずです!

松尾太陽A

点と点を繋げながら、物語を楽しんで欲しいですね。

点と点は繋げるからこそ意味があると思っていて。繋げる作業を大事にしないと、繋げたくても繋げることができないじゃないですか。自分の中の想像でいいんです。聴きながら、自分が「曲中の主人公だ」と想像してみる。明るい曲から暗い曲になったら「雨が降ってきたな」と考えたり、「雪が降ってきたな」と切なくなったり、そういった感情の起伏に緩急をつけながら曲の世界観を一つの物語として楽しんで欲しいと思います。

確かに、強そうな曲を聴くと
強くなれる気がしますよね

そういう風な聴き方をするのが好きなんです。『ドラゴンボール』のオープニングを聴くと誰でも強くなれるじゃないですか(笑)。

間違いないです(笑)。
歌を愛する松尾さんだからこそ、
歌に悩み、励まされることもあったのでは?

歌っていく上で「自分はこのままでいいのかな」という気持ちになったりすることは今でも割とあります。その気持ちが良いように作用する時もあるし、ネガティブに繋がってしまう時もあって。でも、そういう時に自分を励ましてくれるのはやっぱり〈歌〉なんですよね。特に気持ちを上げてくれるのは、サザンオールスターズさんの『みんなのうた』。これは僕にとって、ネガティブな気持ちを明るくして、心を弾ませてくれる曲です。歌が好きだからこそぶつかる問題も正直たくさんあるんですが、歌で悩んだ時は歌に励ましてもらっています。

松尾太陽A

歌と素敵な関係性を築いている
松尾さんならでは、ですね。

YouTubeの歌ってみた動画も拝聴したのですが、
歌っている時の表現力に目を奪われました。

割とボディーランゲージをしながら歌うタイプではあるんですが、最初は脳内でシミュレーションを繰り返して「ここで、こんな風にやるぞ!」と意識して動いていたんです。でも、そういった表現ってあくまで段取りでしかなくて。それが僕はすごく嫌だったんですよ。初めて歌う曲を、一発で段取りなしで表現することはやっぱり難しい。だからこそ、どれだけその曲のことをレコーディングまでに考えてきたかで、表現の深度がかなり変わると思っています。場数を踏むことでしか表現力を身体に馴染ませることはできないな、と常々感じますね。

それはいままで
歌に悩み、歌に励まされた経験を経て
見出したものですか?

そうですね。ボイストレーニングに通っているんですが、そこで「音を聴いていなくても、何の曲を歌っているのか分かってもらえるように」と言われるんです。いろんな場で歌わせていただいて「確かにそうだな」と、すごく感じます。曲に合わせてジェスチャーが自然に出てくるのは、いわば一種の演技。一曲の物語を演じるように歌うことができれば、一つの舞台を観ているように曲の世界を楽しんでもらえると思っていて。だからこそ、その演技を極めることがいまの僕の目標です。

『ものがたり』Time
Produce by 松尾太陽

「松尾太陽サウンド」を聴くオススメの場所は車の中。自分が運転していても、同乗していてもどちらでもいいんですが、ドライブソングとして僕の歌を聴いて欲しいと思います。僕自身、昔から車で音楽を聴いて育ったんです。ドライブ中、窓を開けた時に感じる風や天気、そして車中という閉ざされた空間に流れる音楽の心地よさ。記憶として刷り込まれているからこそ、当時聴いていた音楽を聴くと懐かしい気分になれるんですよね。どこかへ行くワクワク感に、プラスで高揚感を与えられるのが音楽だと思っているので、あの頃、ドライブで音楽を聴いてワクワクしていた僕の気持ちを皆さんにも感じていもらいたいです。そしてその時の曲が僕の曲だったら、こんなに嬉しいことはありません。実は、いつか「車の中で聴く音楽と言えば松尾太陽の曲」と言ってもらえるようになることが、活動を始めた時からの一つの目標なんです。

松尾太陽A

松尾さん作詞作曲の『掌』、
深夜のタクシーで聴いていました。最高でした!

いいですねー!『掌』は夜行バスのイメージで作った曲なんです。ネオンが溢れる東京の街に雨が降っていて、車窓越しに見えるぼやけた灯りが、雨なのか自分の涙なのか分からない…そういった場面がたまらなく好きで。どの曲もそうなのですが、聴いている人の状況に合わせて曲を堪能してもらえたら嬉しいです。

1年間、グループ活動とソロ活動を
並行されてきた松尾さん。

〈活動〉に対する意識の変化はありましたか?

今年はいろんなことが自分の中でガラリと変わりましたね。コンスタントに曲を作らせていただくこともできましたし、「もっとああしたい、こうしたい」という欲が良い意味で出てきたようにも思います。正直いままでは、こういった活動をしてきたにも関わらず「曲を作る」という環境が乏しかったんです。「まずはそこからだ!」と思って、作曲できる最低限の環境を家に作ったり、ギターを再度始めてみたり、作曲のヒント探しをするようにもなりました。「ヒントって意外と身近な場所に落ちているんだな」ということにも気づくことができて。歌に対する向上心がいままでより強くなった気がします。

『ものがたり』に込めた〈声〉

僕のファーストアルバム『ものがたり』は、一曲一曲の厚みがある上に世界観もかなり強いので、最初は状況が飲み込みにくいかもしれません。でも、聴いているうちにそれぞれの歌詞やアーティストの方々の魅力にどっぷりとハマってもらえる一枚になったと思います。点と点を繋げる作業をすごく大事にして作り上げた作品で、ありがたいことに僕の作った曲もひとつの〈点〉として収録されているので、小さな言葉一つひとつを聞き逃さずに大切に聴いていただけたら嬉しいです。僕も楽しみながら、世にこのアルバムを届けたいと思います!

松尾太陽A

松尾太陽(24)

まつお たかし

1996年9月23日生まれ。
曲が帯びる世界を
色彩豊かな表現でこの世に創出するDOER。

Staff Credit
カメラマン:YURIE PEPE
ヘアメイク:間篠 美歩 
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:吉田彩華