ときめいた“あの日”があるすべての貴女へ

映画『ファーストキス 1ST KISS』

ときめいた“あの日”がある
すべての貴女へ

映画『ファーストキス 1ST KISS』
©︎2025「1ST KISS」製作委員会

-Introduction-

ラブストーリーの名手が紡ぐ、集大成にして最高傑作の誕生。

今を生きる人たちの心情をリアルにも洒脱に描き出し、日本のみならず、アジア圏でも絶大な支持を得る、脚本家・坂元裕二。是枝裕和監督『怪物』(23)では、カンヌ国際映画祭脚本賞を受賞。その物語は世界に届くことを証明した。そんな坂元が『ラストマイル』『グランメゾン・パリ』(24)の塚原あゆ子監督と組み、カンヌでの受賞後初となるオリジナル劇場映画を送り出す。この時代に問いかけるべき作品として書き上げられた、『ファーストキス 1ST KISS』。お互い好き合って結婚しながら、いつしか気持ちがすれ違ってしまった中、夫が事故死。日々に追われて悲しみに暮れる間もない妻だったが、突然のタイムトラベル! そこで若き日の夫に出会い、もう一度彼に恋をする。そしてその先に待っていたのは……。
結婚、恋愛、生活。その中で誰かと生きていくということ。言葉にすることで、カタチになったことで見えてくる、そのおかしみとかなしみ。本作もまた普遍的な物語で世界に通じるものながら、これまでにない坂元作品ともなっている。主人公・硯カンナを演じるのは、「カルテット」(17)や「大豆田とわ子と三人の元夫」(21)など、これまでにも坂元作品の世界観を体現してきた、松たか子。そして、カンナの夫・硯駈をSixTONES・松村北斗が演じる。初共演となる松と松村、そして初タッグとなる坂元と塚原が紡ぎ出す、『ファーストキス 1ST KISS』。誰もが感動を覚えながら、そこに待つのは初めて出会うに違いない、心揺さぶるラブストーリーが、世界を席巻する。

-Story-

もう一度だけ、会いたい人はいますか?

結婚して15年になるカンナは、ある日、夫の駈を事故で失ってしまう。いつしか夫婦生活はすれ違っていて、離婚話も出ていたが、思ってもいなかった別れ。しかしカンナは、駈とこちらも思ってもいなかった再会を果たす。しかもそこにいたのは、初めて出会ったときの駈。ひょんなことから、彼と出会った15年前の夏にタイムトラベルしてしまったカンナは、若き日の駈を見て思う。やっぱりわたしはこの人が好きだ。まだ夫にはなっていない駈と出会い、カンナは再び恋に落ちる。時間を行き来しながら、20代の駈と気持ちを重ね合わせていく40代のカンナ。事故死してしまう彼の未来を変えたい。過去が変われば未来も書き換えられることを知ったカンナは、思い至る。わたしたちは結婚して、15年後にあなたは死んだ……だったら答えは簡単。駈への想いとともに、行き着いた答え。わたしたちは出会わない。結婚しない。たとえ、もう二度と会えなくても——

伊藤さとり’s voice
伊藤さとり’s voice

大人の女性が愛を探す物語は、日本映画では久しく観ていなかった気がする。
だから本作を観ているうちに松たか子演じるカンナを自分に投影させながら、恋愛感情を継続させることの難しさを痛感し、過去の恋愛を思い出し、あの時、自分の何が足りなかったのかを確かめるように時代を行き来していた。そして気付けばボロボロと泣いていた。

冒頭から親近感が湧いた。
手入れの行き届いた髪でも時間をかけたメイクでもなく、もちろんヒールでもなく、パンツスタイルでガサゴソと仕事現場へと向かう中年女性。そこに「女性らしさ」は微塵も感じず、「ラクさ」を重視した彼女の思想が見えてくる。

「恋」を無くすと、面白いくらいに自分への興味も消えてしまう。セリフではなく、彼女の登場だけですべてが読み取れる見事な脚本だった。彼女を独りにしてしまった松村北斗演じる夫・駈に対して彼女自身はどう思っていたのか。それが彼の勇姿を讃える人への対応で見えてくるのもさすがの一言。

映画を観ながら疑問に思った。
人は何故、両想いの予感から付き合って間もない頃までは、あんなに胸ときめかせられるのかと。松たか子演じるカンナだって、出会って間もない頃は、松村北斗演じる駈のことを想い、ときめいていたのだ。だから彼女は彼との別れ方が悔しかったんだろうと、自分ごとのようになって考える不思議な映画だった。

タイムスリップというお決まりの映画手法を堂々と使い、夫を救おうとする妻。しかも行き着く先は二人が出会ったばかりの15年前。となれば15歳くらい下の未来の夫と出会うことになるが、ここからの演出が他の作品とは違い、新鮮で好きだ。松たか子のコメディエンヌぶりが爆発し、“チャーミングなおばさん”としてスクリーンの中を駆け回る。絶対に事故死しないようにありとあらゆる手を使って、ピュアな青年の人生を変えていこうとあたふたするのだ。それに『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985)のように一度タイムスリップしたら簡単には戻れないではなく、『ハッピー・デス・デイ』(2019)のように繰り返せてしまうタイムスリップ方式。次第に映画を観ながらあることに気付く、“おばさん”だろうがなんだろうが、何かに一生懸命に打ち込んでいる人は、幾つになっても魅力的だということを。

この映画を全世界の人々に観て欲しい。つくづくそう願う。女性は歳を取ったら終わりだなんて、誰が言ったんだ?!こんな映画を作ってくれてありがとうなのだ。
そして、意識して感謝を伝え続けることも愛を持続させるコツなのだと痛感し、精進しようと誓った。

映画『ファーストキス 1ST KISS』
2月7日(金)全国ロードショー

出演:松たか子 松村北斗
   吉岡里帆 森七菜 YOU 竹原ピストル
   松田大輔 和田雅成 鈴木慶一 神野三鈴
   リリー・フランキー
脚本:坂元裕二 監督:塚原あゆ子
音楽:岩崎太整 製作:東宝
共同製作:AOI Pro. ジェイアール東日本企画
     ローソン ニッポン放送
制作プロダクション:TOHOスタジオ AOI Pro.
配給:東宝

映画『ファーストキス 1ST KISS』
©2025「1ST KISS」製作委員会