【Color.18】 音響システムエンジニア 西海範恭 「空間に合わせてスピーカーを配置し、 ライブ会場を音で満たす 音響システムエンジニアのお仕事」

音響システムエンジニア 西海範恭

音響システムエンジニア

西海範恭

音響システムエンジニア 西海範恭

学生時代から音楽に親しみ、バンド活動を通じて音響にも興味を持つ。
ライブハウスで音響担当として働き、その後ヒビノ株式会社へ入社。
入社後は、モニターエンジニア、ハウスエンジニアとして経験を積み、現在はシステムエンジニアを担当。

Chapter 1

会場やセットに合わせて
スピーカーを配置する
音響システムエンジニアの仕事

ライブやコンサートに携わる音響スタッフ(PA)のなかでも、アーティストが発する音をスピーカーを通してお客さまへ届けるための“音響システムを構築する仕事”を担っているのが音響システムエンジニアです。

会場の大きさやステージセットに合わせて、どのスピーカーをどこにどれだけ配置するかを決めます。会場やステージセットによって「ここにはスピーカーを吊れない」「ここに置くとお客さまの視界を妨げてしまう」といった条件もあるため、それらを踏まえながら、できるだけ均一に音が届くようプランニングを行っています。

そのうえで、実際にスピーカーを吊り上げる施工まで担当。パソコンを使って音響システムをシミュレーションするデスクワークから、会場でスピーカーを設置する現場作業まで担うため、頭も身体も使う仕事ですね。

音響システムエンジニア 西海範恭

1日の仕事の流れ

ライブの準備をする日は、ほかのスタッフより少し早く会場に入ります。まずは、天井からスピーカーを吊るための「吊り点」と呼ばれる場所や、「トラス」「モーター」など設備の位置を確認します。

その後、ほかのスタッフとともに、トラックで運ばれてきた機材を搬入し、スピーカーを設置。アンプなどの周辺機材の仕込みが整ったら実際に音を出し、スピーカーのチューニングを行います。準備が整い次第、お客さまに届く音のバランスを調整するPAハウスエンジニアへと引き継ぎます。

ライブ中は、ミックスを担当するオペレーターからの要望に対応したり、客席を歩いて音が適切に届いているかを確認したりしています。事前にプランニングした音響環境が実際の会場でも想定通りに機能しているかを確認することも、大切な仕事ですね。

音響システムエンジニア 西海範恭

音響プランニングは
どのように始まる?

担当する公演が決まると、会場の情報とお客さまをどの範囲まで入れる予定なのかが共有されるため、その情報をもとにスピーカーの配置を設計していきます。

その後、ステージセットの詳細が決まるにつれて「ここにはスピーカーを吊れない」「この場所は避けてほしい」といった条件が増えていくので、それに合わせて配置を調整していきます。使用するスピーカーの種類も、実際に音を調整するオペレーターの好みや、アーティスト側の意向によって変わることもありますね。

音響システムのプランニングにかかる期間は、公演によって本当にさまざま。大きな案件では半年ほどかかる場合もありますし、短い場合は一日で決定することもあります。

時代に合わせて
音響の仕事はどう変わった?

昔はライブにおいて、とにかく音がしっかりと聞こえることが最優先でした。しかし最近は、ステージ演出や映像演出も重視されるようになり、音だけでなく「見え方」も考えながら音響システムを組む必要があります。たとえば、どのお客さまにも均一に音を届けたいと思ってもスピーカーの位置によってはステージやモニターが見えづらくなってしまうことがあるため、音響面と演出面の両方を考慮しながらプランニングを行っています。

また、昔は音響シミュレーションの技術がなかったため、自分でスピーカーを積んで、感覚を頼りにプランニングしていました。現在はパソコンで音の広がり方をシミュレーションできるため、ステージ構成が変わるたびにスピーカーの配置を見直し、より良い環境を作ることができるよう調整しています。

音響システムエンジニア 西海範恭
Chapter 2

西海さんが
音響の仕事に就いたきっかけ

学生の頃から音楽が好きで、バンドを組んでベースを担当していました。当時は自分たちでライブを開催することもあり、人手が足りなかったことから音響も自分で担当していたんです。それをきっかけに音響の仕事に興味をもち、ライブハウスで働いて音響を担当するようになりました。

その頃、ヒビノの方がライブハウスにオペレーターとしてくることがあって。その方と一緒に仕事をするなかで「ヒビノに入らないか」と声をかけていただき、入社することになりました。ヒビノは業界のなかでも大きな会社でしたし、ほかの選択肢もとくになかったので、あまり迷うことなく入社を決めましたね。

音響システムエンジニアになるには

昨今は会社で教育してもらえるので、音響の仕事に携わりたいのであれば弊社のような音響の会社に入るのが一番の近道だと思います。基礎的な技術は教えてもらえますし、その場その場で先輩からアドバイスを受けることもできますから。

昔は自分で勉強したり経験を積んだりしながら「勝手に覚えろ」というスタイルでしたね(笑)。まずは上司の働きを見て真似することから始めていました。

音響システムエンジニア 西海範恭

入社後のキャリアの積み方と
ライブハウスでの仕事との違い

入社後すぐにシステムエンジニアになったわけではありません。まずはステージの設営や機材の運搬など、現場を支える仕事から経験を積みます。その後オペレーターとして、アーティストに届く音を調整する「モニター」や、お客さまに届く音を調整する「ハウス」を担当しながら知識と技術を身につけ、概ね身についた頃にシステムエンジニアになりました。

ライブハウスで音響を担当していた頃と比べても、仕事の基本は大きく変わりません。そのため、入社後も比較的仕事に慣れるのに時間はかかりませんでした。

そのなかでも違ったことを挙げるとすれば、会場の規模。ライブハウスではステージから聞こえる生音とPAから出る音のバランスをとることが重要ですが、アリーナやドーム、スタジアムクラスの会場では、PAから出る音が会場全体に届くメインの音になります。また、会場が大きくなればなるほどスピーカーを仕込むために必要な準備も増えますし、オペレーターが会場のあちこちで音を聴いて確認することも難しくなるので、音響システムエンジニアの仕事が必須になっていきますね。

Chapter 3

大変さを感じる瞬間と、
やりがいを感じる瞬間

大変さを感じることは……全部ですかね(笑)。プランニングをしているときも大変ですし、機材を準備している期間も大変。本番中も常に気を張っています。とくに野外のライブでは天候や騒音への配慮も必要になるため、難しさを感じることが多いです。仕込みをするだけでも最短で丸一日以上かかるので、「いくら仕込んでも終わらない!」という気持ちになりますね(笑)。

その分、本番を無事に終え、良い音を届けることができたときには大きなやりがいを感じます。お客さまが満足そうに帰っていく姿を見ると、「頑張ってよかったな」と思えますね。

音響システムエンジニア 西海範恭

音響の仕事に向いている人は?

辛抱強い人が向いていると思います。めげない人、ですかね。仕事をしていると思い通りにいかなかったり、心が折れそうになったりすることもあります。そんなときでも自分なりに学びを得て気持ちを切り替えながら、前に進むことが大切だと思います。

西海さんから、
これから働くことに向き合う読者へ

若いうちに、自分の好きなことを見つけるのが一番だと思います。僕も学生時代からずっと音楽が好きで、「この業界にいられるだけで幸せだ」という気持ちで仕事を続けてきました。ヒビノに入社してもうすぐ45年になりますが、「ほかの仕事をやろう」と思ったことは一度もありませんね。

もちろん仕事なので大変なこともありますが、好きなことを仕事にすると、その分やりがいや楽しさも感じられます。まずは自分が夢中になれるものを見つけて、ぜひ挑戦してみてください。

音響システムエンジニア 西海範恭

西海さんのお仕事のある日の一日

09:00

会場入り、搬入、セッティング開始

12:30

お昼休憩

14:00

楽器の調整

16:00

アーティストの会場入り、単音チェック、リハーサル

18:30

本番開始

21:00

本番終了、撤収開始

22:30

解散

取材協力:ヒビノ株式会社
公式HP

Staff Credit
編集:Asaka.T
インタビュー・記事:Suzu
ページ運用:Mo.et