全ての人生を生きる、全ての〈貴方〉へ

映画『ジュリア(s)』

全ての人生を生きる、
全ての〈貴方〉へ

映画『ジュリア(s)』
©WY PRODUCTIONS–MARS FILMS–SND-FRANCE 2 CINÉMA

-Introduction-

If
あの時あの場所で
違う選択をしていたら━━?

パリ・アムステルダム・ベルリン・NY、名曲の数々で彩られる並⾏世界の4つの⼈⽣。
ピアニストのジュリアが選択した、かけがいのない“今”につながる⼈⽣とは?

-Story-

2052年パリ。80歳の誕⽣⽇を迎えたジュリアはこれまでの充実した⼈⽣に満⾜しつつも、過去を振り返り⾃分が過ごしていたかもしれない別の⼈⽣に想いを馳せていた。ピアニストを⽬指していた17歳の秋。ベルリンの壁崩壊を知り友⼈たちとベルリンへ向かった⽇、もしバスに乗り遅れなかったら?本屋で彼に出会ってなかったら?シューマン・コンクールの結果が違ったら?私が運転していたら?ジュリアが頭に描いたのは、そんな何気ない瞬間から枝分かれしていった4つの⼈⽣。そのどれもが決して楽ではないけれど、愛しい⼈たちとのかけがえのない⽇々で満たされていて眩しい。果たして、ジュリアが選び取った幸せな“今”につながるたった⼀つの⼈⽣とは?

伊藤さとり’s voice
伊藤さとり’s voice

シェイクスピアの名言に「人生は選択の連続」という言葉がある。 「(人生を)決めるのは出会いの魔力かも」、これはフランス映画『ジュリア(s)』での台詞。ジュリアという名のピアニスト志望の女子大生の人生が数秒の違いで変わり、服の選び方、表現の仕方、子供を持つ選択まで「人との出会い」で変化していく様を描いた作品だ。

今までにも「If」(もしも〜)映画は製作されていて、『スライディングドア』(1997)、や『イフ・オンリー』(1998)、『もしも昨日が選べたら』(2006)、『アバウト・タイム 愛おしい時間について』(2104)など思いつくだけでも世界各国の監督が物語を生み出している。それだけ生きる上で後悔も踏まえて魅力的な題材であり、生きていると様々な選択を迫られる。

それでも本作『ジュリア(s)』の面白いところは、細やかなまでに数秒の選択で人との出会いが変わり、その人から影響を受けて選んだ人生を数分単位に散りばめながら見せていく点だ。それも2パターンではない。まるで大木の成長のように何本のパターンにも枝分かれて描かれていくが、どこかのタイミングで同じ人とすれ違ったり出会ったりしながら最終的に4つのパターンに絞られ「偶然は必然」ということまで教えてくれる。

人生の選択は「人により影響される」が、その道を選んだのも結局は自分だと映画を通して見えてくる。行動しなかったのも自分であり、誰かに止められたとしても振り切って行動しなかったのも自分。もし自分が親になったのなら分かる、子供の人生を親が選択することはできないということ。たとえ子供の才能に気づいたのが親であっても、その先の未来の選択は子供にしかできないというところまで本作では描いている。様々な人生のジュリアを演じたルー・ドゥ・ラージュの感情豊かな演技も見事だが、本作で長編映画監督デビューを果たしたオリバー・トレイナーの視点は細やか。美しきピアノの旋律によって綴られる映画の中の人生は、現実でも同様に、88の鍵盤のように様々な人との出会いによって自分が選んだ音色により人生の道は綴られるのだ。

映画『ジュリア(s)』
2023年5月5日(金・祝)ロードショー

出演:ルー・ドゥ・ラージュ、ラファエル・ペルソナ、
   イザベル・カレ、グレゴリー・ガドゥボワ 
監督:オリバー・トレイナー

映画『ジュリア(s)』
©WY PRODUCTIONS–MARS FILMS–SND-FRANCE 2 CINÉMA