「誰かと共に生きてゆくこと」を考えたい貴方へ
-Story-
文明開化もめざましい近代日本。特殊な能力【異能】を受け継ぐ家系の者たちが代々、国を治める帝と共に、様々な災いから人々を守り続けてきた。帝都に屋敷を構える異能家系の長女・斎森美世は、能力を持たずに生まれたことで、継母と異母妹から虐げられて生きてきた。すべてを諦め、耐え忍んで生きる彼女に命じられたのは、若くして異能部隊を率いる、冷酷無慈悲な軍隊長・久堂清霞との政略結婚だった。数多の婚約者候補が三日も持たずに逃げ出したという噂の通り、清霞は美世に冷たく言い放つ
「ここでは私の言うことに絶対従え。出ていけと言ったら出ていけ。死ねと言ったら死ね−− 」
辛く当たられようと逃げ帰る場所のない美世は、久堂家で過ごすうち、清霞が悪評通りの人物ではないことに気づいていく。そして清霞もまた、美世の心遣いに触れ、いつしか2人は互いに心を通わせるようになる。幸せなど到底ないと思われた政略結婚に光が差し込む。
『望んでしまった。少しでも長くこの人と居たいと−− 』
しかしその頃帝都で、不穏な【災い】が次々に人々を襲う事件が発生。清霞はその最中で国民の盾となることを命じられる。命を賭して戦う清霞。その身を案ずる美世。【災い】の影には、思いもよらぬ陰謀が渦巻いていた。任務を全うする清霞の背後で、美世にも魔の手が迫る。やがて残酷な運命が、容赦なく二人を切り裂いていく—
願うのはたったひとつ、あなたの幸せ。
伊藤さとり’s voice
今も昔も「幸せな結婚がしたい」と願う人々は世界に溢れている。けれど「幸せ」とは人それぞれで究極論、「結婚してもしなくてもあなたが幸せならそれでいい」のだ。だけど、映画を観て至福を得られるのなら観たほうが良いだろうし、ここまでロマンチックな世界に酔いしれられるのならラブファンタジーというジャンルは効果絶大の[心の処方箋]だ。なにより今や飛ぶ鳥を落とす勢いで人気急上昇、その姿だけでハートを射抜いてしまうスター目黒蓮(Snow Man)主演作なのだからその魔術は強烈なのだ。
物語の舞台は、明治、大正時代を思わせる架空の世界。特殊能力[異能]を持つ家系の者たちがその能力を継承すべく政略結婚をし、国を治める帝と共に災いから人類を守っている社会で、ひとつの政略結婚が執り行われた。それは[異能]の家系の長女でありながら能力を持たず継母と異母妹から虐げられてきた長女・斎森美世(今田美桜)と、誰もが羨む美貌の持ち主でありながら冷酷無慈悲な軍隊長・久堂清霞(目黒蓮)との縁談だった。案の定、清霞から冷たく扱われる美世だったが、共に時間を過ごすうちに美世の健気さと優しさに触れ、いつしか清霞も心を許すように。しかし正体不明の[災い]が世界を覆い始め、二人は予想もしなかった運命の炎に飲まれていくのだった。
まるで『シンデレラ』?まるで『ハリー・ポッター』?まるで『美女と野獣』?まるで『帝都物語』?のような、世界観で描かれる『わたしの幸せの結婚』。シルバーのロングヘアに軍服姿でスクリーンに姿を現した目黒蓮は、間違いなく白馬の王子様のようであり、幸薄そうな姿で悲劇のヒロインさながらの今田美桜は、シンデレラそのもの。そこにVFXを駆使した映像美で繰り広げられる特殊能力による華麗なバトルシーン。さらには大正浪漫特有のモダンな美術や衣装が目にも美しい。ここはドラマ「アンナチュラル」や映画『コーヒーが冷めないうちに』などを手掛けてきた塚原あゆ子監督の手腕だろう。
けれど描かれるのは、能力者とそうでない者という格差による差別や、人を肩書き(階級)や外見、血筋で判断する愚かさに対する警告。だから物語の先が気になり、一気に引き寄せられてしまう。更にファンタジーというジャンルに社会問題を散りばめた顎木あくみが生み出した物語は小説とコミックになって、たちまち人気を博し、この夏アニメ化も決定。今の時代、献身的に夫を支えるというのは古い気がするけれど、この物語は夫も妻も「支え合う」がテーマ。それが「結婚生活における幸せの条件」であり「人」という文字そのものなのかもしれない。
映画『わたしの幸せな結婚』
2023年3月17日(金)全国ロードショー
出演:目黒 蓮(Snow Man) 今田美桜
渡邉圭祐 大西流星(なにわ男子)石橋蓮司 ほか
原作:顎木あくみ『わたしの幸せな結婚』
(富士見L文庫/KADOKAWA 刊)
監督:塚原あゆ子
脚本:菅野友恵