【西野遼】 舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』色に染まり、悩み、もがいた先で出逢えた僕だけの〝スコーピウス・マルフォイ〟

西野遼

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』
色に染まり、悩み、もがいた先で出逢えた
僕だけの〝スコーピウス・マルフォイ〟

幸か不幸か、生まれる場所も、環境も、私たちは選べない。19年前、英雄となった父をもつ少年も、悪として動かざるをえなかった父をもつ少年も、同じように産声をあげてホグワーツ(ここ)へと導かれた。まるで、ハリーとロン、ハーマイオニーが人生の友として〈愛〉に導かれたように。同じ宿命をもって生まれた2人が力を合わせ、自分を許すとき、運命に邪魔されない彼らだけの人生が幕を開ける。〈君〉さえいれば、僕らは無敵だ――。

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

魔法の世界は舞台へ続く。
ハリー・ポッター、19年後のストーリー。

本作は、「ハリー・ポッター」シリーズの原作者・J.K.ローリングが自ら演出家のジョン・ティファニー、脚本家のジャック・ソーンとともに創作したオリジナル・ストーリー。完成した舞台を観た原作者は、「劇場でしか味わえない魔法」と絶賛。シリーズとしては8番目の物語であり、初めて”舞台”という手法を使って描かれた、ハリー・ポッターの新たな物語である。舞台はこれまでに、ロンドン、ニューヨーク、サンフランシスコ、オーストラリア・メルボルン、ドイツ・ハンブルク、カナダ・トロントの6都市で開幕。東京公演はアジアとしては初、世界では7番目の上演となった。世界のエンターテイメントを牽引する一流スタッフが知恵と技術を結集して創り上げた「ハリー・ポッター」の世界観を劇場で”体感”できること。原作ファンも、そうでない人も楽しめるストーリー、次から次へと飛び出す魔法の数々、ハリー・ポッターの世界に入り込んだような舞台美術と衣裳、独創的で心躍る音楽、体感する全てが、あなたを魔法の空間にいざなう。未体験のハリー・ポッターの世界へ、ようこそ。

-あらすじ-

ハリー、ロン、ハーマイオニーが魔法界を救ってから19年後、かつての暗闇の世を思わせる不穏な事件があいつぎ、人々を不安にさせていた。魔法省で働くハリー・ポッターはいまや三人の子の父親。今年ホグワーツ魔法魔術学校に入学する次男のアルバスは、英雄の家に生まれた自分の運命にあらがうように、父親に反抗的な態度を取る。幼い頃に両親を亡くしたハリーは、父親としてうまくふるまえず、関係を修復できずにいた。そんな中、アルバスは魔法学校の入学式に向かうホグワーツ特急の車内で、偶然一人の少年と出会う。彼は、父ハリーと犬猿の仲であるドラコ・マルフォイの息子、スコーピウスだった!二人の出会いが引き金となり、暗闇による支配が、加速していく・・・。

スコーピウス・マルフォイ

聡明で読書好きな、ドラコ・マルフォイの息子。
ハリー・ポッターの息子であるアルバスに出逢う。

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』
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西野遼

小さい頃からハリー・ポッターシリーズが好きで、金曜ロードショーで全シリーズを観たり、家にあった『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』のDVDを何度も繰り返し観たりしていたんです。だからこそ、本作への出演が決まったときは、正直漠然とした不安しかありませんでした。しかも僕の演じるスコーピウス・マルフォイは、当時すでに3人の方が演じられてきていた、人気なうえに出番も多いキャラクター。「初舞台の僕がどこまで彼を演じられるのだろう」というプレッシャーが大きかったです。

西野遼

人気作品な分、背負うものも大きいと思います。
昨年の8月から何公演も演じられてきて、
その気持ちに変化はありましたか?

いまはプレッシャーというより、〈責任感〉が強くなりました。僕のセリフひとつで、舞台全体が思うようにいかなくなってしまうこともあるので、「自分のミスが作品に響く」という緊張感と責任感をもちつつ、ミスをしないよう一つひとつ集中してやっていこうと努めている最中です。

厳しいオーディションの末、
掴み取ったスコーピウス役。
オーディションには
どのような準備をして挑まれましたか?

イギリスの演出家の方から、「オーディション中も台本を見ていいよ」と言われていたので、ハリー・ポッターシリーズを観返したくらいで、特に準備はしていかなかったです。普段のオーディションでは台本を覚えて芝居をすることが多いので、最初は「試されているんじゃないか?」と思いつつ…(笑)。その場で感じたままに演じることを大切に、オーディションに臨みました。

緊張しますね。
オーディションの段階で手応えはありましたか?

オーディションでは、アルバス・ポッター役とスコーピウス・マルフォイ役の2役を演じたのですが、スコーピウス役をやったときにだけ、イギリスの演出家の方が「わはは!」と笑ってくださったんです。その瞬間「これはいけるんじゃないか」という手応えを感じました。(LANDOER「なぜ笑われたのかお聞きになりましたか?」)聞いてはいないのですが、アルバスと初めて出会うシーンで「ここの席空いてるよ!」と、声をかけたときのスコーピウスの明るい表情を見て、笑ってくださったのだと推測しています。

西野遼

西野遼

1stシーズンの方々のスコーピウスをご覧になって
何か学ばれましたか?
それとも影響を受けないようにしていましたか?

その両方ですね。というのも実は、僕だけ他の2年目の方より1ヶ月前倒しで作品に参加していたんです。そのため、参加当初は1年目の方々の稽古に参加し、先代の演技を見ながらスコーピウスを作り上げていく、といった進め方をしていて。その後、2年目のキャストの方々との稽古に入ったときに、自分が先代の方と同じ演技しかできなくなっていることにはじめて気づいたんです。無意識のうちに先代の方の色を覚えてしまっていたのだと思います。演じながら「自分のものじゃない」という感覚になり、「あのときそんなに見なければよかった…」と、後悔するくらいに影響を受けてしまって。その色を抜くのに苦労しましたが、いまはやっと僕なりのスコーピウスになれていると思います。

西野さんなりのスコーピウスを作り上げる中で、
演出家の方から言われた印象的な言葉はありますか?

「ありのままでいいよ」という言葉に助けられたのを覚えています。僕が「こうしなきゃいけない」と、型にはまった演技をしてしまっていたときに、「遼は遼なりのスコーピウスを作ればいいんだよ」と言ってくださって。あまり「ここはこうして」と、限定せずに見守ってくださったおかげで、のびのびと演技をすることができるようになったんです。いまは、僕がスコーピウスに対して感じたことが“西野遼のスコーピウスの正解”だと思っているので、感じたままを素直に出すことを意識しています。

西野遼

あたたかい言葉ですね。
『スコーピウス・マルフォイ』という
ひとりの青年を築くにあたって、
意識したことはありますか?

脚本に散りばめられたヒントから、スコーピウスのバックグラウンドを推測し、僕自身の背景や過去、性格と馴染ませることに注力しました。(LANDOER「自分と似ている、と感じる部分はありましたか?」)明るいところや、オタクっぽい感じ、ちょっと優柔不断なところなどが似ている気がします(笑)。舞台に登場するキャラクターの中で、一番自分に似ていて、探りやすく、親近感を覚えるのがスコーピウスなんです。

同じスコーピウスを演じられる、
門田宗大さんの演技はご覧になられましたか?

はい。拝見させていただいて、「とんでもないオタクだな!」と思いました(笑)。僕のスコーピウスとは比べ物にならないほどオタクで、明るくて面白いんです。門田さんのスコーピウスを目指してみたいとは思いつつも、やはり僕は僕でまた違ったスコーピウスができればいいな、と思っています。(LANDOER「門田さんとは何かお話されましたか?」)お互い役について話してはいないのですが、いないところで感じ合って、支え合っているような感覚です。苦しみも、辛さも、楽しみも、同じ人生を歩み分かち合っている“相棒”といいますか。

西野遼

素敵な存在ですね。
今回はかなりのロングラン公演ですが、
何公演も演じ続けるなかで、
キャラクターや物語への解釈が
変わることもあるのでしょうか?

はい。日々解釈が変わることの連続で、昨日と今日でもまったく解像度が違いますし、もっと言うと演じる回によっても、大切なシーン、意味のあるシーン、響くシーンなどが変わることばかりで。特に、アルバスとスコーピウスが終盤で対話するシーンはその回の総括のようなもので、やってきたことがすべて出る場面なので「この物語を紡いできた結果、この2人がいる」、そこに違和感が生まれないよう、毎回繊細に、大切に演じています。

スコーピウスの背景を解釈するにあたり、
父親ドラコ・マルフォイの存在が
欠かせないと思うのですが、
解釈のヒントになった作品はありますか?

シリーズ最後の2作品(『ハリー・ポッターと謎のプリンス』、『ハリー・ポッターと死の秘宝』)ですね。この2作でドラコは「善い人間でありたい」と思い悩み、自分自身の方向性を探っていくんです。僕は、その結果「善い人として生きてゆこう」と決心した“ドラコの決意”が、スコーピウスへの教育にも関わってきたと解釈しています。ドラコは、自分の父であり、スコーピウスの祖父にあたるルシウス・マルフォイが、自分に与えた教育とは違う教育を息子に与えたかったんだろうな、と思う節がところどころあって。その環境のおかげで、明るくて優しい『スコーピウス・マルフォイ』という青年が生まれたのだと思いながら演じています。

西野遼

スコーピウスは
ドラコの過去をどのくらい知っていると
西野さんは解釈されていますか?

スコーピウスは魔法界の歴史オタクなので、ハリー・ポッターのことを崇拝していますし、ドラコがハリーと敵対する死喰い人(ヴォルデモート卿の従者)だったこともきっと全部知っていると思っています。それを原因にいじめられたこともありますし。だからこそ、父親ではなく母親に依存していたんじゃないかな、と。本作では、お互い寄り添いたいと思っているのに、すれ違いをキッカケにどんどん離れていってしまうマルフォイ親子ですが、スコーピウスは「父は僕のことを思ってくれていて、僕と会話したいんだろうな」と、感じているとは思うんです。素直になれない2人の姿が、スコーピウスとしても、西野遼としても、とても愛おしくて。ぜひ、2人の関係性を感じ取りながら観ていただけたら嬉しいです。

分かります。
お互いに想い合っているのにすれ違ってしまう、
愛おしい親子ですよね。
ドラコを演じる先輩方とは、
どのようなお話をされましたか?

ドラコ役の松田慎也さんから「調整するな、挑戦しろ」という言葉をいただきました。2ヶ月ほど前に、喉の調子があまり良くなく、声を抑えて舞台に立っていた時期があったんです。そこからどんどんと挑戦するのが怖くなってしまい、大筋から外れないように計算と調整をしながら演じるようになってしまって…。そんな時期にこの言葉をいただいて、もう一度自分のことを見直すキッカケになりました。いまでは毎日「どれだけ飛び抜けられるか」、「どれだけ挑戦できるか」を大切にしています。

本当の父のような頼もしい先輩ですね。
親子の絆や、己の宿命など、
様々なテーマが込められている本作。
西野さん自身は、
どのようなテーマを受け取りましたか?

〈許し〉ですね。他人のことも、自分のことも。生まれ持った運命に抗ったり、自分で運命を切り拓こうとしたりすることも大切だけれど、「自分自身や生まれ育った環境を、もっと許してあげようよ」というテーマを感じました。その〈許し〉が〈愛〉に変わってゆくのだと思います。

西野遼

スコーピウスとアルバスだからこそ
色濃く描けるテーマのようにも思います。
初めて舞台をご覧になる方に向けて
「ここを押さえておけば大丈夫!」という
“ハリー・ポッターポイント”があれば
教えていただきたいです。

できればすべてのシリーズを観て来ていただきたい気持ちはあるのですが、ひとつ選ぶならば、映画『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』はチェックしてきていただきたい!この一作さえ押さえておけば、舞台の内容はある程度分かると思います。きっとこの舞台が「ハリー・ポッターシリーズ、初めましてです!」という方もたくさんいらっしゃると思うんです。僕たちはそういった方にも楽しんでいただけるように意識して作っているので、安心して魔法の世界を体験しにきていただければ、と思います。

舞台を拝見して、作り手の方と、キャストの方が
一丸となって作り上げるエンタテイメントに
感動しました。

“エンタテイメントの力“って本当にすごいですよね。観てくださる方に、今日1日を生きる活力を与えられたらいいな、と思うと同時に、僕自身は観てくださる方からそういった活力をいただいていて。最近届いた手紙に、「西野くんのスコーピウスを見て、励まされました」と書かれていて、「僕はこのためにエンタテイメントの仕事をしているんだ」と強く思いましたし、改めてこの仕事を続けたいと思いました。“エンタテインメントの力”こそが、この仕事をする醍醐味です。

西野遼

Dear LANDOER読者
舞台『ハリーポッターと呪いの子』
From 西野遼

ハリー・ポッターシリーズファンの方には、「あ、あれだ!」と分かるような小ネタや仕掛けが盛りだくさんで、絶対に興奮していただけると思います。映画の続きから物語が始まるので、観ることができなかった世界線や、観たいと思っていた部分もお見せできるんじゃないかな、と。初見の方には、炎や水を使ったショー的な一面と、芝居に現れる人間的な一面の両方を楽しんでいただけるはず。「舞台を観ること自体、これが初めて!」という方にも向いている作品だと思うので、ぜひ劇場に足をお運びいただきたいです!

西野遼

西野遼

にしの りょう

11月27日生まれ。
柔軟なまなざしで〈内〉を見つめ、
役への思慕を糧に〈外〉へ挑戦を挑んでゆくDOER

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

舞台『ハリー・ポッターと呪いの子』

オリジナルストーリー:J.K.ローリン
脚本・オリジナルストーリー:
ジャック・ソーン
演出・オリジナルストーリー:
ジョン・ティファニー
ハリー・ポッター:藤原竜也/石丸幹二/大貫勇輔
ハーマイオニー・グレンジャー:
中別府 葵/笹本玲奈
ロン・ウィーズリー:
竪山隼太/迫田孝也/石垣佑磨
ドラコ・マルフォイ:
松田慎也/宮尾俊太郎/内田朝陽
ジニー・ポッター:
馬渕英里何/白羽ゆり/大和田美帆
アルバス・ポッター:藤田悠/福山康平
スコーピウス・マルフォイ:門田宗大/西野 遼

Staff Credit
カメラマン: YURIE PEPE
ヘアメイク:赤塚修二
スタイリスト:永田哲也
インタビュー:満斗りょう
記事:満斗りょう、Suzu
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