誰かを支え、誰かに支えられながら
生きている私たちへ

-Introduction-
企画段階から参加した安田章大は、山野海によるオリジナル脚本に深く心を動かされ、大貴役に真摯に向き合った。専門家のレクチャーを重ね、丁寧に役を掘り下げたその姿勢は、作品の核となる“人を想うこと”の真実味を支えている。一方、希を演じるのんも、実際に障がいのあるきょうだいを持つカウンセラーから話を聞き、役に息を吹き込んだ。監督は『毎日かあさん』、『マエストロ!』などで温かな人間ドラマを紡いできた小林聖太郎。大阪・堺を舞台に、ささやかな日常の中に潜む“支えること/支えられること”の揺らぎを、やわらかく、確かな眼差しで描き出す。そして、物語を締めくくるのは、安田章大が推薦した浮(ぶい)による書き下ろしの主題歌「話そう」。安田章大もコーラスに参加し、これからも続いていく日々に余韻を残す。忘れがちな思いやり、気づかぬうちに交わしている優しさ。本作は、そんな日常の奥にある小さな光をそっとすくい上げる。胸が温かくなる今年最高の感動作。
-Story-
⾃閉スペクトラム症の⼤貴と、兄を幼い頃から⽀えてきた妹の希。兄妹は幼い頃に⺟親を亡くし、ネグレクト気味の父親から距離を置き、二人で懸命に⽣きてきた。⼤貴はほとんど会話をせず表情もあまり変わらないように見える。グループホームから自立を目指して、一人暮らしを始めた大貴は独⾃の規則を持っている。全てを平⾏と垂直に並べるほど几帳面でこだわりが強く、机に並ぶ⾷器も丁寧に揃える。週に一度の希との⾷事の時間は決まって19:00。1分でも過ぎると落ち着かなくなる。カウンセラーの仕事をしている希は恋⼈からプロポーズを受け、⼀抹の不安を抱えながら兄と共に、婚約者の両親に会いに東京へ⾏くことに・・・。
伊藤さとり’s voice

世の中には社会的マイノリティと言われる人が居る。その言葉は、社会の誰かが決めた「普通」の暮らしの設計に合わないことでマイノリティになってしまった人達のことを指している。だが彼ら彼女達のことを自分達はどれだけ知っているのだろうか。そもそも「普通」とは何なのか。そんなことに疑問を持っていたであろう安田章大が企画に参加した映画『平行と垂直』が8月28日に公開を迎える。オリジナル脚本を書き上げたのは女優であり劇団ふくふくやを主催する山野海。彼女の友人のご子息がモデルとなった本作は、人間愛と痛みと許しが詰まった現代社会に生きるすべての人に向けられた一歩前に踏み出す勇気の物語だった。
安田章大が演じるのは自閉スペクトラム症の大貴。物語の舞台を大阪にしたことから会話が柔らかく人と人との距離が近いので、映画全体がアットホームだ。彼の帰り道となる商店街では店主達から声をかけられて大貴が買い物を済ませる姿が映し出されていく。真っ直ぐ進んで直角に曲がる動作を繰り返して家に帰ることが日課の大貴は、仕事場では年配の先輩に見守られ、日常ではカウンセラーとして働く妹の希と連絡を取りながら、妹との週一回の食事会を楽しみにひとり暮らしをしている。一見すると自立しているように見えるのだが、突然の出来事でパニックを起こすこともあったり、説明が出来ずに誤解されてしまったりなど、誰かの手助けを必要とすることも多々ある。ただし大貴を主人公にしたことで、どんな理由で彼の心の揺れが激しくなったのかを観客も自然と理解出来るのだ。
人にとっては些細なこと、でも自分にとっては大事件が日常に起こる大貴。そんな彼を真摯に見つめて丁寧に役作りをしたことが安田章大の細やかな演技から伺える。指の動き、目の動き、背中の丸め方ひとつに神経が行き届いた演技は、当事者を思いやっているからこそ完成した人物像であり、そこに優しさが浮き上がる表情をほんのり漂わせているのが愛おしいのでずっと見ていたくなる。妹の希を演じたのんも彼女の真っ直ぐさが役にはまっており、嘘がつけなくて心配性で情熱的で強さと弱さが滲み出た人間臭い演技から、あるシーンではもらい泣きをしてしまった。きっと多くの観客は希に感情移入しながらこの状況を見守っていくので、見終わった時には少し考え方が変わっているかもしれない。それだけ重要な役なのだ。
それだけでなく、子役達の演技がとにかく素晴らしいのだ。大貴と同じ目線で語らう5歳の少女の長台詞は圧巻だ。他にも幼少期の大貴と希の姿がとても無邪気であり、本物の兄妹にさえ見えてくる。そんな姿をスクリーン越しに見つめていたらある考えが浮かんだ。映画の子ども達のように大人も純粋な心で真っ直ぐに相手を見つめて関われたら、様々な状況からマイノリティと呼ばれる人達も安心して暮らせるのかもしれない。そんな私の思いを知っているかのように、大人になっても努力次第で相手を真っ直ぐに見つめることが出来るんだよと、映画も語っていた。
映画『平行と垂直』
8月28日(金)全国公開
出演:安田章大 のん
伊島空 高山トモヒロ 谷村美月
福田転球 芦川誠 早織 久保田磨希
河野咲良 髙田幸季 武藤凪
林英世/神野三鈴 菅原大吉
監督:小林聖太郎 原案・脚本:山野海
音楽:富貴晴美
主題歌:浮 with 安田章大「話そう」
企画:安田章大 企画プロデュース:佐藤現
配給:東映ビデオ



