【片岡愛之助】新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』愛すべき大泥棒・ルパン三世が伝統と革新の世界で大暴れ!

片岡愛之助

新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』
愛すべき大泥棒・ルパン三世が
伝統と革新の世界で大暴れ!

数多の表現方法が生み出されてきた世界で、400年以上前から人間のユーモラスさや愛嬌、時には残酷さや哀しみ、そして人ならざるものの御話を描いてきた『歌舞伎』。語源ともなった「傾く(かぶく)」が意味する奇抜な装いや言動には、「おぉ~!」と頷きたくなるような〈遊び心〉が詰まっています。歌舞伎ならではの〈粋〉な演出と画期的な技法で紡がれる4000以上の演目は、海を越えて世界中の人々の心を射止め続け――そういえば日本には、歌舞伎と同様、人の心を射止め続ける楽しい大泥棒がいましたね。ワクワクするような、ザワザワするような、そんな楽しい足音が聞こえてきましたよ……

新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』

新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』
©モンキー・パンチ©松竹

豪華な顔ぶれでお届けする
歌舞伎×「ルパン三世」の世界に乞うご期待!

人気漫画家モンキー・パンチの原作により、これまで漫画、テレビアニメを筆頭に様々なメディアミックス で人気を誇る「ルパン三世」シリーズ。老若男女から愛され続ける「ルパン三世」が、この度、新作歌舞伎として上演することが決定いたしました!オリジナルストーリーとなる本作は、石川五右衛門が実在した安土桃山時代が舞台。今作でルパンたちが狙うのは「卑弥呼の金印」。国宝級の秘宝を巡り、世界をまたにかける怪盗・ルパン三世と天下の大盗賊・石川五右衛門が激しい戦いを繰り広げます。本作では激しい立廻りはもちろん、本物の水を使用した「本水」と呼ばれる演出や、様式的な動きで暗闇の中での探り合いを表現する「だんまり」といった歌舞伎ならではの表現も登場するなど、古典歌舞伎の魅力をふんだんに盛り込み、“歌舞伎版”ルパン三世の世界を盛り上げます。歌舞伎と「ルパン三世」の融合による話題の本作にどうぞご期待ください!!

ルパン三世/片岡愛之助

時は安土桃山時代。怪盗・ルパン三世とその仲間の次元大介は“卑弥呼の金印”という国宝級のお宝を狙っています。金印の封印を解くには雄龍丸と雌龍丸という 2 本の宝剣が必要で、金印と宝剣が揃った暁には世を統べる力を手にできると伝えられています。しかし雌龍丸は大盗賊として名を轟かせる石川五右衛門の手の中。五右衛門も同じく卑弥呼の金印を狙っていたのでした。ルパンが惚れる峰不二子も何か事情を知る様子。さらに天下をおさめる真柴久吉も金印を探しているようで、ルパンの因縁のライバル・銭形警部もルパンと五右衛門らを追っています。1 つのお宝を巡る争いの結末は―

片岡愛之助

原作『ルパン三世』× 歌舞伎

『ルパン三世』を歌舞伎でやると聞いて、まず「そんなことできるの?」と、驚いたのを覚えています。そもそも原作で描かれている時代が歌舞伎の時代と違いますし、とにかくどうなるのかが分からないスタートでした。もし『ルパン三世』の時代に歌舞伎を合わせるのであれば、洋服で演じることになる。でもそれでは舞伎でやる必要がない、と、どのように歌舞伎に落とし込むかが問題で。案のひとつに「ルパンが過去の日本にタイムスリップをする」という設定も出たのですが、そうするとなると物語以外の説明部分が長くなり、本編が短くなってしまう。いろいろな方向から話し合い、すり合わせた結果、シンプルに「安土桃山時代にルパンたちが生きている設定にしよう」と決まりました。安土桃山時代は、原作の石川五エ門の祖先にあたる日本の大盗賊・石川五右衛門が生きていた時代でもあるので、ルパンと石川五エ門の大泥棒対決にはぴったりだと思ったんです。

確かに!歌舞伎でしか観ることのできない
“ルパン VS 五エ門 in 安土桃山時代”ですね(笑)。

歌舞伎だからこそのダイナミックなアレンジが見どころの作品になると思います。そもそも歌舞伎って「それは無理でしょ!」と、思うような演出が散りばめられている“夢の国”の演劇なんです。客席のお客様は、歌舞伎という“夢の国”に来ていただいているわけですから、ルパンが安土桃山時代に生きていても成立するはず。「もしルパンがこの時代に生きていたら…」という設定を実現させられるのが、歌舞伎の良さだと思っています。

悩みでもあった“時代設定の違い”が、
歌舞伎の強みと掛け合わさったんですね。
それぞれの扮装からもこだわりが感じられます。

このアレンジにおいて扮装はかなり重要な要素だったので、何度も話し合いました。最初に衣裳さんがいろいろなイラストを描いてきてくださったのですが、そこに描かれていたルパンには髷(まげ)があって。確かに安土桃山時代はみんな髷をしていましたが、「やっぱりルパンに髷があるのはおかしい」という話になり、話し合った結果、あの頭になりました。よく見ていただくと襟足の部分に『燕手(えんで)』がついているのですが、この『燕手』というのは歌舞伎の先人たちがつくった“悪の象徴”を意味する髪型なのです。ルパンはあくまで大泥棒なので、この髪型が意味するところにぴったりと当てはまっているわけです。ルパンらしさを残しつつ、歌舞伎に詳しい方からは「なるほど」と思っていただける髪型が完成して、我ながらよくできたと満足しています(笑)。そこからルパンのトレードマークであるもみあげの量も調整して、どんどんと原作の姿に近づけていきました。

新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』
©モンキー・パンチ©松竹

そんな粋な要素が含まれていたとは…!
髪型に加えて、
化粧も他の演目とは大きく違いますよね。

基本的に歌舞伎の主役は顔の色を白くするものなのですが、白塗りのルパンはイメージがわかなかったんですよね。そこも話し合って、ルパンに関しては人の肌色に近い化粧でつくっていくことに決めました。

艶やかな赤の羽織も
「ルパンらしい!」と、感じました。

ルパンはアニメや映画などではいろいろな色のジャケットを着ているのですが、やっぱり一番にイメージがわくのは赤色だと思い、赤いジャケットを彷彿とさせるような赤い着物を羽織って、トレードマークである黄色のネクタイを模して襟を黄色にして…と、原作のルパンの要素をデフォルメして衣裳を組み立てていきました。また、歌舞伎では着物に役者の家紋をあしらうことがあり、僕の家紋は『追いかけ五枚銀杏』なので、赤い着物に大きくドンッと家紋をあしらっていただいていて。歌舞伎を初めて観る方には「ルパンらしい」と感じていただけて、歌舞伎をよくご覧になっている方には「お、家紋入ってるね~」と、注目していただける、僕が歌舞伎において大事にしたいと思っている〈遊び心〉が加わった扮装が完成しました。

片岡愛之助

歌舞伎初心者の方から詳しい方まで、
すべての方への愛情を感じます。

せっかくこんなに世界的に有名な物語を歌舞伎で演じるのですから、幅広い方に楽しんでいただける作品にしたかったんです。歌舞伎をご覧になったことのない方は、ベンベンッと三味線の音に合わせて歌う『義太夫』の歌声が唸っているように聞こえるかもしれないのですが、あれは実は語っていて「おなかが痛い」と語っているときには、主役はたいていおなかを押さえているんです。そう考えると、歌舞伎ってすごく分かりやすいものなんですよ。ただ、そういった約束事を教えてくれる人がいないと、どうしても「分からない」になってしまうのも事実。今回の『流白浪燦星』には歌舞伎独特の義太夫も入っているので、是非、この約束事を意識して、さらに深く物語を楽しんでいただきたいと思います。

なんて贅沢な愛之助さんからのレクチャー。
とても学びになります。
さらに今回は歌舞伎ならではの
技法も入っているとか。

そうですね。『だんまり』という暗闇のなか手探りで芝居するパントマイムのような表現方法だったり、『本水』という舞台上で本物の水を使う表現だったりを駆使して物語を繰り広げていきます。あとは何より『ルパン三世』といえば、ヘリコプターで「あばよ、とっつぁん!」と去っていくラストシーン。歌舞伎でその表現はなかなか難しいのですが、「あばよ、とっつぁん!」と言いながら、ビューンッと去って行けるような仕掛けを考えているので、是非そちらも楽しみにしていてください。

片岡愛之助

片岡愛之助

Dear LANDOER読者
新作歌舞伎『流白浪燦星』
From 片岡愛之助

『ルパン三世』は誰もが知っている世界的な作品で、登場人物の人間性やそれぞれの関係性をすでにご存知の方が多いと思います。歌舞伎が初めてという方でも、物語の大筋が分かった状態でご覧いただける作品になっているので、物語を理解しながら楽しんでいただけるんじゃないかな、と。一方で歌舞伎に詳しい方には『燕手』や家紋入りの着物など、歌舞伎ならではの〈粋〉を楽しんでいただけるはずです。歌舞伎の名場面のパロディーもいくつか入れているので、「これはあの場面のパロディーだ!」と、2倍3倍の楽しみ方もできると思います。是非、歌舞伎で描かれるルパンと仲間たちの物語を堪能しにお越しください。

片岡愛之助

片岡愛之助

かたおか あいのすけ

3月4日生まれ。
先人たちへの敬意と、革新への挑戦心を
芝居のリボンでぎゅっと包んで〈愛〉を贈るDOER

新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』
新橋演舞場:2023年12月5日(火)~12月25日(月)

原作:モンキー・パンチ『ルパン三世』
出演:片岡愛之助 尾上松也
   市川笑三郎 市川笑也 市川中車
   尾上右近 中村鷹之資 市川寿猿
   市川猿弥 板東彌十郎
脚本・演出:戸部和久 
作曲:大野雄二
衣裳:富永美夏 
舞台監督:下柳田龍太郎

新作歌舞伎『流白浪燦星(ルパン三世)』
©モンキー・パンチ/TMS・NTV

Staff Credit
カメラマン:田中丸善治
ヘアメイク:青木満寿子
スタイリスト:九(Yolken)
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:古里さおり