WOWOW『ヒル』
青年の〈過去〉を想って
いまの彼を理解する
誰よりも〝ヨビ〟に寄り添った日々の話
此処に来るまでに、何度夜を越えてきただろうか。「夜明けなど来るな」と時間を惜しむ夜もあれば、「夜明けなど来ない」と闇に耐えしのぶ夜もあった。幾つもの夜の層を重ねた先にいる自分はいったいどんな顔で笑っているのか…。少なくとも、闇の中を必死に走ったひとりの青年の笑顔は“自分自身”のものではない。〈寄生〉した誰かの顔で器用に笑う彼が纏っているのは、寂しく重い〈過去〉の鎧。鎧の擦れる音があなたに近づいてきても、どうか惑わされないで――
WOWOW『ヒル』
-Intro-
WEB・アプリで人気を博した「ヒル」「ヒル・ツー」を2シーズン構成で連続ドラマ化する。Season1の主演を赤楚衛二、Season2の主演を坂口健太郎が務める。本作は、他人に成り済ましをされた青年が他人に寄生する不法滞在者、ヒルの存在を知り、彼らに果敢に立ち向かっていく姿を描く。その中で、なぜヒルたちが生まれてしまったのか、なぜ彼らは社会から落ちこぼれてしまったのかを知り、彼自身もまた人としての本当の愛情に気付き、心の機微を取り戻す。赤楚が演じるのは他人に成り済ましをされ、殺人未遂罪で警察に追われるユウキ。坂口が演じるカラは、ユウキに成り済ました男にヒルとしての生き方を教え、またおきてを破る者を罰する“ヒル狩りのカラ”の異名を持つ伝説のヒルだ。また、吉川愛、飯豊まりえ、栁俊太郎、板垣瑞生、佐久間由衣、田中幸太朗、松澤匠、三浦誠己、利重剛、板尾創路、小西真奈美が出演。ヒルの死の謎を追う警察とヒルたちとの駆け引きが繰り広げられる、社会派復讐サスペンスをお見逃しなく!
-ヨビ-
ユウキ(赤楚衛二)に成りすますヒル。かつて両親を殺し世間を騒がせた少年Aであり、カラに救われヒルになった過去を持つ。暇つぶしのためにヒルを玩具の様に扱い遊んでいる。
ヨビ × 栁俊太郎
ヨビは“愛を持って育ててくれる人が傍にいなかった”という辛い過去のトラウマから抜け出せずに、苦痛から逃げて逃げて生きてきた人。そうして辿り着いた先にいたのが作中に描かれているヨビの姿です。現在のヨビに至るまでに救ってくれる人がいたにも関わらず、どうしても過去から抜け出すことができなかった寂しい青年なんですよね。僕は彼のような境遇を味わったことがないので、共感できる部分を探して演じようとしていました。ただ「もし自分が同じ境遇だったら…」と考えても分からない部分が正直多くて…。
そんな難しいヨビを、どう理解されましたか?
作中ではヨビがなぜ今のような人間になってしまったのかも描かれているのですが、それを観ていただければ分かるように、本当に寂しい人間なんです。ヨビのような経験したことのない僕には想像できないほど辛かっただろうし、その辛さゆえにヨビ自身ですら想像できないようなことをしてしまうし…。そんな風にヨビの“過去の辛さ”を思うことで彼のことを理解しようとしました。
自分にとって未知のヨビの感情や経験を
どのように“栁俊太郎”に落とし込んでいかれたのか
教えてください。
ヨビに関しては、正直ちゃんと落とし込めていたのか分からないです(笑)。そのぐらい理解に時間がかかる人でした。原作でもそうなんですが、辛さをベースに抱えながらも、言っているセリフ、やっていることや表情などはどこか楽しんでいるように見せなきゃならなかったんですよ。ただヨビは、サイコパスを楽しんでいるように見えて、実はサイコパスではなくて。ただ非道なことを楽しんでいるのがサイコパスだとしたら、ヨビの場合は言動の裏にぶつけたい何かをちゃんと持っているソシオパスに近いんですよね。監督とも「サイコパスではなくてソシオパスなんじゃないか」と話し合っていたので、訳も分からず人を殺すことを楽しんでいるキャラクターにはしたくないと考えていました。
ヨビという人の在り方を落とし込まれたんですね。
ヨビの過去やジレンマをなくしたくはなかったんですよね。何も知らない人から見ればサイコパスもソシオパスもどっちもヤバい人であることに間違いないんですけど(笑)。例え観ている方がヨビをただのヤバい人だと思ったとしても、台本にセリフとして書いてあった「ヨビはこういうことがあって、こういう人になったんだ」という部分を、演じるうえではきちんと拾いたくて。社会に対して、自分を傷つけた人に対してへの想いをしっかりと持っている人間だということを忘れずに、彼の言動は寂しさやつけられた傷がゆえなのだというところを理解して、ヨビという寂しい青年を演じたつもりです。
寂しいヨビに手を差し伸べるカラ。
カラ役の坂口健太郎さんとは
モデル時代からの仲ですが、
モデルの世界から役者の世界へ
足を踏み入れた時のことを覚えていますか?
「まったく違う世界だ!」と感じたのを覚えています。役者の仕事をする前は「言っても同じカメラの前だし、映像を撮るのかスチールを撮るのかって違いぐらいでしょ」と思っていたんですけど、いざやってみると何もかもがまったく違って(笑)。映像の現場に数か月いて、久々にスチールの現場へ戻ると「あれ、どうやっていたんだっけ?」と思ってしまうほどに別世界なんですよ(笑)。スチール撮影の時って“カメラが自分を見ている”ことを意識して動くんですけど、映像だと“カメラを意識しない”ことを意識すると言いますか。そういったそもそもの視点が違うのだと感じています。
モデル業と役者業を両立されている
栁さんだからこそ分かる
それぞれの魅力ってなんだと思いますか?
モデルのなかにもいろいろなジャンルがありますけど、僕の場合、スタートはファッションモデルだったので、あくまで服を主役に撮影をしていたんです。マネキンとして服を着る楽しさはもちろんありましたし、服を作った人には「こんなマネキンに着て欲しい」という想いがあると思うので、そこのイメージを考えていくのも楽しかったです。役者と違ってモデルは服からキャスティングをされていくので、服に合わせて動くのはモデルならでは魅力のひとつだと思いますね。役者はその“マネキン”の真逆に位置しているもの。もちろん役者にも魅力的な部分はたくさんあります。
両方の経験が、
それぞれの現場でなにか相乗効果を生み出すことは?
正直、僕の場合は邪魔をするかな…と (笑)。ただ、映像の作品でもモデルのような動きを求められることはあるので、そういう部分では役立っていますね。僕、モデルをしている時に「映像にしてもダサくない動きをする」ということを意識しているんです。カメラマンさんがどの瞬間を撮ったとしても成り立つような動きをし続けたいな、と。割とカチッカチッとポーズを決める人もいるんですけど、僕としてはそれはあまりしたくなくて。動くポーズにしても、ポーズを変える瞬間にしても「もういつでも好きに撮っていいよ」という気持ちで動くようにしています。クリエイターさんにモデルの現場で「映像っぽい動きをするね」と褒めていただけると嬉しいですね。
Dear LANDOER読者
about『ヒル』
原作を読んだ時点でハラハラとさせられるスリルを感じましたし、ドラマの台本を読んで原作のスリルがしっかりと躍動的に表現されていると感じました。登場人物たちもぶっ飛んでいてそれぞれに個性的なので、めちゃくちゃ面白いエンターテインメント作品になっているんじゃないかと思います。斬新なドラマ構成にも注目して楽しんでいただけたら嬉しいです。
WOWOWオリジナルドラマ『ヒル』
毎週金曜よる11時~WOWOWにて放送
出演:赤楚衛二 坂口健太郎
吉川愛 飯豊まりえ 栁俊太郎 板垣瑞生
佐久間由衣 ほか
原作:今井大輔『ヒル』『ヒル・ツー』
(新潮社バンチコミックス)
監督:鈴木浩介 脚本:青島武/掛須夏美
チーフプロデューサー:青木泰憲
Item Credit
・デニムジャケット¥27,500/リーバイス®︎ オーソライズド ビンテージ(リーバイ・ストラウスジャパン株式会社)
・モックネックTシャツ¥12,100
・パンツ¥22,000/共にニードルズ(ネペンテス)
他スタイリスト私物
・リーバイ・ストラウス ジャパン株式会社(0120-099-501)
・ネペンテス:東京都渋谷区神宮前5-44-1(03-3400-7227)
Staff Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:木村一真
スタイリスト:伊藤省吾(sitor)
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:吉田彩華