【比嘉愛未】映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』「これから」の交流を紡ぐ〝キッカケ〟に〈許し〉は、未来を輝かせるエッセンス

比嘉愛未

映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』
「これから」の交流を紡ぐ〝キッカケ〟に
〈許し〉は、未来を輝かせるエッセンス

人が生まれて初めて関わる“人間関係”は、ほとんどが親子関係。親の数だけ形があり、子の数だけ形がある、最も多くの形を擁している関係が〈親子〉ではないだろうか。誰より自分に近い存在だからこそ、心のままに「許せない」と思うこともあるし、自分のことのように「幸せだ」と共鳴できることもある。あなたはどんな親ですか?そして、どんな子どもですか?あなたにとっての〈幸せ〉とは、一体なんですか?たたみ掛けるような疑問を、思わず「クスッ」と笑ってしまう愛嬌たっぷりの描写でくるんだ今作。主役の遥海を演じた比嘉さんに、作品に宿る無二の魅力と、優しくあたたかい田中組のお話についてお伺いしてまいりました。

映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』

映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』

-Introduction-

制度や法律は誰のために作られているのでしょうか?弱者を守るため?それとも、それを利用して、さらに強者になる人のため?果たして、制度や法律が、人を幸せに導くのでしょうか?モノやお金をたくさん持つことで幸せを感じる人はいるでしょう。けれど皮肉なことに、それがかえって不幸を招いてしまうことがあります。人が「求めるべき幸せ」とは、いったい何なのでしょう…。舞台は三重県。真珠養殖を営む家族に起こった相続劇!笑いあり、涙あり、そして三重県のとびきり美しい風景ありの抱腹絶倒の社会派ハートフルコメディ!事実とファンタジーを交えながら、「人の幸せの在り方」を、鋭く、コミカルに問いかけます。

-Story-

財閥管理の弁護士・成年後見人である龍之介(三浦翔平)が、母親・満代(石野真子)を亡くしたばかりの大亀家の前に現れ、遺産相続や、父親・仙太郎(三浦友和)による時価6億円の【伝説の真珠】が、娘たちの自由にならないことが発覚、巨額な財産を巡る大騒動へと発展!一方で大亀家の三女・遥海(比嘉愛未)は、母を死に追いやった原因は、真珠の養殖を手伝わせた父にあると、恨みを募らせるも、そんな父に認知症の疑いが発覚!【伝説の真珠】の争奪船が繰り広げられる中、誰もが「相続」という家族の問題に向き合った時、本当に大切なものはと何か?本当の家族の絆とは何か?に気づかされていく。大亀家、そして龍之介がたどり着いた【感動の真実】とは一体…。

-大亀遥海-

三重県伊勢志摩で真珠の養殖業を営む両親をもつ
三人姉妹の三女。

比嘉愛未

作品のお話を聞いて――
脚本家・小松江里子 × 比嘉愛未

今作の脚本家である小松さんは、私の連続ドラマデビュー作である、NHK連続テレビ小説『どんど晴れ』(2007)でご一緒して以来、時に母のように、時に姉のように私を見守ってくださってきた方で、実はいまでもよくごはんに行かせていただく仲なんです。お会いする度に「いつかまた一緒に仕事したいね」というお話をしていて。女優としてゼロからすべてを学ばせていただいたのが『どんど晴れ』という作品だったので、「成長した姿をお見せしたい!」という小松さんへの恩返しも込めて、今作へ臨みました。

監督・田中光敏 × 比嘉愛未

田中監督は小松さんとよくお仕事をされていて、小松さんから「本当に素敵な方」と伺っていた監督だったので、「いつかご一緒したいな」と思っていたんです。そうしたら、まさかの小松さんとタッグの作品に呼んでいただいて!同時に念願が叶ってしまいました(笑)。田中監督ってすごく〈静寂〉に重きを置かれる方で、監督の作品には映像の美しさはもちろんのこと、無駄のない静かさと説明をしすぎない独特の魅力があるんです。そんな田中監督が割と攻めていらっしゃるのが今回の作品。監督らしい静かな心情描写と、深いテーマだからこそ、あえて楽しく描かれている描写、その2つが複雑に、でもバランスよく絡み合っている作品になっていると感じます。

比嘉愛未

確かに、今作は『利休にたずねよ』などの
監督ならではの“洗練された〈静寂〉”に加えて、
ユーモアやチャーミングさが
散りばめられていますね。

そうなんです。いままでに観たことのない邦画、といいますか。良い意味で観る側の予想を裏切ってくれますし、刺激も与えてくれる作品になっていると思います。現場の田中監督は「こうして欲しい」や「こう演じて欲しい」といった指示は特にせず、撮影前に話し合い、その後は「はい、行ってらっしゃい!」と、私たち演者を送り出してくれる方で。例えるならば、今作の親である田中監督と小松さんが、私たち子どもを「みんなここだよ」と、見守りながら育ててくれるような現場でした。誰に対しても同じ真摯さ、まっすぐさで向き合い、現場の士気を上げてくださる本当に素敵な監督で、小松さんはもちろん、田中監督ともまたお仕事をしたいと思いました。とても大切な出逢いをいただき感謝しています。

現場の一体感が、
比嘉さんの言葉から伝わってきます。
完成作を拝見されていかがでしたか?

「ここでこう来るか!」と驚く、ジェットコースターのような作品になっていましたし、出演者の皆さんも本当に芸達者な方たちばかりで、観ていてとても楽しかったです(笑)。監督が丁寧に大切に撮影されていた、伊勢志摩の素晴らしい景色を「綺麗だな~」と思って観ていたら、突然「!?」と驚くような場面がはじまったりするんですよ(笑)。

比嘉愛未

確かに(笑)。
綺麗な自然と、
愛くるしいユーモアが共存している映画でした。
比嘉さんが遥海を演じるうえで、
意識されていたことはありますか?

一貫して揺るがないようにしていたのは、龍之介(三浦翔平)と遥海、2人に与えられているテーマ、「親との確執」です。それはきっとW主演である翔平くんも同じだったと思います。遥海の場合は義理の父親との確執、龍之介は自分の母親との確執、似ている傷を負ったもの同士が自分らしくない生き方をしているなかで、ふと出逢ってしまう。そこからが“2人の人生の再生ポイント”なのだと意識していました。

親との確執がある2人が、
奇しくも親をキッカケに出逢う。
新たな視点から
“親子”を考える作品でもありますよね。

そうなんです。今回の作品全体の大きなテーマである「成年後見制度」自体は難しいものなのですが、実はこれって誰しもが経験することでもあるんですよね。だからこそ、個人的に共感できる部分や、演じていて辛かった場面もあって。人と向き合うことってすごく難しいけれど、諦めずに向き合うことで、初めて自分のことを許してあげられるのだと思いました。そこにこそ、本当の関係性が生まれるんじゃないかな、とも。私自身、龍之介と遥海、2人から大切なことを教わりましたし、田中監督がおっしゃっていた「今回の作品の真のテーマは〈許し〉と〈愛〉」いう言葉の意味がとてもよく分かりましたね。

比嘉愛未

比嘉愛未

“親子”だけでなく、
大きく“人間関係”を描いている
作品でもあるんですね。

そう思います。人と関わって生きてきて、まったく傷がない人って滅多にいないと思うんです。みんなそれぞれに何かしらのトラウマがあって、日々、そこに生じる課題やドラマと闘いながら生きている。自分についたブロックを「外していいんだよ」と許したときに、自分自身のことも許せるんじゃないかな、と。そうすればいまより人生はもっと輝くはず。深くもシンプルなテーマが「成年後見制度」を通して描かれるので、ある意味とても分かりやすく“人間関係”を観ていただけると思います。

Dear LANDOER読者
From 比嘉愛未
映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』

映画に描かれているメッセージ性のお話などをしてきたのですが、作品をキッカケに、親や子どもに「電話してみようかな」「会いに行ってみようかな」と思っていただけたら、それだけで私はもう満足。観てくださった方が行動を起こした先で、親子の交流がさらに深まったとしたら、こんなに嬉しいことはありません。親子関係は人の数だけ違うものなので、この作品を観て、親、子ども、それぞれの立場からお互いが客観視できたらいいな、と思います。

比嘉愛未

比嘉愛未

ひが まなみ

「大切」を決して妥協しない、
柔らかく深い〈愛〉が真珠のように輝くDOER

映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』

映画『親のお金は誰のもの 法定相続人』
2023年10月6日(金)ロードショー

出演:比嘉愛未 三浦翔平
   浅利陽介 小手伸也 山﨑静代(南海キャンディーズ) 松岡依都美
   田中要次 内海 崇(ミルクボーイ) デヴィ夫人
   石野真子 三浦友和
監督:田中光敏 
脚本:小松江里子
音楽:富貴晴美
主題歌:ビッケブランカ「Bitter」(avex trax)

Staff Credit
カメラマン:友野雄
ヘアメイク:AYA
スタイリスト:後藤仁子
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:古里さおり