何が起こるか分からない世界を
生きている私たちへ

-Introduction-
次の舞台は、大海原と火山の島——
すべての命を救うため、未曽有の大災害に挑む。
【TOKYO MER】――オペ室を搭載した大型車両=ERカーで事故や災害現場に駆け付け、患者の命を救うため自らの危険を顧みずに戦う、都知事直轄の救命医療チームである。彼らの使命はただひとつ、“死者を一人も出さないこと”。2021年にTBS日曜劇場枠で放送された「TOKYO MER~走る緊急救命室~」。鈴木亮平演じる医師の喜多見幸太は「待っているだけじゃ、助けられない命がある」という信念の持ち主。どれほど切迫した状況でも常に冷静沈着にメンバー達を引っ張り、どんな苦境にも飛び込んでいく、頼れるチーフドクターだ。立てこもり事件、トンネル崩落、爆破テロなど立ちはだかる大きな壁に果敢に挑む姿は、「新たな形の救命医療ドラマ」として多くの感動を生み、日本中を熱狂の渦に巻き込んだ。2023年4月に公開された劇場版一作目では、横浜のシンボル・ランドマークタワーを舞台として、爆発事故により193名が閉じ込められるという大災害に立ち向かう姿が描かれた。映画ならではの壮大なスケール感と、仲間同士の熱い絆に、多くの観客が胸を熱くし、興行収入は45.3億円という大ヒットを記録。続編を求める声が多くあがっていた。そして2025年、ついにMERの再始動が決定。『劇場版TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』としてスクリーンに帰ってくる。すべての命を救う――その困難な使命に直面しながらも、固い絆で繋がるMERメンバーたちの感動の物語であり、前作以上に壮大なスペクタクル作品が完成した。これまで数多の命を救ってきた彼らの次なる舞台は、大海原だ。鹿児島と沖縄にまたがる海に浮かぶ島々を巡る『南海MER』が誕生。彼らはオペ室を搭載した特殊車両=NK1を乗せたフェリーで海を渡り、医療が行き届かない離島医療に従事していた。そんなある日、とある火山島で大規模な噴火が発生!迫りくる溶岩と噴石に、全島民79名が命の危機に陥る。噴煙によってヘリでの脱出は不可能、島民のなかには子どもや高齢者も多く、移動さえ容易ではない…喜多見は、そして新しいMERメンバーたちは、すべての命を救うことが出来るのか?史上最大のミッションが幕を開ける。

伊藤さとり’s voice

映画は社会と繋がっている。だからこそ映画から学ぶべきことがあるのだ。
「TOKYO MER〜走る緊急救命室〜」というテレビシリーズは、「if」を描くことで実生活における危機管理能力を高め、救助活動について考える脚本が魅力であり、臨場感あるスリリングな映像に評価が集まるドラマだ。しかも映画第一作目では、横浜のランドマークタワーで爆破事故が起こるという想定で、時には『バックドラフト』(1991)さながら本物の火を使う撮影が行われる中、鈴木亮平演じる“どんな状況でも安心させよう”という思いからの笑顔と聞き取りやすい高めの優しげな声で、救助活動とオペ室を搭載した特殊車両で手術に挑むスーパードクター喜多見の奮闘に胸打たれた。この主人公の立ち振る舞いから、安心させることこそがパニックを防ぎ、人命救助にも繋がると学んだ。
そんなシリーズ第2弾となる映画の舞台は、トカラ列島にある諏訪之瀬島だ。この島は火山活動が活発で、何度も大噴火を繰り返してきた山が中心部に位置する。きっと映画製作チームは、その歴史もリサーチした上で、「if」の世界で、どうやったら救命救急医達が命を救えるのかを描きたかったのだろう。実際、映画では噴煙や噴石によって外部からの救出に困難が生じる点や、離島の問題と言える高齢者が多く暮らす状況下での救助活動の難しさもしっかりと捉えていた。
それだけでなく、今回の南海MER(救命救急医)のチームは、年齢も性別もキャリアもバラバラであり、そのお陰で幅広い世代の観客が、彼らの身になって考えられる設定となっている。しかも全員が喜多見のように瞬時の判断力と行動力を持っているわけではないこともしっかりと描いていた。現実的に考えても目の前に恐ろしい光景が広がっていれば、人は怖気付くのが当たり前であり、経験を経て人は強くなっていくのだ。そういった人間としての成長も本作では綴られている。
ただ私個人が正直に思った感想は、登場人物の真っ直ぐな思いに感動しつつ、いつも以上に恐怖心を抱いたのも事実だ。その理由は、現在、その島で噴煙量が中量以上の噴火が多発し、トカラ列島で地震が頻発していることが影響している。トカラ列島の住民の不安は増すばかりだろうし、映画のようなことが起これば被害がゼロとは言えない。しかし、映画とは本来、社会の鏡のような存在なのだから、このテーマの映画ならば恐怖心は大切な感情であり、私たちが災害について関心を持つことで防災への備えもすることになる。なにより、実在する場所を舞台にすることで、その土地への関心が高まり、島の住民に役立つことを考えるきっかけになるかもしれない。
奇しくも、映画と社会状況との繋がりを深く考える作品になっているが、本作が観客に与える、「目の前の人を救う」という感情は人として忘れてはいけない大切な感情なのである。
劇場版『TOKYO MER~走る緊急救命室~南海ミッション』
2025年8月1日(金)全国東宝系にてロードショー
出演:鈴木亮平 賀来賢人 高杉真宙
生見愛瑠 宮澤エマ / 菜々緒
中条あやみ 小手伸也 佐野勇斗
ジェシー(SixTONES) フォンチー
江口洋介 / 玉山鉄二 橋本さとし
渡辺真起子 鶴見辰吾 石田ゆり子
監督:松木 彩(『半沢直樹』『テセウスの船』ほか)
脚本:黒岩 勉(ドラマ『グランメゾン東京』『マイファミリー』、映画『キングダム』シリーズ、『ONE PIECE FILM RED』)
