先人の愛によって紡がれた〈今〉を生きる私たちへ

映画『宝島』

先人の愛によって紡がれた
〈今〉を生きる私たちへ

映画『宝島』
©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会

-Introduction-

ある夜、一人の英雄が消えた。
アメリカ統治下の沖縄で、自由を求め駆け抜けた若者たちの
友情と葛藤を描く感動超大作。

戦後沖縄を舞台に、史実に記されてこなかった真実を描き切った真藤順丈による傑作小説『宝島』。審査委員から満場一致で選ばれた第160回直木賞をはじめ、第9回山田風太郎賞、第5回沖縄書店大賞を受賞し栄えある三冠に輝いた本作を実写映画化。監督を務めるのは、時代劇からアクション、SF、ドラマ、ミステリーやファンタジーまで、常に新たな挑戦をし続ける大友啓史(NHK大河ドラマ「龍馬伝」『るろうに剣心』シリーズ『レジェンド&バタフライ』)。主演には妻夫木聡を迎え、広瀬すず、窪田正孝、永山瑛太ら日本映画界を牽引する豪華俳優陣が集結。日本に見捨てられ、アメリカに支配された島、沖縄。全てが失われ、混沌とした時代を全力で駆け抜けた“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちの姿を、圧倒的熱量と壮大なスケールで描く、サスペンス感動超大作が誕生!2019年に企画が動き出してから、6年の歳月を経て遂に公開となる本作。当初開発は順調に進み2021年にクランクイン予定だったが、度重なるコロナ禍に二度の撮影延期を経て実際にクランクイン出来たのは2024年2月。スタッフ・キャスト全員が「どうしても今の時代に届けたい」という強い情熱を持ち進んできたからこそ実現した奇跡のプロジェクトがついに公開。沖縄戦や、本土復帰後を描いた沖縄に関連する映画は過去にも多く製作されてきたが、本作は名匠・大友監督のもと<沖縄がアメリカだった時代>を真正面から描き切るかつてない“本気作”。実際に起きた事件を背景に進行する物語に、当時の状況を徹底的に調べ尽くし、リアルな沖縄を再現。クライマックスのシーンでは、延べ2,000人を超えるエキストラが投入され、その群衆一人一人にまで演出を加えていく大友監督により、当時の息遣いまで再現されたリアルな感情の爆発シーンなど、想像を遥かに超えたインパクトで描かれる。東映とソニー・ピクチャーズによる共同配給のもと、ハリウッドに拠点を置くLUKA Productions Internationalも製作に参加して日米共同製作で挑む、今までの常識を覆す、革新的なエンターテイメント超大作。

-Story-

英雄はなぜ消えたのか?
幼馴染3人が20年後にたどり着いた真実とはー。

1952年、沖縄がアメリカだった時代。米軍基地から奪った物資を住民らに分け与える“戦果アギヤー”と呼ばれる若者たちがいた。いつか「でっかい戦果」を上げることを夢見る幼馴染のグスク(妻夫木聡)、ヤマコ(広瀬すず)、レイ(窪田正孝)の3人。そして、彼らの英雄的存在であり、リーダーとしてみんなを引っ張っていたのが、一番年上のオン(永山瑛太)だった。全てを懸けて臨んだある襲撃の夜、オンは“予定外の戦果”を手に入れ、突然消息を絶つ…。残された3人は、「オンが目指した本物の英雄」を心に秘め、やがてグスクは刑事に、ヤマコは教師に、そしてレイはヤクザになり、オンの影を追いながらそれぞれの道を歩み始める。しかし、アメリカに支配され、本土からも見捨てられた環境では何も思い通りにならない現実に、やり場のない怒りを募らせ、ある事件をきっかけに抑えていた感情が爆発する。やがて、オンが基地から持ち出した“何か”を追い、米軍も動き出す――。消えた英雄が手にした“予定外の戦果”とは何だったのか?そして、20年の歳月を経て明かされる衝撃の真実とは――。

伊藤さとり’s voice
伊藤さとり’s voice

愛する人が突然居なくなったら、人はどう生きていくのだろう。
「あの時代の沖縄は、今の時代とは比べ物にならないくらい死が日常の傍にあった」そう語ったのは、映画『宝島』の大友啓史監督だ。戦争や紛争が起こればそれは当たり前になり、命の価値が奪われてしまう。映画『宝島』は、突如、慕っていた人が居なくなり、心に穴が空いてしまった若者達の物語でもある。

戦後アメリカ統治下となった沖縄では、米軍の物資配給だけでは生活が困難な為、米軍基地に忍び込んで食料や備品などを盗む戦果アギヤーが登場。彼らは貧困に苦しむ住民に無償で物資を分け与えてもいたことから英雄視されていた。
映画は、そんな戦果アギヤーのリーダー・オンちゃん(永山瑛太)が米軍に追われ、突如姿を消したことから、彼を慕っていた若者達の運命を変えてしまうのだ。仲間だったグスク(妻夫木聡)は、刑事となって沖縄に蔓延る理不尽な事件に挑んでいく。統治下の沖縄では米兵が起こした事件は日本の法では裁けない。だからこそ一部の悪人は、それに目を付けて自分の欲を満たす為に、人を物のように扱い命を奪っていく。捜査しても手からすり抜ける犯人に、グスクの苛立ちは募っていくのだ。
いっぽうオンちゃんの恋人ヤマコ(広瀬すず)は、オンちゃんを心のどこかで待ち続けながら、教師となっていく。そしてオンちゃんの弟レイ(窪田正孝)は、憧れの兄の背中を追い続け、やがて違う道へと進んでいくのだ。

映画はそんな三人がオンちゃんを軸に繋がっていることも描いていく。行方不明のオンちゃんを探し続けながらもヤマコに想いを寄せるグスクとレイ。不思議なことに愛する人を失ったヤマコが、何故か一番気丈に見えるのだ。それは「待つ女」ではなく、「人生を切り開いていく女」だからかもしれないが、確かにカリスマ的存在のオンちゃんが愛した女なら、芯が強い人であるに違いない。死が身近にあった時代だから、彼女は自分が味わった悲しみや苦しみを下の世代に経験して欲しくないと先生になったのかもしれない。

もしかするとグスクとレイは、慕っていたオンちゃんの影を追うようにヤマコを見つめていたのかもしれない。愛する者を失った人々は、一体、どうやって心の穴を埋めていくのだろうか。悲しむ暇もなく時代の波に翻弄される彼らの物語は、決してフィクションとは言いきれないのだ。現に沖縄に戦果アギヤーは存在したし、米兵による恐ろしい事件も起こった。それに戦争が終われば平和が訪れるなんて大嘘だ。愛する人を失い、命の価値を奪われた記憶は、一生、心の穴として残る。そんな彼らがどうやって生きていったのか、その目で確かめてもらいたい。

映画『宝島』
2025年9月19日(金)公開

出演:妻夫木 聡
   広瀬すず 窪田正孝
   中村 蒼 瀧内公美 / 尚玄 木幡竜
   奥野瑛太 村田秀亮 デリック・ドーバー
   ピエール瀧 栄莉弥
   塚本晋也 / 永山瑛太
原作:真藤順丈『宝島』(講談社文庫)
監督:大友啓史
配給:東映/ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント

映画『宝島』
©真藤順丈/講談社 ©2025「宝島」製作委員会