“悲しみに寄り添う優しさ”と
ともに生きる貴方へ

-INTRODUCTION-
数多くのアーティストにカバーされ27年にわたり愛され続けるスピッツの名曲「楓」。心揺さぶるメロディと歌詞は、聴く人それぞれに寄り添い、大切な人との別れや想い出を包み込む。その「楓」を原案に、新たなラブストーリーが誕生した。本作に挑むのは、多様な恋愛映画を手がけてきた行定勲。懸命に生きる人々の心の機微を鮮麗に映し出す。大切な人を失う運命に向き合う主人公を演じるのは、福士蒼汰と福原遥。2人を支える友人たちには、宮沢氷魚、石井杏奈、宮近海斗(Travis Japan)ら若手実力派キャストが並ぶ。オリジナルストーリーを書き上げたのは、あらゆるジャンルで常に高く評価される脚本家・髙橋泉。音楽には、優れた楽曲をCM・映画・ドラマなど多方面に提供し音楽界を牽引する若き才能の持ち主・Yaffleが担当。そして2人を繋ぐ場所となるニュージーランド。雄大な空と大地が、奇跡的な巡り合いをドラマチックに彩る。
-STORY-
須永恵(福士蒼汰)と恋人の木下亜子(福原遥)は、共通の趣味の天文の本や望遠鏡に囲まれながら、幸せに暮らしていた。しかし朝、亜子を見送ると、恵は眼鏡を外し、髪を崩す。実は、彼は双子の弟のフリをした、兄・須永涼だった。1ヶ月前、ニュージーランドで事故に遭い、恵はこの世を去る。ショックで混乱した亜子は、目の前に現れた涼を恵だと思い込んでしまうが、涼は本当のことを言えずにいた。幼馴染の梶野(宮沢氷魚)だけが真実を知り涼を見守っていたが、涼を慕う後輩の日和(石井杏奈)、亜子の行きつけの店の店長・雄介(宮近海斗)が、違和感を抱き始める。二重の生活に戸惑いながらも、明るく真っ直ぐな亜子に惹かれていく涼。いつしか彼にとって、亜子は一番大事な人になっていた。一方、亜子にもまた、打ち明けられない秘密があった─
伊藤さとり’s voice

恋愛映画の金字塔『世界の中心で、愛を叫ぶ』の行定勲監督が、『ソラニン』の脚本家・髙橋泉によるオリジナル脚本を映画化。それはスピッツの名曲「楓」をモチーフにしたある女性と双子との記憶を止める愛情物語だった。しかも冒頭5分ほどで、この物語が悲劇であることが分かってしまう。その後どんな映像が繋がるのだろうと見つめていると、まるで無かったことのような柔らかな色合いの世界で、二人の時間を慈しむカップルの姿が映し出されるのだ。けれど福士蒼汰演じる男性は、愛の巣を笑顔で出て眼鏡を外した瞬間、無表情に。これだけの演出で、映画は一気にミステリーへと変化を遂げる。いっぽうの福原遥演じる女性は、まるで夢見る少女のような笑顔で過ごしているのが対照的だ。そこから観客は、現実と向き合えない女性を愛し続ける男の覚悟を見守っていくことになるのだ。
愛する人に忘れられない人が居ると知ったら、どうするだろう。その人が自分を必要としていると気づいてしまったら、どう思うのだろう。自分を通して別の人を愛していると分かっているのに、その人のことが好きで仕方がなかったら、どんな行動をとるだろうか。鑑賞後、それについて思いを巡らせた。
ちなみに、主人公の二人は星を探すのが好きだ。
手に届かない星を見つけるのが、好きでたまらない。これが映画の二人の関係のようで切なくもなる。やがてこの男性と双子である弟の関係が回想として綴られ始めると、相手の気持ちを分かりすぎてしまう人間の優しさに打ちのめされるのだ。多分、ある程度鈍感な方が世の中は上手くいく。だからきっとこの映画は、繊細な感情に気付けてしまう人や悲しみに向き合えない人の救済になるのかもしれない。そして「楓」という曲があまりに深い愛の歌だったと映画を見て気づかされ、胸がジワッと熱くなった。
映画『楓』
12月19日(金)全国公開
出演:福士蒼汰 福原遥
宮沢氷魚 石井杏奈 宮近海斗
大塚寧々 加藤雅也
監督:行定勲
脚本:髙橋泉
原案・主題歌:スピッツ「楓」(Polydor Records)



