【柄本佑】映画『野生の島のロズ』作り手の〝やさしさ〟が宿った物語鋭い雨も強い風も〈力〉に変えて、生命ともに生きてゆく

柄本佑

映画『野生の島のロズ』
作り手の〝やさしさ〟が宿った物語
鋭い雨も強い風も〈力〉に変えて、
生命ともに生きてゆく

誰かとともに生きること、自然と共存すること、私たちは「大変」「面倒」ということに焦点を当てがちだけれど、〈共存〉が必要な世界、すなわちそれは〝誰もひとりじゃない世界〟だということ。ほんの少し角度を変えて景色を見たり、湧きおこる情動をやさしさに変換してみたり、一人ひとりのささいな変化が、きっと未来に繋がってゆく。野生の島に不時着し、拒絶されながらも繋がることを諦めなかったロズ、そんな彼女に影響されて素直に在り方を変えた動物たち。互いの葛藤を突破して手を繋ぐ彼らの姿は、現代を生きる私たちに、やさしく灯る〈愛〉を教えてくれるはず――

映画『野生の島のロズ』

映画『野生の島のロズ』
©2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

-Introduction-

30周年を迎えた
ドリームワークス・アニメーションが描き出す、
感動と奇跡の物語

『シュレック』『ボス・べイビー』をはじめ数々の傑作アニメーションで世界中に笑いと涙を届けてきたドリームワークス・アニメーションが、記念すべき30周年に贈る、驚くべき感動に満ちた奇跡のアドベンチャー『野生の島のロズ』2024年9月27日に3962館で全米公開され、週末3日間のオープニング成績は3500万ドルと予想を上回り、初登場第1位を記録。これは9月に公開されたアニメーション映画としては歴代3番目に高いオープニング興収となった。CinemaScoreではAを獲得し、Rotten Tomatoesでは98%と高評価で2020年代に公開されたアニメーション映画として最高のスコアとなっている。全世界でも43ケ国で初登場1位、世界興収合計2億ドルを超える成績をあげており(11月11日現在)、その成績、評価、評判から本年度アカデミー賞®に3部門ノミネートされている。

Story

わたしは、ここで、生きていく
心が芽生えたロボット・ロズと動物たちの出会いが、
壮大な〈運命の冒険〉へと導く

無人島に漂着した最新型アシスト・ロボットのロズは、キツネのチャッカリとオポッサムのピンクシッポの協力のもと、雁のひな鳥キラリを育てるうち、心が芽生えはじめる。ロズの優しさに触れ、怪物として彼女を拒絶していた動物たちも、次第に島の“家族”として受け入れていく。いつしか島はロズにとっての“家”となっていくのだった。渡り鳥として巣立っていくキラリを見送り、動物たちと共に厳しい冬を越えた頃、回収ロボットが彼女を探しにやってくる。果たして、築いてきた動物たちとの絆から引き裂かれようとするロズの運命は!?島の存亡をかけたロズと動物たちの戦いが、いま始まろうとしていた──。

-チャッカリ(CV,柄本佑)-

映画『野生の島のロズ』
©2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

無人島でロズと出会う、ハズレ者のキツネ。ずる賢く臆病な性格で、最初はロズと敵対し警戒するが、徐々に彼女の存在を受け入れ友情を育んでいく。ロズと一緒にキラリの成長を見守りながら、自然界のルールやサバイバルスキルを教える。──。

映画『野生の島のロズ』 × 柄本佑

最初は機械的だったロズがプログラムから逸脱し、どんどん動物のようになっていく姿が描かれている本作。個人的には、キラリの声が福(鈴木福)くんになったあたりから、それまで敬語で話していたロズが、キラリとチャッカリに対して敬語を使わなくなる瞬間が好きでした。この作品は一見、王道のロボット映画かと思いきや、ロズが動物に寄り添っていく様子であったり、飛び立っていく息子に抱く想いであったり、チャッカリの寂しさであったり、いろいろなことが多角的に描かれている物語なんです。そんなたくさんの魅力がある中で、僕が何よりいいなと思ったのは、“クリス・サンダース監督のピュアさ”。本当に心が綺麗で素敵な方なのだということが、作品を通して伝わってきて。ダイナミックに描かれているアニメーションも素晴らしいのですが、それだけでなく、スッと胸に入ってくる感情や、思わずこぼれる涙を自分自身で実感できる作品でもあるんです。それはやっぱり、監督がピュアな気持ちでこの作品を作られているからだと思いました。

柄本佑

柄本佑

「動物を動物らしく描く」
そこにも、監督の動物たちに対する〈愛〉と
自然への〈敬意〉を感じますよね。

動物一匹いっぴきのアクションや、雁たちが飛び立つ瞬間など、本当に感動する場面がたくさんありますよね。僕、本作の“色彩”も結構好きなんです。かっちりと生々しくリアルに、というよりは、少しムラのある絵の具のベタ塗りのような質感がとても素敵だな、と。テレビの画面では小さくて気づけないような素敵なポイントがたくさんある作品なので、ぜひ劇場で観ていただきたいと思います。

個性豊かな動物たちの中でも、
柄本さんの演じられたチャッカリは
ずる賢いのになぜか憎めない、
とても魅力的なキャラクターでした。
アフレコに際して
意識されたことがあれば教えてください。

とにかく現場で監督(日本語版演出)としっかり話し合いながらアフレコさせていただきました。最初に監督が「これだけおもしろくて強固なオリジナルがあれば、変な方向にいくことはないので、割と自由にやりましょう。セリフや役柄を突き詰めていったら、きっとオリジナルに近づいていくと思います」と言ってくださったおかげで、気が楽になったことを覚えています。その言葉を聞くまでは、「オリジナルがこれだけおもしろいのだから、その世界観を維持しないと」と思っていたのですが、現場で生まれる“瞬間の表現”を楽しみながらやっていいのだと分かり、リラックスした気持ちでチャッカリを演じさせていただきました。

柄本佑

監督の言葉と柄本さんの表現力が相まって、
声色豊かでチャーミングな
チャッカリが生まれたんですね。

一人で考えているときは、チャッカリの本国キャストである、ペドロ・パスカルさんの声色やお芝居を踏まえたほうがいいのかな、と思ったりもしたんです。でも、吹替版を作るということは、ある種“新たに作品を作りなおすこと”でもあるんじゃないかと思って。振り返ると、そういった意識の中で演じていたような気がします。ただそれができたのは、ベースにおもしろくて素敵なオリジナルがあったから。作品の基盤がしっかりしていたからこそ、吹替で自由に遊ぶことができたんです。

柄本佑

柄本佑

字幕版と吹替版を拝見させていただいたのですが、
笑うポイントが違ったり、
セリフの印象が変わったりしていて
吹替版とは“リメイク”であると同時に、
“リボーン”でもあるのだと感じました。

だからこそやり甲斐もあるし、楽しいのだと思います。ただ、リップシンク(キャラクターの口の動きと音声を一致させること)には苦労しました(笑)。オリジナルを拝見したときに、あまりにリップシンクがぴったり合っていたので、「すごい技術だ…」とプレッシャーを感じていたんです。それを日本版の監督に伝えたら「本国ではまず声を録って、その声に合わせてキャラクターの動きをつけているんです」と返ってきて。そのときはさすがに「ズルい!」と言ってしまいました(笑)。

そこは「自由に!」とはいかないですものね(笑)。

そうなんです(笑)。でもそういった縛りがあったおかげで、自由にできたところがたくさんあった気がします。むしろすべてが自由だと、逆に不自由になっていたかもしれません。普段から僕らは、“脚本”という縛りのうえで自分なりの表現をしているので、そういった意味では役者業に近しいところも感じていたんです。今思えば、普段の仕事とほぼ同じ気持ちでやっていたように思いますね。

柄本佑

Dear LANDOER読者
映画『野生の島のロズ』
From 柄本佑

僕、この作品のベースには『ノアの箱舟』があると思っていて、いつの時代も〈共存〉というのは生命の不変的なテーマだと思っているんです。共存社会で生きていると、どうしても日常の不満や不安、もどかしさなどが生まれてきてしまうけれど、この映画を観ていただければ、ロズをはじめとする様々なキャラクターたちが、そういった思いを突破していく姿を見ることができると思います。「素晴らしい!」と感じる映画に出会って劇場を出たときって、普段の景色が少し違って見えたりするじゃないですか。そこで芽生えた気持ちをどんな行動に繋げていくかは人それぞれだけれど、ロズが不変的なものに挑んで乗り越えていく姿は、我々に勇気を与えてくれるはずです。そしてきっと、それこそが映画の役割。ロズというロボットの物語を通して、観てくださる皆さんの中に何かが力強く響いてくれたら嬉しいです。

柄本佑

柄本佑

えもと たすく

12月16日生まれ。
物語が生み出す“ときめき”“感動”を信じ、
「届け」と真摯に紡ぐ芝居がキラリと光るDOER

映画『野生の島のロズ』
2025年2月7日(金)劇場公開

監督・脚本:クリス・サンダース
本国声の出演:ルピタ・ニョンゴ、
       ペドロ・パスカル、
       キャサリン・オハラ、
       ビル・ナイ、キット・コナー、
       ステファニー・シュウ ほか
吹き替え版キャスト:綾瀬はるか、柄本佑、
          鈴木福、いとうまいこ ほか
現代:THE WILD ROBOT
配給:東宝東和、ギャガ

映画『野生の島のロズ』
©2024 DREAMWORKS ANIMATION LLC.

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ジャケット¥143,000/BOW WOW(BOW WOW)、
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BOW WOW(TEL 03-6384-5811)
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Staff Credit
カメラマン:堀内彩香
ヘアメイク:廣瀬瑠美
スタイリスト:KYOU
インタビュー・記事:満斗りょう
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