【成田凌×沢尻エリカ】映画『#拡散』誰しもが抱える〈正義〉と〈欲〉見たい世界だけを信じられる現代に生きる「私たち」を映し出す二人のスペシャル対談

成田凌×沢尻エリカ

【成田凌×沢尻エリカ】
映画『#拡散』
誰しもが抱える〈正義〉と〈欲〉
見たい世界だけを信じられる現代に生きる
「私たち」を映し出す二人のスペシャル対談

〝信じる〟ことは簡単だ。自分が信じたいものだけを信じていれば、心地の良い世界にいられる。けれどその渦中にいるときほど、人は自分が〝都合の良い世界の内側〟にいることを疑うことができない。自分の見ている世界を疑うことは、自分が立ってきた足場を失うことにもなり得るからだ。一方で、自分の見ている世界を誰かに肯定されたとき、それは途端に〈正義〉の顔をして、どこまでも拡がっていく。人の〈欲〉に踊らされ、悲劇のヒーローとして祭り上げられた主人公。彼は悪人でも、怪物でも、被害者でも加害者でもない。正義感や承認欲求に巣食われ、いつの間にか支配されてしまった──現代社会を生きる、私たち自身の姿なのかもしれない。

映画『#拡散』

映画『#拡散』
©2026 #VIRAL PRODUCTION COMMITTEE

「あの時、虚実あふれる情報に翻弄された男の物語」

コロナ禍を乗り越えてもなお、真偽不明な怪情報やフェイクニュースが世に溢れ、ネット上で瞬く間に拡散され、真実が覆い隠された時代。現代社会のカオスな実像を空恐ろしくなるほどのリアリティと圧巻のエネルギーで痛烈に描き切った、衝撃の社会派サスペンスが誕生した。地方の小さな町で静かに日々を積み重ねていた介護士・浅岡信治(成田凌)の人生は、妻・明希(山谷花純)がワクチン接種の翌日に突然この世を去ったことで、その慎ましい生活は音を立てて崩れ去る。「なぜ、彼女は死んだのか?」答えを求めて浅岡は、担当医・高野(淵上泰史)に対する抗議活動へと踏み出す。その姿が記者・福島美波(沢尻エリカ)の目に留まった瞬間、物語は加速する。地方の片隅で始まった小さな声は、メディアからSNSへ、リアルからネットへと火が付き、浅岡の意志とは裏腹に、彼はいつしか“反ワクチンの象徴”として祭り上げられていく。その渦中で浅岡自身もまた、世間の熱狂に呑み込まれ、やがて、かつての彼とはまるで別の人物へと変貌していく。

-Story-

富山県の小さな町で介護士として働く浅岡信治(成田凌)。ソロキャンプが趣味で寡黙な性格の彼は、派手好きでSNSでの動画配信やアイドルの推し活に夢中な妻・明希(山谷花純)との間に温度差を感じながらも、それなりに幸せな日々を送っていた。だが、2人のささやかな生活は、ある日を境に一変する。地域のクリニックでワクチンを摂取した翌日、明希が自宅で帰らぬ人となってしまったのだ。失意に暮れるなか、愛する妻が亡くなった原因はワクチンにあると考えた浅岡は、妻の遺影を抱えて担当医師・高野(淵上泰史)を激しく糾弾する。対する高野は「僕にできることがあったら遠慮なく仰ってください」と言うものの、自らの非を認めようとはしない。やりきれない思いは怒りへと変わり、浅岡は雨の日も風の日もクリニックの前に立ち、無言の抗議を続ける。そんな彼に目を付けたのは、とある事情で地方紙に異動となった記者・福島美波(沢尻エリカ)。上昇志向の強い彼女が「反ワクチンとかどうでもいい。泣ける記事になります」と上司の反対を押し切って世に出したその記事はネットを中心に大バズし、拡散に次ぐ拡散で彼は一躍時の人に。同僚の勧めでSNSのアカウントを開設した浅岡はあっという間に万超えのフォロワー数を誇るインフルエンサーとなり、“反ワクチンの象徴”として祭り上げられていく。“民意”を得たことでSNSに取りつかれ、高野クリニックの前でライブ配信を行うなど、バッシングを繰り返すなど、日ごとにエスカレートしていく浅岡。彼のシンパが過激な陰謀論者となって暗殺事件を起こしたことで狂騒はさらに過熱し、界隈で人気の“世直し系ユーチューバー”とのコラボによって浅岡は手の付けられない存在になっていく。福島による再三の忠告も無視し、「あっという間に仕上がりましたね」と嫌味を言われても、浅岡は止まらずに突き進んでいく。そんな彼の前に意外な人物が姿を現し、衝撃的な事実を告げるのだった……。狂気が蔓延する時代と社会に踊らされ続けた男が、混沌の果てに見た景色とは――?

浅岡信治役 成田凌
×
福島美波役 沢尻エリカ

浅岡信治役 成田凌
×
福島美波役 沢尻エリカ

LANDOER:SNSによって悲劇のヒーローとして祭り上げられた浅岡信治と、そんな彼を取材する地方紙の記者、福島美波。それぞれの役柄をどのように捉えて演じられましたか?

成田凌(以下、成田):浅岡は、人の〈欲〉によって形作られ、徐々に肥大していく存在。滑稽でありながらも、誰もがもつ承認欲求によって動かされている、決して恨みきれないキャラクターになればいいなと思っていました。作中で彼は、納得のいかない出来事に直面し、「声を上げたほうがいいですよ」と周囲に勧められたことをきっかけにSNSを始めます。最初はたくさんの人に味方してもらいながら、ポジティブな道を進んでいくんです。ただ、周囲の人の承認や善意が重なっていくうちに、〈欲〉によって次第にスケールが大きくなっていき、自分の意思を超えたところまで“浅岡の声”として扱われてしまうようになる。周囲や観客に「そんな状況に置かれたら、そりゃおかしくなるよな」と同情してもらえつつも、「なんか気持ち悪いな、この人」という違和感も常に残していきたいと考えていました。

沢尻エリカ(以下、沢尻):福島美波は、もともとは東京で、意識高くバリバリ仕事をしていた女性。「この人、もしかしたらデマに巻き込まれたことがあるのかもしれない。ズルい一面ももっていたのかもしれない」というバックボーンが窺える、少しクセのある役どころだと思っています。劇中で明示されない過去を抱えながら、浅岡と関わっていくうちに、人間の嫌な部分を目の当たりにするだけでなく、自分自身とも照らし合わせていくことになる。その過程で、人間の本質のようなものに触れ、少しずつ成長していく人物なのかな、と捉えていました。

成田凌×沢尻エリカ

映画に描かれるのは、真・偽ではない。
見たい情報だけを選べる“現代”にありふれた、
「その人なりの正義感」

LANDOER:民意に推されて芽生えた正義感が人を追い詰めてしまうことは、現実でも起こっているように思います。この「異質な正義感」に対して、作品を通してどのように考えましたか?

成田:実際にいまの社会にも、正義感や承認欲求が膨れあがって声が大きくなってしまう人はいるのかもしれませんが、最近はそういった人がいたとしても、世間が「いるよね、そういう人。」と少し距離を取れるようになってきているんじゃないかなと思います。ただ、そうした人は全体のほんの数パーセントだと世間もわかっている一方で、数が少ないからこそ大きな声となって強く耳に入ってきてしまうときがあるのも事実で。だからといって、声が大きくなってしまう人が“悪い”のかと言われたら、そうではないとも思うんです。この映画にもあるように、見たい情報だけを見て、信じたいものだけを信じられる世の中になった結果生まれた、その人なりの正義感なんですよね

LANDOER:この映画をご覧になる方には、“目に見える情報”ではなく、自分の声にも耳を傾けてもらえたら嬉しいですね。

映画『#拡散』
©2026 #VIRAL PRODUCTION COMMITTEE

成田:この映画は、何を肯定するでも否定するでもなく、「誰が被害者で、誰が加害者である」という描き方もしていないんです。どちらかにいるわけではなく、曖昧ななかでなんとなく生きているのは、僕たちも同じ。だからこそ、本作を観たときに「自分の中の触れられたくない感情」に触れられることもあるかもしれませんが、それも含めて、この作品をどう受け取るかを考えていただけたら嬉しいです。

LANDOER:沢尻さんはいかがでしょうか?

沢尻:正直、民意に押された正義感に人が追い詰められてしまう状況には、厳しさを感じます。一方で、ある意味その人にはその人なりの、正義感や承認欲求といった“尺度”が必要な部分もあるのだろうなと思いました。いろいろな意見があっていいとは感じつつ、やはり何かに偏ってしまうのは良くない。だからこそ、人の声に流されず、自分の中の尺度をしっかりともって生きていきたいと常に感じています。

映画『#拡散』
©2026 #VIRAL PRODUCTION COMMITTEE

コロナ禍を超えてなお続く、出口のない情報の氾濫。
社会の一員として、あるべき向き合い方とは?

LANDOER:「ワクチン」という、いわゆる“センシティブ”といわれる題材でしたが、演じるうえで気をつけたことや心がけたことはありましたか?

成田:あくまで映画でありフィクションですし、観ていただくとわかるのですが、焦点が当てられているのは全く別のところなので、あえてその部分は意識しすぎずに演じましたね。特別になにか配慮をするというより、暗闇の中をズンズンと突き進んでいく浅岡という人間を、ただ必死に生きることに集中していました。

沢尻:記者という役柄だったこともあり、どちらか一方に寄ることができない立場であることは常に意識していました。個人の意見を訴えるよりも、大きな組織のなかで、社会の一員として振る舞うべき存在なのだと考えさせられることが多かったです。美波を演じるにあたって「コロナ禍当時の自分はどうだっただろう」と振り返る過程で、立場によって見ている景色はきっと違っていたはずだと感じました。そうしたことを改めて考える、良いきっかけをくれた作品だったと思います。

成田凌×沢尻エリカ

成田:たしかに、新聞社の上司からどちらにも寄らない記事を書くよう指示されたシーンが印象的でしたよね。「ワクチンについて触れていいのは1行だけだ」と。

LANDOER:報道に「中立」が求められる象徴的なシーンでしたね。“正しさ“が保証できない、さまざまな情報が溢れる世の中ですが、お二人は溢れる情報をどのように見極めていますか?

成田: SNSを見ればいろいろな情報が出てきますが、新しい情報が出ては消えていって、正解とされるものも常に移り変わっている気がします。例えば体づくりや健康面で参考にするためにボディビルダーの方のものなど、SNSはよく見ているのですが、やっぱり自分が実際に目で見て感じたこととか、信頼している方の言葉をより信じていますね。

沢尻:私は、SNSなどでつい情報を追ってしまうタイプです。そのなかで「何が本当なんだろう?」と思うことも多々あります。ただ、それに対して熱中しすぎず、一歩距離を保つように心がけています。

成田凌

成田 凌

なりた りょう

11月22日生まれ。
ニュートラルな〈器〉と化して役を宿し、
人の内に潜む幾重もの奥行きを露わにするDOER

沢尻エリカ

沢尻エリカ

さわじり えりか

4月8日生まれ。
人がもつ“強さ”も“脆さ”も恵沢と捉え、
しなやかな意志を携えて表現に踏み出してゆくDOER

映画『#拡散』
2026年2月27日(金)
TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

出演:成田凌 沢尻エリカ
   淵上泰史 山谷花純 赤間麻里子
   船ヶ山哲 鈴木志音
   DAIKI MIOKO 高山孟久 ほか
原案・編集・監督:白金(KING BAI)
脚本:港 岳彦
配給:株式会社ブシロードムーブ

映画『#拡散』
©2026 #VIRAL PRODUCTION COMMITTEE

Item Credit
成田:セットアップ/¥33,000/ヴィンテージ/モンク
03-6407-8897
ニット/¥20,000/クレプスキュール/オーバーリバー
info@overriver.com
その他スタイリスト私物

Staff Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:宮本愛(yosine.)(成田)、
      冨沢ノボル(沢尻)
スタイリスト:カワセ136(afnormal)(成田)、
       亘つぐみ@TW(沢尻)
インタビュー・記事:満斗りょう
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