【永田崇人】「〈役〉の在り方は現場で紡ぐ」 “固めない芝居論が透過する2つの作品の話

永田崇人

「〈役〉の在り方は現場で紡ぐ」
”固めない芝居論が透過する
2つの作品の話

一枚ページをめくるだけで、数分画面を見つめるだけで、どんなに高い飛行機代を払っても行けない世界へ行くことができる。その世界の中では、たいていの〈悪〉は制裁を受けるし、たいていの〈恋〉は実を結ぶ。たいていの〈雨〉には傘を手向ける人が現れ、たいていの〈正義〉には陽が射し込む。本や映画の世界を常に往来する永田さんは、そんなドラマ世界と現実世界のグラデーションを泳ぐ人。作品のお話を聞く中で見えてきたのは、彼の考える“現場での佇まい”でした。是非、貴方もそっと覗いてみて――

ドラマParavi『部長と社畜の恋はもどかしい』

ドラマParavi『部長と社
©志茂・ぶんか社/
「部長と社畜の恋はもどかしい」製作委員会

-イントロダクション-

会社の営業部に勤めている OL のまるちゃんこと丸山真由美(中村ゆりか)は、毎日残業ばかりの社畜女子。それでも頼られることと仕事が大好きなまるちゃんは充実した日々を過ごしていた。ある日、営業部の新年会をしていると、たまたま同じ店に居合わせた定時上がりで有名な総務部の部長・堤司(竹財輝之助)と激論を交わした末、2人は酔った勢いで一線を超えてしまった!堅物なイメージとは違い、優しい部長を好きになってしまったまるちゃんだが、翌日「自分たちは大人だからわかるよな?」と言われてしまい…!?仕事のやり方も考え方もまったく違う二人が繰り広げる、“ムズキュンが過ぎる”オフィスラブコメディー!

-草野優-

堤司の部下で、堅物な提司にも物怖じせず話すほどの
強者な総務部社員

永田崇人

草野優一 × 永田崇人

作中の草野は仕事をしていない時を切り取られているのでテキトーな子に見えちゃうと思うんですけど、僕としては“自分のやりたいことや意見がしっかりと言える子”だと思っているので、「画面からはみ出そう、意志のある収まりきらない人でいよう」というイメージで演じています。僕、どの役を演じる時も「こうしよう」と固めることなく自由気ままに演じられるようでありたいと思っているんです。現場で「こうしたいな」と思ったら、現場でやってみる。今回もそんな風に草野を作っていっています。

現場で感じて演じる、まさに瞬発力ですね。

僕の場合、考えすぎても上手くいかないんですよ。台本を読んだ段階で確かにある程度の予測はつくんですけど、実際現場へ行くと想像していなかったところで「あの場所でこうしてください」と言われたりもするので、その時その時で「なぜここにいるのか」「なぜここで話しているのか」を考えるようにしていますね。

永田崇人
永田崇人

その考えの延長線に
草野くんが成り立っているんですね。

現場でも草野くんと提司部長は作中の感じ…?

いえいえ(笑)!現場では「竹財さん!」って感じです(笑)。僕、大学が熊本だったんですけど、竹財さんは出身が熊本なんですよ。なので熊本トークをめちゃくちゃしましたね。僕の大学の同級生が竹財さんの親戚の方とたまたま知り合いだったり、竹財さんのサッカーをしていたお話を聞いたり。正直、熊本トークをするまでは緊張して人見知りしていたのですが、九州の方だと分かった瞬間「竹財さん、そうだったんですか!」って一気に距離を詰めてしまいました(笑)。

現場は朗らかな雰囲気なんですね(笑)。
コメントで「草野は自分に似ている部分がある」と
仰っていましたが

具体的にどんな部分が似ていると感じましたか?

優しい人にどこまでも甘えていっちゃうところですかね。僕、相手が許してくれる範囲ギリギリまで甘えちゃうんです(笑)。それって草野もきっとそうで。最初は「提司部長!」って感じだったと思うんですけど、部長がいつも「いいよいいよ」と優しく言ってくれるから、徐々に「部長~!部長~!」ってなっていったんじゃないかな、と(笑)。草野も僕も無意識のうちに「この人は良い人だ」という嗅覚が働いているんだと思います。直感的に「好きだな」と思う人に会うと、自然とそういった距離のとりかたをしていることが多いですね。

永田崇人

そんな風に通じ合っている草野と永田さんですが、
台本をお読みになった段階では
「失礼なやつだな」と思ったとか。

そうなんです(笑)。そう思っていた草野への印象が変わったのは顔合わせの時。その時、スタッフさんがキャラクターシートを用意してくださっていたんですけど、そのシートがすごく細かくて。いままであんなに忠実に自分の役のことが書かれているキャラクターシートを見たことがなかったので、初めて見た時、スタッフさんの愛を感じてものすごく感動したのを覚えています。で、そのシートに「草野は一周回って、あの感じをやっている。実は意外と周りが見えている人」と書かれてあって、彼のことが腑に落ちたんです。勝手ながら“大きな挫折をして、それを乗り越えてきた強い人”でもあるんじゃないかと思っています。

Dear LANDOER読者
about『部長と社畜の恋はもどかしい』

主人公のまるちゃんを通して“社畜”という言葉に触れると、ネガティブなイメージだけでなく「仕事が好きで一生懸命にしている人もいるよな」と思うんです。例えば僕のマネージャーさんとか。「いつ寝ているんだろう?」と思うけれど、好きで仕事をされているんですよ。そういった気持ちで仕事をしている方たちの話を聞くと“社畜”って一概にマイナスなものじゃないな、と。この作品に描かれている世界観は、会社で働かれている方々にとって近しい世界だと思いますし、社内恋愛の話でもあるので自分を投影しながら楽しんでいただけると思います。あとは、草野の独特のネクタイにも注目して欲しいですね(笑)。ちなみに、僕が現場で「こんなネクタイつけるか!?」と一番思ったネクタイはまだ出てきていないので、そのネクタイも楽しみにしていてください (笑)。