映画『春画先生』
咲き乱れるは〝裏の華〟
どうか、〈ひとめぼれ〉にはご注意を
「日本の文化」と聞いて思い描くのは、荘厳で、重厚で、それでいてどこか素朴な世界観。しかし、そのベールの下でいたずらっ子のように微笑んでいるのは、日本人の予測不能な〈奇天烈さ〉とチャーミングな〈変態さ〉。いままでベールで隠されていた老若男女の笑い声が、世界に放たれる日がようやくやってまいりました。卓越した技巧と、伏線だらけの芸術によってほどかれるは、江戸の“裏の華”。百華繚乱、『春画』の世界をスクリーンでご堪能あれ――!
映画『春画先生』
-Introduction-
江戸文化の裏の華である“笑い絵”とも言われた春画の奥深い魅力を、真面目に説く変わり者の春画研究者と、しっかり者の弟子という師弟 コンビが繰り広げる春画愛をコミカルに描く本作。春画は江戸幕府から禁止された、禁制品で表に出ないものだったからこそ、自由な創作が可能となり、とどまることを知らぬ芸術の域に達して、庶民から大名までを虜にした江戸時代の真のエンターテインメントだった。これまでその取扱いは日本映画でもタブーとされ、性器部分の描写は映倫審査でボカし加工が必要だった。しかし、本作は、映倫審査で区分【R15+】として指定を受け、商業映画として全国公開される作品としては、日本映画史上初、無修正での浮世絵春画描写が実現した。その自由な精神を現代に映画として表現することを目指して制作された『春画先生』。好きなものにのめり込んでいくおかしな者たちを描く異色の偏愛コメディが誕生した!
-Story-
”春画先生”と呼ばれる変わり者で有名な研究者・芳賀一郎は、妻に先立たれ世捨て人のように、一人研究に没頭していた。退屈な日々を過ごしていた春野弓子は、芳賀から春画鑑賞を学び、その奥深い魅力に心を奪われ芳賀に恋心を抱いていく。やがて芳賀が執筆する「春画大全」を早く完成させようと躍起になる編集者・辻村や、芳賀の亡き妻の姉・一葉の登場で大きな波乱が巻き起こる。それは弓子の“覚醒”のはじまりだった 。
-藤村一葉-
芳賀一郎(内野聖陽)の亡き妻の姉。
作品のお話を聞いて――
『春画先生』 × 安達祐実
作品のお話をお伺いしたとき、シンプルに「すごく面白そう!」と感じたことを覚えています。いままでに見たことのない企画だったので、観たことのない作品になりそうだな、と感じたんです。ただ、春画に関しては“触れたことのない未知の世界”というのが正直なところで。以前、機会があって春画を見た際に面白みを感じていたことと、一葉という魅力的な役柄が重なり、すぐに「やりたいです」とお返事をさせていただきました。
未知だった“春画の世界”に触れてみて、
発見や学びはありましたか?
意外だったのは、江戸の人たちは春画を親子で楽しんだり、春画から笑いを得たりしていたということ。私もこの映画に参加するまでは、春画に対して「男性が楽しむもの」という一般的なイメージをもっていたのですが、知れば知るほどそういうものではなかったことを学んで。加えて、絵師の技巧にも卓越したものがありとても驚きました。むしろそれこそが、春画の本当の魅力なのだな、と。
技術、そしてそこに夢中になる人々、
いろいろな要素を含めて、
監督のおっしゃっていた
『人間賛歌』がしっくりきました。
そうですね。何か人から理解されないようなことでも、貫いてよく知っていけば、それがその人の魅力になると思いますし、そんな姿が愛おしいとすら思いますよね。今作に登場するそれぞれのキャラクターが魅力的なだけに、「人と違ってもいいじゃないか」というメッセージが強く表現された作品になっていると思います。
本当に魅力的な登場人物だらけでした。
今回演じられた、一葉含む藤村姉妹は
どのような姉妹のイメージで役作りをされましたか?
妹は“天性の魅力をもった子”、一方で一葉は“努力をして身に着けた才能が大きい子”というイメージをもっていました。一葉はずっと妹に対して、「天性のものには勝てない」という思いや悔しさをもっていたんじゃないかな、と。
対、妹への意識の仕方や深さには
“双子”という関係性も
影響しているのかな、と思いました。
そうですね。双子って「リンクするところが多い」だとか、「一心同体」みたいな描かれ方をすることが多いと思うのですが、個人的にはそれは少し違うと思っていて。双子だから分かってしまう部分があると同時に、「双子なのにこんなに違う」という思いもあるんじゃないかと思ったんです。そして一葉は、そんな思いをずっと抱いてきたんじゃないかな、とも。双子のはずなのに自分にはない魅力が妹にはある。もって生まれたものの違い、そこに対する一葉の気持ちを意識しながら作品に臨みました。
妹への強い意識が溢れている
クライマックスの爽快なシーン。
撮影はいかがでしたか?
クライマックスで内野(内野聖陽)さん演じる芳賀に鞭を打つシーンがあるのですが、最初は力加減が分からず少し怖くて…。生きていて人に鞭を打つことってなかなかないじゃないですか(笑)。そんななか内野さんが「本当に当ててもいいよ」「もっとやっていいよ」と、おっしゃってくださって(笑)。最後のほうは遠慮なく打たせていただいておりました(笑)。1日~2日かけて撮影をしたのですが、撮影中ずっと、私のなかに「一葉の哀しさ」みたいなものがあり、悲劇的な気分になっていたのを覚えています。作品が完成して全体を通して観たときに、一葉の想いが遂げられる素敵なシーンになっていて嬉しかったです。
クライマックスの一葉の一言、
心に迫るものがありました。
あの一葉の一言は、「(妹への)完敗」という意味だと思っていて。妹に似ている弓子(北香那)が宿している〈才能〉を、自分が引き出して芳賀に捧げる。その過程でふと「自分は(芳賀にとって)そういう存在にはなれなかった」という哀しさを抱いたと思うんです。自分が芳賀にとって妹や弓子のような存在になれないのであれば、せめてもの愛情の示し方として弓子を育てる、一葉のその選択のおかげで、事実、芳賀と弓子の関係が成り立っていく。そういったものをすべてひっくるめての「完敗」だったのだと思っています。
Dear LANDOER読者
From 安達祐実
映画『春画先生』
きっと、いままでに観たことのない映画になっていると思います。驚きとともに、楽しんでもいただけると思いますし、登場人物たちを愛おしく、それでいて面白がっていただけるとも思うので、いろいろな感情になりながら楽しんでいただけたら嬉しいです。
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カメラマン:鈴木寿教
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スタイリスト:船橋翔大
インタビュー・記事:満斗りょう
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