【小関裕太】映画『DIVOC-12』「エンタテインメントを探究する」10分間に込められたプロ魂のシンフォニー

小関裕太A

映画『DIVOC-12』
「エンタテインメントを探究する」
10分間に込められたプロ魂のシンフォニー

「明日はきっといい日になる」。小関さんの言葉を聞くとなんだかそう思える。世界は素敵なもので溢れていて、知らないことがまだまだあって、無限の出逢いがあるのだから、と。小さな息吹を見つける度にキラキラと瞳を輝かせる小関さん。「わくわく」「うずうず」、そんな言葉で包まれた少年のような彼が参加したのは、エンタテインメントの新たな試み『DIVOC-12』。世界が色を変えたあの日。いち早く〈今〉を動かそうとした「表現者・小関裕太」が見つけた〈未来への希望〉とは――

映画『DIVOC-12』

divoc-12
(c)2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

-『DIVOC-12』とは-

ソニーグループは今年 4 月、新型コロナウイルス感染症により世界各国で影響を受けている人々を支援するために「新型コロナウイルス・ソニーグローバル支援基金」を設立。『DIVOC-12』プロジェクトはこの基金を活用した支援活動の一環として、映像制作活動において大きな影響を受けているクリエイターたちを支援していく試み。さらには、クリエイターたちの新たなものを生み出したいという強い衝動、何かを創り続けるそれぞれの情熱と信念、様々な不安を超える創造の力、エンタテインメントが持つポジティブなエネルギーを作品に込め、日本そして世界中を明るく照らしたい、という強い想いのもと動き出したプロジェクト。映画制作を牽引していく3人の監督は、『新聞記者』(19 年)で第 43 回日本アカデミー賞最優秀作品賞をはじめとした主要 3 部門を受賞した藤井道人監督、世界中で社会現象を巻き起こした『カメラを止めるな!』(18 年)の上田慎一郎監督、第 41 回モントリオール世界映画祭で審査員特別大賞を受賞した『幼な子われらに生まれ』(17 年)の三島有紀子監督。日本映画界を代表する 3 監督たちそれぞれの元に、一般公募より選ばれた新人監督含めた 9名が集結。3 チームごとに「成長への気づき」、「感触」、「共有」というテーマを掲げ、映画制作が行われた新しい可能性が詰まった一本。

-『ユメミの半生』-

とあるミニシアターのロビー。映画の上映開始を待つ中学生のカケルは、壁に貼られた「閉館のお知らせ」を見つめている。と、そこに見知らぬ女性スタッフ・ユメミが現れる。「聞いてるよ。常連に映画監督志望の中学生がいるって」。ユメミはカケルの隣に座り、波乱万丈だという自分の半生を語り始める。その半生の回想は白黒のサイレント映像から始まり、やがてそこに音がつき、色が加わっていき…

小関裕太A

監督・上田慎一郎 × 俳優・小関裕太

撮影時間、本読み、衣装合わせ、作品を創作する全ての時間がとにかく刺激的でした。上田監督って本当にどこをとってもクリエイティブな方なんです。ひとつ例を挙げるとすれば、通常、芝居をしながらマイクで台詞を録るんですが、今回はそれにプラスしてモニターを観ながら再度セリフを録っているんです。そうすることでアテレコ感が出て、作中に描かれている各時代の映画のオマージュたちが、よりその時代の作品の匂いを纏うんですよ!同じ人が言っている同じ台詞なのに、どことなく海外映画の吹き替え版を観ているような、そんな感じ。上田監督のクリエイトを体感できて面白かったです。

なるほど!
オマージュへのこだわりに
上田監督の映画への敬意を感じますね。

決して音をズレさせるわけではないんですが、僕自身、アテレコは芝居をしながら録っている時のテンションより熱量を上げて話すようにしていました。映画で使用されている最新のバーチャルプロダクション空間だけでなく、元々ある方法を敢えて使った新たな試みにも注目して欲しいですね。実はこのアイデア、現場で生まれたものなんです。アイデアが生まれ出る瞬間に触れていられたことが本当に嬉しかったです。

小関裕太A

現場でアイデアが生まれるってすごいですね…

そうですね。僕も〈作る〉ことが好きなので、一つの作品を一緒にすり合わせたり練り込んだり、アイデアとアイデアを合体させたりする作業が幸せでした。提案はしてみたものの、一回下げて…というアイデアももちろんあったんですが、そういった部分も含めてとても刺激をいただける現場でしたね。

チームが一丸となって練っている感じがいいですね。
作品からも結束力が伝わってきました。

これまた、穂香ちゃん(松本穂香)が真ん中の人としてすごく強いんですよ(笑)。カットがかかると、言っている本人ですら笑ってしまうようなセリフがあっても、穂香ちゃんは絶対に笑わないんです。めちゃくちゃ真剣に演じている穂香ちゃんの姿に背中を押されました。

小関裕太A

小関裕太A

作品の中で『ユメミ』は
少年の夢を後押しする役割も担っていますよね。

小関さんにとっての『ユメミ』は誰ですか?

いまパッと思い浮かんだのはシンガーソングライターの高橋優さん。もともと大好きなアーティストの方で、優さんの楽曲が大好きだったんです。ご縁があってお会いするようになってからは『高橋優』さんという〈人〉を大好きになりました。そんな大好きな優さんが「小関くん絶対に歌をやった方がいいよ」と、僕の声や歌を褒めてくださったんですよ。最初は「いやいや、きっとみんなに言ってるんだ」と浮かれないようにしていたんですが…(笑)。でも、お会いする度に「そろそろ曲できた?」と聞いてくださるので「あ、褒めていただいた言葉たちは本当なんだな」と。自分の尊敬する人に認めてもらえた、しかも生まれつきもった「声」を。それが自分の中に落ちた時、自分自身を認めてもらえた気がして前に進む力が生まれました。

小関裕太A

今作は自粛を強いられた
私たちへのメッセージも込められていると思います。

自粛期間中、おうち時間を
たくさん発信してくださっていた小関さんですが、

今だから言える「発信」をするうえでの
一貫したテーマはありましたか?

あの時は確実にありました。大きなキッカケは一年半ほど楽しみにしていた主演舞台がなくなってしまったこと。自分の中でお話をいただいてからずっと作り続けていた役だったので本当にショックで。でもその時に、大小関係なく「いま、全国に、全世界に同じ思いをしている人がいるんだろうな」と思ったんです。自粛とか、感染症とか、そういったものを認めるのは悔しいけれど、僕には何年後かに「あの時は大変だったね」「本当に辛かったよね」と乗り越えられる未来が見えた気がして。だったらただ悲しむのではなく、未来の自分が「大変だったけど、あの時があったからこういう想いになれた」と言えるような時間を作っていきたいな、と思ったんですよね。僕の作った何かが誰かに届いてくれたら嬉しいと思っていましたし、何より「あれがあったから良かったよね」と笑顔になれる〈未来への希望〉を作ることが一貫したテーマになっていました。

小関さんの想い、確実に響いていました。
エンタテインメントの可能性を
強く感じさせてくれる『DIVOC-12』ですが

小関さんにとっての「エンタテインメント」とは?

エンタテインメントを作っている方々と関わってみて思うのは、「その人自身がエンタテインメントだな」ということ。歩んできた道のり、そしてやろうとしていること自体が『面白味のあるひとつのエンタテインメント』になっている方が作り手の中にいらっしゃるんです。そういった方たちに出逢う度に「これが本当のエンターテイナーだな」と感じます。いま、エンタテインメントと聞いてそれが真っ先に思い浮かびました。

「クリエイター=エンタテインメント」なんですね。

身近な人でいうと、りゅうちぇるくんとか。僕、本人にも伝えたんですけど、りゅうちぇるくんって届けるのが上手なんですよ。盛り上げ方、届け方、メッセージ性、全てが面白くて本当に素敵。「真似できないな~」といつも感心させられます。あと、ニコルちゃん(藤田ニコル)もそうかな。作る過程で大変な思いをしながらも、ひとつひとつに真心を込めて進んでいる素敵な人。その結果、誰にも真似できないものを創り出していて「すごいな」と思います。

小関裕太A

『DIVOC-12』に込められた〈声〉

『ユメミの半生』に込めた〈声〉

『DIVOC-12』を観終えて、yamaさんの主題歌を聴いている時に「なにか創りたい!」と思ったのが率直な感想でした。3人の名監督と新進気鋭の9人の監督、そして僕たちキャスト陣、それぞれの〈新しい試み〉や〈もがき〉が詰まった12本の作品。新しい感性やエネルギッシュさが各エピソード10分に凝縮されているのを観て、ものすごくエネルギーをもらえたんです。一本の作品であれば、展開的に上がって、ちょっと落ち着いて幸せになったかと思いきや悪いことが起こって…という起伏があると思うんですけど、『DIVOC-12』に関しては細かい波がずっと起きている感じなんですよ。で、観終わったあとに「は!なんかいろいろと得た気がする!」と思える。この作品の「芸術をとめない」というテーマが作品全体にしっかりと現れているので、「エネルギーが欲しいな」と思う人に是非観ていただきたいです。『ユメミの半生』に関しては、最初に出てくる男の子の視点を通して「あ、自分が主役なのかもしれない」と思ってもらえる作品になっていると思います。生きていると「チャンスを逃した!」とか「チャンスがあればいいな」と思うことがあるじゃないですか。でもそうじゃない。「物を作る」のも「チャンスを作る」のも自分自身なんだという〈声〉の込もった作品になっているので、是非、この作品で自分の可能性への勇気をチャージしてください!

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小関裕太(26)

こせき ゆうた

1995年6月8日生まれ。
日々に在る乱反射を真っ直ぐに受け止め、
柔らかなてのひらで〈推進力〉を生み出すDOER。

映画『DIVOC-12』
2021年10月1日(金)全国ロードショー

出演:横浜流星 / 松本穂香 小関裕太 / 富司純子
   藤原季節 石橋静河 / 小野翔平 窪塚洋介 /
   安藤ニコ おーちゃん / 清野菜名 高橋文哉
   蒔田彩珠 中村守里 / 中村ゆり 髙田万作
   笠松将 / 小川紗良 横田真悠 / 前田敦子

監督:藤井道人 / 上田慎一郎 / 三島有紀子
   志自岐希生 / 林田浩川 / ふくだみゆき /
   中元雄 / 山嵜晋平 / 齋藤栄美 / 廣賢一郎 /
   エバンズ未夜子 /加藤拓人

主題歌:yama「希望論」
   (MASTERSIX FOUNDATION)

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(c)2021 Sony Pictures Entertainment (Japan) Inc. All rights reserved.

Staff Credit
カメラマン:YURIE PEPE 
ヘアメイク:佐々木麻里子 
スタイリスト:吉本知嗣
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:吉田彩華