【久保史緒里(乃木坂46)×平祐奈】映画『ネムルバカ』撮影初日からそこにいた〝入巣とルカ〟作品を飛び越え、かけがえのない存在となった2人の仲良し対談

久保史緒里(乃木坂46)× 平祐奈

映画『ネムルバカ』
撮影初日からそこにいた〝入巣とルカ〟
作品を飛び越え、
かけがえのない存在となった
2人の仲良し対談

現実にはバカみたいなことがいくつも起こる。そんな素敵な「バカみたい」に気づけるよう、できるだけ深い呼吸で日々に浮かんでいたい。夢を追ったり、努力したり、頑張る生き方は分かりやすく尊いけれど、それと同じくらい、ため息やもどかしさに飲み込まれることなく、日々を味わおうとする生き方だってとても尊い。呼吸の速度が違うように、心音が無二であるように、生きるスピードもさじ加減も、夢見るタイミングも人それぞれでちょうどいい。だってこんな不思議な世界、ネムっているその間に、新たな夢が生まれることだってあるかもしれないのだから――

映画『ネムルバカ』

映画『ネムルバカ』
Ⓒ石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会

-あらすじ-

日々をただ過ごす〈後輩〉とバンド活動に打ち込む〈先輩〉。
心地良いのにそれなりに切実な、
大学生2人のぐるぐる廻る日常!

大学の女子寮で同じ部屋に住む後輩・入巣柚実(久保史緒里)と先輩・鯨井ルカ(平祐奈)。入巣はこれといって打ち込むものがなく、何となく古本屋でバイトする日々を送っている。一方ルカはいつも金欠状態だがインディーズバンド「ピートモス」のギター・ヴォーカルとして、自らの夢を追いかけている。2人は安い居酒屋でダラダラ飲んだり、暇つぶしに古い海外ドラマを観たり…緩くもどこか心地よい日々を過ごしていた。そんなある時、ルカは大手音楽レコード会社から連絡を受け、2人の日常に大きな変化が訪れる…。

入巣柚実
as 久保史緒里(乃木坂46)

映画『ネムルバカ』
Ⓒ石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会

先輩の鯨井ルカと共に女子寮に住む女子大生。

×
鯨井ルカ
as 平祐奈

映画『ネムルバカ』
Ⓒ石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会

後輩の入巣柚実と共に女子寮に住む女子大生。
インディーズバンド・ピートモスのギター・ヴォーカル。

入巣柚実と鯨井ルカ
そして、
久保史緒里と平祐奈

LANDOER:それぞれの役柄を通して見た、お互いの役の魅力を教えてください。

久保史緒里(以下、久保):たいちゃん(平祐奈)とは、本作がはじめましてだったのですが、現場で一目見た瞬間に「先輩だ!」と思ったのを覚えています。そこから、撮影期間中はずっと先輩として見ていました。私の演じた入巣が「自分は何がしたいんだろう?」と思っているタイプなのに対して、先輩は一つ大きな夢をもっていて、それに向けて努力をしている人。その姿が、この作品のために歌やギターの練習を頑張っているたいちゃんの姿とすごく重なって。入巣にないものをすべてもっているのが先輩で、私にないものをすべてもっているのがたいちゃんだと感じていました。

LANDOER:平さんが〈先輩〉としてそこに存在していたことで、久保さんも入巣に入りこむことができたんですね。

久保:そうですね。お話をいただいて(原作を)読ませていただいたのですが、原作が大好きになった分、正直、演じることに対して不安の方が大きかったんです。でも、たいちゃんが〈先輩〉として現場にいてくれたおかげで、それまで抱えていた不安がなくなって、入巣として対峙するのが「楽しい!」という感覚になりました。

映画『ネムルバカ』
Ⓒ石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会

平祐奈(以下、平):それは私もまったく同じことを思っていて。私たち2人のクランクインが女子寮のシーンだったのですが、そのときにしーちゃん(久保史緒里)を見て「あ、入巣だ」って思ったんです。クランクインの前までは「2人で共同生活をしている役柄だし、仲良くしなきゃ」と考えていたけれど、意識的にそうする必要はまったくなくて。しーちゃんが想像以上に入巣をつくり上げてきてくれていたおかげで、最初から先輩・後輩の関係値を築くことができましたし、現場の空気感を通してだんだん距離を縮めることもできました。

LANDOER:撮影初日から、入巣とルカがそこにいたんですね。

平:そうですね。入巣とルカって、一見正反対な性格に見えるのですが、どこか似ているところがあるんです。例えば、2人とも共通して自分に自信がないところとか。入巣は、自分のやりたいことが見つからず「どうしたらいいんだろう」と必死にもがいているけれど、一方ではものすごく“母性”をもっている人で、それがルカの心の拠りどころになっているんです。すごく信頼できるし、お母さんのように包みこんでくれる“安心感”もある。しーちゃん自身にもそういった“母性”があるので、きっとそれが反映されていたのだと思います。

久保史緒里(乃木坂46)
平祐奈

ひとめぼれした
魅力あふれる原作×監督の組み合わせ

LANDOER:本作が決まったときのお気持ちを教えていただけますか?

久保:もともと阪元(阪元裕吾)監督の作品が大好きだったので、まず、監督とご一緒できることが嬉しかったですし、その原作が『ネムルバカ』だということにものすごく興奮しました。「絶対に出たい!」って。きっと自分が出演していなかったとしても、私はこの作品を観に行っていたと思います。そのくらい魅力的な作品だったうえに、今までにやったことのない役柄でもあって。絶対に挑戦したいと思って作品に臨みました。

平:私も一緒で、自分の中で「やりたい!」と思うことだらけの役柄だったので「絶対に挑戦したい!」と思いました。ずっと阪元監督の作品に出演したいと思っていましたし、ルカという役に対しても「こういう役をやってみたかった!」という想いがあって。ルカを演じられること、ギターや歌や金髪など、たくさんのチャレンジができることが嬉しかったです。

LANDOER:監督と「こういう風につくり上げていきたい」なんて会話も?

久保:どちらかというと、その場でセリフが生まれることが多かったよね?

平:うん、多かったね。

久保:居酒屋のシーンなんかは、私たちがポロッと発した言葉を、監督が「それいいですね、言っちゃいましょう」と採用してくれたりして。誰よりも監督がすごく楽しそうだった記憶があります。“その場で生まれるものを心から楽しんで作品に取り入れていく”という阪元監督のつくり方は、私にとっても新鮮な経験でとても楽しかったです。

久保史緒里(乃木坂46)× 平祐奈

探り探りの初対面から、
いつの間にか大切な親友へ。

LANDOER:最初からグッと仲良くなられたというお2人ですが、撮影を経て、第一印象が変わった部分はありましたか?

久保:確か本読みの日がはじめましてだったのですが、そのときに、たいちゃんが私の着ていた服を見て「これどこの?」と、めちゃくちゃ近い距離で話しかけてくれたんです。グイッと詰めてくれた距離の近さに、正直驚いたのを覚えています(笑)。でも、撮影がはじまり、クランクアップ後にプライベートでもよく会うようになって、どんどんたいちゃんらしさを知っていくうちに、あの日のたいちゃんは〈先輩〉として距離を縮めてくれていたのだと気づいたんです。今ではとても親しみやすくて、何でも話せる存在です。

平:実は初めてしーちゃんに会うとき、控室に戻るまで「どうやって話そう」とずっと考えていたんです。私が先輩モードに入っていたのもあって「その服すごい可愛いね!」と、めちゃくちゃフランクに話しかけてしまって(笑)。普段であればそんなことはしないのですが、あの日はルカが私をそうさせていました(笑)

久保:そうだよね(笑)。

平:クランクイン前も本読みで2回しか会えず「仲良くなれるかな…」と不安だったのですが、いざ現場に入ってみたら、それまでの印象がガラリと変わったんです…!すごくお話好きですし、現場ではずっと話してくれますし、お話もとても面白くて。最初からイメージ自体は変わらないけれど、心を開いてくれてからは感じる雰囲気が変わったかもしれないです。

平祐奈
久保史緒里(乃木坂46)

久保:人見知りでなかなか話しかけられない私に、たいちゃんは本当にたくさん話しかけてくれて。おかげで現場に入ってからは、ずっとしゃべっているほど仲良くなれましたし、カメラが回っていないところでも入巣とルカの関係性で話していました

LANDOER:入巣とルカも、寮で出逢った2人ならではの探り探りの距離の詰め方や、ぎゅっと仲良くなる瞬間があったのかもしれないですね。

平:そうですね。共通する2人の空気感があったから、アドリブもたくさん組み込めたんだと思います。現場で起こったハプニングが、そのまま本編に使われていたりもするので(笑)

LANDOER:お2人のお話から、阪元監督が“現場で生まれたもの”を大切にされていることがひしひしと伝わってきていたのですが、ハプニングまで大切にされていたんですね。

久保:今までの自分だったら、経験のないことやハプニングが起きたときに「これ、どうするんだろう…」という頭になっていたのですが、この現場では、ハプニングが起きても入巣として「先輩、何やってんだよ」と思えることが多かったです(笑)。

映画『ネムルバカ』
Ⓒ石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会

“日常”というキャンバスに“ドラマ”を描く
阪元監督作品の魅力

LANDOER:お2人が思う、阪元監督の作品の好きなところ、そして魅力を教えてください。

久保:阪元監督の『ベイビーわるきゅーれ』で言うと、殺陣やアクションシーンが素敵なのはもちろんなのですが、私はその間にある、ちさととまひろの2人の生活や会話のシーンが大好きなんです。本当にどこにでもいる女の子2人の会話、それが行き交う空間がとても魅力的で。ごはんを食べながら話すシーンなどを観ていると「この2人はずっと一緒にいろんなことをやって来たんだな」と、彼女たちのそれまでが伝わってくるんですよね。

平:私はもともと「日常映画をやりたい」という想いがあって、阪元監督作品の登場人物たちの日常にいるかのような話し方がすごく好きだったんです。まさに『ベイビーわるきゅーれ』のちさととまひろがそうなのですが、2人ともセリフっぽくない言い回しで会話を続けていくんですよ。どちらかというと、私は普段からハキハキ話すほうなので、そういった話し方の役を演じてみたくて。今回、ルカという役で阪元監督とご一緒できて嬉しかったです。

久保史緒里(乃木坂46)× 平祐奈

「楽しみながら同じ方向を目指す」
阪元組の作品づくりの姿勢

LANDOER:実際にご一緒されてみて、監督のどんな作品づくりに触れられましたか?

平:まず、監督自身が楽しんでいらっしゃると思いました。

久保:「カット」の声が、ちょっと笑っているときがあるんですよ(笑)。その声を聞くたびに「あ、監督の良いゾーンに入ったんだな」と思うことができて。一方で「感覚的に、さっきのテストの感じのほうが良いです」などの指示をいただくこともあったのですが、そういった感覚的なお話に関しても、分からない部分が一つもなかったんです。自分でも「確かにさっきのほうが良いよね」と、すべて納得したうえで進んでいくことができたといいますか。自由度の高い現場で「どれだけ監督を笑わせられるか!」といった気持ちで、とても楽しくお芝居をすることができました。

平:監督はご自身で台本を書かれていることもあって、それぞれのキャストが言いやすい言い回しにセリフを変えてくださるんです。冒頭の天丼を食べているシーンなんかは、何十回も繰り返してあの空気の会話にしてくださっていて。あと、ルカがピートモスのメンバーといるシーンでは、監督が本読みのときに、バンドメンバーの皆さんに「最近楽しいこと、面白いことはありましたか?」や「何かバイト時代の経験談はありますか?」と、実際にお話を聞かれて、そのときに出たエピソードをそのまま作中の会話に反映させていたりもするんですよ。「あ、だからこんなにリアルなんだ」と思いましたし、台本の段階でみんなが言いやすいように調整してくださるおかげで、私たちも会話がしやすかったです。段取りも細かく丁寧にやってくださるので、安心して本番に臨むことができました。スタッフさんたちの「みんなで一緒にいいものを目指してものづくりしている」という感覚にも包まれている現場でしたね。

久保史緒里(乃木坂46)× 平祐奈

必見!ほぼアドリブの○○○シーン

LANDOER:お2人が特に印象に残っているアドリブのお芝居はありますか?

平:居酒屋で入巣が酔っ払っているシーンは基本アドリブなのですが、なかなかカットがかからなくてずっと撮っていた記憶があります。

久保:テスト中から「自由にやってね!」と言われ、「それをそのままやっちゃってください」といった感じで、ずっとカメラが回っていました。実は居酒屋のシーンは、台本には2割くらいしか書かれていないシーンなんです(笑)。出てきたメニューを見て「何を頼みますか?」からはじまり、現場で段取りをしながらつくっていきました。

平:「何でも頼んでいいんだ!」ってなったよね(笑)。

映画『ネムルバカ』
Ⓒ石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会

LANDOER:それはまさに必見のアドリブシーンですね。居酒屋シーンの入巣はかなり酔っぱらっていたと思うのですが、あの酔っ払い度も久保さんのさじ加減で?

久保:そうなんです。私も演じながら「どのくらい酔えばいいんだ⁉」って(笑)。本読みの段階で、監督から「酔うシーンはめちゃくちゃちゃんとやりたいんです」という指示をいただいていたので、正直不安もあったのですが、映画を観たら自分が思っていたよりも酔っぱらっていて「あぁ、酔っぱらっているときに動画を撮られて、後々その動画を観て、私こんなに酔っていたんだ…と思う感覚ってこんな感じなんだ」と思いました(笑)。

LANDOER:すごく良い酔っ払いシーンでした(笑)。

久保:やっているうちに、楽しくなっちゃったんです(笑)。スルスルと言葉が出てきて、本当にお酒を飲んでいるんじゃないかと思うくらい楽しくて。自由度がすごく高いシーンでした。

LANDOER:目の前で久保さんがどんどん酔われていく姿を見て、平さんはいかがでしたか?

平:「しーちゃん、すごい酔うじゃん!」と思っていました(笑)。でも、それが可愛くて可愛くて。ほっぺも赤くなってきて、「入巣って酔っぱらうとこんな感じなんだろうな」と、とてもリアリティを感じるシーンでした。

久保史緒里(乃木坂46)× 平祐奈

Dear, LANDOER読者
映画『ネムルバカ』

From 入巣柚実 as 久保史緒里(乃木坂46)

この映画には、年代問わずいろんな人物が出てくるのですが、観てくださる皆さんが一度は通ったことのある人物が、誰かしらの姿で描かれていると思います。入巣を通ってルカにいく人もいれば、ルカを通って入巣にいく人もいるだろうなと。言語化できないけれど、誰もが通ったことのある気持ちを体現している人たちがたくさん出てくるので、年代問わずいろんな方に観ていただきたいですし、大学生という限られた時間の青春とともに、ライブシーンの音楽的な要素もとても素敵に描かれているので、是非、劇場で体感していただきたいと思います。

From 鯨井ルカ as 平祐奈

阪元監督はこの映画を「コメディ」とおっしゃっているのですが、そのぐらいクスッと笑えるシーンが多く、出てくるキャラクターもみんなクセが強いです(笑)。仕事終わりなどに「疲れた~」と言いながら、ふらっと入っていただいて、何も考えずにぼーっと観ていただける映画になっていると思います。結末に関しては、受け取り方が人によって違うと思うので、観てくださる方それぞれの答えを劇場に見つけに来てくださったら嬉しいです。

久保史緒里(乃木坂46)

久保史緒里(乃木坂46)

くぼ しおり

7月14日生まれ。
あますことなく〈好き〉を味わい、
千々の表現を通して多彩な情緒を呼び起こしてくれるDOER

平祐奈

平祐奈

たいら ゆうな

11月12日生まれ。
現実と物語の地平線を限りなく近づけ、
心惹く芝居で境目を彩る、〈挑戦心〉あふれるDOER

映画『ネムルバカ』
2025年3月20日(木・祝)公開

出演:久保史緒里(乃木坂46) 平祐奈
   綱啓永
   樋口幸平/兎(ロングコートダディ)
   儀間陽柄(the dadadadys)
   高尾悠希 長谷川大
   志田こはく 伊能昌幸 山下徳久/水澤紳吾
   吉沢悠
原作:石黒正数「ネムルバカ」(徳間書店COMICリュウ)
監督:阪元裕吾 脚本:皐月彩 阪元裕吾
主題歌:「ネムルバカ」/平祐奈 as 鯨井ルカ
制作プロダクション:Libertas
配給:ポニーキャニオン

映画『ネムルバカ』
Ⓒ石黒正数・徳間書店/映画『ネムルバカ』製作委員会

Staff Credit
カメラマン:YURIE PEPE
ヘアメイク:平:池上豪(NICOLASHKA) 、久保:宇藤梨沙
スタイリスト:平: Lim Lean Lee、久保:鬼束香奈子
インタビュー・記事:満斗りょう
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