常に自分の目を、耳を、信じるしかない私たちへ

映画『正体』

常に自分の目を、耳を、
信じるしかない私たちへ

映画『正体』
©2024 映画「正体」製作委員会

-Introduction-

信じる、君を。
信じる、この世界を。
—真実が明らかになった時、心震える極上のサスペンス

『余命10年』(2022年公開)が興行収入30億円を超える社会現象を巻き起こし、最新作『青春18×2 君へと続く道』が日本のみならず現在アジア各国で大ヒットを記録中の藤井道人監督が手掛ける、極上のサスペンスエンタテイメントが誕生。原作は、染井為人による傑作小説「正体」。日本中を震撼させた殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けたが脱走し潜伏を続ける主人公・鏑木。鏑木を演じるのは、2025年NHK大河ドラマの主役にも抜擢され国民的俳優の地位を確かなものにしている横浜流星。【5つの顔を持つ】逃亡犯という難役に挑む。藤井監督とのタッグは、『青の帰り道』、『ヴィレッジ』に続き、長編では今回で3回目となる。横浜にとって、クランクインから遡ること約3年もの間、藤井監督と脚本やセリフなどのやりとりをし準備を進めてきた作品であり、「非常に思い入れのある作品」と語る。ほかメインキャストに吉岡里帆、森本慎太郎、山田杏奈、さらに山田孝之と、本作への出演を熱望した“主演級”の豪華キャストが集結。藤井組に俳優として出演するのは、全員今回が初となる。

-Story-

【真相】に心震える——

日本中を震撼させた凶悪な殺人事件の容疑者として逮捕され、死刑判決を受けた鏑木(横浜流星)が脱走した。潜伏し逃走を続ける鏑木と日本各地で出会った沙耶香(吉岡里帆)、和也(森本慎太郎)、舞(山田杏奈)そして彼を追う刑事・又貫(山田孝之)。又貫は沙耶香らを取り調べるが、それぞれ出会った鏑木はまったく別人のような姿だった。間一髪の逃走を繰り返す343日間。彼の正体とは?そして顔を変えながら日本を縦断する鏑木の【真の目的】とは。その真相が明らかになったとき、信じる想いに心震える、感動のサスペンス。

伊藤さとり’s voice
伊藤さとり’s voice

果たしてアナタが信じていることは真実なのだろうか?
大抵の人は、見た目や生育環境、更には大きな権力を持つ者の言葉を信じてしまいがちだ。
そんな単純で浅はかな人間たちにメスを入れるが如く、藤井道人監督がこれまで何度もタッグを組んできた横浜流星主演で2020年に企画を立ち上げ、映画化を切望した作品が、染井為人の小説『正体』の映画化だった。

犯人で無いならば、なぜ逃げるのか?
その問いを投げかけるのは山田孝之演じる刑事。
確かに冒頭からショッキングな映像が映し出され、そのカットだけで横浜流星演じる主人公・鏑木の狂気さが脳裏に焼きついてしまう。しかも興味深いのは主人公ながら、後半まで彼の本心がまったく見えないのだ。それは逃亡者ゆえ変装しているせいで顔がはっきり見えないからかと思いきや、次第に横浜流星演じる主人公のほぼ動かない瞳孔のせいなのだと気づく。

鏑木自身の日常の動きも最小限、発する言葉も最小限、逃げる時だけエネルギーを振り絞る。この演技により、観客は彼の正体を探っていくことになる。まさに影の薄い男・鏑木。それでも彼と接した人物だけが無実を信じているのはリアリティそのものだ。確かに人は目で見たものを信じるし、自分に良くしてくれた人には好意的だ。このような視覚から入る情報と直接的に関わった人間の心理を交えながら、映画は人間の本質に迫っていく。改めて感じたのは、横浜流星は影のある狂気的な演技が上手いということだった。今年、MIRRORLIAR FILMS Season5の一作として公開された短編『MIMI』でそれが確信に変わったのだが、内面に怒りを秘めた鋭い目は彼にしか表現出来ないとまで思える。

それにしてもキャスティングだけで善人か悪人か、自分が俳優に持つ印象でジャッジしそうになっていることに気付かされ慄いた。柔らかな役から悪役まで演じられる松重豊や田中哲司が演じているだけで、その役に自分自身が疑惑を持ってしまう。一方、吉岡里帆や山田杏奈演じる登場人物には、誠実すぎて騙されているのでは、とまで勘繰ってしまう。
これもまた人間特有の心理である「思い込み」だ。そう考えると人間は、外見はもちろん、その人物の出演作だけで印象操作されてしまう単純な生き物なのだ。

奇しくも10月9日、一家4人殺害事件で死刑判決を受けた袴田巌さんが逮捕されてから58年後に再審無罪が確定となった今年。警察による誤認逮捕もある社会で、自分は何を信じるのが正しいかを問う作品が11月29日に公開される。

映画『正体』
2024年11月29日(金)公開

出演:横浜流星
   吉岡里帆 森本慎太郎 山田杏奈
   前田公輝 田島亮 遠藤雄弥
   宮崎優 森田甘路
   西田尚美 山中崇 宇野祥平 駿河太郎 /
   木野花 田中哲司 原日出子 松重豊
   山田孝之
原作:染井為人『正体』(光文社文庫)
監督:藤井道人 脚本:小寺和久 藤井道人
音楽:大間々昂
配給:松竹

映画『正体』
©2024 映画「正体」製作委員会