【崎山つばさ×佐藤寛太】舞台『サンソンルイ16世の首を刎ねた男〝らしさ〟の違いが心地いい凸凹ペアの仲良し対談

崎山つばさ×佐藤寛太

【崎山つばさ×佐藤寛太】
舞台
『サンソンルイ16世の首を刎ねた男
〝らしさ〟の違いが心地良い
凸凹ペアの仲良し対談

「おはようございまーす!」真っ白なスタジオに明るい声が響き渡った。声の正体は、無邪気に駆けてきた佐藤さん、そして、そんな佐藤さんを見守るように優しく微笑む崎山さんだ。インタビューが始まる前から、こぼれる笑顔に透過しているお2人の仲。舞台『怖い絵』(2022)を経て、2度目の共演となる崎山さんと佐藤さん。纏う空気は違うのに、どこかしっくりくる無二のペアに、親友役として舞台に立つお気持ちをユーモアたっぷり(時々、脱線…?)にお話いただきました。

舞台
『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』

-Story-

1766年、フランス。その日、パリの高等法院法廷に一人の男が立っていた。彼の名はシャルル=アンリ・サンソン(稲垣吾郎)。パリで唯一の死刑執行人であり、国の裁きの代行者“ムッシュー・ド・パリ”と呼ばれる誇り高い男だ。市中で最も忌むべき死刑執行人と知らずに、騙されて一緒に食事をしたと、さる貴婦人から訴えられた裁判で、シャルルは処刑人という職業の重要性と意義を、自ら裁判長や判事、聴衆に説き、勝利を手にする。父・バチスト(榎木孝明)の仕事を受け継ぎ、処刑人としての使命、尊厳を自ら確立しつつあったシャルル。おりしもルイ15世の死とルイ16世(大鶴佐助)の即位により、フランスは大きく揺れはじめ、シャルルの前には次々と罪人が送り込まれてくるようになる。将軍、貴族、平民。日々鬱憤を募らせる大衆にとって、処刑見物は、庶民の娯楽でもあったが、慈悲の精神を持つシャルルは、自身の仕事の在り方に疑問を募らせていく。そんなある日、蹄鉄工の息子ジャン・ルイ(佐藤寛太)が、恋人エレーヌ(清水葉月)に横恋慕した父を殺める事件が発生。その死は事故によるものだったが、「親殺し」の罪は免れず、ジャン・ルイは車裂きの刑を宣告される。しかし、職人のトビアス(崎山つばさ)、のちに革命家となるサン=ジュスト(池岡亮介)ら、彼の友人たちは、刑場からのジャン・ルイ奪還を目論み、成功する。この顛末を目の当たりにしたシャルルは、いっそう、国家と法、刑罰のあり方について、思考を深めることとなる。さらに、若きナポレオン(落合モトキ)、医師のギヨタン(田山涼成)ら、新時代のキーマンとなる人々とも出会い、心揺さぶられるシャルルがたどり着いた境地とは――。

-トビアス・シュミット/崎山つばさ-

チェンバロ職人。死刑宣告を受けた友人のジャン・ルイを救い出す。その後、ギロチンの開発に携わり、激動のフランス革命期を生き抜いていく。

-ジャン=ルイ・ルシャール/佐藤寛太-

蹄鉄工の息子。恋人エレーヌをめぐる事情から父親を殺害してしまうが、友人たちの助けで死刑を免れる。その後、サンソンたちと共にギロチンの開発にも携わる。

崎山つばさ×佐藤寛太

崎山つばさ × 佐藤寛太

佐藤寛太(以下、佐藤):崎山くんとは、昨年の春先まで、舞台『怖い絵』(2022)という作品で一緒で。いま思い出しても楽しかったな~。

崎山つばさ(以下、崎山):東京公演と大阪公演があって、寛太とは楽屋が一緒だったんです。楽しい楽屋でした(笑)。

LANDOER:何か思い出のエピソードはありますか?

佐藤:取材がはじまる前に話していたのは、僕の本番前の準備のしなさについて(笑)。「それで大丈夫なの!?」と思っていたと聞きました(笑)。

崎山:なんだか特殊な人種を見ているような気分ではあったけど、僕が出会ったことがなかっただけで、寛太らしくていいな、とも思っていたよ(笑)。

佐藤:あはは(笑)。楽屋のテーブルの整理整頓具合も個性が顕著に出ていましたよね。あと、崎山くんが『赤なた豆茶』という健康にいいお茶を飲んでいたので、僕はそれをしれっと貰っていました(笑)。

崎山:そうそう、僕のポットから自分のポットに入れるんです(笑)。

佐藤:「買えばいいじゃん!」と言われていたのですが、結局最後まで買いませんでした(笑)。

本番前のお話が出てきましたが、
お2人の本番前ルーティンは何かありますか?

佐藤:僕はまだ舞台の経験がそこまで多くないので、特に「これ!」といったルーティンはないです。他の皆さんはストレッチなどをされているイメージですね。

崎山:それで本番がきちんとできているからいいんだよ。僕は真逆で、がっちりルーティンを決めているタイプ。何分前にご飯を食べて…と、自分の時間を決めて本番に向けて調整していくルーティンを作っています。

佐藤:すごい。本当に真逆ですね!『怖い絵』の時、僕は割とギリギリに準備していたので、スタッフさんが呼びに来てくださっていました(笑)。

崎山:そうなんです、だから僕のほうの時間が狂うんですよ(笑)。「あれ、寛太来ないよ、どうする?」みたいな(笑)。それはそれで楽しかった思い出です。

佐藤:あと、是非書いていただきたいのが、崎山くんが作ってくれたカレーの美味しさ。差し入れでカレーを作って持ってきてくださったのですが、これがめちゃくちゃ美味しくて!

崎山:嬉しい(照)。

佐藤:また待ってますね!

崎山つばさ×佐藤寛太

お2人の仲の良さが伝わってきます(笑)。
では、役者としてのお互いの印象を教えてください。

崎山:寛太は目の雰囲気やいろいろなものを総合して、稀有な役者さんだと思います。自分の役に対して分からないことがあれば、それを納得いくまで演出家さんや共演者の皆さんに聞いて追求していくイメージです。きちんと自分のなかで昇華させて演じぬく姿勢を尊敬しています。

佐藤:前回共演させていただいた『怖い絵』は、各役者さんが立体的な立ち回りをしながら作り上げていく舞台だったんです。「こう動く」と決めているわけではなく、「この人がこう動いているから、自分はこう動いたほうがいいな」というように、すごく流動的な動きが求められる舞台で。僕のなかには、その柔軟性や機転の引き出しがない状態だったので、崎山くんの“自分のつかんだ感覚を、フィルターを介さず瞬発的に表現できるところ”をいつも「すごい」と思っていました。

演出家の白井晃さんと佐藤さんは2度目、
崎山さんは初めてですが
佐藤さんから崎山さんに
伝えておきたいことはありますか?

佐藤:僕、白井さんにめちゃくちゃ怒られますから。

崎山:あははは(笑)。怒られるの!?

佐藤:例えば、通し稽古をして一通り終わるとするじゃないですか。そうしたら「寛太、いまの全部違う」みたいな(笑)。

崎山:全部!?でもそれを言ってくださるのはありがたいね。

佐藤:はい。稽古、本当に楽しいですよ。もう白井さんに会うために稽古に行っていると言ってもいいくらい(笑)。白井さんって本当にすごいんです。ご一緒したら「はあぁぁ!」と感動することがたくさん出てくるといいますか(笑)。

崎山:あはは(笑)。でも、寛太が言うってことは間違いないね。

LANDOER:佐藤さんが「はあぁぁ!」と唸る“白井さんのすごさ”を、具体的に教えてください。

佐藤:白井さんのなかでは、僕たちが“感覚”でやっていることすべてに名前が存在しているんです。「これってこんな感じ、感覚だよね」と、名前をつけずにやっている言動のすべてを言葉で伝えてくれるといいますか。

崎山:へぇ~。じゃあすごく分かりやすいんだ?

佐藤:はい。あ、でも、分かっていないから「違う」って言われたのかな(笑)。あとは、作品をものすごく大事にされる方でもあります。そんな方と仕事ができるって本当に幸せだな、と。

崎山:それはビジュアル撮影の時、すごく感じたな。こだわりが強い方なんだな、と。

佐藤:そのこだわりゆえか、「千秋楽でダメ出しをする」という逸話を聞いたことが…

崎山:千秋楽で(笑)!?作品に対する大きな愛を感じるね。

崎山つばさ×佐藤寛太

では、白井さんの演出が初めての崎山さんから、
佐藤さんに聞きたいことはありますか?

崎山:「全部違う」と言われた時の対処法はあるの?

佐藤:対処法は分からないけれど、僕の場合は「嘘だろ!」と言ったのを覚えています(笑)。その時、僕としては「これはきたぞ」と、良い感触をつかんでいたんです。でも「全部違う」と言われて、とっさに出てきた言葉が「嘘だろ!」でした(笑)。あまりに信じられなかったんだと思います(笑)。僕、崎山くんが「全部違う」と言われるのを楽しみにしてますね(笑)。

崎山:そこは何かフォローしろよ~(笑)。

崎山つばさ×佐藤寛太

再演作品である『サンソン』ですが、
再演からの追加キャストということで
意気込みをお願いします。

崎山:白井さんとビジュアル撮影の時にお話させていただいて、白井さんからは「(前作の)橋本(橋本淳)さんには橋本さんのトビアスがあるし、崎山さんには崎山さんのトビアスがある」というお言葉をいただきました。再演の作品ではあるけれど、心持ちは新作のような気持ちで臨もうと思っています。とはいえ、もともとあった舞台に寄り添うことは忘れずに。

佐藤:僕も崎山くんに同意です。本当にあった歴史をなぞらえた作品だからこそ、当時のこと、時代の変遷をきちんと勉強してジャン・ルイを演じたいと思っています。そして、稲垣さんをはじめ共演者の皆さんとのやり取りのなかで生まれてくるものを大事にしていけたらな、と。

崎山つばさ×佐藤寛太

Dear LANDOER読者
About舞台『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』
From トビアス・シュミット役/崎山つばさ

僕は、この作品に対して“楽しみ”が一番大きいです。白井さんから千秋楽でダメ出しをもらわないことを願いながら頑張ります(笑)。たくさんの人、そしてトビアスという役、もっと言えば、作品も脚本も、すべてとの出逢いに感謝をして、皆様に『サンソン』という舞台をお届けできたらいいな、と思います。

From ジャン=ルイ・ルシャール役/佐藤寛太

僕は逆に千秋楽で白井さんからダメ出しを貰うことを目標に頑張ります(笑)。そして「あー違ったかー」と思いながら、また一緒のお仕事でリベンジができるように。今回は大好きな白井さんに褒めていただけるよう、ジャン・ルイを突き詰めていけたらな、と思います。

崎山つばさ×佐藤寛太

崎山つばさ(33)

さきやま つばさ

1989年11月3日生まれ。
瞬発的に場を読み解くバランス感覚と、
閑かに自身を貫く揺るぎない本源を兼備するDOER

崎山つばさ×佐藤寛太

佐藤寛太(26)

さとう かんた

1996年6月16日生まれ。
溢れる好奇心をコンパスに、
森羅万象、あらゆる感興を探検してゆくDOER

舞台『サンソン-ルイ16世の首を刎ねた男-』
東京:2023年4月14日(金)~4月30日(日)東京建物Brilia HALL
大阪:2023年5月12日(金)~5月14日(日)オリックス劇場
松本:2023年5月20日(土)~5月21日(日)まつもと市民芸術館 主ホール

出演:稲垣吾郎
   大鶴佐助 崎山つばさ 佐藤寛太
   落合モトキ 池岡亮介 清水葉月
   智順 春海四方 有川マコト 松澤一之
   田山涼成/榎木孝明
演出:白井 晃
脚本:中島かずき(劇団☆新感線)
音楽:三宅 純

Staff Credit
カメラマン:作永裕範
ヘアメイク:大森幸枝(崎山)、Emiy(佐藤)
スタイリスト:MASAYA(ADDICT_CASE)(崎山)、平松正啓(佐藤)
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:古里さおり