「もっと会話をしたい」と、願っている貴方へ
-Story-
殺人に使われた包丁をつくった職人は逮捕されるのか——。
技術者の未来と権利を守るため、
権力やメディアと戦った男たちの真実の物語。
2002年、開発者・金子勇(東出昌大)は、簡単にファイルを共有できる革新的なソフト「Winny」を開発、試用版を「2ちゃんねる」に公開をする。彗星のごとく現れた「Winny」は、本人同士が直接データのやりとりができるシステムで、瞬く間にシェアを伸ばしていく。しかし、その裏で大量の映画やゲーム、音楽などが違法アップロードされ、ダウンロードする若者も続出、次第に社会問題へ発展していく。次々に違法コピーした者たちが逮捕されていく中、開発者の金子も著作権法違反幇助の容疑をかけられ、2004年に逮捕されてしまう。サイバー犯罪に詳しい弁護士・壇俊光(三浦貴大)は、「開発者が逮捕されたら弁護します」と話していた矢先、開発者金子氏逮捕の報道を受けて、急遽弁護を引き受けることになり、弁護団を結成。金子と共に裁判で警察の逮捕の不当性を主張するも、第一審では有罪判決を下されてしまう…。しかし、運命の糸が交差し、世界をも揺るがす事件へと発展する——。なぜ、一人の天才開発者が日本の国家組織に潰されてしまったのか。本作は、開発者の未来と権利を守るために、権力やメディアと戦った男たちの真実を基にした物語である。
-Winnyとは?-
BitcoinやNFTなどで使用されているブロックチェーン技術の先駆けと言われた「Winny」 金子勇氏(ハンドルネームは47氏)が開発したファイル共有ソフトで、インターネット上でつながった複数のパソコンでファイルを共有する分散ファイルシステムの技術を使用したソフトである。当時ではあまり利用されていなかったP2P技術を発展させデータをバケツリレー方式で転送するため匿名性が非常に高かった。金子氏が電子掲示板サイト「2ちゃんねる」上で「Winny」を公開すると瞬く間にユーザーは増え、ピーク時は200万以上の人が使用していたと言われている。その匿名性の高さから映画やゲーム、音楽などの著作物データが許可なく流通し、著作権侵害の温床と指摘され問題となった。また、その特性を悪用したウイルスも流行。感染すると意図しないデータが流出してしまい、警察や自衛隊の内部資料、企業の顧客情報や個人所有のファイルなどが漏えい。漏洩したファイルは多数のパソコンにコピーが残ってしまい回収不能となり、当時の安倍官房長官は会見を開き「情報漏洩を防ぐ最も確実な対策は、パソコンでWinnyを使わないことです。」と呼びかけるなど社会問題となった。
伊藤さとり’s voice
革新的なソフトウェア「Winny」が開発され、それを利用し映画や音楽、ゲームなどを違法アップロードする者が増えたことから、違法コピーした者だけでなく、開発者が逮捕された「Winny事件」。2004年に開発者の金子氏は逮捕され、彼の無罪を証明すべく結成された弁護団と金子氏の裁判は世界を揺るがす事件へと発展した。それは、ソフトウェア開発をしただけの天才プログラマーの裁判結果次第で、未来のプログラマー達の道も閉ざされてしまうという責任も担っていたからだ。
この実話をベースにした本作『Winny』。天才プログラマー役に東出昌大、彼の弁護を担当する弁護士には三浦貴大という顔合わせが実現、他にも吉岡秀隆、渡辺いっけい、吹越満、吉田羊という味わいのある俳優陣というのも物語に深みを与えている。
世の為になると信じて生み出したソフトウェアが悪用され発案者までもが逮捕・起訴されてしまう理不尽。法に打ち勝つために弁護士たちはどんな手段を使ったのかも大きな見所となっている。
興味深いのは弁護士チームが裁判に勝訴するために頭を使う戦略の数々。特に吹越満演じる先輩弁護士の弁論は圧巻。あるシーンで、「相手に話させるために必要なテクニック」を語るのだが、これはインタビューや日常会話でも役に立つ。
「話させる」とは会話する側が話すのではなく、語尾に「?」をつけて「問う」ということ。もし会話を広げられないと悩んでいるのなら「〜なんですか?」と聞き返す練習をしておくと自然と会話は続き、相手を知ることができる。ただし、質問の前に相槌は必ず入れないと尋問のようになるので関係を深めたいのなら語尾は柔らかくクエスチョンで。
映画『Winny』
2023年3月10日(金)全国ロードショー
出演:東出昌大 三浦貴大
渡辺いっけい/吉田羊 吹越満
吉岡秀隆 ほか
監督・脚本:松本優作