目指す〈在り方〉への指針を探している貴女へ

映画『花嫁はどこへ?』

目指す〈在り方〉への指針を
探している貴女へ

映画『花嫁はどこへ?』
©Aamir Khan Films LLP 2024

-Introduction-

すべては、あり得ない“かん違い”から始まったー。
運命のいたずらを幸せに変える感動の物語!

同じベールで顔が隠れた2人の花嫁が、花婿の家へ向かう満員列車の中で取り違えられた!? 奇想天外に始まるのは、育ちも性格も全く異なる2人の女性の想定外の人生。トロント国際映画祭でスタンディングオベーションを巻き起こし、Rotten Tomatoesでは批評家100%、観客95%という驚異の高評価をキープ、世界中の映画ファンを魅了している話題作がついに日本公開となる。山と大地がどこまでも広がる壮大な自然、家族愛に溢れる結婚式、色鮮やかなサリーや繊細な装飾が優美なジュエリー、スパイス香る屋台メシなど、物語を彩るインドの魅力にも心が躍る!予期せぬ旅を通して、全く新しい価値観と可能性を手にした2人の女性。やがて彼女たちは「幸せって何?」と自らに問いかけ、周りをも笑顔にしながら、初めて自分の手で人生を切り開いていく。逆境を幸せに変える2人に笑い泣く、感動の物語!

-Story-

インド、大安の吉日。
同じ赤いベールで顔が隠れた2人の花嫁が、
たまたま同じ満員列車に乗り合わせて―!?

2001年、とあるインドの村。プールとジャヤ、結婚式を終えた2人の花嫁は同じ満員列車に乗って花婿の家に向かっていた。だが、たまたま同じ赤いベールで顔が隠れていたことから、プールの夫のディーパクがかん違いしてジャヤを連れ帰ってしまう。置き去りにされたプールは内気で従順、何事もディーパクに頼りきりで彼の家の住所も電話番号もわからない。そんな彼女をみて、屋台の女主人が手を差し伸べる。一方、聡明で強情なジャヤはディーパクの家族に、なぜか夫と自分の名前を偽って告げる。果たして、2人の予想外の人生のゆくえは──?

伊藤さとり’s voice
伊藤さとり’s voice

「男は度胸、女は愛嬌」ということわざがある。
男はものおじしないことで凛々しく見えるし、女はニコニコ笑っていればなんとかなる、という意味だが、本当にそうなのだろうか?いつの時代からか存在するこの言葉は、今となってはやや時代錯誤。いやだって、男はこうあるべき、女はこうあるべき、という決め付けがそもそも問題ありで、性別で役割を決めてしまうこと自体、差別的でもある。

けれどその考えはもう消え去っているのだろうか。今回紹介するインド映画『花嫁はどこへ?』は決してインドだけの事情ではない。確かにカースト(身分)制度があったインドでは憲法が廃止されてもまだまだ差別は消えていないと言われており、結婚も「お見合い」が主流で、親が決めた相手と結婚するケースが多い。本作はそんなインドの結婚事情から見えてくる「女性の権利」についての物語だった。

興味深いのは、花嫁はベールで顔を隠したまま足元だけを見て、花婿の家まで向かうのに電車にも乗るということ。だからもし同じボックスシートに似たような色のベールの花嫁が居れば、花婿は花嫁を間違えることだってあり得るのだ。そこから巻き起こる花嫁取り違い騒動は、携帯電話を持っている人の方が希少な時代の村だからこそ、そのまま行方不明になってしまうという衝撃の展開を迎える。

けれど物語はシリアスというよりはコミカル。視点は花婿というより、二人の花嫁を見つめ、彼女たちの心の変化と未来への道筋を映し出していく。ひとりは親の言い付けを守り生きてきた従順なプール。もう一人は自分の意見をはっきり伝えるものの何かと謎めいたジャヤ。この二人に関わることになる大人の女性たちの発言にも、映画が「社会における女性の役割」へ疑問を投げかけていることが分かる。

ある時、プールが「何故、女は(勉強もさせてもらえず)無力でいろと言うのかしら」と疑問に思う。それについて「怖いからさ。女は畑仕事も料理も出来るし、子供も産めて育てられる。女にとって男はそれほど必要ないんだ」と答える一人暮らしの屋台の女主人マンジュ。
このセリフを冒頭のことわざに当てはめると、何かが見えてくる。どうして「賢さ」ではなく「愛嬌」なのか。私は、この映画に登場するキャラクターの中では、マンジュが一番好きだった。暴力的な夫を追い出し自立する彼女は、プールに「仕事で稼ぐ方法」=『自立の仕方』を教えるのだから。

本作は、『きっと、うまくいく』で知られる大スター、アーミル・カーンがプロデュースし、女性監督キラン・ラオと女性プロデューサーで経営者であるジョーティー・デーシュパーンデーによる女性をエンパワーメントする映画だった。「家に帰ったら、妻にはニコニコ笑っていて欲しい」という人は、一体何を望んでいるのだろう。賢さは社会を生き抜く為の大切な武器なのだから、それを賞賛してくれるパートナーなら共に生きていく意味がある。そうでないなら、一体どこを見て結婚したいと言っているのか。人生の半分以上を費やすことになる結婚は、依存でもなければ従順でもない。むしろ結婚は義務ではない。大事なのは、性別に関わらず成人したら自立を目指すこと。それを前提にした上でないと結婚した時に依存が生まれるのだ。

映画『花嫁はどこへ?』
2024年10月4日(金)公開

プロデューサー:アーミル・カーン、
        ジョーティー・デーシュパーンデー
監督・プロデューサー:キラン・ラオ
日本語字幕:福永詩乃
応援:インド大使館 配給:松竹

映画『花嫁はどこへ?』
©Aamir Khan Films LLP 2024