劇団☆新感線 
『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』
変わらぬ想いを掲げて大集結!
「なんだってできる」舞台の上で、
劇団☆新感線の〝アレもコレも〟が、いま爆烈する|
好きなことを、好きな仲間と、好きなだけ。それって実は案外難しい。それでも自分たちの「面白い」を信じて演劇界を走り続けた劇団☆新感線は、今年でいよいよ45周年。31年ぶりに大集結した劇団員らとともに、歌って踊って立ち回り、セルフパロディからベタな笑いまでアレもコレもを詰め込んだ、まさしくお祭りのような極上のエンタメが今冬爆烈する!「自己満な作品をやって、それを観たお客さんが大喜びしてくれたら十分」と笑う古田さん。その笑顔が物語るのは、〝くだらないこと〟を本気でやり続けてきた彼らの、演劇への深い愛情と誇りだ。さぁ、舞台の上から爆発的で猛烈な劇団☆新感線の祭囃子が聞こえてきましたよ!
2025年劇団☆新感線45周年興行・秋冬公演
チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎
『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』

-Introduction-
時は天保、ある山奥の地──。
江戸で活躍した役者・荒村荒蔵(あらむらあらぞう/橋本じゅん)の娘、お破(おやぶ/小池栄子)。荒蔵から“嘘を真に変える芝居の力”を叩き込まれたお破は、芝居の神様・月影大御神(つきかげのおおみかみ)の加護を受け、花形役者として舞台に立つために江戸へ向かう。しかし江戸は、財政の立て直しを図る老中・水野忠邦による改革の真っ最中。人々は贅沢の禁止や歌舞音曲の自粛を強いられていた。歌舞伎の上演を許された江戸三座のひとつ、橘川(きっかわ)座でも、座元の橘右衛門(きつえもん/粟根まこと)、その妻・おきた(高田聖子)、息子で女形の夜三郎(よさぶろう/早乙女太一)らが、幕府から睨まれぬように、狂言作者・真狩天外(まがりてんがい/向井理/二役)の新作芝居の稽古に励んでいる。橘川座には芝居好きの北町奉行遠山金四郎(とおやまきんしろう/橋本さとし)が町人姿で頻繁に顔を出していた。ある日、彼が一座の稽古を見ていると、突如お破が現れ、役者たちの芝居にダメ出し、鮮やかな演技を披露する。驚く一同を前に、『仮名手本忠臣蔵』の大星由良之助を演じるような「江戸の千両役者になる」と言い放つお破。だが、女が舞台に立つのは御法度。荒蔵の過去の不始末も災いし、お破は芝居小屋から追い出されてしまう。意気消沈するお破。そこにおきたが現れ、こう告げる。「闇の世界にも舞台はある」。連れて行かれたのは無宿人たちの集まる“闇川島(やみかわしま)”。そこでは無宿頭(むしゅくがしら)・弾兵衛(だんべえ/古田新太)のもとで“闇歌舞伎”が上演されていた。おきたや弾兵衛の妻おゆみ(羽野晶紀)も、裏華御前(うらはなごぜん)(おきた)や黒爛太夫(こくらんたゆう)(おゆみ)と名乗り、闇歌舞伎の舞台に立っていたのだ。ことの次第を面白がった天外の手助けもあり、お破は闇歌舞伎への出演を弾兵衛に直訴する。一方、忠邦の部下で芝居を憎む堅物、若年寄・藤川采女(ふじかわうねめ/向井理/二役)は乱れた風紀を正すため、江戸歌舞伎の一掃を画策。弾圧により一度はくじけ、芝居を捨てそうになる闇歌舞伎と橘川座の面々。だが、それでも胸の奥、消えることなき情熱が、お上に逆らい芝居者の意地を見せんと前代未聞、天下御免の大歌舞伎へと一同を駆り立てる!演目はご存じ!『忠臣蔵』!!さァさァさァ!お集まりの御見物衆。命を懸けたこの芝居、最後までとくとご覧(ろう)じろ!!
-弾兵衛-

闇の世界で無宿人たちをまとめ、
闇歌舞伎の上演を取り仕切る無宿頭。
劇団☆新感線45周年公演の本作。
実に31年ぶりに劇団員が勢揃いされますね。
羽野(羽野晶紀)や、じゅん(橋本じゅん)、さとし(橋本さとし)は、時々劇団☆新感線に出演していたものの、そういうときに限ってオイラが出ていなかったんです。全員で集まるのは久しぶりでしたが、顔合わせのときにみんながキャピキャピと楽しそうにしていたので「よかった、よかった」と、ひと安心しました。なかでも久しぶりの出演になる羽野やじゅんは、いまの新感線を見て「何このシステマティックな劇団!」と驚いてます。提案すれば小道具がすぐに出てきたり、練習時間がなくてもアクションやダンスにすぐに対応できたりと、スタッフやアンサンブルの力が進化しているんです。
劇団員の皆さんが多方面で活躍されている間に、
劇団も進化を遂げてこられたのですね。
皆さんの空気感はお変わりありませんでしたか?
オイラたちのノリは大学生の頃からまったく変わっていないですね。きっとどこへ行っても変わらないと思います。もちろん、昔は自分たちで行っていた大道具や照明などのテクニカルな部分を、いまは腕の良いプロの方がやってくれているので、クオリティやスケール面は変わっているのですが、やっていることは一貫して「いのうえ(主宰:いのうえひでのり)の思いつきを具体化する」ということだけ。みんな歳を食って体力も落ちてきているけれど、“面白がりかた”は20代の頃からずっと変わらないんじゃないかな。相変わらず下ネタ好きなやつばかりのチームだし、どんな破天荒な思いつきにも「そんなことをやったら怒られるよ!」なんて言うやつはいません。

劇団の規模が大きくなっていくことへの
プレッシャーはありますか?
それはありません。いま「面白い作品を大きな劇場でやって動員を伸ばそう」という意識はなくて。オイラたちが自己満な作品をやって、それを観たお客さんが大喜びしてくれたらそれで十分。お客さんが帰るときに笑ったことしか覚えていないくらい、「あ〜新感線面白かった!」と言ってもらえる演劇しかやりたくない(笑)。
学生演劇から始まった劇団☆新感線は
計り知れない演劇界の荒波を
乗り越えてこられたと思います。
ここまで長く続けてこられた理由は
何だと思われますか?
主宰のいのうえをはじめ、劇団員全員が同じ気持ちだと思うのですが、みんな最初はこんなに長く続ける気なんてなかった。それでも続けることができたのは、「面白かったなぁ」と思う作品はあれど「やりきった感」がまだないからじゃないかな。「もっと面白いことができるんじゃないか」「次はこんなことをやろうぜ」と言い合いながらやっていたら、いつの間にか45年も続いていました。
「面白いこと」を生み出し続けられる、
そのエネルギーはどこからきているのでしょうか?
いま残っているメンバーは、ただただ「くだらないこと」が大好きなんです。いのうえや中島(座付作家:中島かずき)は、泣ける話やカッコいい話も好きだから『いのうえ歌舞伎シリーズ』などのカッチョイイ作品もつくるのですが、本来ならば、劇団員全員『ネタもの』と呼ばれるような「くだらないこと」しかしたくない。歌って踊って戦うコントをつくりたいんです。それを実現するのに一番ふさわしいグループが劇団☆新感線だから、みんなやめられないんじゃないかな。とはいえ、「くだらないこと」をやり続けるためには動員も必要なので、時々カッチョイイ俳優を呼んで、カッチョイイ演劇をするんですよ。仕方なくね(笑)。

劇団☆新感線に呼ばれた若手俳優たちが
出演をきっかけに舞台の魅力に目覚めた、
という話も耳にします。
今回もお馴染みとも言える3人が客演として
出演されますが、いかがですか?
たしかに、この間『バサラオ』に出てくれた斗真(生田斗真)なんかは、劇団☆新感線初出演が17歳のときでしたから。とはいえ、オイラは若手たちに対して「舞台の魅力を広めたい!」といった大きな志があるわけではなく、「また出たいと思ってくれたらいいな」「嫌いにならないでくれたらいいな」くらいの気持ち。今回出演してくれる3人(小池栄子、早乙女太一、向井理)は、新感線を好きでいてくれて、新感線のやり方をわかってくれているので、ストレスなく稽古できています。劇団員がふざけ出すことも知ってくれているしね。稽古はまだ始まったばかりですが(取材は7月)、これからどんどん肉付けしていって、楽曲やダンス、立ち回りがついていくのが楽しみです。きっとまた、おふざけ合戦になると思います(笑)。
本作は『忠臣蔵』と名前がつきつつ、
あの有名な『忠臣蔵』の物語ではなく、
『忠臣蔵』を演じようとする人々の
物語だと伺いました。
そうなんです。だから『忠臣蔵』を観たいと思っている方々には、早めに諦めていただければと思います(笑)。ただ、『忠臣蔵』の物語を下敷きにしているので、登場人物やストーリーを予習してきていただけたらより楽しんでいただけるかな。きっと「おかるがここで出てくるんだ!」「吉良上野介、そんな歌を歌うんだ!」など、『忠臣蔵』を知っているからこその面白さを感じられると思います。いまの時代は簡単にあらすじや概要を調べられると思うので、主なストーリーと登場人物だけでも知っておいていただけると嬉しいです。
歌舞伎も上演する新橋演舞場で
『忠臣蔵』の物語をやることも、
面白みがありますね。
今回演じられる、
“闇歌舞伎を取り仕切る無宿頭の弾兵衛”は
どのように演じようと考えられていますか?
劇中では弾兵衛も役者をやっていて、座長のくせに自分に似たキャラクターを演じたがるんです。劇中劇の役が弾兵衛とまったく違う性格だったら二役やると考えればいいのだけれど、弾兵衛が演じる役のキャラクターがほとんど弾兵衛だから、演じ分けが難しい。本人は乱暴なのに、演じる役は泣き虫、とかならやりやすいのに…(泣)!いまは所作の先生とも相談しながら、普段の弾兵衛のダラダラした感じと、歌舞伎役者の所作の違いとを演じ分けようと企んでいます。

以前のインタビューで
「演劇が一番嘘をつきやすい」と
仰っていたことが印象に残っています。
今回のあらすじにも『嘘を真に変える芝居の力』
というワードが登場していますね。
コレ、まったく意味が違うんです。この脚本でいう『嘘を真に変える力』は、“どれだけ観客にモノを信じ込ませられるかが芝居の力だ“という意味。でも、オイラが言っている『演劇が一番嘘をつきやすい』というのは、“やり逃げができる”ということなんです。つまり、「こんにちは、私はインド人です」と言えばインド人になれるし、「広い海だ」と言えばそこが広い海になる、 “言ったもん勝ちの世界だ”ということ。それに対して今回のテーマは、“嘘を真に変えられるのが役者の力だ”なので、「違う、違う!」と思いながら脚本を読んでいました(笑)。
なるほど。
演劇上の〈嘘〉の感覚の違いが面白いです。
劇団☆新感線といえば時事ネタなどを取り入れた
ギャグも楽しみの一つですが、
今回はセルフパロディや、オマージュが
一層盛りだくさんだと伺いました。
そうなんです。今回は新感線のセルフパロディもあれば、歌舞伎や、「『忠臣蔵』関係ねぇじゃん!」と言いたくなるようなミュージカルやアニメなどのオマージュも登場します。昭和から平成にかけてのネタがたくさん出てくるので、ぜひ楽しんでいただければ。製作発表会見では「もっと上演時間を短くできれば…」と言ってましたが、ネタが増えていって伸びることが多いんです(笑)。みんな笑いに貪欲なんですよ。こちとら短くしたいのに(笑)。

以前お話しをお伺いした際に、
これからの演劇界を担う若者へのメッセージとして
「もっと破天荒なことをしてほしい」とも
伝えられていました。
2年経ったいま、その想いに変化はありますか?
相変わらず、いまの演劇は静かでおとなしい印象があります。どんなに内容が面白くても、思わず「ひっでぇなコレ!」とツッコみたくなるような〈破天荒〉な作品はあまり見かけない。小劇場なんて、もっと何をやったっていい場所のはずなんだけど。おとなしくて“フツーに面白いもの”ではなくて、「バッカじゃないの!」と思われるくらいの〈破天荒〉さが欲しいんですよ。たとえば、以前話しした“若手俳優による下ネタミュージカル”の発想も、それを観た若手たちに「こんなことしていいんだ!」と思ってもらえたら嬉しい、という啓蒙の気持ちがあって。劇団☆新感線の演劇は明るくて前向きなものがほとんどだけれど、オイラがプロデュースしたいのは、もう少しダークでどこか気持ちの悪い作品。観ている最中はゲラゲラ笑えて、観終わったあとは少しどんよりするような演劇を上演して、「劇場では何をやってもいいんだ!」と感じてもらえたらいいな、と思います。コンプラとかハラスメントとかいろいろ言われる社会ではありますが、舞台の上では「そんなの知らねえよ!」とやり逃げしちゃっていいのに…と、常々考えていますね。
Dear LANDOER読者
劇団☆新感線 
『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』
From 古田新太
劇団☆新感線を昔から観ている方には、クスクス笑っていただけるようなセルフパロディがたくさん散りばめられています。それに加えて『忠臣蔵』も予習してきていただけると、より一層楽しんでもらえるはず。もちろん、初めて新感線を観に来る方にも笑っていただけるような、ベタでくだらない笑いもたくさんあるので、歌や踊り、パロディの数々を楽しんでいただけたら嬉しいです。たくさん笑って、帰り道で「あ〜面白かった!」と思っていただける演劇になっていると思います。ぜひ楽しみに観にきてください!


2025年劇団☆新感線45周年興行・秋冬公演 
チャンピオンまつり いのうえ歌舞伎 
『爆烈忠臣蔵~桜吹雪THUNDERSTRUCK』
新橋演舞場(東京):2025年11月9日(日)〜12月26日(金)
作:中島かずき 演出:いのうえひでのり
出演:古田新太 橋本じゅん 高田聖子
   粟根まこと 羽野晶紀 橋本さとし
   小池栄子 / 早乙女太一 / 向井理 ほか
Staff Credit
インタビュー:満斗りょう
記事:Suzu、満斗りょう
ページデザイン:Mo.et
											


                    