たくさん笑って、ツッコミたい貴方へ

映画『ババンババンバンバンパイア』

たくさん笑って、ツッコミたい貴方へ

映画『ババンババンバンバンパイア』
©2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会
©奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022

-Story-

銭湯で働く森蘭丸(吉沢亮)、その正体は 450 歳のバンパイア。至高の味わいである「18 歳童貞の血」を求め、銭湯のひとり息子である 15 歳の李仁(板垣李光人)の成長と純潔をそばで見守る日々だったが、ある日李仁がクラスメイトの葵(原菜乃華)に一目惚れ!恋が成就してしまえば、それすなわち童貞喪失の危機!突如訪れた絶体絶命のピンチに「恋をさせてはなるものか!」と蘭丸による決死の童貞喪失阻止作戦が幕を開ける!ところが、そう意気込んで葵の家を訪ねるも、バンパイアオタクである葵から逆に恋心を抱かれてしまう蘭丸。さらには蘭丸の命を狙うバンパイアハンター・坂本(満島真之介)、葵の兄である脳筋番長・フランケン(関口メンディー)が次々登場、全員の勘違いとすれ違いにより、恋の矢印が大混線! そして、そんな蘭丸のもとへ因縁の相手である兄・長可(眞栄田郷敦)の影が忍び寄る――

伊藤さとり’s voice
伊藤さとり’s voice

本来映画館って赤の他人と感情を共有する面白さを味わう場所だと、昭和生まれの私は思っている。当時は、笑い声やらすすり泣く声は当たり前で、稀にチャンバラ映画で「行け〜!」だのとスクリーンのスターに声がけるオジ様の存在に驚いたこともあった。小学生だった私はそんな他人の感情に踊らされて「いい映画だったなぁ」と劇場を出たりして、後々、大人になって配信なんかでその映画を見ると「あれ?」と思う作品も多々あることに気づく。こうやって映画館で楽しみを味わった太客は「映画館で見る映画こそ映画だ」なんて言うが、間違いなく私もそっち系の面倒な映画の感想をああでもないこうでもないと書いて喋って生活費を稼ぐ人なのだ。これもまた絶滅危惧種と言えよう。

そんな私が、「映画館で上映が始まったら若い映画ファンが増えるだろうよ!」と密かに思っている映画が、吉沢亮がバンパイアになって極上の味わいと言われる「18歳童貞の血」を楽しみに、居候する家の15歳のひとり息子の童貞を死守しようと奮闘する『ババンババンバンバンパイア』だ。なんと馬鹿げたストーリーなこと。しかも守られるピュアボーイ李仁役は、原作者の奥嶋ひろまさがイメージして書いたという板垣李光人なんだからハマりすぎて、なお面白い。よく男子に「可愛い」という例えは失礼だと言われるが、この役は可愛くなければ成立しない。それにバンパイア役の森蘭丸は、黙っていたら『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』(1994年)のトム・クルーズとブラッド・ピットのような美形でカリスマ性を持っている配役でなければと勝手に妄想していた。だから吉沢亮が演じていることにも納得で、他のバンパイアに眞栄田郷敦というのも「いいじゃん」と偉そうにサムズアップしていた。ちなみに映画には『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』のポスターが、ある部屋に飾られているので、私の思い込みと製作陣の目論みは合致していると見る。

しかも映画に突然、歌唱シーンが入って来るわ、森蘭丸に至ってはいちいちリアクション芸みたいな反応をするわで、可笑しいのなんの。あり得ないシチュエーションだらけなので、その度に観客が心のなかでツッコミを入れる「間」を作っているのを考えると、やろうと思えば「応援上映」だって出来てしまう感情揺さぶり系の映画なのだ。だから試写室といえども声を出して笑ってしまった。そして周囲の関係者も同じく声を出して笑っていた。なんて楽しくて馬鹿馬鹿しい映画館体験なのだ。願わくば、小学生にも見てもらいたいと思ったが、「童貞」について周囲の大人がしっかり説明しないといけない案件だったと気づいてしまった。まぁ、教えるわよ、ちゃんと自分の子にも映画館で見て欲しいから。なんにせよ、笑える映画は人を元気にさせるし、人の笑い声が映画をさらに面白くさせるのだ。だからこの映画は、映画館で見ることをオススメする。笑い声に包まれたお陰で、幸せな気分で劇場を後にできるのだから。

映画『ババンババンバンバンパイア』
2025年7月4日(金)全国公開

出演:吉沢亮
   板垣李光人
   原菜乃華 関口メンディー / 満島真之介
   堤真一
   音尾琢真 映美くらら
   笹野高史
   眞栄田郷敦
原作:奥嶋ひろまさ『ババンババンバンバンパイア』
   (秋田書店「別冊少年チャンピオン」連載)
監督:浜崎慎治
脚本:松田裕子
製作幹事:松竹 テレビ朝日
製作:「ババンババンバンバンパイア」製作委員会
制作プロダクション:ダーウィン
配給:松竹

映画『ババンババンバンバンパイア』
©2025「ババンババンバンバンパイア」製作委員会
©奥嶋ひろまさ(秋田書店)2022