テレビスペシャル
『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』
「哀しい女性(ひと)」で終わらせない
〝若き日のおふさ〟に込めた、純真の想い
“物語”は、どんな場所へもどんな時代へも、どんな想いへも私たちを運んでいってくれる。画面いっぱいに広がる世界は、プロたちの努力の結晶。数ミリ単位の画角修正、わずかな光の調整、作品の設定にもとづいた衣装へのこだわり、そして役者たちが登場人物に吹き込む〈命〉。書ききれないほどの結晶を、私たちは作品を通して受け取っている。壮絶な人生を送ることとなる“若き日のおふさ”を生きた菊池さんが、彼女を演じるうえで「大切にしよう」と決意したこと。そこには、おふさへの愛情が込められた菊池さんの“芝居の結晶”が光っていました。きたる2024年、哀しくもたくましいひとりの女性の物語とともに、新たな鬼の物語が動き出します――
テレビスペシャル
『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』
―鬼、新時代。―
累計発行部数3,000万部を超える大ベストセラー時代小説を主演に松本幸四郎を迎え、最強のキャスト・ スタッフで新たに映像化!誰もが楽しめる王道の娯楽エンターテインメント作品“新たな鬼平”がここに 誕生!その待望の第一弾・テレビスペシャル「鬼平犯科帳 本所・桜屋敷」が、時代劇専門チャンネルで “独占”初放送!池波正太郎生誕100年記念作品である本作を皮切りに、新たな「鬼平」伝説が始まる。
あらすじ
長谷川平蔵(松本幸四郎)は本所界隈を見廻り中に、若かりし頃の道場仲間で親友の岸井左馬之助(山口馬木也)、香具師あがりの無頼者、相模の彦十(火野正平)と再会する。左馬之助からかつて二人が憧れた娘、おふさ(原沙知絵)が嫁ぎ先を離縁され、悪御家人の御新造になっていると知らされる。彦十がその御家人の身辺を探ると、平蔵、左馬之助の青春時代の恩師に繋がる因縁と悪事が明らかになる。
若き日のおふさ
銕三郎と左馬之助がかつて恋心を抱いていた女性。
日本橋・本町の呉服問屋「近江屋」へ嫁入りしたが…
『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』
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菊池日菜子
恥ずかしながら、作品に関わらせていただくまで『鬼平犯科帳』という作品を存じ上げていなかったのですが、母に出演が決まったことを報告したら、とても驚かれ、どんなにすごい作品なのかを熱弁してくれました。母が喜んでくれて嬉しかったのと同時に、「歴史ある作品に携わらせていただけるんだ」と実感して、さらに気が引き締まったのを覚えています。
出演が決まってから、
シリーズ前作は観られましたか?
『鬼平犯科帳』の作品ではないのですが、同じ池波正太郎さんの作品を原作とした『武士とその妻』(2022)を、松竹さんからご紹介いただき拝見しました。いままで時代劇にあまり触れる機会がなかったので、当時の所作や「その時代を生きるとはどういうことなのか」を学ぶことができました。
「楽しむ」とは、また違った着眼点での
視聴になるのかな、と思うのですが
どんなところに注目しながらご覧になりましたか?
今回時代劇に参加するにあたって一番不安だったのが、当時の人が当たり前にできている“作法”に違和感が出てしまうことだったので、主演の工藤阿須加さんの妻役・志田未来さんの所作や動きに注目して「基本指は揃えるんだな」、「こうすることで上品に見えるんだな」といった部分を意識しながら観ていました。
本作を拝見して、
近江屋に嫁いだあとに侍女に飴をあげるシーンの
おふさの所作がとても綺麗だと思いました。
嬉しいです!実は私もすごくお気に入りのシーンなんです。作中で、原沙知絵さん演じる成長したおふさが、同じように飴をあげるシーンがあるのですが、私の撮影より前に原さんが撮影を終えられていたので「原さんの演じるおふさの映像を観てみたい」とお願いして、飴の渡し方を研究しました。原さんの綺麗な所作はそのままに、成長したおふさよりもピュアな雰囲気を出すことを意識しながら演じさせていただきました。
ふとした人の所作って、
いくつになっても変わらないですものね。
成長した自分の役柄を他の方が演じられている本作。
どういったことを意識して
“若き日”をつくっていかれましたか?
なぜ、成長したおふさがあそこまでの悪人になってしまったのか、その経緯をどのように演じるかを考えました。視聴者の方が“成長したおふさ”と“若き日のおふさ”を見比べたときに、悲しくなってしまうほどにまっすぐな若き日のおふさにしたかったんです。考えた結果、何よりも大切にしたのは彼女の“清純さ”。監督も、衣装や髪型含め「とにかくピュアに」というご意向だったので、まっすぐに演じることを意識しました。例えば、川の中で泣き叫ぶシーン。かなり緊張したシーンだったのですが、覚悟を決めることができていたおかげで「もうどうだっていい!」と、なりふり構わずまっすぐ演じることができたと思います。
おふさの人生が大きく変わるシーンですよね。
台本読んで思い描いていたものが
監督とすり合わせを行っていくうちに、
変化したりもしましたか?
川のシーンには、川に沈んでしまう紙風船とおふさの状況が重なっている、という比喩が込められているのですが、台本上には「泣き叫ぶ」としか書かれていなかったんです。紙風船の表現の意図を監督から聞いたときに「なるほど!」と、自分の中で想像力が膨らんだことを覚えています。監督の助言のおかげで、おふさが泣き叫ぶにいたるまでの感情の滾りを感じることができました。
作中で描かれているおふさの印象が
最初と最後でガラリと変わる今作。
台本を読んだ時の率直な感想を教えてください。
「私がおふさを演じるんだ」と考えながら台本を読んでいたので、他人事とは思えず辛く感じました。「甘酸っぱい恋が始まるんじゃないか?」とワクワクするはずのシーンに関しても、その後のおふさの人生が見えている状態で演じなければならず、とにかく辛い気持ちを取っ払おう、と思いながら撮影に臨んでいて。でも、いざ現場に入って左馬之助役の阿佐(辰美)さんと対面したときに「阿佐さんに託して会話をしていけば大丈夫」と感じることができたので、そう思えるような雰囲気をつくってくださり、とても助けられました。
ひとりで芝居を作るのと、
実際に人とお芝居をするのでは、
安心感が違うものですか?
もちろん、ひとりのときよりも頼もしさは感じます。その一方で、対面しているからこそ喉がキュッと締まってしまうようなシーンもあって。それこそ左馬之助と対面して会話するシーンでは、「これでもう終わりなんだ…」と辛くなってしまい、頭では台詞が言えているのに、うまく声が出せなかったんです。でも、監督がそのカットも芝居として上手く使ってくださって。「この芝居もひとつの正解だったのかな」と、思うことができました。
菊池さんの中に
確かに“おふさ”が存在していたんですね。
原さんとは現場でお会いされましたか?
はい。実は初対面の日が、原さんのクランクアップの日だったんです。クランクアップのお花を受け取られているタイミングで「初めまして、若き日のおふさを演じる菊池です」と、ご挨拶をさせていただいて。成長したおふさの悪女っぷりからは想像がつかないほど、とても優しく「身長高いね」なんて、他愛ないお話をしてくださいました。出来上がった作品を観て、「あの穏やかな原さんが、こんなに毒々しい演技をされていたんだ!」と驚きましたし、女優さんの振り幅ってすごいな、と改めて感じる出来事でした。
とても和やかな雰囲気が伝わってきます。
制作チームの皆さんも
ずっと時代劇に関わられている方々だと伺いました。
プロフェッショナルな方々からの
助言はありましたか?
常に助言をいただいていました。例えば、「いまから着るお着物は格の高いお嬢様のものだから、帯締めの色がこうなっているんだよ」とか「もうお嬢様ではないから、お着物の布が粗くなっているんだよ」など。教えていただいた知識が役づくりに役立ちましたし、そういった細かな要素を役づくりに繋げることができる時代劇の奥深さを知りました。各部署のこだわりや時代背景が詰め込まれて一つの画になっているので、そこに注目して観ていただくのも面白いと思います。
Dear LANDOER読者
『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』
From 菊池日菜子
初めての時代劇、毎日が新鮮で本当に刺激的でした。私自身、時代劇ならではの演じ方や表現、そして、プロの皆さんの手によって再現された時代背景を楽しみながら撮影に参加させていただいたので、ぜひ観てくださる皆さんにも“江戸時代を生きる人間たちの姿”を楽しんでいただけたら嬉しいです。フィクションでありつつも「こんな歴史もあったんだな」という学びにもなるはず。そういった目線で見ていただくのもひとつの楽しみ方かなと思います。
テレビスペシャル
『鬼平犯科帳 本所・桜屋敷』
2024年1月8日(月・祝)
時代劇専門チャンネル(CS292)で独占初放送!
ひる 1:00/よる 7:00 ※1日2回放送
原作:池波正太郎『鬼平犯科帳』(文春文庫刊)
監督:山下智彦
脚本:大森寿美男
音楽:吉俣良
出演:松本幸四郎 市川染五郎 仙道敦子 中村ゆり
火野正平 本宮泰風 浅利陽介 山田純大
久保田悠来 柄本時生 山口馬木也 菊池日菜子
阿佐辰美 原沙知絵 橋爪功 松平健
Staff Credit
カメラマン:興梠麻穂
ヘアメイク:猪股真衣子(TRON)
スタイリスト:So Matsukawa
インタビュー・記事:満斗りょう 阪口鈴葉
ページデザイン:古里さおり