【菊池日菜子】映画『月の満ち欠け』多角度から考えた「小山内瑠璃」見えてきたのは揺るがない〈家族愛〉

菊池日菜子

映画『月の満ち欠け』
多角度から考えた「小山内瑠璃」
見えてきたのは揺るがない〈家族愛〉

「“運命の人”は、必ずいる」。それは恋人かもしれないし、友達かもしれないし、家族かもしれない。“運命の人”、確証のない不安定な言葉だけれど、その人がいると信じることで救われる〈想い〉があるのも事実。月が満ちては欠けてゆくように、美しく儚い一生のなかで、交差する〈運命〉をどうか見逃さないで――あなたが誰かを探している時、きっと誰かもあなたを探している。あなたは必ず、特別な人。

映画『月の満ち欠け』

映画『月の満ち欠け』
©2022「月の満ち欠け」製作委員会

-introduction-

2017年に第157回直木賞を受賞し、累計発行部数56万部を超えるベストセラー小説「月の満ち欠け」。著者・佐藤正午の最高傑作と名高い純愛小説が、遂に実写映画化。主人公・小山内堅にはNHK大河ドラマでの好演も記憶に新しい国民的俳優、大泉洋。そして小山内の娘と同じ名を持ち、物語の鍵を握る謎めいた女性、正木“瑠璃”に有村架純。27年前に“瑠璃”と許されざる恋に落ちる大学生、三角には単独での映画初出演となる目黒蓮(Snow Man)。そして小山内の最愛の妻・梢には柴咲コウ、その娘・瑠璃には新鋭、菊池日菜子。その他にも田中圭、伊藤沙莉と、日本映画界が誇る超豪華実力派キャストが集結。リアルな人間描写と圧倒的な映像美に定評のある廣木隆一と、コメディから感動作まで幅広いジャンルを手がける実力派、橋本裕志の初タッグで、数奇で壮大な愛の物語を紡ぎだす。「もう一度あなたに逢いたい」という強い想いが、時間も空間も超えて巻き起こす奇跡の物語。そしてその先に待ち受けていた、更なる愛の結末とは—?

-Story-

仕事も家庭も順調だった小山内堅(大泉洋)の日常は、愛する妻・梢(柴咲コウ)と娘・瑠璃のふたりを不慮の事故で同時に失ったことで一変。深い悲しみに沈む小山内のもとに、三角哲彦と名乗る男(目黒蓮)が訪ねてくる。事故に遭った日、小山内の娘が面識のないはずの自分に会いに来ようとしていたこと、そして彼女は、かつて自分が狂おしいほどに愛した“瑠璃”という女性(有村架純)の生まれ変わりだったのではないか、と告げる。【愛し合っていた一組の夫婦】と、【許されざる恋に落ちた恋人たち】。全く関係がないように思われたふたつの物語が、数十年の時を経てつながっていく。それは「生まれ変わっても、あなたに逢いたい」という強い想いが起こした、あまりにも切なすぎる愛の奇跡だった——。

-小山内瑠璃(おさない・るり)-

小山内の娘。母の梢と共に事故で他界。

菊池日菜子

小山内瑠璃 × 菊池日菜子

瑠璃はいろいろなことを抱えながら生きている女の子。けれど、その根底にあるのはシンプルで大きな家族愛。演じていても「お父さんとお母さんの娘でいられることが、とにかく幸せ」というのを感じる女の子でした。今回、瑠璃の抱えているものが大きかったので、クランクインの時点では「これだ!」と言えるほど、『小山内瑠璃』を掴めておらず、撮影しながら掴んでいく部分が多かったです。彼女が感じている嘘のないすべての感情、想いを大切に、『小山内瑠璃』の〈心〉がぶれることがないよう意識しました。台本と原作をいききしながら、作品に描かれている『小山内瑠璃』を探していく現場でした。

クランクインしてからは『小山内瑠璃』を
スムーズに掴んでいけましたか?

クランクイン前に台本を読んでいる間、撮影に入ってお芝居をしている時、ずっと瑠璃を探していた気がします。監督や共演者の皆さんの力を借りながら、瑠璃を作り上げていきました。クランクイン前に大泉さん(大泉 洋)とお話させていただく機会があったのですが、その時、ちょうど「瑠璃はどういった女の子で、彼女をどう表現していけばいいのか」と悩んでいた時期だったんです。そんな私に大泉さんが「瑠璃はいろいろなことがある子だけど、お父さんとお母さんの娘でいられて幸せ!という気持ちは絶対に変わらないよ」という言葉をくださって。その言葉を聞いた時に、私自身すごく腑に落ちたんです。『小山内瑠璃』が少しずつ固まってゆくキッカケになった言葉だったと思います。

菊池日菜子

菊池日菜子

本当にお父さんのようですね。
母・梢役の柴咲さん(柴咲コウ)とも
クランクイン前にお話を?

私がクランクインする前に、柴咲さんの撮影されている現場にご挨拶に伺わせていただきました。新生児・瑠璃を抱きかかえているシーンの撮影だったのですが、本当に白くて柔らかく穏やかな雰囲気の中に柴咲さんがいらっしゃって、「すごい女優さんだ…」と感じたのを覚えています。その後、緊張しながら挨拶する私を見て、緊張をほぐすようににこやかにお話してくださって。頼もしいお父さん役の大泉さんと、優しいお母さん役の柴咲さんが現場にいてくださることに安心しながら撮影をすることができました。

その関係値が映画にも
浸透しているように感じました。

心温まる小山内家のシーンたち。
撮影中、思い出に残っている
エピソードはありますか?

私、小山内家のシーンがすごく好きで、特に瑠璃の誕生日会のシーンが好きなんです。あのシーンの撮影の時は、休憩中も食卓を囲んで皆さんと他愛のないお話をしていました。大泉さんが娘さんのお話を「本当に面白かったんだよ~」と言いながらお話されているのを、伊藤さん(伊藤沙莉)がツッコんで、柴咲さんがにこやかに聞かれて。その空気感がすごく楽しかったです。

菊池日菜子

まさにシーンとリンクする空気感ですね。
数々の先輩がいらっしゃる現場、
なにか役者として学んだことはありますか?

皆さんから本当に多くのことを学ばせていただいた中でひとつ挙げるとすれば、大泉さんの“映らない芝居の詰め方”。撮影の時って、カメラに映っているお芝居の前にどういった動きをしていたのかが大切になってくるのですが、大泉さんはそこの部分の詰め方がすごく丁寧でした。実際、私にも「こういった動きをしていたら、ここに繋がるよ」と教えてくださることもあって。私自身とても救われましたし、これから他の現場でもこういったアプローチをしていこうと学ぶことができました。

映画のキーパーソンでもある
有村架純さん演じる『正木瑠璃』には
どういった印象を受けられていましたか?

小山内瑠璃として感じている、家族の〈愛〉とは違う、男女の〈愛〉を知っている女性だと思いました。どこか達観している印象を受けたのを覚えています。正木瑠璃と、目黒さん(目黒 蓮)演じる三角哲彦の月明かりに照らされるシーンが本当に美しくて…。『月の満ち欠け』という一本の映画のはずなのに、いろいろな映像がぎゅっと濃縮されていて、観終わった後の余韻がすごかったです。

菊池日菜子

家族の〈愛〉と男女の〈愛〉。
この作品に描かれている〈愛〉について
菊池さんご自身はどのように感じられましたか?

小山内瑠璃の〈愛〉は、私にとってすごく親しみのあるものだったのですが、正木瑠璃と三角のしがらみの中でも手放せない〈愛〉は、個人的な経験がない分、それほどまでに人を愛せて羨ましいと思う反面、経験するには怖いな…とも感じました。もう少し平和な恋がいいな、と…(笑)。

Dear LANDOER読者
From 菊池日菜子
映画『月の満ち欠け』

初めて完成したこの作品を観た時に、いろいろな展開の先に〈希望〉を感じることができたんです。「生まれ変わりが存在するのかもしれない」と思うだけで、きっと救われることがあると思うので、是非、観てくださる皆さんも“生まれ変わり”というものを、自分の人生に落とし込んで観ていただきたいと思います。それぞれに〈希望〉を感じながら、映画を楽しんでいただけたら嬉しいです。

菊池日菜子

菊池日菜子(20)

きくち ひなこ

2002年2月3日生まれ。
澄んだ存在感の芯にある、柔かな〈愛敬〉が
日だまりのようにあたたかいDOER

映画『月の満ち欠け』
2022年12月2日(金)全国公開

大泉 洋 有村架純 目黒 蓮(Snow Man) 伊藤沙莉/田中 圭 柴咲コウ
菊池日菜子 小山紗愛 阿部久令亜 尾杉麻友・寛 一 郎 波岡一喜 安藤玉恵 丘みつ子

原作:佐藤正午「月の満ち欠け」(岩波書店刊)
脚本:橋本裕志
監督:廣木隆一

映画『月の満ち欠け』
©2022「月の満ち欠け」製作委員会

Item Credit
ワンピース ¥41,800
ニット ¥15,400
カーディガン ¥41,800
全てジョン スメドレー(リーミルズ エージェンシー)
靴 ¥79,200
パラブーツ(パラブーツ青山店)

Staff Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:猪股真衣子(TRON)
スタイリスト:松川総
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:吉田彩華