2024年劇団☆新感線44周年興行・夏秋公演
いのうえ歌舞伎『バサラオ』
今度の劇団☆新感線が遊びつくすのは、
寝返り合戦炸裂!な〝バサラの宴〟
いつの時代も、人を魅了してやまない者がいる。「尊い!」とか「素敵!」という、ときめきの限度を越えて、触れる者の芯の部分までも破壊してしまうような〈魅惑〉が。「俺のために死ねるのは最高の至福」と笑う、〈魅惑〉の化身、主人公・ヒュウガ。そして、思惑、偽り、裏切り、謀り・・・黒い感情を胸に宿しながら、彼に魅了され、惑わされるピカレスクたち。彼らの戦いの場に『劇団☆新感線節』が投入された瞬間、そこはもう、色とりどりで奇天烈な〝バサラの宴〟へと早変わり!どうかあなたも、美の輪廻に堕ちないように気をつけて――
2024年
劇団☆新感線44周年興行・夏秋公演
いのうえ歌舞伎『バサラオ』
「俺は好きなように生きる。この〝顔〟を使って」
幕府と帝が相争う、混乱そして裏切りの時代。島国「ヒノモト」に生きる男が二人。幕府の密偵を足抜けし、逃亡していたカイリ(中村倫也)は、〝狂い桜〟の下、麗しき顔で女たちを従えたヒュウガ(生田斗真)が催す〝バサラ〟の宴に出くわす。そこにやってくる幕府の役人たち。ヒュウガに惹かれ家を出た女たちを連れ戻そうとするが、女たちは嬉々として役人に斬りかかり、散っていく。それを平然と眺めるヒュウガ。「俺のために死ぬのは最高の至福。それを邪魔する幕府はつぶせばいい」。その言葉に驚き、惹きつけられたカイリはヒュウガの軍師になることを決意。二人は咲き乱れる〝狂い桜〟の下で手を結ぶ。一方、鎌倉では執権・キタタカ(粟根まこと)に、女大名・サキド(りょう)がヒュウガの成敗を申し出ていた。 京都守護への道中、サキドはヒュウガを斬ろうとするが、彼の瞳に魅了されて隙を見せてしまう。そして流刑のゴノミカド(古田新太)の首を取るともちかけられ、京でミカドの首を待つと告げる。流刑の地・沖の島にゴノミカドを訪ねるヒュウガ。ミカドを手中に収めようとした刹那、ゴノミカドの守護役・戦女のアキノ(西野七瀬)がヒュウガに矢を放つ。だが、ゴノミカドもヒュウガの瞳に魅惑され、再び倒幕の御印となることを決意。京の都に向けて進撃を開始する。新たに始まるゴノミカドの政。その陰で蠢くそれぞれの思惑、謀りの連鎖。「バサラの宴は続く。この俺の光がある限り」眩しい光に飲み込まれ、美の輪廻に堕ちた者の群れ。たどり着くのは地獄か、それとも極楽か?〝バサラ〟の宴が今、幕を開ける――。
流刑のミカド・ゴノミカド役
古田新太
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ゴノミカドを守る戦女・アキノ役
西野七瀬
劇団☆新感線の〈軸〉に、
ダークトーンが加えられた想像を超える新作
西野七瀬(以下、西野):今回私が演じるアキノは、開演後、登場するまでに少し時間があるため、「きっと舞台裏でドキドキすることになるだろうな…」と思いながら、日々お稽古に勤しんでいます。ただ今回は、古田さんが演じられるゴノミカドと一緒に行動することが多い役なので、とても心強いです。本番が近づくにつれて、いろいろな要素やアクション部分が加わることで、この作品が台本からどのように変化していくのか、私自身、楽しみにしています。
古田新太(以下、古田):『バサラオ』は、「ダークトーン」とか「ピカレスク」とか言っているけど、出てくる人間、みんな頭が悪い。一人ひとりが強いからバチバチしちゃっているだけで、言っていることは全員ただのワガママ。「これはこうだ!」って話し合うより先に手が出ちゃうヤツらなんです。「ダークトーン」と言いつつも、劇団☆新感線の〈軸〉の部分は何も変わらないんじゃないかな。だって、みんな歌いながら出てくるんだよ(笑)。
西野:ふふ(笑)。まだ、悪い人たちが歌って登場する想像がついていないです(笑)。(※取材は5月中旬)
二度目の共演、
劇団☆新感線ならではの、
“舞台づくり”の味わいを楽しみに
古田:前回(『月影花之丞大逆転』)の共演では、オイラとなーちゃんはほぼ絡みがなかったよね。
西野:そうですね。そこまで劇中での絡みがなかったことに加え、コロナ禍だったこともあって、ごはんや打ち上げにも行けなくて。今回は稽古・公演期間中にたくさんお話できたら嬉しいな、と思っています。
古田:稽古終わりのメシの場で話していたことが、次の日の糧になったりもするから。「あそこ、もうちょっとこうしてみようか」みたいな。
西野:前回はそういう話もできなかったですもんね。コロナ禍になる前までは、そうやって作品を作られていたと思うのですが、私はまだそれが経験できていないので、今回は劇団☆新感線流の作品づくりの部分も楽しみにしています。
「なーちゃんは頑張り屋さん」
座長・古田新太から見た、俳優・西野七瀬
古田:前回、オイラは「なーちゃんは頑張り屋さんだな」と思って見ていました。ダンスの振り写しもすごく早くて、チームでやってきた人はこういったことに長けているんだな、と感心していました。
西野:私は、いのうえさんの演出が「振付っぽいな」と、思っていました。「何歩歩いてセリフを言う」など、動きをとても細かく決められているので。
古田:うちの劇団が、新劇よりもミュージカルに近い作り方をするからかもしれないね。基本的には「何番に立って、この曲の前奏でここまで来てね」みたいな演出だから。それはお芝居に関してもそうで、「なーちゃん、4歩進んで振り向いてセリフね」って指示を出したり。
西野:その指示が振付に近かったので、入りやすかったのを覚えています。
古田:なーちゃんみたいに番号になじみがある人にはやりやすい一方で、新劇や映像出身の人は割と苦戦しているイメージ。グループだったら、絶対に番号があるからね。
西野:そうですね。ただ、舞台ならではの奥行きの使い方は、グループの時とは大きく違いました。グループの時は「並ぶ時は、縦横まっすぐに並ぶ」が基本だったのですが、舞台だと、並ばないように意識する必要があって。前回、いのうえさんにご指導いただいた記憶があります。
古田:役者が綺麗に横一列に並んでいると、お客さんから観た時に平たく見えてしまうんだよ。でも、それぞれの役者が前後に散らばっていれば、役者同士、いろいろなところを見ながら動いて芝居ができるんだよね。
西野:前回、私にとってはそれがとても新鮮でした。
〈信頼〉のメンバーが集結
その中で繰り広げられる“寝返り合戦”
LANDOER:ゴノミカドとゴノミカドを守るアキノを演じるお二人。古田さんと西野さんの掛け合いが、たっぷりと観られるんじゃないかと楽しみです。
古田:そうだね、アキノはミカド側だから。
西野:はい。ミカドを命がけで守るのがアキノの役目なので。
古田:他のヤツらは、ガンガン裏切るからね(笑)。
西野:本当に!台本を読んでいても、「この人は今、誰の味方なんだろう?」と、分からなくなるんです(笑)。ミカドは、登場人物たち一人ひとりの“思惑”に気づいているのですが、アキノはまだまだ未熟なので、いろんな人に翻弄されてしまって…。
LANDOER:だからこそベストペアなのかもしれないですね。何か、お互いに聞いておきたいことや、伝えておきたいことはありますか?
古田:今回のゲストは、なーちゃん含め4人とも、劇団☆新感線に出演経験のある人たちだから、うちの劇団員たちの敷居が低いってことはきっと分かっているはず(笑)。だから、伝えるとしたら「何か遠慮したり、怖がったりする必要はないよ」と。
西野:前回の公演も、皆さんとても優しかった印象です。
古田:今回も前回同様、振付はえっちゃん先生(川崎悦子)で、殺陣指導は川ちゃん(川原正嗣)、劇団員たちも変わらずだし、なーちゃん含めた4人のゲストも、全員オイラが信頼している人たちばかりだから、安心しています。
西野:ありがとうございます。本当に頼もしい皆さんの中に参加させていただけて、とても心強いです。実は、個人的に楽しみにしていることもあって…(笑)。
LANDOER:お、是非、教えていただきたいです。
西野:先日の本読みの際に、ゴノミカドのとあるシーンで古田さんが本気で叫ばれていて、それがすごく面白かったのですが、前回公演の時も本読みの段階から、あるシーンで本気で声を出されていた記憶があって。ただ、公演本番ではその声が少しずつ違っていて、古田さんのお芝居に対して劇団員の皆さんが戸惑っていらっしゃったんです。私は個人的に、その空気感が大好きで(笑)。またあの空気感を味わうことができるのだと思うと、今からとても楽しみです。
LANDOER:しかも今回は、西野さんもその中に…
西野:そうですね(笑)。私も油断しないように頑張ります(笑)。
Dear LANDOER読者
劇団☆新感線
いのうえ歌舞伎『バサラオ』
From 古田新太 × 西野七瀬
古田:劇団☆新感線は、作品自体も劇団並みに敷居が低いので、初めて舞台を観る人にはとても親切なお芝居だと思います。マンガを読んでいるような感じと言いますか。なので、初めて観に来られる方は、安心してくだらないものを観に来るつもりで来ていただければ、と思います。そして、劇団ファンの方に本作で注目して欲しいのは、劇団員のインディ高橋です。彼は劇団に入って30年以上経つのですが、この作品で初めて、オイラに逆らう役をやるんですよ。私生活を含め一度もオイラに逆らったことのない、あのインディ高橋が。でもね、しょうがないよね、役だから逆らわないと(笑)。
西野:あはは、そうですね(笑)。
古田:最終的にはどうなってるか…(笑)。是非、注目してみてください。
西野:楽しみです(笑)。私にとって劇団☆新感線は、初めて観た時のことを鮮明に覚えているくらい、とても印象的な劇団なんです。今回はその劇団の一員として参加できることがすごく嬉しいですし、私がそうであったように、誰かの印象にずっと残るようなお芝居ができたらいいな、と思います。いのうえさんが会見で「客席を使って…」と、おっしゃっていたのですが、前回出演させていただいた時はコロナ禍だったこともあって、客席を駆けまわるような演出がなかったんです。客席を巻き込んだ立体的な演出は、劇団☆新感線らしさのひとつでもあると思うので、今からワクワクしています。観てくださる皆さんに、自分も物語の中に入ったかのような感覚で楽しんでいただけるよう、精一杯頑張りたいと思います。
Item Credit
古田:カーディガン¥28,600、パンツ¥22,000/
共にパゴン(問パゴン本店Tel 075-322-2391)
Staff Credit
カメラマン:田中丸善治
ヘアメイク:田中菜月(古田)、中山友恵(西野)
スタイリスト:渡邉圭祐(古田)、森田晃嘉(西野)
インタビュー・記事:満斗りょう
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