

PAモニターエンジニア
松﨑浩司

葛西工業高校 建築科卒
東邦学園 音響科卒
アーティストが聴く音を調整する
モニターエンジニアの仕事
ライブやコンサートなどでアーティストが聴く音を調整・ミキシングする、「モニターエンジニア」という仕事をしています。
アーティストの方が耳につけている「イヤーモニター」や足元に置かれた「モニタースピーカー」を見たことのある方もいるかもしれません。実は、あそこから流れている音はお客さまが聴いている音とは異なり、アーティストが演奏やパフォーマンスをしやすくするために必要な音が流れているんです。必要な音の内容はアーティストによって異なるため、ボーカルの音、ギターの音、ドラムの音、リズムを刻むクリック音など、一人ひとりに合わせて音を調整しています。
僕たちは本番中もステージサイドにあるモニターPAブースからアーティストと意思疎通をとり、アーティストの希望に合わせてそれぞれの音量や音のバランスを整えながら、パフォーマンスを支えています。

モニターエンジニアの仕事の流れ
ライブがある日は、まずトラックから機材を降ろす搬入作業からスタートします。その後、客席側のスピーカーの仕込みから始め、ミキシングコンソール等の機材、ステージ周辺のセッティング、ケーブルやマイク、アーティスト側に置くモニタースピーカーの仕込みをしていきます。
モニタースピーカーの環境もアーティスト次第です。自身の前や横に置く人もいれば、イヤーモニターだけを使用し、スピーカーは使わないという方も。
アーティストの方が会場に入られたら、チューニングを行い、バンドメンバーとのサウンドチェックへ。その後、ボーカルも含めた全員でリハーサルを実施します。リハーサルでは、アーティストの方の要望に合わせて、イヤーモニターやモニタースピーカーから流れる音量やバランスを細かく調整。もちろん本番中も、状況に応じて音を調整しながらサポートを続けています。
また、ライブがなく会社にいる日は、ライブに向けた準備や機材のメンテナンスを行っています。

モニターエンジニアになるには
若い方なら、専門学校に進むのが一番の近道だと思います。専門学校なら技術を学べるだけでなく、会社やお仕事とのつながりを作りやすいためです。
一方で、僕の同級生のなかには、最初からフリーで音響の仕事に就いた人も。学生時代からライブハウスなどでアルバイトをして、ライブ業界とのつながりを築くことで仕事に就けることもあると思います。
松﨑さんが
音響の仕事に就いたきっかけ
高校生のときに軽音楽部に所属していたのですが、当時の顧問の先生がかなりの“機材オタク”で。その影響で、音響機材に興味をもつようになりました。当時はほかにやりたいこともなかったので、専門学校へ入学を決めて。専門学校へ入学してから本当は別の会社へ入社しようと考えていたのですが、たまたま研修でヒビノへ行く機会があり、ご縁があってそのまま入社しました。そこから現在まで、この仕事に携わっています。
そもそも僕が音響機材に興味をもったきっかけは、「フェーダー」と呼ばれる音量を上げ下げする装置。「あのスライダーを動かしてみたい」という、単純な動機でしたね(笑)。

仕事をしていて
やりがいを感じる瞬間と、
ドキッとする瞬間
お客さまやアーティストの方が楽しそうにしていて、会場全体が盛り上がり一体感が生まれている瞬間にやりがいを感じます。アーティストともお客さまとも近い距離でライブを支えている、モニターエンジニアだからこその景色を見られますね。
一方で、音が出ないなどのトラブルが発生したときは、ドキッとしますね。モニターエンジニアである自分のもとに音が届いていないということは、アーティストの方にも音が聴こえていないはずですから。仕事に慣れてくるとトラブルの対処方法も分かるようになりますが、初めてその状況に直面したときは、きっとパニックになってしまうと思います。
スケジュールによっては
大変さを感じることも
スケジュールが忙しい時期には大変さを感じます。さまざまなライブを担当しているため、ときには本番の日程が重なってしまい、会社の方に代わりに引き継ぐことも。
逆に丁度よく本番が重ならず、何日も連続で現場に入ることもあります。最大で何日連続だったかは……考えないようにしていますね(笑)。

松﨑さんの好きな業務と苦手な業務
自分のやるべき業務がすべて終わって時間に余裕があるときに、技術課へ行ってケーブル作りをするのが好きです。「何メートルのケーブルを何本」というように必要な長さや本数に応じてひたすら切り出す作業をしているときは、無心になれるんですよ。
一方であまり好きではないのは、会社で機材を組み、シミュレーションを行う作業。あらかじめデジタル上で作成した個々の音量設定などのデータを機材に打ち込んでいくのですが、やはり現場での作業とは違ってデスクワークのような作業になるので、あまり自分に合っていない気がします(笑)。

この仕事に慣れるまでに
かかる時間は?
きっと2〜3年経つと、仕事の楽しさがより分かってくると思います。
音響の仕事に就いたら、まず「ステージマン」からスタートすることが多いです。ステージマンは、マイクを立てたり、ケーブルを繋いだり、ステージ上のスピーカーを仕込んだり。本番中は、アーティスト本人のマイクケアやサポートも行います。
その仕事を2〜3年ほど経験すると、機材を操作する「モニター」を担当するチャンスがくるんです。その機会を自分のものにできれば、さらに学びながらステップアップしていくことができます。個人的には、機材を触る機会がくる前にやめてしまうのはもったいないな、と思いますね。
通常は、ステージマンからモニターエンジニアへと進み、さらにお客さまが聴く音を調整する「ハウス」へとステップアップして行きます。
明るい人が多い音響の仕事
経験を積みながら、
コミュニケーションも学んで
この仕事には、やはり明るい方が多いと思います。音楽が好きで入っている方が多いので、自然と陽気な方が集まるのかもしれません。あんまりうるさすぎても困りますけれどね(笑)。
現場ではコミュニケーションが大切になりますが、長く仕事に関わっていると、指示を汲み取る力や現場で使われる言葉を理解する力も少しずつついてきます。僕も仕事を始めた頃は「ドンカマあげて!」と指示され、「ドンカマって何⁉︎」と困惑したことも。ドンカマ(ドンカマチック)とは、クリック音を流すメトロノームのようなリズムマシンの製品名で、昔はクリック音全般をドンカマと呼ばれていたそうなんです。お仕事をご一緒する方の年齢が幅広いからこそ言葉の違いを感じる場面もありますね。最初は分からない言葉ばかりでしたが、仕事をするうちに徐々に理解できるようになっていきました。

松﨑さんが考える、
学生のうちに
やっておいた方がいいこと
音響の仕事では電気の知識が必要になるため、電気の勉強をしておくといいと思います。電池は何ボルトなのか、オームや直列接続・並列接続といった基礎知識を。たとえばスピーカーを直列に繋げるか並列に繋げるかでも抵抗が変わり、音の鳴り方も変わってきたりするんですよ。
音楽に関しては、僕は学生時代からジャンルを問わずいろいろな音楽を聴いていました。周りにも幅広いジャンルを聴いている人が多かったので、自然と僕もさまざまな音楽に触れていましたね。その経験は、やはり仕事に活きてくることがあります。
松﨑さんから
働くことに向き合う読者の皆さんへ
若いうちにたくさん苦労しておいた方がいいよ、と伝えたいですね。僕自身、若い頃に先輩方から厳しく言われてきたことが、いまの自分の糧になっている実感があります。
音響の仕事も、専門学校を卒業してすぐ現場に入る方が多いですが、社会に出た時点で、お客さまからお金をいただいている「仕事」であることには変わりありません。責任をもって真剣に取り組む姿勢が、仕事をするうえで大切なことだと思います。

松﨑さんの公演のある一日
09:00
会場入り、搬入
10:00
スピーカー等の仕込み
12:30
お昼休憩
13:00
サウンドチェック、リハーサル
18:30
本番開始
21:00
本番終了、撤収開始
22:30
解散
会社にいる日は11時〜17時の勤務
取材協力:ヒビノ株式会社
公式HP
Staff Credit
編集:Asaka.T
インタビュー・記事:Suzu
ページ運用:Mo.et



