【眞島秀和 × 吉高由里子】M&O playsプロデュース『クランク・イン!』〝言葉の人〟が紡ぐ「人間の本性」混沌とした悲喜劇に、どうぞ心を揺らがされて

眞島秀和 × 吉高由里子

M&O playsプロデュース
『クランク・イン!』
〝言葉の人〟が紡ぐ「人間の本性」
混沌とした悲喜劇に、どうぞ心を揺らがされて

多くの創り手たちが、それぞれのカタチで登場人物の“日常”を描き、表現し、作品を築いてきた。とめどない毎日の“ワンシーン”を切り取り、繋ぎ合わせ、織り成して、大きな風呂敷のように物語を広げてゆく――時には映像で、時には舞台で、時には文字で。映像と舞台、それぞれの場所で芝居をするお2人が、〈生〉を届ける舞台のステージに立つ時、想うこととは。「人間の本性」が入り乱れながら反発し合う、エネルギー溢れる作品にクランク・イン!

M & Oplaysプロデュース
『クランク・イン!』

M & Oplaysプロデュース『クランク・イン!』

-Story-

1人の新人女優・堀美晴が亡くなった。そのために暗礁に乗り上げていた映画の製作が、全員の「この映画を完成させなければ!」という思いで、クランクインの時を迎えた。堀美晴の葬儀は撮影所内でごく内々にすませられた。監督の別荘の湖に溺れて死んだ事故となっていたが、真相はよくわからないままだったのだ。事故ということになっていたが、彼女が事故当時もっていたはずのお気に入りだったポシェットが見つからないことなど、本当に事故なのか、あやふやな状況だった。しかし、映画を完成させるために、動き出さなければならない。そんな状況下での撮影だったため、監督(眞島秀和)の殺気だった緊張感に満ちた指揮ぶりは常軌を逸していると言ってもよかったろう。今や飛ぶ鳥を落とす勢いの主演女優・羽田香織(秋山菜津子)にも容赦ないダメ出しが飛ぶ。そんな中、プロデューサーの紹介でそれなりの役に抜擢された女優ジュン(吉高由里子)が徐々に存在感を増してくる。撮影のために世間から隔絶された場所で、主演女優、マネージャー(富山えり子)、ベテラン女優(伊勢志摩)、若手女優(石橋穂乃香)、それぞれの思惑と、監督への愛憎が次第に彼を追い詰めてゆく――。堀美晴は殺されたのか、だとしたら誰が彼女を殺したのか、、、映画の現場は次第に混沌としていき、そしてやがて悲劇的な結末を迎える―――。

-監督/眞島秀和-

女たちに追いつめられる映画監督

-ジュン/吉高由里子-

プロデューサーの紹介でそれなりの役に抜擢された
存在感のある女優

眞島秀和 × 吉高由里子

演出家・岩松了 × 役者・眞島秀和 & 吉高由里子

眞島秀和(以下、眞島):岩松さんの作品は何度か拝見させていただいていましたし、役者として共演する機会も多かったので、今回、演出家と役者という立場でお会いするのが楽しみです。いろんな役者の方から「岩松さんの演出は厳しい」とお伺いしているので、少し緊張しています(笑)。

吉高由里子(以下、吉高):私は舞台を観に行った時の楽屋挨拶などで岩松さんとお会いする機会が多かったので、最初にお話を聞いた時は「冗談半分で言ってるのかな?」と思っていました(笑)。正直、まだ実際にやるのかふわふわしていて。「ポスターは撮ったけど、本当にやるの?」と…(笑)。

眞島:あはは(笑)。これから徐々に来るんだよ(笑)。

吉高:稽古が始まって部活動のような日々が来るのか、と思うと楽しみではあるけれど、まだ信じられません(笑)。

お2人が思う“岩松作品”の魅力を教えてください。

眞島:岩松さんの舞台の魅力は“人間の本性”が丁寧に描かれているところだと思います。あとは、セリフの一つひとつが計算されて作りこまれているな、といった印象です。

吉高:私は岩松さんを〈言葉の人〉だと思っていて。岩松さんの作品って、たった一言のフレーズだけで「どれほど風呂敷を広げられるんだろう?」と思うほど、想像もつかない広がり方で物語が進んでいくんですよ。ひとつの言葉の揚げ足をどれだけ伸ばすことができるのか…、常人では考えられないほどの“言葉に対する意地悪さ”が魅力だと思います。

眞島秀和 × 吉高由里子

そんな岩松作品の世界の住人になるうえで、
必要だと考えていることはありますか?

眞島:今の段階(取材は7月下旬)では、どんな風に作品に入っていけばいいのかまだ分からないので、とにかくフラットな気持ちで入ろうと思っています。普段の作品でもそうなのですが、いつも「お世話になります」といった、柔かな気持ちで作品に入ることを意識しているんです。

吉高:私は舞台経験が少ないので、先輩方に引っ張っていただきながら、たくさん甘えていきたいと思います(笑)。

眞島:あはは(笑)。役者同士でお会いする岩松さんはすごく優しい方なので、演出家として現場にいらっしゃる時とどのくらいギャップがあるのか楽しみです。

吉高:私は余計な発言を控えようと思っていて…(笑)。「君の今の言葉は、どういった意味なんだい?」と、理詰めされても困るので、何となく、で話すのをやめようと思います(笑)。

LANDOER:あはは(笑)。先ほど、吉高さんご自身「舞台経験が少ない」と仰られていましたが、今回、舞台出演を決めた理由は何だったんですか?

吉高:舞台のお話を頂いた時に、マネージャーさんの「舞台のステージに立って、毎日同じセリフを繰り返すことで生まれる“言葉やセリフの意味と向き合う時間を”じっくりと持たせたい」という想いを感じたので、今回の舞台出演を決めました。

お2人は舞台に立って芝居をすること自体に
どんな気持ちを抱かれていますか?

吉高:緊張します。以前出演した舞台を思い出した時に、嬉しいこともあれば寂しいこともあったな、と。でも、その一方で、自分に興味を持ってくれている方をちゃんと知ることができる機会でもあったんです。舞台に立っていると、公演を観てくださっている皆さんの高揚が驚くほど伝わってくるんですよ。仕事や学校など、自分の予定を調整しながら劇場に足を運んでくれていると思うと、やっぱり嬉しい気持ちになりますね。ただ、客席で眠っている人を見ると悲しい気持ちになります…(笑)。

眞島:僕は役者の仕事の中で、一番“純度の高い仕事”が舞台だと思っています。ライブで芝居をお客様に観ていただく、というシンプルな空間だからこそ、役者として大切な経験になりますし、ある意味“修行の場”でもあるな、と。目の前でお客様の視線に耐える、そういったところまで持っていくためには稽古期間がすごく重要なんです。あと、眠っている人は気にしないようにすればいいよ、好きにして~って(笑)。

吉高:わ、一番冷たい人かもしれない(笑)。

眞島:あははは(笑)。

眞島秀和 × 吉高由里子

今日が初対面とは思えないほど、
和気あいあいとされているお2人ですが
お互いの印象はいかがですか?

眞島:吉高さんの出演されている作品を拝見していて「感受性の豊かな方なのかな」と思っていたのですが、実際にお会いしてみて「やっぱりそうだ」と感じました。自由なところも含めて、今回の舞台でご一緒できるのがすごく楽しみです。

吉高:ありがとうございます。まだお会いしたばかりで、どんな相槌をすればいいのか、などが全然分かっていないので、今日の取材を含めて稽古期間で眞島さんのことを知っていけたらいいな、と思っています。舞台の稽古ってみんなでゼロから作品を作っていくのですが、舞台上で芝居をするまでの過程が学生の頃を思い出すんですよね。初共演の方々とじわじわと仲良くなっていくことで、お芝居の距離感が変わることもあったりして。前回、そういった経験が全て新鮮で、「みんなで同じ方向を向いてひとつの作品に取り掛かる時間ってすごく素敵だな」と思ったので、今回の稽古も楽しみです。

稽古、公演期間を通して
出来てゆく絆や変化もありそうですね。

『そして春になった』(2020)を
ベースとした本作も

岩松さん特有の「人間の本性」を描いた
作品になりそうで楽しみです。

眞島:そうですね。先ほど吉高さんが仰っていた“人間の揚げ足を取る”ような作品になると思うので、すごく苦労するだろうとは思っています(笑)。その苦労が経験を経て自分の財産になっていけばいいな、と思いますね。

吉高:岩松さんはいろいろな方の表面的な部分ではなく、内面的な部分や裏表などを考えながら、人の話や表情を見たり聞いたりされている方だと思うんです。自分は岩松さんにどんな風に見られるのか、どんな言葉をかけられて、どういう風に挑発されるのか、それはすごく怖い部分でもあるのですが、それこそが“人間に生まれた醍醐味”でもあると思うので、そういった感情や喜怒哀楽、人間くさい後ろめたさのようなものを経験する作品になるのかな、と思います。

『クランク・イン!』は
“撮影現場の裏側”が舞台となっていますが、
お2人が思う「制作現場あるある」があれば
教えてください。

眞島:現場あるある(笑)⁉ あ、よくあるのは、必ず一度どこかで一緒に仕事をしているのに、何の現場で一緒になったのかが分からないこと(笑)。最近は「最後(一緒に仕事したの)何だっけ?」と、スタッフさんにも素直に聞くようにしています。

吉高:ありますね~。私の場合は一度も共演したことない方に「おー!」と言っちゃったことがあって、「誰だよ!」みたいな空気になったことがあります(笑)。その時は向こうも「(共演したこと)ないよね~!」「じゃあね~!」みたいに去っていきました(笑)。

ほのぼのとするエピソードですね(笑)。
では、映像と舞台、両方の現場に
立っていらっしゃるお2人の思う

それぞれの作品の魅力を聞かせてください。

眞島:編集や演出の最終的な仕上げが計算されて届けられるドラマや映画、一か月前から緻密にセットが組み立てられ、芝居の言動が計算されて作品となる舞台、双方の作り込まれ方にはあまり差はないと思っているのですが、絶対的に違うのは“リアルタイムの時間の流れ”。そこが芝居をする側にとってのハードルの高さであり、観ている方にとっての面白さになるのだろうな、と。その映像作品と舞台作品の違いが、魅力のひとつなんじゃないかと思いますね。

吉高:例えば連続ドラマだと、次の話が放送される一週間の間に、視聴者の皆さんの中でキャラクターたちが想像されて育まれている感覚があるんです。なので、同じ役でも視聴者の方によって違う育まれ方をすることがあると思うのですが、舞台作品に関しては「ヨーイドン!」と作品が始まって、終演するまでの皆さんの時間を私たちが独り占めできるじゃないですか。ひとつの空間で同じ時間を同じだけみんなで共有できる、それは舞台ならではの特別感だと思います。加えて、同じ作品でも、“生”だからこそ公演によって違う部分が生まれるもので。観に来た方、観に来た回によって違う環境にいたような感覚になってもらえるのも舞台の面白さなんじゃないかと思います。

眞島:毎回「これ、できるのかな?」という思いからスタートして、どんどん熟成されていって、いざ幕が開いたら「公演を重ねるごとに、変化していっているね」と、観てくださる方に言われて、自分では分からないながらに「こういうことだったのかな?」と思っているうちに、気づけば公演が終わる、舞台作品はその繰り返しです。今は、岩松さんの作品がどういう風になるのかと考えている最中で、まだ不安が大きいです(笑)。

Dear LANDOER読者
About M & Oplaysプロデュース
『クランク・イン!』

眞島秀和 × 吉高由里子

From 監督役/眞島秀和

眞島:今まで演じたことがない映画監督役を舞台でやるということで、どんな芝居になるのか僕自身まだ分からないのですが、とにかく苦労しそうな気がしているので、どういった仕上がりになるのか楽しみにしておいてください。

眞島秀和 × 吉高由里子

From ジュン役/吉高由里子

吉高:先日、「ドラマ『最愛』のツアーに行きました」というお声を頂いたので、今度は是非、舞台『クランク・イン!』に会いに来ていただければと思います。地方公演もあるので、いろいろな会場で普段応援してくださっている皆さんにお会いできるのを楽しみにしています。

眞島秀和 × 吉高由里子

眞島秀和(45)

ましま ひでかず

1976年11月13日生まれ。
幾層にも重なった物語や言葉の“本質”を、
内と外の両方から解いてゆく〈俯瞰的読解力〉耀うDOER

眞島秀和 × 吉高由里子

吉高由里子(34)

よしたか ゆりこ

1988年7月22日生まれ。
瞬発的な受取をアウトプットする際の〈芸術性〉、
その“柔らかさ”と“心地好い純度”に心掴まれるDOER

M & Oplaysプロデュース『クランク・イン!』

M & Oplaysプロデュース『クランク・イン!』
東京・本多劇場:2022年10月7日(金)~10月30日(日)
11月2日(水)~静岡・大阪・名古屋でも上演

作・演出:岩松 了
出演: 眞島秀和 吉高由里子
    伊勢志摩 富山えり子 石橋穂乃香 秋山菜津子

Item Credit
【吉高】
衣装協力:Y.M.Walts(MARVIN&SONS/03-6276-9433)
CHARLOTTE CHESNAIS(EDSTROM OFFICE/03-6427-5901)

Staff Credit
カメラマン:田中丸善治 
ヘアメイク:【眞島】渕直志(kief) 【吉高】RYO
スタイリスト:【眞島】momo 【吉高】藤本大輔(tas)
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:吉田彩華