〈夢〉という恋に落ちた貴方へ
-映画『エンドロールのつづき』-
-Introduction-
彩るのは珠玉のインド映画の数々。
夢をつかんだ少年の、
驚くべき実話から生まれた感動作!
チャイ売りの少年が映画と出会い、やがて世界で活躍する映画監督になる――。監督自身の驚くべき物語を映画化し、本年度アカデミー賞®国際長編映画賞インド代表に選出!世界中の映画祭で5つの観客賞を受賞し、さらにバリャドリード国際映画祭では最高賞にあたるゴールデンスパイク賞をインド映画として初めて受賞するなど、世界中の映画祭から喝采を浴びた話題作。大きな夢を抱く主人公には3,000人の中から選ばれた新たな才能、バヴィン・ラバリ。そして“映画”への溢れんばかりの愛情を込めて本作を監督したのは、主人公のモデルでもあるパン・ナリン。観客が一体となった映画館、スパイスたっぷりの手料理、陽気な音楽とダンス…どこか懐かしいインドの魅力が満載で贈る、幸せで希望溢れる物語が誕生した。
-Story-
チャイ売りの少年が
恋に落ちたのは“映画”だった。
9歳のサマイはインドの田舎町で、学校に通いながら父のチャイ店を手伝っている。厳格な父は映画を低劣なものだと思っているが、ある日特別に家族で街に映画を観に行くことに。人で溢れ返ったギャラクシー座で、席に着くと、目に飛び込んだのは後方からスクリーンへと伸びる一筋の光…そこにはサマイが初めて見る世界が広がっていた。映画にすっかり魅了されたサマイは、再びギャラクシー座に忍び込むが、チケット代が払えずにつまみ出されてしまう。それを見た映写技師のファザルがある提案をする。料理上手なサマイの母が作る弁当と引換えに、映写室から映画をみせてくれるというのだ。サマイは映写窓から観る色とりどりの映画の数々に圧倒され、いつしか「映画を作りたい」という夢を抱きはじめるが――。
伊藤さとり’s voice
映画を観たその日から、色のついたガラスに興味を持つ。やがて沢山のマッチ箱の絵柄を使って想像力から物語を作り出す。そして光に興味を持つ。それが映画を愛する始まり、と主人公の行動から映画愛を伝えるインド映画『エンドロールのつづき』。
もしかしたら本作は、エンニオ・モリコーネが作曲したテーマ曲と共にジュゼッペ・トルナトーレが生み出す物語も愛された名作『ニュー・シネマ・パラダイス』のインド版と言えるかもしれない。だけどここにはドラマチックなストーリーと艶やかな衣装、そして歌とダンスで感情を表現するインド映画に魅了された少年が、インドという階級社会の中で、映画作りへの溢れんばかりの好奇心で挑戦する姿が映し出されることで、また違ったメッセージが見えてくる。それは“ゼロから生み出す想像力が奇跡を作る”というものだ。
主人公は本作の監督であるパン・ナリンであり、彼の実話をベースに描かれる幼少期の物語。緑豊かな小さな町に住むチャイ売りの少年が、家族で行った映画館での体験から“恋に落ちて”映画館通いを初め、やがて映画製作に興味を持つという内容だ。
実は、何度か同じセリフが登場する、それは「発て」という言葉だ。
9歳のサマイ少年がある日、学校の先生にどうしたら映画監督になれるのか尋ねるのだ。すると先生はこう答える。「何かやりたいなら必要なことが2つある。1つは英語を勉強すること。それとこの町を出ること」。
インドで大衆相手の仕事を得る為には英語が必須であり、その為には都市に出る必要があると語っているのだ。そこには、インドの富裕層は英語が話せるという生活の違いも意味していた。その後、「発て!そして学べ」とサマイに言い切る先生。
本作が第95回アカデミー賞国際長編映画賞インド代表に演出された理由もここにある。自分の現状を知った上でやれる限りのすべてにトライすること、そんなひたむきな姿に応援してくれる人が必ずいるというテーマ性。そして何より世界中の監督や映画をリスペクトする本作は、間違いなく映画愛に溢れているのだ。世界は繋がっているのだから世界に向けて映画を作る。結果、パン・ナリン監督の作品は世界各国の映画館で上映されるのだから。
映画『エンドロールのつづき』
2023年1月20日(金)新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町、
シネ・リーブル池袋ほか全国公開
監督・脚本・プロデューサー:パン・ナリン
プロデューサー:ディール・モーマーヤー
出演:バヴィン・ラバリ リチャー・ミーナー
バヴェーシュ・シュリマリ ディペン・ラヴァル