【監督・品川ヒロシ × 主演・倉悠貴】映画『OUT』「負けたくない」その〈ライバル心〉が芝居のエッセンスになる品川組が〝本気の青春〟を送った夏の思い出

品川ヒロシ × 倉悠貴

映画『OUT』
「負けたくない」
その〈ライバル心〉が芝居のエッセンスになる
品川組が〝本気の青春〟を送った夏の思い出

品川監督が描いてきた「OUTな世界に生きるハミ出し者たち」は、みんなどこか愛くるしい。それはきっと監督自身に宿る〝ヤンキー〟への愛情が、作品にたっぷりと浸透しているからだろう。遠慮のない拳と拳の交わり、魂のぶつかり合いを通して仲を深める彼らの姿は、私たちに本物の〈絆〉とは何かを想起させる。「嫌われないように」とか「好かれたい」とか、そんなことはどうでもいい。大切だから本音で対峙して、本気で分かち合おうとする。誰よりもその尊さを知っているのは「大切な仲間や場所を守りたい」そんな優しさに溢れた、熱いハートをもつ彼らなのかもしれない。

映画『OUT』

映画『OUT』

『ドロップ』の品川ヒロシ監督最新作

累計発行部数650 万部を突破するヤンキー漫画『OUT』(秋田書店「ヤングチャンピオン・コミックス」刊)が待望の実写映画化!監督・脚本は『ドロップ』で大ヒットを打ち出した品川ヒロシ。原作は、品川ヒロシの中学からの友人・井口達也の青年時代を詰め込んだ実録物語。“狛江の狂犬”と恐れられた伝説の超不良・井口達也が、少年院から出所した。地元から遠く離れた叔父叔母の元、焼肉店・三塁で働きながらの生活を始めるが、保護観察中の達也は、次喧嘩をすれば一発アウトだ。そんな彼の前に現れたのは、暴走族「斬人キリヒト」副総長の安倍 要。この出会いが達也の壮絶な更生生活の始まりだった。暴走族の抗争、新しい仲間・家族との出会い、守るべきものができた達也の進む道は── 。

映画『OUT』で描かれている、
これまでにはない新たな「井口達也」像

品川ヒロシ監督(以下、品川監督):『ドロップ』の映画版では水嶋ヒロくん、ドラマ版では板垣瑞生くんが井口達也を演じていて、これまでの達也といえば腹が立ったらすぐに人を殴るような気性の荒いタイプでした。ただ、『ドロップ』の後日談にあたる『OUT』で描いている達也は少し印象が違っていて。周囲の人々とのふれあいのなかで心の痛みを覚えていったり、人の感情を繊細に受け取ったり…そんな今回の達也のセンシティブさが、倉とかなりマッチしていたと思います。

倉悠貴(以下、倉):ヤンキーや不良にあまり縁がない人生をこれまで送ってきたので、まさか自分にこんな役が巡ってくるとは思ってもいませんでした。とにかく意外だったというか…。

品川監督:でも倉はね、最初から生意気にも“雰囲気”を出してきて(笑)。

倉:えっ…!?出しているつもりはなかったです…(笑)。

品川監督:倉自身は決して生意気ではないんだけど、独特の雰囲気を最初から纏っていたんだよね。そこが良いなあと思いました。

品川ヒロシ × 倉悠貴

伝説のヤンキーを作り上げるうえで
〈核〉になったものとは

品川監督:撮影に向けて、とにかく身体作りは徹底させました。クランクイン前からジムに連れて行ってトレーニングをさせたり、現場でも腕立て伏せをさせたり。

倉:ずっと悲鳴を上げながらやっていました(笑)。

品川監督:アクションシーンはもうみんなヘトヘトで。撮影の終わり際は、演技ではなく、みんなリアルに疲れていましたね(笑)。

倉:脚、フラッフラでした(笑)。

品川監督:アクションシーンの最後のほうはみんな髪も服もボロボロなのですが、メイクや衣装でそうなっているのではなく、撮影のなかで本当にボロボロになったものなんです。役者たちに大変なことをさせているな…とは、自分でも思いました。

品川ヒロシ

汗まみれ・泥まみれの大乱闘
まるで部活のような“青春”がそこに

品川監督:乱闘シーンの撮影はとにかくタイトでした。限られた時間のなかで、役者たちは手や足の複雑な動き覚えていかないとならなくて。アクションは、単にセリフを頭に入れるのとはまた別物なんです。

倉:「全然違う」と現場でよく言われていました(笑)。

品川監督:セリフのNGはほぼなかったのですが、アクションに関しては、動きを一通り覚えたうえでもう1段階詰めていくような形で進めていったので大変だったと思います。手数も多く、そのうえ僕の指示がとにかく細かいので…(笑)。でも、結局それもひっくるめて楽しかったよな?

倉:はい、楽しかったです!

品川監督:激しいアクションは若い時にしかできないですし、みんなで汗をかいて身体を動かして…としていると、学生時代の部活のような雰囲気になるんです。「全国大会に行くぞ!」みたいな熱いノリがヤンキー映画にはあって、その空気感を通して役者たちも自然と仲良くなっていったと思います。『OUT』の撮影現場がまるでひとつの“青春時代”のように感じられたんじゃないかな、と。僕自身も、若い役者たちと一緒に泥まみれになりながら転げ回りました。僕だけ私服なんですけどね(笑)。

倉:品川さんはいとも簡単に「こういう風にやるんだよ」とアクションの見本を見せてくれるんですけど、いざ自分がやろうとするとすごく難しくて…。

品川監督:マットすら引かないときもありましたね。マットなしで僕が先に転がっちゃえば、役者たちも同じようにやらざるを得ないという(笑)。

LANDOER:まんまと監督の思惑通りに…?

倉:最初から最後まで、品川さんの手のひらの上で転がされていました(笑)

品川監督:撮影自体はとにかくキツいし、しんどいし、汗もかくし…それでもし現場までピリついていたら、身体がもたないと思うんです。だからこそ、楽しい雰囲気づくりは意識していました。

映画『OUT』

ヤンキーに限ったことではない、
誰しもが持つ「負けたくない」という闘いのハート

品川監督:僕、案外ヤンキーって自分たちとそう遠くない存在だと思っているんです。例えば倉だったら芝居の世界で、『OUT』の他のキャスト(与田祐希(乃木坂46))(與那城奨・大平祥生・金城碧海(JO1))だったら音楽やアイドルの世界でそれぞれが日々闘い続けています。仲間とどんなに仲が良くても、「こいつには負けたくない」とか「自分のほうが上手い」という気持ちは必ず持っているものだと思うんですよね。大人だからストレートに口に出すことは少ないかもしれないけれど。ヤンキーはそれをそのまま「俺のほうが強い!」と、相手にぶつけているだけ。仲良しこよしの馴れ合いだけじゃなくて、ライバル心をもって臨むことを現場でも役者たちに伝えていました。

倉:現場で、みんな熱くたぎっていましたね。

品川監督:『OUT』の現場だと「自分のアクションシーンをより見栄えよくさせたい」とみんなが考えていたと思います。それぞれがライバル心を燃やしてモチベーションを維持していたからこそ、芽生えた絆もあるはずです。

身体も心もヤンキーに浸かるなかで

倉:『OUT』のキャストは、割と元々尖っているようなタイプが集まっていると思います。

品川監督:ヤンキーではないけれど、強気というかね。ストイックな人間が多かった。

倉:多分、僕が一番弱気でヤンキーらしくなかったんじゃないかな、と…(笑)。

品川監督:ボソボソしゃべりがちで、「できないよぅ…」とか言ったりね(笑)。

倉:ただ、同世代の素晴らしい俳優の方々とお芝居をさせていただくなかで、もちろん「負けたくない」という気持ちは持ち続けていましたし、感化もされました。品川さんがヤンキーやアクションに関する造詣を深くお持ちだったこと、そして何より『井口達也』という実在するご友人をとことん知り尽くされていたおかげで、リアリティのある芝居ができたと思っています。自分なりの井口達也は全部出し切れたんじゃないかな、と。キャラクターに対する愛着も湧きました

倉悠貴

かけたお金や時間は観客には関係ない
〈熱量〉で“勝ち”を掴みに行く

品川監督:クライマックスシーンの乱闘は2日で撮ったのですが、本当は4日くらい欲しかったんです。ボリューム的にも本来はそれくらいの日数を要するはずでしたし。おそらく他のヤンキー映画はそのくらいの時間をかけて撮っているんじゃないかと思います。とはいえ、映画を観るお客さんからしたら、予算や撮影期間は何ら関係のないことじゃないですか。「自分たちは、たったこれだけのお金と時間で撮ったんだよ!」と話したところで「すごいね!」と称賛されるわけでもないので。…といったことは、現場でもみんなに話したよな?

倉:はい、話されてましたね。

品川監督:お客さんにとっては、200億円かけて撮っている映画も『OUT』も、鑑賞料金自体は同じ。だったらもう自分たちにできることは、限られた予算や時間のなかでひたすら練習したり、ひたすら汗をかいたりすることだけ。他のどんな映画にも勝ちにいくつもりで撮って、高い〈熱量〉を保つことを意識していました

品川ヒロシ × 倉悠貴

Dear LANDOER読者
映画『OUT』

From 監督・品川ヒロシ

最近はさまざまな場面でコンプライアンス的な視点に重きが置かれていますが、その分どこか窮屈な雰囲気も感じるんです。時代に合わせてゆくあまり、本当に言いたいことを言えなくなってしまっているな、と。でも、映画のなかでくらいは「うるせえ!」と思いっ切り叫んだっていいんじゃないか、と僕は思っていて。そもそもエンタメには、“現実にはない世界を作り上げていく”という側面もありますしね。だからこそ『OUT』では、窮屈さのない、生きた感情のぶつかり合いを観ていただきたいと思います。

From 井口達也役・倉悠貴

僕にとって、『OUT』の現場はまさに“ひと夏の青春”でした。きっと10年後にこの作品を観返しても、楽しさは色褪せないと思います。約2時間の映画ですが、体感だと1時間に感じるほどの疾走感を味わっていただけるはず。キャストやスタッフ全員の力をぎゅっと込めて作った映画なので、自信を持ってお届けしたいです!

品川ヒロシ

品川ヒロシ

しながわ ひろし

4月26日生まれ。
高鳴りを“綺麗ごと”で消化せず、
〈好き〉の世界を裸足で駆けまわり遊び尽くすDOER

倉悠貴

倉悠貴

くら ゆうき

12月19日生まれ。
ありのままの自分をさらけ出し、繊細さを愛嬌に変えて、
対する者を〈悠然〉と惹きこんでゆくDOER

映画『OUT』
11月17日(金)全国ロードショー

出演:倉悠貴 醍醐虎太郎
   与田祐希(乃木坂46)水上恒司
   與那城奨(JO1)大平祥生(JO1)
   金城碧海(JO1)
   小柳心 久遠親 山崎竜太郎
   宮澤佑 長田拓郎 仲野温
   じろう(シソンヌ)大悟(千鳥)
   庄司智春(品川庄司)/
   渡辺満里奈 杉本哲太
監督・脚本:品川ヒロシ
原作:井口達也 / みずたまこと『OUT』
(秋田書店『ヤングチャンピオン・コミックス』刊)
音楽:武史(山嵐 / The Ravens)
主題歌:「HIDEOUT」JO1
配給:KADOKAWA

映画『OUT』
©️2023『OUT』製作委員会

Staff Credit
カメラマン:友野 雄
ヘアメイク:竹中真奈美(品川ヒロシ)、
      NOBUKIYO(倉悠貴)
スタイリスト:伊藤省吾(sitor)(倉悠貴)
インタビュー・記事:満斗りょう
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