【櫻井海音×木村真人監督】映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』「初日から〈魔法〉を感じた作品」世界を描く側、世界に生きる側、仲良し2人で語らうスペシャル対談

櫻井海音 × 木村真人監督

映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
「初日から〈魔法〉を感じた作品」
世界を描く側、世界に生きる側、
仲良し2人で語らうスペシャル対談

3秒前まで泣いていた赤ん坊が、やさしい温度に包まれてふっと眠りについた。前を向けないほど落ち込んでいたのに、ふとかけられたあたたかい言葉で活力が湧いてきた。疲れ果てた一日の終わり、愛溢れるハグでその日の疲れがふっ飛んだ。すべてが〝日常生活〟で起こる小さな出来事だけれど、この小さな出来事の裏には、些細な〈魔法〉が存在している。私たちは空を飛ぶことはできないし、透明にもなれない。でも、人が人を想うとき、愛が循環するとき、そこには必ず〈魔法〉が生まれる。この世界に生きる誰もが、きっと誰かの魔法使い――

映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』

映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』

自分の願いか、誰かの幸せか
もしも人生で一回だけ魔法が使えるとしたら——

緑豊かな自然に囲まれた、とある小さな村。この村には、ある秘密があった。村の少年たちは18歳になると”人生で一度だけ魔法を使える”と知らされるのだ。その魔法を使えるのは20歳になるまでの2年間。この年に18歳を迎えたのは、アキト(八木勇征)、ハルヒ(井上祐貴)、ナツキ(櫻井海音)、ユキオ(椿泰我)の4人だけ。最初は信じられずに笑い飛ばす4人だったが、自身の父親たちもかつて魔法を使ったことを知り、その使い道を考えるための会議を開くなど真剣に魔法に向き合い始める。高校卒業を控え、それぞれの人生の岐路に立つ4人は一体何に魔法を使うのか?彼らの選択が、4人の人生を大きく動かすことに…。

ナツキ役
櫻井海音
×
木村真人監督

『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
×
櫻井海音 木村真人監督

LANDOER:本作を映画化するうえで目指したことと、『アオハライド』以来二度目となる櫻井さんへのオファーの経緯を教えてください。

木村真人監督(木村監督):『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』は、もともと鈴木おさむさんが作られた朗読劇が元になっている作品なので、今回映画化をするにあたって、鈴木さんやスタッフの皆さんともお話をさせていただきました。その中で「今、世の中ではいろんな争いごとが起きているけれど、この物語を通じて、少しでも一人ひとりがやさしい気持ちや感謝の気持ちを意識することができれば、世界はすごく良くなっていくんじゃないか」という希望を感じたんです。言葉にするとすごく壮大なメッセージですが、その希望をしっかりと落とし込んで、素敵な映像で映画化したいと思って。そんな想いでつくりはじめたのが、本作のはじまりです。

LANDOER:そこから4名の出演者が?

木村監督:そうです。中でもナツキは“物語の核”であるうえに、テンションのアップダウンが激しい繊細な青年の役だったので、「誰がいいだろう」と慎重に話し合っていて。そのとき、一番に名前が挙がったのが櫻井くんだったんです。みんなの頭の中のイメージが合致したこと、僕自身『アオハライド』以降、信頼を寄せている俳優さんだったこともあり、すぐにオファーをさせていただきました。

映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
©2025 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」製作委員会

LANDOER:『アオハライド』から本作の撮影までは、どのくらいの期間が空いていたのでしょうか?

木村監督:一年3ヶ月くらいですかね?でも、なんだかんだ連絡を取っていたので、そんなに空いている気はしなかったです。

櫻井海音(以下、櫻井):僕たち、飲み仲間なんです(笑)。

木村監督:あはは(笑)。この作品が決まったときも、すぐに連絡を取ってごはんを食べに行ったよね。

櫻井:行きましたね(笑)。お寿司を食べに。

LANDOER:そこで作品や役についてのお話も?

櫻井:はい。オファーをいただいて、監督が木村さんだと聞いた段階で「絶対にやります」とお返事をしていたのですが、そこから脚本を読ませていただき、さらに「なんて素敵なお話なんだろう」と感動して。「どうやってナツキを演じていこうかな」と考えていたタイミングで、ちょうど食事に行かせていただいたので、ナツキについてたくさんお話させていただきました。

LANDOER:ちなみにどんなお話を?

櫻井:ナツキは、ものすごくまっすぐで正直で、4人の中で一番18歳らしいよね、というお話や、18歳~20歳までの揺らぎをしっかりと体現しているキャラクターというお話など。確かに、脚本を読んでいるときから「誰よりもストレートなセリフが並んでいる役だな」と感じていたので、そこのイメージは最初から合致していて。ただ、まっすぐなだけではなく、抱えているモノがありながら、ちゃんとやさしさをもち合わせている子でもあるんですよね。

櫻井海音 × 木村真人監督

人一倍強い〈探求心〉をカギに、
一致団結して“表現の扉”を開け続ける撮影現場

LANDOER:櫻井さんから見て、木村監督はどういった作品づくりをされる方ですか?

櫻井:現場をとても大切にされる監督だと思います。木村組の現場はキャストだけでなく、各部署のスタッフの方々まで、作品に関わるすべての人が一丸となって同じ方向を向いているんです。そんな環境だからこそ、役者も現場にとても居やすく芝居についてのコミュニケーションもとりやすくて。いい意味でフラットに接してくださる監督だなと思います。

LANDOER:考えてきたこと、感じていることを伝えやすいんですね。

櫻井:そうですね。頭ごなしに「これはこうだから」と言うのではなく、ちゃんと対話をしながら芝居をつくってくださるので、本当にありがたいです。

木村真人監督

LANDOER:そんな木村監督から見て、櫻井さんはどういったお芝居を築いていかれる方ですか?

木村監督:櫻井くんは変なところもあるけれど(笑)、ものすごく賢くて芝居に対してとても一途な俳優さんだと思います。とにかく、現場に来るまでの“脚本とキャラクターへの〈探求心〉”人一倍強いんです。動きひとつ、セリフのトーンひとつ、掘り下げられる限界まですべてを掘り下げてから現場に来ているのが、常に感じられる俳優さんといいますか。だからといって現場でそれだけをするのではなく、柔軟に変化することもできる。本当に素敵な芝居をされる方だと思います。

LANDOER:その姿勢は、先ほど櫻井さんのおっしゃっていた“現場でのコミュニケーション”にも繋がりそうですね。

木村監督:そうですね。現場に入って「このキャラクターだったらどう動くかな」や「こっちの言い回しのほうが役のイメージに近いかな」などと試行錯誤を重ねていく中で、「僕はこっちだと思う」といった意見交換がしっかりできるので、僕としてはすごくありがたいです。そこまで掘り下げるって、ものすごく労力のいることだと思うんですよ。それを現場に来るまでにやっている、櫻井くんの姿勢がすごく素敵だな、と。

映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
©2025 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」製作委員会

LANDOER:掘り下げて考えた先で柔軟に対応するって、〈瞬発力〉がないとできないことですよね。

木村監督:そうなんですよね。たくさん考えたうえで、「これもできるし、あれもできるけど…これかな」というものをもって現場に来ているのだろうと感じます。

櫻井:「今、自分に何が求められているか」を一番大事にしたいので、察するスピード感みたいなものは意識しているかもしれないです。「監督は今、どういった画を撮りたいのだろう」「このアングルでどんな表情を撮りたいのだろう」と、早めに察することが僕にとっては大事なんです。

LANDOER:言葉のないコミュニケーションも存在していそうですね。

木村監督:結構、目線だけで「うん」みたいなこともあったよね。

櫻井:ありましたね。

櫻井海音

現実の世界に〈魔法〉を見つける
それがきっと希望に繋がる——

LANDOER:世界をつくる側と、その世界で生きる側、おふたりから見た本作の魅力を教えてください。

木村監督:一見、「ファンタジーな作品なのかな」と思うようなタイトルなのですが、本作は、魔法自体をファンタジーとして捉えるのではなく、「“魔法”って、現実の世界に置き換えたら何だろう」ということをイメージしてつくった作品で、愛情ややさしさ、一人ひとりの涙、そういったものが詰まった物語になっています。きっと、観た後に何かしら受け取ってもらえるものがあると思いますし、人と接するキッカケになるような映画にもなっているんじゃないかなと。それが僕が思う本作の魅力です。

櫻井:この作品は、ナツキたちと同じように、今いろいろなことに迷っていたり、途方もない不安みたいなものに焦りを感じていたりする、高校生や10代の世代の人たちに、すごく大事なことを伝えられる作品だと思っています。一方で、大人になって社会に揉まれて、疲れたと感じている方々にも、自分たちが10代のときにもっていた“大事なモノ”を思い返させてくれるような作品になっているんじゃないかな、とも。僕自身も、脚本を読んだとき、現場にいたとき、初号試写を見たとき、すべてのタイミングでそういった気持ちを思い返すことができたので、本作を通していろいろな年代の方に、何かのキッカケを届けられたらいいなと思います。そうして、誰かの心に残り続ける一本になってくれたら嬉しいです。

LANDOER:やさしいメッセージを彩る、木村監督ならではの彩光も素敵でした。

木村監督:ありがとうございます。37年間生きてきて得たやさしさを全部詰め込みました(笑)。映画館に足を運んでくださる皆さんが、席に座りながら、映像を通して風を感じたり、光を取り込んでくれたりしたら嬉しいです。

櫻井海音
木村真人監督

この作品のはじまりの〈魔法〉は、
涙と熱量が交錯した“奇跡の本読み”

LANDOER:お二人は、現実世界で〈魔法〉の存在を感じたことはありますか?

櫻井:僕はやっぱり、木村さんがもう一度自分の作品に呼んでくれたことが、一番魔法を感じた出来事でしたね。

木村監督:うわ~、そうきたか(笑)。

櫻井:あはは(笑)。

木村監督:でも、僕が魔法を感じたのもこの作品かもしれないです。撮影に入る前に、作品に関わるすべてのキャスト、スタッフが集まって脚本の読み合わせをする“本読み”というものがあるのですが、普通は少しずつお互いを探りながら自分のキャラクターを掴みにいく時間なんです。ただ、ことこの作品においては、本読みの段階からみんながトップギアで入っていっていて。あれはすごかったね。

櫻井:本当にすごかったですよね。キャストみんなが、あんなに泣きながらセリフを読んでいる本読みは、役者をやってきた中で初めてでした。

木村監督:僕もスタッフさんまで泣いている本読みなんて、これまでに経験したことがなかったので「あ、この作品はすごく良いものになるな」と、すぐに感じて。あの瞬間は魔法を体感しましたね。

櫻井:僕、結構衝撃で、終わった後いろいろな人に話しましたもん。本来であれば何回か繰り返したりするのですが、一発通しで読み終わった後に、もうみんな止まっちゃって(笑)。もはやカメラ前なんじゃないかっていうぐらい、全員の想いがのっている本読みで、心から魔法を感じた時間でした。

木村監督:終わった後「何か話さなきゃ」と思ったものの、あまりに本読みがすごすぎて「この気持ちをもって現場にいきましょう」という言葉しか出てこなかったです(笑)。

櫻井海音 × 木村真人監督

Dear,LANDOER読者
映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』

From 櫻井海音

本作は、誰かを思いやる気持ちだったり、人生の岐路に立ったときに何をすべきなのかだったりを、やさしく描き出し伝えてくれるとても素敵な作品です。このあたたかい物語が、10年後、20年後と、誰かの心に残り続けてくれることを願っています。僕個人の見どころとしては、やっぱりサッカーをしているシーンですかね。そのシーンの撮影が一番NGを出したんじゃないかな(笑)。そのぐらいこだわって撮影したので、ぜひ僕の躍動感を劇場でご覧ください!

From 木村真人監督

片田舎で育った純粋無垢なおさななじみの4人が、人生の選択肢が一番多いモラトリアムの時期にどのように成長して、どんな想いで魔法を使おうとするのかが、この映画の見どころになると思います。ワンシーンワンシーン、若い熱気を感じられるシーンになっていると思うので、ぜひ4人の間に入ったような感覚で観ていただけたらな、と。今まさに18歳~20歳を生きている方、その時期を経験されてきた方、すべての方が、本作を通して感じた感情ややさしさを自分の中に取り込んで、また別の誰かに届けたいと思ってくださったら嬉しいです。

櫻井海音

櫻井海音

さくらい かいと

4月13日生まれ。
役が生きる一瞬、一秒の〈音〉を確実に聴き分け、
無限の海からたった一つの表現を見つけ出すDOER

木村真人監督

木村真人監督

きむら まひと

7月4日生まれ。
目に見える真実、奥底に眠る真意、
人がもつすべての〈真〉に愛情深く光を当てるDOER

共同テレビジョン所属。GP帯の連続ドラマから配信作品、MVと多岐にわたり監督を務めている。劇場長編映画監督は本作が初となる。主な作品はドラマ「絶対零度~未然犯罪潜入捜査~2020」(20)、「知ってるワイフ」(21)、「推しの王子様」(21)、「ゴシップ #彼女が知りたい本当の〇〇」(22)、「純愛ディソナンス」(22)、「ウソ婚」(23)、「院内警察」(24)「アオハライドSeason1・2」(23/24)など。縦型作品としても、“au×アスミック・エース”の縦型ショートドラマプロジェクト「STUDIO sauce」第1弾「てのひらラブストーリー 〜婚活五重奏〜」をディレクション。また、映像制作団体INDIEZの全ての作品の監督・プロデュースを務めていて、2019年にCAMPFIRE CROWDFUNDING AWARDエンターテインメント賞を受賞。

映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
2025年2月21日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開

出演:八木勇征
   井上祐貴 櫻井海音 椿 泰我(IMP.)
   カンニング竹山 阿部亮平
   髙橋 洋 馬渕英里何 ほか
原作・脚本:鈴木おさむ
監督:木村真人 音楽:横山 克
主題歌:「春舞う空に願うのは」 FANTASTICS
制作:共同テレビジョン 配給:ポニーキャニオン

映画『僕らは人生で一回だけ魔法が使える』
©2025 映画「僕らは人生で一回だけ魔法が使える」製作委員会

Staff Credit
カメラマン:YURIE PEPE
ヘアメイク:高草木剛(VANITÉS)、足立南奈(VANITÉS)(櫻井)
スタイリスト:藤井昌子(櫻井)
インタビュー・記事:満斗りょう
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