【栗山千明】映画『八犬伝』「稀代の怨霊」と謳われる『玉梓』滝沢馬琴が〝悪の権化〟に宿した2つの恐ろしさを演じて

栗山千明

映画『八犬伝』
「稀代の怨霊」と謳われる『玉梓』
滝沢馬琴が〝悪の権化〟に宿した
2つの恐ろしさを演じて

『八犬伝』が生まれて210年、「稀代の怨霊」と言われてきた『玉梓』。滝沢馬琴が〝悪の権化〟として描いた玉梓の怨みの出ずるところを探す時、ふと彼女も一人の人間だったことに気づく。人は弱く、時に脆い。そんな人間の〈隙〉を利用し陥れてゆく玉梓こそ、哀しき人間の理解者であり経験者なのかもしれない。理不尽な渦に巻き込まれ、正直者が報われないことも多い【実】の世界に、逞しい【虚】の光を放ち続けた馬琴の願い。どうか人々の哀しみが、その光によって照らされますように――

映画『八犬伝』

映画『八犬伝』
©2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.

―【虚】と【実】が交錯する
前代未聞のエンターテインメント超大作!―

里見家の呪いを解くため、八つの珠に引き寄せられた八人の剣士の運命をダイナミックなVFXで描く「八犬伝パート」と、その物語を生み出す作家・滝沢馬琴と、浮世絵師・葛飾北斎の奇妙な友情を通じて描かれる「創作パート」が交錯する新たな『八犬伝』。失明してもなお、口述筆記で書き続け、28年の歳月を費やし106冊という超大作を書き上げた馬琴の偉業は、日本文学史上最大の奇跡として今なお語り継がれる。物語を生み出す苦悩と葛藤と共に作者の目線で描かれる『八犬伝』は、未だかつてない映画体験へと導いてくれる。

-あらすじ-

江戸時代の人気作家・滝沢馬琴は、友人の絵師・葛飾北斎に、構想中の物語「八犬伝」を語り始める。里見家にかけられた呪いを解くため、八つの珠を持つ八人の剣士が、運命に導かれるように集結し、壮絶な戦いに挑むという壮大にして奇怪な物語だ。北斎はたちまち夢中になる。そして、続きが気になり、度々訪れては馬琴の創作の刺激となる下絵を描いた。北斎も魅了した物語は人気を集め、異例の長期連載へと突入していくが、クライマックスに差しかかった時、馬琴は失明してしまう。完成が絶望的な中、義理の娘から「手伝わせてほしい」と申し出を受ける──。失明してもなお28年の歳月をかけて書き続けた馬琴が「八犬伝」に込めた想いとはー

-玉梓-

映画『八犬伝』
©2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.

闇を司る八犬士最大の敵。
伏姫の父・里見義実に打ち首にされ、その怨念で里見家を末代まで祟る。

「稀代の怨霊」と呼ばれている玉梓。
栗山さんの目にはどのような女性に映りましたか?

八犬伝の作者である馬琴(滝沢馬琴)先生が思う「絶対的悪」のカタチが『玉梓』なんだろうな、と感じました。個人的に玉梓は二つの怖さを持ち合わせていると思っていて。一つは、人の弱さを知っているからこそ、それにつけ込んで裏で操るようなしたたかで〈知性的〉な怖さ。もう一つは、何を考えていて、何をしでかすかまったく分からない〈未知〉の怖さ。力や強さを駆使した怖さではなく、人間のイヤな感じが詰まった予測不能な「悪」をもっている女性だと思いました。

栗山千明

栗山千明

確かに。
玉梓の戦法は
フィジカル的な闘い方ではないですよね。
そんな「絶対的悪」とされる
玉梓を演じるにあたって、
どのように役を築かれましたか?

リアリティのあるお芝居というよりは、「こうやったら怖いかな」「こうしたら不気味かな」と、玉梓の怖さを思い描きながら楽しく演じさせていただきました。玉梓が怨霊だということ、監督から「【虚】のお芝居はオーバーに」とのご指示があったこと、リアルとかけ離れた物語だったからこそ「振り切ってやっていいんだ!」という安心感があったんです。特殊メイクや衣装など、人間離れしたビジュアル面にも助けていただきました。

栗山千明

栗山さんのお顔が『玉梓』として
徐々に変化してゆく特殊メイクも、
見どころの一つでしたね!

私自身、コスプレのようにビジュアルが変わるのが好きなので、玉梓もとても楽しくやらせていただきました。撮影の時に、特殊メイクの状態でたまたまワンコに会ったのですが、すごく怯えてしまって…!ブルブル震えさせてしまいました(笑)。そんな、ワンコも怖がるほど迫力あるビジュアルになっています。

ワンコも驚きの圧巻の変身ですね(笑)。
そんな特殊メイクに加えて、
VFXもこれまた圧巻でした。

VFX もすごかったですよね。撮影中は【実】パートを演じられている方々とお会いする機会がなく、八犬士の方々とも撮影が一緒になることがほとんどなかったので、皆さんがどのようにお芝居をされているのか、初号を観るまで知らなかったんです。お客様と同じ感覚で完成した作品を楽しませていただいたと同時に、改めて【虚】と【実】の両方がある意義と、「監督が思い描いていたのはこういうことか!」という答え合わせができて感動しました。【虚】にはエンターテインメント性や、アクションやキャラクターたちが織り成すファンタジックな面白さがあり、【実】には『八犬伝』製作の背景や、馬琴先生、先生を取り巻く方々のお芝居の重みがあって。そのバランスが絶妙で、あっという間の2時間半でした。

栗山千明

栗山千明

【実】の物語では
「現実では報われない〈正義〉を、
せめて【虚】の世界では届けたい」という
馬琴の信念が描かれていました。
エンターテインメントの世界を生きる栗山さんにも、
通ずるものがあるのではないでしょうか。

本作を通して「意義のあるエンターテインメントを提供できているかな」と、振り返るような想いでした。私自身、漫画やアニメに触れて、実際にはありえないモノに夢を見たり、憧れたり、元気をもらったりして救われた経験が何度もあるので、自分も役者として誰かを救えるようなエンターテインメントを提供できていればいいなと思いましたし、改めて意義のあるお仕事をさせていただいているのだと実感しました。時に誰かに寄り添ったり、時に誰かの気持ちを代弁して想いを晴らしたり、それができるお仕事が《エンターテインメント》なのかな、と思います。今回、私が演じた玉梓は悪い役でしたが、〈正義〉を描くためには〈悪〉が必要なので、馬琴先生の信念を描くための一つのキーになれていたら嬉しいです。

栗山千明

Dear LANDOER読者
映画『八犬伝』
From 栗山千明

「八犬伝」の華やかなアクションやファンタジーはもちろん、その裏に秘められた馬琴先生たちの物語まで描かれている本作。時代物と聞くと「ちょっと難しそうだな…」と感じる方もいらっしゃると思うのですが、“日本のファンタジーの原点”というだけあって、魅力的なキャラクターがたくさん登場しますし、「八犬伝」を知らない方でも観やすい描き方になっていると思います。私も本作に関わるまで「八犬伝」の詳しいストーリーを知らなかったのですが、2時間半があっという間に感じるほど楽しませていただきました。きっと観る方の心に届くものがある、観応えのある作品になっているはずです。是非、皆さんにもこの『八犬伝』の世界を劇場で体感していただきたいな、と思います。

栗山千明

栗山千明

くりやま ちあき

10月10日生まれ。
声にならない想いを真摯に見つめ、
千紫万紅の芝居で【実】の世界に明りを灯すDOER

映画『八犬伝』
2024年10月25日(金)より全国ロードショー

出演:役所広司 内野聖陽
   土屋太鳳 /
   渡邊圭祐 鈴木 仁 板垣李光人 水上恒司
   松岡広大 佳久 創 藤岡真威人 上杉柊平
   河合優実 / 栗山千明
   中村獅童 尾上右近 磯村勇斗 立川談春
   黒木 華 寺島しのぶ
原作:『八犬伝』(上・下)山田風太郎(角川文庫刊)
監督・脚本:曽利文彦 配給:キノフィルムズ

映画『八犬伝』
©2024 『八犬伝』FILM PARTNERS.

Item Credit
トップス ¥81,400、
スカート 74,800円(DOMELLE 03-3464-3891)
ブーツ ¥37,400
(ALM. 問い合わせ先:https://almofficial.com)
ピアス ¥34,100
(BAR Jewellery/LE PHIL 麻布台ヒルズ店 03-5544-9115)
チョーカー ¥69,300
(GABRIELA ARTIGAS /LE PHIL 麻布台ヒルズ店 03-5544-9115)

Staff Credit
カメラマン:興梠真穂
ヘアメイク:奥原清一(suzukioffice)
スタイリスト:ume
インタビュー・記事:満斗りょう
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