【黒木華】映画『アイミタガイ』人の想いは巡ってゆく私に咲いたやさしい〈愛〉はあの日、誰かが蒔いた〝想いの種〟

黒木華

映画『アイミタガイ』
人の想いは巡ってゆく
私に咲いたやさしい〈愛〉は
あの日、誰かが蒔いた〝想いの種〟

この世界にはたくさんの〈種〉が埋まっている。名前も知らない誰かが、人知れず大切に埋めた〝想いの種〟が。季節が巡り、健やかに育ったその種は〈愛〉に満ちた花となり、別の誰かの笑顔となる。そうやって人は人と繋がり合い、想いの輪は広がってゆく。恵の雨とあたたかな太陽に育まれた、静かで美しい「アイミタガイ」の花。あなたはこの花にどんな花言葉を見つけますか――?

映画『アイミタガイ』

映画『アイミタガイ』
© 2024「アイミタガイ」製作委員会

―「アイミタガイ」=「相身互い」―

誰かを想ってしたことは、巡り巡って見知らぬ誰かをも救う。
見逃してしまいそうな微かなふれあいが繋がり、
秘密の糸がほどけるとき、
思いもよらない幸せの歯車が動き出す―。

2013年に刊行された小説「アイミタガイ」。ゆるやかに交わる連作短編が、一本の映画に生まれ変わった。『台風家族』(19)の市井昌秀が脚本の骨組みを作り、『ツレがうつになりまして。』(11)の故・佐々部清が魂を注いだ企画を受け継いだのは、『彼女が好きなものは』(21)やドラマ「こっち向いてよ向井くん」(NTV)の草野翔吾監督。親友同士の梓と叶海、二人の関係を軸に、一期一会の連鎖が大きな輪になっていく群像劇を紡ぎ上げた。主演を務めるのは黒木華。かけがえのない存在だった友を失い、立ち止まってしまう主人公・梓の心の機微を細やかに演じ上げる。梓との結婚に踏み切りたい交際相手の澄人を中村蒼、梓の良き理解者で亡き親友の叶海を藤間爽子がつとめる。さらに、草笛光子、安藤玉恵、松本利夫、升毅、西田尚美、田口トモロヲ、風吹ジュンら実力派が顔を揃え、人間ドラマのアンサンブルを奏でる。

-あらすじ-

ウェディングプランナーとして働く梓(黒木華)のもとに、ある日突然届いたのは、親友の叶海(藤間爽子)が命を落としたという知らせだった。交際相手の澄人(中村蒼)との結婚に踏み出せず、生前の叶海と交わしていたトーク画面に、変わらずメッセージを送り続ける。同じ頃、叶海の両親の朋子(西田尚美)と優作(田口トモロヲ)は、とある児童養護施設から娘宛てのカードを受け取っていた。そして遺品のスマホには、溜まっていたメッセージの存在を知らせる新たな通知も。一方、金婚式を担当することになった梓は、叔母の紹介でピアノ演奏を頼みに行ったこみち(草笛光子)の家で中学時代の記憶をふいに思い出す。叶海と二人で聴いたピアノの音色。大事なときに背中を押してくれたのはいつも叶海だった。梓は思わず送る。「叶海がいないと前に進めないよ」。その瞬間、読まれるはずのない送信済みのメッセージに一斉に既読がついて…

-秋村梓-

映画『アイミタガイ』
© 2024「アイミタガイ」製作委員会

ウエディングプランナーとして働く女性。
亡くなってしまった親友のトーク画面へ、
メッセージを送り続ける。

秋村梓
×
黒木華

梓は年齢が近いこともあり、すごく身近に感じる女性でした。結婚や仕事など、さまざまな悩みを抱えているにも関わらず、人に頼るのが苦手なところも「私にもそういうところあるな…」と、感じましたし。だからこそ、良き理解者であり親友である叶海の存在が大きかったんだろうな、と思います。

そんな気丈に振る舞える梓だからこそ
哀しみに暮れるだけではない、
深く繊細なお芝居が必要になったと思います。
どのように役を築かれましたか?

大切な人が亡くなってしまった哀しみを抱え、それを処理しきれないまま生活は進んでいく。そんな日常の中で、“心に宿る感情は決して一つではない”ということをしっかり演じ貫くために、梓と向き合いました。気丈な振る舞いの中にも、交際相手の澄人(中村蒼)には見せたくない姿、親友の前でしか見せられない姿があったんじゃないかと、細かいところまで意識するようにしていましたね。

黒木華

草野翔吾監督とは本作に関して
どんなお話をされましたか?

撮影前に監督から梓のプロフィールをいただき、「この年齢の時に両親が離婚している」など、彼女がどんな人生を歩んできたのかを一緒に確認したうえで、共通認識をもって撮影に臨ませていただきました。加えて、監督から「わかりやすく“哀しいです”という、暗いお芝居はしないでほしい」との声もいただいて。単純にはいかない、人間の複雑な部分を求めていらっしゃるのかしら、と考えながら、大切に梓を演じさせていただきました。

作品を拝見して、
「怒っています」「哀しいです」といった
一色限りではない在り方が、
リアルだと感じました。

先日、草野監督のインタビューをお聞きする機会があったのですが、この作品は原作も映画同様、耐震用のツッパリ棒の話からはじまっており、草野監督はそこが凄くイイと思ったそうなんです。そのお話を伺って、「(監督は)まったく特別じゃない、日常のスケールで進む物語が撮りたかったんだろうな」と感じました。いろいろな歯車が繋がって大きく動いてゆく群像劇の中に「あるある!」と、思わず頷きたくなるような身近な生活がしっかりと流れている気がします。

黒木華

ツッパリ棒をセットする恋人・澄人の間の悪さも
「あるある」ですよね(笑)。
黒木さんの世界に、この作品はどう響きましたか?

そうなんです(笑)。私はこの作品に出逢うまで「相身互い」という言葉を知らなかったのですが、今までの人生を振り返った時に、知らず知らずのうちに人と関わり、助け合っていることがあったよな、と改めて気づかされました。作品を通して何かを伝える『役者』というお仕事をさせていただいているので、ありがたいことにファンの方から「作品を観て、私も役者になりました」「勇気をもらいました」などの言葉をいただくことも多くて。私の仕事が会ったことのない誰かの人生に影響を与えていて、その誰かがくださる言葉で、私もさらに「頑張ろう」と思える。そういった“目に見えない繋がり”を改めて感じるキッカケを、この作品からいただきました。

直接ではなくとも
「人は人と関わり合っている」と思える、
そんな日々の幸せを感じられる作品でした。

叶海の父・優作役の田口トモロヲさんが「悪い人が出てこないなんてないと思っていたけれど、こういうこともあるんだね」とおっしゃるのですが、まさにそうだと思える映画ですよね。コロナ禍もありましたし、人と人との繋がりが薄くなりがちな現代(いま)、忘れがちだった優しさやあたたかさを思い出せる映画になっていると思います。

黒木華

黒木華

エンディングで黒木さんの歌声が流れてきた時、
心に優しく語りかけてくれている
ような気持ちになりました。
主題歌の歌唱は、どのような経緯で
決まったのでしょうか?

撮影が終わった後に、どうやら私が歌うらしい…というお話を聞いて(笑)。正直とても驚きましたし、「いやいや、プロではないですし…」と言ったものの、結果、主題歌を歌わせていただくことになりました。今回歌わせていただいた『夜明けのマイウェイ』は、もともとパルさんの楽曲で1979年に作られたものなのですが、歌詞の一つひとつが驚くほど梓とリンクしていて「あ、だからこの歌なんだ」と納得しました。

梓に応援してもらっているような
気持ちになることはもちろん、
梓が自分に言い聞かせて
前に進んでいるようにも聴こえました。
レコーディングの時には
どんなことを大切にされましたか?

レコーディングに慣れていなかったので、まず「練習させてください」と歌唱指導をお願いしました。そこで出会った歌唱指導の先生が本当に素敵な方で、音取りに苦戦していた私の背中を「黒木さんは役者さんなので、音を取ることは一旦忘れて、梓の気持ちと歌詞のメッセージさえ大事にすれば絶対に大丈夫です!」と、やさしく押してくださったんです。先生のその言葉のおかげで、勇気をもって歌うことができました。梓として一つひとつの言葉を大切に歌ったので、その想いが伝わってくれたら嬉しいです。

黒木華

Dear LANDOER読者
映画『アイミタガイ』
From 黒木華

気づかないうちに人は人と繋がっていて、自分がしたことが巡り巡って誰かを幸せにしている、という意味をもつ「アイミタガイ」=「相身互い」。まさに、その言葉通りの優しさに包まれるような作品になっています。キャスト、スタッフ一同「アイミタガイ」という言葉を大切に、「誰かに寄り添える作品にできたら…」という想いで撮影をしたので、観てくださる方はもちろん、この作品が巡り巡って誰か大切な人の心を温めるような作品になれたら嬉しいです。

黒木華

黒木華

くろき はる

3月14日生まれ。
可憐に咲く嫋やかな春の華、
〈凛〉と光る根の強さが尚々美しいDOER

映画『アイミタガイ』
2024年11月1日(金)
TOHTOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

原作:中條てい「アイミタガイ」(幻冬舎文庫)
監督:草野翔吾
脚本:市井昌秀 佐々部清 草野翔吾
出演:黒木華
   中村蒼 藤間爽子
   安藤玉恵 近藤華 白鳥玉季 吉岡睦雄 /
   松本利夫 升毅 / 西田尚美 田口トモロヲ
   風吹ジュン/草笛光子
主題歌:黒木華「夜明けのマイウェイ」
配給:ショウゲート

映画『アイミタガイ』
© 2024「アイミタガイ」製作委員会

Staff Credit
カメラマン:堀内彩香
ヘアメイク:下永田亮樹
スタイリスト:Lim Lean Lee
インタビュー・記事:満斗りょう
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