【桜田ひより】映画『バジーノイズ』〈好き〉にまっすぐ、故に、破天荒誰よりも近くで『潮』に寄り添い、理解を深めたあったかい役づくり

桜田ひより

映画『バジーノイズ』
〈好き〉にまっすぐ、故に、破天荒
誰よりも近くで
『潮』に寄り添い、理解を深めた
あったかい役づくり

〈好き〉が光った瞬間、あなたの目に映る景色、聴こえている音、感じている風、すべてを覗いてみたくなった。どんなものに心惹かれるのか、どんなことに傷つくのか、そのひとつの理由に〝私〟は存在するのか。心のままに生きていてほしいのに、〈好き〉が加速させる私のちいさな欲張り。不器用でみっともない〈好き〉の副作用がノイズとなって耳を乱しても、きっと、あなたの〝音〟に近づかずにはいられない。誰かを、何かを〈好き〉な私に贈る、さみしくて、あったかい青春物語。

映画『バジーノイズ』

映画『バジーノイズ』
©むつき潤・小学館/「バジーノイズ」製作委員会

大人気ドラマ「silent」「チェリまほ」の風間太樹監督が
行き先の見えない若者たちの〈出会い〉と、
未来を見つける姿を描く圧倒的共感ストーリー

2022年、心に傷を抱えた若者たちの想いを、大切なものに触れるように優しく描き、社会現象を巻き起こした爆発的人気ドラマ「silent」の監督、風間太樹。2020年に放送されたドラマ「30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい」も、日本にとどまらずアジアを始め各国に配信されSNSを席巻する大反響となった。その後も『チェリまほ THE MOVIE』のタイトルで映画化され、熱狂的なファンを獲得している。今や次世代監督の中でも、圧倒的共感度で観る者ひとりひとりの存在を肯定する映像作家として、唯一無二の輝きを放っている。さらに撮影・照明・録音スタッフなど「silent」スタッフが再集結。そんな風間監督の世界中が心待ちにする最新作が完成した。原作はビックコミックスピリッツにて2020年まで連載された、むつき潤氏の「バジーノイズ」。現代の音楽界のリアルが詰まっていると、King Gnuの井口理氏を始めとする一流ミュージシャンたちから絶賛コメントが寄せられた青春コミック。作者のむつき氏は、YOASOBI「三原色」スペシャルムービーのコンセプトアートを担当するなど、エッジーなメディアミックスでもエンターテインメントを盛り上げている。

-あらすじ-

何もいらない。
頭の中に流れる音を、形にできればそれでいい。

そう思っていた清澄は、好きなこともやりたいこともなく、他人の「いいね」だけを追いかけてきた潮に出会う。「寂しくって、あったかい」清澄の音楽に初めて心を震わせた潮は、たくさんの人にそれを届けたいと、SNSでバズらせる。潮に導かれバンドを組んだ清澄が、仲間と音を創り出す喜びに目覚めた時、突然、潮が姿を消す。心に開いた空洞に、どう対処していいか分からない清澄を、音楽はさらに新たな道へと導こうとしていた──。

桜田ひより

映画『バジーノイズ』× 桜田ひより

私がこの作品から感じたのは、「何かに打ち込んでいる人って、すごく魅力的だな」ということ。清澄をはじめとする登場人物のみんなが奏でる楽曲の素晴らしさはもちろん、人間のぬくもりや、想いの矢印など、観る視点によっていろいろなことを感じられる物語だと思いました。

不器用で予測不可能、
けれどたまらなく素直で愛おしい『潮』を
どのように築いていかれましたか?

潮は、窓ガラスを割って人の部屋に入るような破天荒な女の子だったので、最初は「観ている方が引いてしまうかも…」といった心配があって。でもそんな潮だからこそ、どこか目が離せなかったり、なんとなく気持ちが伝わってきたり、共感してもらえたりする部分をつくりたかったんです。そのために私ができることは、彼女の言動をきちんと分析して寄り添うこと。「こういった思いでこの行動をしたんだ」「過去にこんなことがあったから、この行動をしたんだ」などと、客観的に見るのではなく「そういう気持ちになっちゃったんだもん。しょうがないよね」と、彼女に寄り添って理解を深めることを大切に役づくりを行いました。

桜田ひより

桜田さんの潮に対する〈愛〉が伝わってきます。
撮影を通して、どんな潮の一面が見えてきましたか?

潮は強い子だけれど、その強さの奥には人とは違う“彼女だけの繊細さ”があるんです。監督と一対一でお話をさせていただく機会があったのですが、そのときに「潮ってすごく女の子らしい子なんだ」と、彼女の繊細さが見えてきて。何かを推したり、自分の〈好き〉に対してまっすぐだったり、自分が気づかないところで自分自身を苦しめて、息苦しくなってしまったり…どうにもできないことに直面してしまったときの行動が、〈好き〉だからこそ破天荒になってしまうんですよね。きっと潮の姿を見て、彼女のまっすぐで不器用な気持ちに共感できる方がたくさんいると思います。

潮の素直さと不器用さが愛らしく映った理由が
いまのお話で分かったような気がします。
ちなみに桜田さんは
潮に共感したところはありましたか?

ありました。私も潮と同じで、のめり込みすぎると自分から離れてしまうタイプなんです。例えば、作品に入っている期間は台本に集中するため、大好きな小説や映画などにあまり触れないようにしていたり。作品に入っていないときは、衣食住を忘れてしまうほど小説や映画、ドラマなどに夢中になるタイプなのですが、撮影期間中は「台本があるから一旦切り替えよう」と、あえて離れるようにしていて。潮も清澄にのめり込んでしまったら、頭の中が清澄だらけになることが分かっていたから一歩引いたんだろうと思います。

桜田ひより

桜田ひより

共演者には
初めての方から再共演の方まで
いらっしゃいましたが、
撮影現場の雰囲気はいかがでしたか?

清澄役の川西(川西拓実)さんとは初共演だったのですが、川西さんがとても人見知りな方だったので、撮影のたびに積極的に話しかけてコミュニケーションをとることを心がけていました。現場で『ドキドキクイズ』という、何かひとつの物事に対してお互いの意見を「せーの!」で提示して、その意見に決めた理由を話していくゲームを編み出したのですが、そのゲームを通してコミュニケーションがとれたような気がします。大浜陸役の栁(栁俊太郎)さんとは二度目の共演。頼りがいがあって、とても心強かったです。ベースを演奏されている姿を観客としてステージの下から見ていることが多く、「世界一ベースが似合うんじゃないか」と、お話していました(笑)。

劇中の演奏シーン、とても素敵でした。
『ドキドキクイズ』は清澄と潮の交流とも重なる
ほほえましいエピソードですね(笑)。

川西さんとは徐々にコミュニケーションをとっていくうちに、少しずつ打ち解けられたような気がしています。その変化は作中の清澄と潮にもリンクするものがありましたし、順撮りで進む現場だったからこそ、気持ちの変化に身を任せることができてとてもお芝居しやすかったです。

桜田ひより

役者として対峙した
川西さんはいかがでしたか?

普段はとても気さくにお話してくださるお優しい方なのですが、いざ撮影になると、本当に目の前に清澄として現れるんです。一緒にお芝居をしながら「川西さんにしか演じられない清澄がある」と、思っていました。きっと清澄が川西さんでなかったら、潮も違う潮だったと思います。本作の清澄と潮のキャラクターのバランサーを担ってくださり、ありがたかったです。

作品を観ていて、
タイプが違う2人の変化に
心地よい流れを感じました。
桜田さんが個人的に好きなシーンはどこですか?

私、お気に入りのシーンがふたつあって。ひとつは、海で潮と清澄が2人で音楽を作っているシーン。もうひとつは、海で音楽を演奏している清澄の前で潮が無邪気にはしゃいでいるシーン。2シーンとも、切ないけれどどこかあたたかくて、2人にとって心地の良い時間が流れていることが伝わってくるシーンなんです。まったく違う波をもつ2人が一本の線で繋がり、通じ合っているように感じられるといいますか。性別を超えた人間的な〈好き〉が2人の間にはあって、その感情にとても共感していました。潮が清澄に対して恋愛感情があったかどうかは、観てくださる皆さんの判断に委ねたいと思っています。

風間監督が生み出す
“切なさとあたたかさの共存”が
『バジーノイズ』にも散りばめられていました。

風間監督の作品には、“さみしいけれど、あたたかい空気”が常にあるんですよね。潮、清澄、それぞれの人物が出ていないシーンでも、観ている側が「あの人はどうしているんだろう?」と、ふと考えてしまうような、“その場にいない人に向けられる意識”を強く感じる描き方をされるんです。

桜田ひより

『silent』ぶり、2度目の風間監督作品ですが、
監督とは現場で
どのように作品を紡いでいかれましたか?

先ほどちらっとお話したのですが、潮の清澄に対する気持ちについてたくさんお話させていただきました。「彼女の〈好き〉は、恋愛としての好きなのか」「この段階ではどんな気持ちだったのか」など、私が疑問に思ったことをお聞きすると、監督もその都度しっかり考えてくださって。監督の考えを聞いていると「感性が似ているな」と、共感できる部分がとても多く、お話をしているうちに自分なりの答えを出すことができていました。きっと、監督がさりげなく導いてくださっていたのだと思います。

Dear LANDOER読者
映画『バジーノイズ』
From 桜田ひより

まずは音楽映画として、心動かされる楽曲をたくさんお届けできると思います。パフォーマンスシーンは実際にキャストの皆さんが演奏されているので、圧巻の迫力を感じていただけると思いますし、グッと引き込まれる瞬間もあるはずです。その一方で、登場人物それぞれの出会いから描かれる、人のぬくもりや、人と人の想いの交差に少しでも共感していただけたら嬉しいです。ひとりでも、大切な人とでも、是非、映画館に足を運んで観ていただきたいと思います。

桜田ひより

桜田ひより

さくらだ ひより

12月19日生まれ。
凛と見据えるプロの瞳、甘い微笑み、
時折見せるイタズラな笑顔、
追いつけないほどの“ときめきの日和”をつれて来るDOER

映画『バジーノイズ』
5月3日(金・祝)公開

出演:川西拓実(JO1) 桜田ひより
   井之脇海 栁俊太郎
   円井わん 奥野瑛太 天野はな 駒井 蓮
   櫻井海音 馬場園梓 / 佐津川愛美 テイ龍進
監督:風間太樹
原作:むつき潤「バジーノイズ」(小学館「ビッグスピリッツコミックス」刊)
music concept design:Yaffle
主題歌:「surge」清澄 by Takumi kawanishi(JO1)
    ©LAPONE Entertainment
配給:ギャガ

映画『バジーノイズ』
©むつき潤・小学館/「バジーノイズ」製作委員会

Staff Credit
カメラマン:興梠麻穂
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:Mo.et