【咲妃みゆ×小関裕太】
ミュージカル『レッドブック~私は私を語るひと~』
長きにわたって愛されてきた「私」の物語に、
新たな〈彩り〉を打ち込んでゆく⸺
演じ手二人のスペシャル対談
人は孤独だ。そして、私たちが綴る文字もまた、孤独だ。どんな時代にも、どんな思想にも感化されない、自分だけの孤独な味方。独りきりの聖域で、心の芽生えを言葉に置換し、想いを繋いで一節に。数多の章を産み落としては、進むべき道を照らしてきた。私が見つけた「私」を語る〝染み〟のようなこの筆跡。時にその歪さに批判の矢が放たれようとも、高純度の真実に恐れを抱かれようとも、走り出した筆は決して止めない。誰にも干渉されない〝自分だけの物語〟を信じて、愛してあげるために⸺
ミュージカル
『レッドブック~私は私を語るひと~』

-イントロダクション-
その一冊が、恋も時代も動かした。
「私」を書くことを選んだ女性の、刺激的で愛おしい挑戦。
観終わる頃、あなたも自分を好きになるミュージカル。
『女神様が見ている』を生んだ黄金コンビ、ハン・ジョンソク(脚本)×イ・ソニョン(作曲)による韓国の大ヒットミュージカルが、いよいよ日本初演。19世紀のロンドンを舞台に、小説を書くことで自分自身を表現するアンナが、社会の偏見と闘いながら「私」として生きる道を見つけ出す物語です。多数の演劇賞を受賞した本作の演出を『王様と私』『モダン・ミリー』ほか海外ミュージカルの演出を⼿掛けた小林 香が務めます。
-あらすじ-
紳士の国・ロンドン。その中でも最も保守的だったヴィクトリア朝時代に生きる、主⼈公アンナ(咲妃みゆ)は少し変わっていた。淑女として振る舞うよりも「私」として⽣きたい―。真面目で“紳士”であることしか知らない新米弁護士・ブラウン(小関裕太)や個性的な登場人物たちとの出会いをきっかけに、アンナは、官能的な小説を書くことで自分を表現し始める。型破りで刺激的な内容は、瞬く間に評判を呼び、多くの読者を熱狂させていく。一方で、「女性のあるべき姿に反している」「社会に悪影響だ」と非難され、ついに裁判にかけられてしまう……。
ミュージカル
『レッドブック~私は私を語るひと~』
×
咲妃みゆ 小関裕太
LANDOER:韓国で大ヒットを記録したミュージカルの日本初演となります。本作への出演が決まったときのお気持ちをお聞かせください。
咲妃みゆ(以下、咲妃):第一に、韓国で誕生し、長きにわたって愛され続けている作品に携わらせていただけることを大変幸せに思っています。物語の舞台こそヴィクトリア朝時代ですが、現代を生きる私たちの心にも深く響く作品だということは、韓国での熱狂が物語っていると思います。大切に育まれてきた本作が、日本で新しい形となってスタートを切る。その一員になれることに大きな喜びを感じています。
小関裕太(以下、小関):今回、日本初演に参加させていただくにあたって、実際に韓国で観劇し、その圧倒的な熱量を受け取ってきました。改めて、韓国で大きな渦を巻き起こした本作に携わる責任感と、「自分らしく生きる」というテーマを描くこの物語を、2026年のいま、日本で上演する意味を強く感じているところです。最初に企画を伺ったときから、ずっとワクワクが止まりません。
LANDOER:日本初演ということで、ここからどんな彩りと変化が加えられていくのかが楽しみです。
咲妃:今回は小林香さんの演出ということで、良い意味で韓国版とは異なる、日本ならではの作品に仕上がっていくのではないかと期待しています。これまで作品を守り継いでこられた韓国のスタッフ・キャストの皆さまへ敬意を表しつつ、私たちは一から丁寧に創作していくつもりです。また、劇中ではたくさんの素晴らしい楽曲を披露することにもなりますので、鍛錬に鍛錬を重ねて挑みたいと思っています。
小関:本作はレプリカではなく、楽曲や脚本を大切に守りながら「日本版を新たに作る」というスタンスの初演になります。作品としてのゴールや描こうとしている時代に大きな違いはありませんが、日本版を作るにあたって、テーマや細部を再構築していく大変さが出てくると思うので、稽古期間中に香さんとディスカッションを重ねていけたらいいな、と。たっぷり設けられた稽古期間を通じて、「作っては崩す」を繰り返すハードな創作になるような気がしています。ただ、僕自身は初演やオリジナル作品に携わらせていただく機会が多いこともあり、そうしたゼロからの創作が好きなんです。今回も、難しい道を自分なりに噛み砕いて、楽しみながら精一杯の力を出し切りたいと思います。

自分に正直に生きたい『アンナ』と、
時代に正直に生きる青年『ブラウン』
LANDOER:ご自身が演じる役の第一印象と、その役がもつ魅力を教えてください。
咲妃:『アンナ』は、演じる私自身でも少々心配になるほど、どこまでもまっすぐに正直に生きている女性です。自分の身体を通して彼女の生き様をお届けできることが楽しみであると同時に、私にとって大きな挑戦にもなると感じています。「自分が正直であればあるほど、なぜか人に嫌われてしまう」。正直であることは、自分の中で決して譲れないこと。けれど、どうやらそのことが自分自身を苦しめる要因になっている。それを自覚しながらも懸命に生きる姿が、彼女の魅力だと思っています。アンナはたくさんの人と出会い、大小さまざまな変化を経験することになります。作品のテンポ感を大事にしながら、その時々の彼女の心情を丁寧にお届けできるよう、役作りに励んでいるところです。
小関:僕が演じる『ブラウン』は、とても生真面目な青年です。「紳士であることが絶対」という時代背景や、彼が生まれ育ってきた家柄の影響もあり、これまでの人生、自分の価値観こそがすべてだと思って生きてきた人。そんな彼がアンナと出会い、異なる価値観に触れることで「いままでの自分の価値観って、一体何だったんだろう?」「自分らしさって何だろう?」と、自らを見つめ直すきっかけを与えられることになります。彼は空振りを繰り返しながら、悩み、気づきを得ていくのですが、時折垣間見える不器用さやアンナに振り回される姿は、きっとチャーミングに映るはず。ロマンチックなラブコメ要素を持つ本作において、観客の皆さまをホッとさせたり、クスッと笑わせたりする重要な役割を担っている役柄だと思っています。

互いが抱く
創作への信頼度と、実力への安心感が
“チャレンジ欲”を掻き立ててゆく
LANDOER:昨年放送のドラマ『波うららかに、めおと日和』(2025)でも共演されていたお二人。当時抱いていたお互いの印象や、役者として感じていた魅力について教えてください。
小関:実はドラマの撮影中、すでに本作のお話が進行していたんです。もともと咲妃さんが出演されている作品は拝見していたので、現場でお話しできることが楽しみで。「どんな方なんだろう?」と、ドラマの現場を通して知ろうとしていました(笑)。
咲妃:私もです(笑)。ドラマ本編ではご一緒する機会がなかったので、サブストーリーでようやく同じシーンをいただけたときは本当に嬉しくて。お芝居をされている姿を拝見して、「『小関さん』ではなく、役として呼吸をされている」と感じました。些細な視線からちょっとした仕草まで、すべてのお芝居に〈説得力〉があって。演じられる瞬間、目の前から『小関さん』がいなくなるんですよ。私は、そういったお芝居をされる俳優さんにとても惹かれるので、より一層ご一緒できるのが楽しみになりました。あのときも、コメディタッチなシーンでしたよね。
小関:そうでしたね。シーンも現場のテンポも速い中で、咲妃さんがすごく目を合わせようとしてくださっていたのが印象的でした。リハーサル中は目が合うことが安心材料になったりするんです。どんな方なのかを知る最初のタイミングで、しっかりと僕の目を見ようとしてくださったのですごく安心しました。
咲妃:お互い撮影に集中しつつも、「どんな人かな?」って探り合う時間だったんだね(笑)。
小関:たしかに(笑)。僕にとってはすごく印象的な時間でしたし、本作で長期間ご一緒するうえで「あ、咲妃さんとなら大丈夫だ」と、安心感を得ることもできました。

LANDOER:お互いに探り合われているお二人がキュートです(笑)。今回はミュージカルということで歌唱シーンも見どころですが、パフォーマンス面で楽しみにされていることはありますか?
小関:先日、製作発表で初めて歌唱パフォーマンスをさせていただいたのですが、本当に安定感と安心感の咲妃さんで…!
咲妃:え!私も小関さんに同じことを思っていました!
小関:いやいや!僕は正直「咲妃さんに乗っかっていけば大丈夫だ」という思いがありました。
咲妃:あらら。そんなこと仰っていると船が沈没しますよ(笑)。小関さんのように〈柔軟性〉をお持ちの方とご一緒すると、自分自身もいろんな挑戦をすることができるので、共演者としてはすごくありがたいです。たとえそれが失敗に繋がろうと、まずは「挑戦しよう」という気持ちを持たせていただけるので。先日のパフォーマンスでのデュエットは一節だけでしたが、あの瞬間、お日様の下で歌っているようでとても楽しかったです。あとの時間は、ずっと緊張していましたけれど…(笑)。
小関:音楽監督の桑原まこさんの伴奏のもと、実は本編のテンポとは少し変えて披露させていただいたんですよ。リハーサルを通して「これもアリだね」と話し合いを重ねて。本作の楽曲は、実際に歌うとなるとすごく難しいのですが、素敵な〈旋律美〉がたくさん散りばめられているんです。クラシカルな基盤も大切にしながら、自由に表現できる幅広さを感じた製作発表でした。加えて、キャストやスタッフの皆さんともお会いできて、ますます本番が楽しみになりました。
咲妃:私もキャストの方々と一緒に歌わせていただけるのがとても楽しみです。それぞれの楽曲に人物の心情が見事に映し出されているので、ご覧になる皆さまも、スッと作品の世界観に入り込んで楽しんでいただけると思います。

それぞれの〈個性〉が紡いできた道が、
創作の交差点で交わり合う⸺
LANDOER:製作発表を拝見して、すでにカンパニーの皆さんのあたたかく素敵な雰囲気を感じました。本作のカンパニーに参加するうえで、楽しみにされていることはありますか?
咲妃:本作は総勢21名のキャストでお届けします。以前ご一緒させていただいたことがある方も多く、再び一緒に創作に励めることがとても楽しみ。そして、初めてご一緒する皆さんがどういったアプローチをされるのかも気になります。
LANDOER:これからお稽古に入られるうえで(※取材は3月上旬)、その期待感は創作への大きなエネルギーに繋がりますね。
咲妃:先日、製作発表で初めてお顔を合わせて言葉を交わした際、皆さまの雰囲気がとても和やかでホッとしました。「周囲に心を配りつつ、ご自身の〈個性〉をしっかりと活かしながらそれぞれの道を歩んでこられたんだろうな」と肌で感じられて。これからの創作に向けて、期待が高まりました。
LANDOER:小林さんの演出も楽しみですね。
咲妃:そうですね。香さんとお芝居でご一緒させていただくのは、今回で2度目。前回は2020年の『シャボン玉とんだ宇宙(ソラ)までとんだ』という作品だったのですが、「またご一緒したい!」とずっと願い続けていました。あのとき、不器用な私を受け止め共に歩んでくださった香さんには、絶大な信頼を寄せています。もう一度ご一緒できることがとても嬉しいです。本作の出演オファーをいただいた際、香さんが演出を担当されることを知って、迷わずお引き受けさせていただきました。

LANDOER:6年越しのタッグ、咲妃さんのお話からワクワクが伝わってきます。小関さんはいかがですか?
小関:僕は20~21歳にかけて上演された『DNA-SHARAKU』という作品で香さんとご一緒させていただいたのですが、オリジナルミュージカルであることに加え、作品のメッセージ要素もテクニカルに関する新しい挑戦も多く、稽古場からリハーサルまでとにかく怒涛の舞台だったんです。でも、その先頭を香さんが走り道を拓いてくださったおかげで、W主演のナオト・インティライミさんと共に必死で駆け抜けることができました。20歳そこそこの若造だった僕の言葉にも真摯に耳を傾けてくださる、余裕と実力をお持ちの本当にやさしい方なので、僕も絶大な信頼を寄せています。10年前の創作の感覚を再び味わえると思うと感慨深いですし、いまからとても楽しみです。
LANDOER:前作から今日まで、それぞれに多くの舞台を創作してこられた小関さんと小林さんの再タッグも楽しみです。キャストの皆さまとのご共演についてはいかがでしょうか?
小関:共演者の皆さまに関しては、僕は今回初めてご一緒する方ばかりなので、受ける刺激も考え方も、たくさんの「初めて」に出会えるんだろうなと思っています。製作発表で19世紀の衣装を纏ったとき、物語の舞台となる時代の空気感や日本版ならではの世界観、そこに懸ける全員の意気込みを肌で受け取り、大きな刺激を感じました。この状態のまま稽古場に入れることがとても嬉しいです。

Dear LANDOER読者
ミュージカル
『レッドブック~私は私を語るひと~』
From 咲妃みゆ
「自分の一番強い味方は、自分自身なんだ」ということを、作品を拝見して感じました。どうしたって他者からの視線を気にして生きていかなければならない現代において、〈自分〉に目を向けられていない場面って、実は多くあると思うんです。少なくとも私はそうで。そんなときにこの作品と出会い、「周りからどう思われようと、自分が何を感じ、どう行動するかが一番大切なんだ」と気づかせてもらいました。それってきっと、人を信じるうえでも大切なこと。たとえば噂で「あの人はこういう人だよ」と耳にしていたとしても、やっぱり自分で確かめたことが、何よりの〈真実〉だと思うんです。その真実をどう認識し、どう理解するのかは人それぞれ。『レッドブック』から私が受け取ったこのメッセージを、お客様にもしっかりとお届けしたいと思っています。
From 小関裕太
本作は、台本を読むたびに印象が変わる作品だと思っています。初めて読んだとき、オリジナル版の観劇後に読んだとき…読むタイミングによって、感じ取るテーマがどんどん変わっていったんです。そうして熟読を重ねた結果、現時点で僕が感じているのは、「〈鏡〉を見るきっかけをくれる物語」だということ。一歩踏み出すこと、自分と戦って超えていくこと、それらを成すうえで「自身と向き合う時間」は必要不可欠。自分の優れている部分と足りない部分を見極めるためにも、まずは自分自身を見つめなければいけない——この〈鏡〉を見る作業って、すごく苦しいことなんですよね。実際、僕自身もミュージカルの稽古中に自分の声を録音して聴き直すことがあるのですが、自分のウィークポイントを知るのってものすごく辛いんですよ。きっと『ブラウン』も、これまで信じてきた生き方や価値観が違っていたことに気づいたとき、大きな葛藤を抱くはず。とはいえ、彼の場合は新しい価値観にワクワクもしているのですが(笑)。この作品は “勇気を与えられる作品”というより、“自分らしさを見つめる勇気を抱くきっかけ”になる。そんな予感がしています。



ミュージカル
『レッドブック~私は私を語るひと~』
東京公演:東京建物Brillia HALL (豊島区立芸術文化劇場)
2026年5月16日(土)~31日(日)
大阪公演: 森ノ宮ピロティホール
2026年6月27日(土)~30日(火)
福岡公演:御園座
2026年7月4日(土)~5日(日)
出演者:咲妃みゆ 小関裕太 花乃まりあ
エハラマサヒロ
中桐聖弥 加藤大悟/田代万里生 ほか
脚本:ハン・ジョンソク
作曲:イ・ソニョン
演出・上演台本・訳詞:小林香
音楽監督:桑原まこ
Item Credit
咲妃さん
ADELLY(Office surprise)
アデリー(オフィス サプライズ)
03-6228-6477
小関さん
ジャケット¥19,800
シャツ¥26,400
パンツ¥14,300
(すべてメゾンスペシャル/
メゾンスペシャル 青山店 ☎︎03 6451 1660)
Staff Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:本名和美(RHYTHM)(咲妃さん)、
Emiy(小関さん)
スタイリスト:國本幸江(咲妃さん)、
吉本 知嗣(小関さん)
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:Mo.et



