舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』
マイクひとつで〈愛〉を紡ぐ
新たな「シラノ」の物語が繋がってゆく
〈言葉〉はどこから来るのか。喉か、頭脳か、心か。シラノ・ド・ベルジュラックの〈言葉〉を想う時、その紡ぎの生まれし場所を知りたくなってしまう。恋文ひとつで女性を気絶させたというシラノの伝説。そして、それほどまでに力を持つ自身の〈言葉〉を他人に与えてしまった彼の行い。彼を愚かと笑うのか、お人好しと同情するのか、はたまた〈愛〉に殉じた英雄と称えるのか。彼の〈言葉〉はどこで生まれ、どこへ流れ着いたのか。すべての答えは、あなたが目の当たりにする新しい『シラノ・ド・ベルジュラック』の中に――
舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』
-あらすじ-
創意あふれる「シラノ・ド・ベルジュラック」、ついに日本初上演!! 「シラノ・ド・ベルジュラック」は 17 世紀フランスに実在した詩人にして、剣豪で、自由と勇気のあるシラノを主人公にした、エドモン・ロスタン作の戯曲です。大きな鼻のコンプレックスに悩みながらも、一人の女性を慕い続けた壮麗で高潔無比なシラノの永遠の愛の物語は 1897 年に初演されて以降、世界各地で上演が繰り返され、幾度となく映画化・ミュージカル化されており、シラノの生き様や心意気はたくさんの人を魅了してきました。2019 年秋~2020 年までロンドンのプレイハウス・シアターでジェイミー・ロイドの演出によって上演された際には、マーティン・クリンプによって現代的な脚色がなされ、ミニマムな衣装と舞台セット、ラップやボイスパーカッションで気持ちを綴る…といった前代未聞の全く新しい「シラノ・ド・ベルジュラック」が誕生、大きな話題を呼び、英国演劇界最高峰の賞といわれているローレンス・オリヴィエ賞でリバイバル賞を受賞しました。世界中から大絶賛された、マーティン・クリンプ脚色版の傑作がついに日本で初めての上演となります。
舞台『シラノ・ド・ベルジュラック』× 古川雄大
ミュージカルを始めた頃からずっと「ストレートプレイをやりたい」と思っていたので、今回、約10年ぶりにストレートプレイの主演をやらせていただけると聞いた時は素直に「願いが叶った」と思いましたし、これもミュージカルを頑張ってきたからこそいただけたお話だと感じました。「このタイミングでこういった大きな作品に素敵な共演者の皆さんと出演できるんだ」と、いままでの頑張りが繋がった気がして嬉しかったです。ただ、決まった時は嬉しかったんですけど、作品の内容を知っていくうちにかなり大変な内容だと分かり…(笑)。これから先の稽古期間でどれだけ自分が成長して進化できるのか、変わっていけるのかが試されると思いますし、大変な分、やり甲斐を感じられる作品になるんじゃないかと思っています。「この作品を乗り越えた先に新しい自分が待っているだろう」という期待があるので、とても楽しみです。
シラノ・ド・ベルジュラック × 古川雄大
今作は、シラノ・ド・ベルジュラックの象徴でありコンプレックスとされている大きな鼻もつけず、本当に言葉だけで紡いでいく舞台。実際にロンドンで上演されたジェイミー・ロイド演出版の映像を拝見して「本当にシンプルな演出なんだ」ということを実感したと同時に、スタンドマイク片手に舞台に立ち、たったひとつの表現で約3時間、お客様を満足させるのはかなり大変なことだと感じました。正直、最初は驚いたんです。でも、観続けているうちに違和感なくストーリーに没頭することができて。それは演者の皆さんが素晴らしかったこと、そして何ひとつ嘘のないものを描いて作品にしてくれていたことが大きいと感じました。僕もそういった作品の良さをしっかりと引き継いで頑張っていきたいと思います。
ロンドンのプレイハウス・シアターで初演された
マーティン・クリンプ版
『シラノ・ド・ベルジュラック』。
“ひとつの表現”と仰ったように、
ラップやボイスパーカッションなどで
彩られた世界観が印象的でしたよね。
そうですね。一度、演出家の谷(谷賢一)さん含めラップ監修のTOSHさんとスタッフの皆さんとお話をした時に、「ラップ文化が根付いている場所でラップの表現を取り入れるのと、日本というラップ文化がない中でラップの表現を取り入れるのとでは、結構な違いが生まれるよね」というお話になったんです。ロンドンで上演されたジェイミー・ロイド演出版では「ラップの種類によってバックボーンを表現する」といった描き方がされているらしいのですが、僕は正直、映像で観た時にそこまでラップの表現の変化が分からなくて。僕と同じように、文化としてラップに馴染みのない日本の皆さんにも伝わるラップの表現をすることが、この作品の大きな鍵になってくるのかな、と思っています。
〈言葉〉で戦う演劇と謳われている今作ですが、
古川さんご自身が〈言葉の力〉を
感じたことは何かありますか?
言霊ってありますよね。あれ、本当にあると僕は思っていて。なので普段からマイナスな言葉をあまりはかないようにしているんです。できるだけ前向きな言葉を使うようにして、何かをひたむきに続けていたら必ず良いほうに向くと信じています。そこに関しては言葉ではなく、意識的な話になっちゃうんですけど。僕自身めげそうになった時は「ひたむきにやっていたらいいことがある」という言葉を自分の中のモットーとして掲げるようにしています。それが結果いい方向に転んできているのは事実ですし、やめることなく続ける努力は大事にしています。
シラノは、独自の形で〈愛〉に殉じた男ですが
シラノの〈愛〉の形を
古川さんはどう考えられましたか?
複雑ですよね。クリスチャンのために手紙を書いていたとはいえど、結果、自分の愛を伝えるための手段だったとも言えますし。もちろん、共感した仲間のために「恋を実らせてあげたい」という気持ちや、ロクサーヌの恋愛を成功させたいという想いもあったと思いますし。いろんな感情がある中で、僕としては対ロクサーヌへの感情がいちばん大きかったんじゃないかと思っています。ただ、その恋愛が成功したところで自分と結ばれているわけではないというのは、〈愛〉の形として切ないですよね。
シラノ自身に「手紙を書いていたのは自分だ」と
伝えたい気持ちはあったと思いますか?
原作やいままでのシラノを描いた作品だと物語の結末の描かれ方が様々ありますが、いずれにしても「伝える意識」はどこかにはあったんじゃないかと思います。自分に死が迫っていることを知って、よりその想いが強くなったんじゃないかなと。そう考えると“切なさ”という感情だけではない部分もあったんだろうな…。いまはまだ複雑なシラノの感情を理解するのは難しい段階なので、台本を読み込んで稽古をしていく中で自分なりのシラノの答えを出したいと思っています。
Dear
LANDOER読者
about『シラノ・ド・ベルジュラック』
この物語を知っている方は、最初「お?」となると思うんですが、そこでちゃんと納得させられる作品を稽古期間でしっかりと作っていきたいと思います。そして、この物語をまだ知らない方には『シラノ・ド・ベルジュラック』という作品の魅力と内容をしっかりと伝えられるように、稽古期間で頑張っていきたいと思います。
古川雄大(34)
ふるかわ ゆうた
1987年7月9日生まれ。
小さな波紋を広げるひと雫の〈役〉の想いを
優しく受けとめ描き出す、淀まぬ大河のようなDOER。
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Staff Credit
カメラマン:鈴木寿教
ヘアメイク:窪田健吾(aiutare)
スタイリスト:根岸豪(THE Six)
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:吉田彩華