【山口紗弥加】 テレ東ドラマ『私の死体を探してください。』 〝悪意〟が勝手に歩き出す現代だから誰かに刃を向ける前に、「自分の〈言葉〉を探してください。」

山口紗弥加

テレ東ドラマ『私の死体を探してください。』
〝悪意〟が勝手に歩き出す現代だから
誰かに刃を向ける前に、
「自分の〈言葉〉を探してください。」

鍛錬をせずとも、学びを得ずとも、高い攻撃力で相手を傷つけることができる〈言葉〉。強い・鋭い・大きい、そんな分かりやすい暴言でなくとも、静かな言葉に〝悪意〟を宿せば、人の柔らかな心をエグるには十分すぎる武器となる。感情を描く〈言葉〉を探し、自分の輪郭を灯す〈言葉〉を求めた孤高のミステリー作家と、彼女がそっと残した鬼気迫る 〝言葉の武器〟。その切先に込められた真意を読み解く覚悟が、あなたにはありますか――?

ドラマチューズ!
『私の死体を探してください。』

テレビ東京 ドラマチューズ!『私の死体を探してください。』
©テレビ東京

「私の死体を探してください。」 ベストセラー作家・森林麻美(山口紗弥加)は、自身のブログに自殺をほのめかす投稿をして消息不明となる。しかし、ブログの更新は止まらず次々と麻美を取り巻く関係者たちの秘密が暴露されていく…。衝撃的なブログの内容に翻弄される夫・三島正隆(伊藤淳史)や、正隆との不倫関係が暴かれることに戦々恐々としながらも、麻美から約束されていた書き下ろしの新作原稿を血眼になって探す担当編集・池上沙織(恒松祐里)。手がかりが掴めぬまま、ただただ時間は経過し焦燥感に駆られていたそんな時、またもブログの更新を知らせる通知音が鳴り響く。次は一体どんな暴露か、なぜ死んだはずの麻美のブログが更新され続けるのか。麻美がブログを通して本当に伝えたかったこととは――。

- 森林麻美 -

テレビ東京 ドラマチューズ!『私の死体を探してください。』
©テレビ東京

正隆の妻でベストセラー作家。
自身のブログに自殺をほのめかす文章を投稿後、消息不明となる。

衝撃的なタイトル
「私の死体を探してください。」について

森林麻美を演じた後にこのタイトルから感じるものは、彼女の揺るぎない〈執念〉です。その〈執念〉を、ミステリー作家として彼女にしかできないやり方で、エンターテインメント作品に昇華させた実行力はアッパレとしか言いようがなくて。この作品の登場人物たちはそれぞれが身勝手な主観に囚われていて、それぞれに罪深さを感じますが、何もかもを作品に捧げようとする麻美には、つい憧れてしまう部分もあり…。その生き様を「カッコいい」と思ってしまう自分がいます。

山口紗弥加

原作『私の死体を探してください。』
×
山口紗弥加

本作のお話をいただいて原作を読みはじめたのですが、台本同様、好奇心に煽られて一気読みしてしまいました。読後、人間というものが恐ろしくなり得体の知れない罪悪感に襲われて、しばらく呆然としてしまったのを覚えています。個々の目線から見たほんの少しの解釈の違いで「こんなにも世界は違って見えるのか」と。たった一つの事実に対して、真実は人間の数だけあるようにも思えてきて、善悪の区別と境界、生きているのか死んでいるのか、はたまた被害者なのか加害者なのか、私の中の倫理が崩壊していくような感覚に陥る衝撃作でした。映像になることでそこはかとなく漂っていたものが立体的になり、この世界観がよりリアルに皆さんに迫ってくると思います。

山口紗弥加

山口紗弥加

麻美は自分自身を探している人。
自分が確立していない彼女を
どのように紐解き、演じられたのでしょうか?

私も麻美と一緒にさまよっていました。きっと麻美も、自分の中に確かに存在する“感情”に、何とか名前をつけようと必死だったはず。誰かが書いた小説を読んで、周囲の人間を観察・分析して、そこに存在しうる感情の正体を想像しながら、懸命に小説を書いていたんじゃないかって。そうやって自分自身を、感情を探し求めてきた人だから、「私が明確な答えを出さないまま演じたとしても、それはそれで間違いではないじゃないか」と、感情が表出しないよう、表現を削ぎ落すことに注力していました。とにかく心を動かさないように、彼女の目的を見失わないように。麻美が背負ってきたものの重さを大切に演じていました。

人の表出した感情を察知しながらも、
自分の感情は表さない
麻美の孤独な生き方が感じられます。

誰かと会話するときは、セリフとは違うことを考えるようにしていました。セリフは口に覚えさせて、頭の中では、相手の微表情や繊細な動き、ブレスのタイミングに“意味”というものを探してみたりして。「目の前にいる人間が発信するすべての情報を一つ残らず掴んでやる」という思いで対峙していましたね。

山口紗弥加

山口紗弥加

その勢いにも、
麻美の〈執念〉が宿っているように思います
高校生の麻美が経験した『白い鳥籠事件』が
その後の彼女の人生を大きく変えていきますよね。
高校時代を演じられた伊礼姫奈さんとは
お話されましたか?

衣装合わせのときに少しお話させていただきました。お芝居に関しては、勝手に信頼を寄せています(笑)。私自身もそうですけれど、考え方や言動にいたるまで高校時代からまったく変わらずにいられる人っていないと思うんです。私自身、伊礼さんが演じてくれた麻美をとても楽しみにしていますし、視聴してくださる皆さんには、麻美の“変化”を楽しんでいただけたら嬉しいなと思います。きっと高校時代の麻美が、現代の麻美の喜びや悲しみをより鮮明に、より深いものにしてくれるはずです。

登場人物たちの中心にある「許せないもの」が、
命を落とす引き金になってゆく本作ですが、
山口さんが生きていくうえで
「許せないもの」はありますか?

矢印を向ける相手との関係性にもよりますが、絶対に許せないものは“悪意のある言葉”。今回の作品でも麻美は〈言葉〉で正隆を攻撃します。年齢を重ねて鈍感になったのか、寛容になったのかは分かりませんが、たいていのことは許せますし、例え怒っていても何となくやり過ごせてしまうけれど、悪意のある言葉だけは心から「嫌だ」と、ハッキリ思います。

山口紗弥加

Dear LANDOER読者
ドラマチューズ!
『私の死体を探してください。』
From 山口紗弥加

伊藤淳史さん演じる正隆のクズ男っぷりをご堪能ください(笑)。今回10年ぶりにご一緒したのですが、「こんな伊藤さん見たことない!」とワクワクするような姿をたくさん目撃しました(笑)。あまりのクズっぷりに、現場で笑いが止まらなくなってしまったことも(笑)。でも不思議と愛らしさもあって。伊藤さんご自身が高い人間力をもつやさしい方だということ、正隆の悪の部分だけでなく、人としての弱さや甘えなどすべてをひっくるめて多方面に演じていらっしゃること、それらが相まってちょっぴり可愛いクズになっているのかなと。きっと麻美も頭では理解しながらも引っかかるものがあって、憎みきることができなかったんだと思うんですよね。そんな麻美の堪忍袋の緒を切ってしまった正隆が、この先一体どうなってゆくのか…。現場では、ある人物の最終話での一言に「結局この人が一番怖いよね!」と戦慄が走っていました(笑)。ぜひ、各人物の目線から物語を紐解いていただいて、人間の恐ろしさというものをとことん味わってくださいね。

山口紗弥加

山口紗弥加

やまぐち さやか

2月14日生まれ。
表出しない役の想いに耳を傾け、
掬いあげた清(さや)かな〈声〉を芝居で表白するDOER

テレビ東京
ドラマチューズ!『私の死体を探してください。』
毎週火曜日 深夜24時30分~放送
放送局ごとの詳しい放送時間は公式HPをチェック
出演:伊藤淳史
   山口紗弥加 恒松祐里 要潤
   かたせ梨乃 本宮泰風
原作:星月渉『私の死体を探してください。』(光文社刊)(「note」創作大賞2023 テレビ東京映像化賞・光文社文芸編集部賞)
監督:田中眞一 脚本:入江信吾
プロデューサー:千葉貴也(テレビ東京)

テレビ東京 ドラマチューズ!『私の死体を探してください。』
©テレビ東京

Staff Credit
カメラマン:小川遼
ヘアメイク:米澤香央里
スタイリスト:服部昌孝(服部プロ)
インタビュー・記事:満斗りょう
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