「誰かに届け」と切に願う
『役者・板垣瑞生』が語る
3つの物語と3人の青年の話
生きていると、心がちくちくしたりキュッとしぼんでしまうことがある。その度に「あぁ、どうして」と自分を責めてしまう夜もある。そんな孤独に「手を差し伸べたい」と、真っ直ぐな瞳で板垣さんは言う。常に「自分に何ができるか」を“誰か”の為に考える、強く優しい人。その優しさの奥底に〈努力〉を秘めながら、柔らかな軌跡を紡ぐ彼に聞いた3つの物語のお話。ふと涙が溢れる日は、彼の描く〈奇跡〉に身を寄せて――
TBS日曜劇場『日本沈没-希望のひと—』
Paraviオリジナルストーリー
『最愛のひと~The other side of 日本沈没~』
-あらすじ-
居酒屋でバイトをしながら絵描きの夢を目指す山田愛(与田祐希)。ある日、バイト先の居酒屋で、常連客から夢を叶えてくれるおまじないの話を聞く。伊豆にある日之島という無人島で拾った石を肌身離さず持ち歩けば叶うというのだ。愛はさっそく伊豆行きの深夜バスを予約する。そんな中、他の客席に座っていた蒔田奇跡(板垣瑞生)は、愛を見つめていた。手には、ある客がお勘定と一緒に残していった「日之島には近付くな」と書かれた箸袋を持っていた。そして、奇跡は愛に声をかけた。これがのちの運命を大きく左右する出会いとなった。
-蒔田奇跡-
伝統ある大病院の御曹司で研修医。心優しく押しに弱い性格。これまで親に決められたレールを歩んできて、やりたい事や将来の夢がない自分の人生にコンプレックスを抱えてきた。夢を持って自分の足でそれに向かって進む愛に惹かれ、影響されていく。
蒔田奇跡 × 板垣瑞生
最初に『蒔田奇跡』という役名を伺った時、第一印象として「奇跡って名前すごいな…」と思いました。そこからは、日本がどんどんと混沌に陥っていく作品の中で、名前にふさわしく「奇跡を起こすような人でありたい」と思って演じていましたね。直接的な表現はなくとも、いまは現実世界も大変な世の中じゃないですか。僕自身、20歳を超えてから「自分にできることはないか」、「本当はやりたいのに今の自分にはできない…」といったフラストレーションが溜まっていたんです。そんな時にこの作品のお話を頂いて「ドラマを通じて、自分の想っていることが表現できたらいいな」と思いました。
『奇跡』と同じくらい素敵な名前を持つ『愛』。
今回『愛』と向き合って
感じたことを教えてください。
演じてくださった与田さんが『山田愛』という役について悩まれている部分を見ていたのですが、僕からしたら愛を演じてくださったのが与田さんで本当に良かったな、と。すごく愛のある与田さんが愛を演じてくださったからこそ、僕の中に愛という女の子がスッと入ってきてくれて。そのおかげで、僕も思う存分奇跡として生きることができました。一言で言うと、与田さんも愛も「愛で満ちている人だな」と感じましたね。
「名前は人を表す」って言いますもんね。
今回の作品は特にそれをすごく感じました。「名前を表現してお芝居をする」ことが大切に思えました。
先ほど奇跡は「自分とリンクしている部分が多い」と
仰っていましたが
特にリンクした部分はありましたか?
いや、もはや「僕、奇跡だな」と (笑)。そのくらい自分のことを奇跡だと思って演じていましたし、実際に「何だかすごく似ている人だな」と感じていました。僕自身、昔先生に言われた言葉をキッカケに「目の前に困っている人がいたらすぐに助けよう、手を差し伸べられる人間でいよう」と決意して生きてきたんです。今回奇跡を演じてみて、彼の「誰かを救いたい」という一途な想いに強く共感しました。あとは…奇跡ってお医者さんの男の子なんですが、紆余曲折があって病院にずっといないといけないんですよ。そんなこんなで、すぐ連絡が取れなくなっちゃうんですけど、その部分まで似ていました(笑)。
板垣さんも
連絡が取れなくなるタイプなんですね(笑)。
連絡を取らないというよりは、あまり携帯を触らないタイプで。奇跡も同じタイプなので「似てるな~」と思いました(笑)。今回、奇跡を演じるうえで「役作りをしなきゃ!」と思うことはあまりなく、「自分は何を伝えたくて、奇跡という役で何をしたいのか」ということだけを考えていた気がします。なので「奇跡ってどんな人?」と聞かれたら「板垣瑞生みたいな人です!」と答えると思いますね。
比較的、演じやすい役でもありましたか?
その分、奇跡という役に自分のいまの想いや感じていることを乗せることに勇気がいりました。いろんな方々に見てもらうことを考えるとさらに勇気が必要で。「やらなきゃ」という想いが強かったですね。
撮影が進んでいく中で、
自分の中で見つめ直したことや
考えさせられたことはありましたか?
いや~たくさんありましたね。中でも「初心に帰った」という感覚が生まれました。「相手の方のお芝居を受け取って、相手に返す」という作業を一つひとつ確認しながら演じていく中で、“お芝居”というものにゼロから向き合えたといいますか。あとは共演者の方々のお芝居がすごく紳士的で真っ直ぐで、そんな中でお芝居をさせてもらえたことがすごく嬉しかったです。お相手のセリフを聞くのも楽しくて。本番中に思いもよらないことが起きた時でも、みんなで力を合わせて対応していく、そんな「全員で一つのお芝居を作っている空気」の中にいることができて幸せでした。
丁寧に、一丸となって
作り上げられた作品なんですね。
撮影に関して、
何かこだわりを感じる部分はありましたか?
作品を作ってくださっていた監督さん、助監督さんが若いスタッフさんたちでチームを組んでいらっしゃったんです。その勢いがこの作品の撮影の魅力のひとつになっていた気がします。
それは無二の魅力ですね。
今作はどんどんと
日本が追い詰められてゆく状況の中での物語ですが
板垣さんが奇跡と同じ立場に立ったら
どうすると思いますか?
どうなるんでしょうね…。でも、やれることをやりたいです。「怖くて動けない」と思って家に閉じこもるのではなく、外に出て誰かを助けたり、物事を動かす努力をしたいと思いますね。
そこも奇跡と通じていますね。
キービジュアルにも
〈希望〉が散りばめられているように感じました。
撮影時のエピソードは何かありますか?
撮影に関するエピソードではないんですけど、与田さんとの出会いが本当に面白くて(笑)。初めてお会いした時に「好きな食べ物」の話をしていたんです。で、与田さんが「馬刺しが好きです」と仰っていて、「お~!僕と同じ歳の女の子が馬刺し好きって意外だな」と驚いていたんですが、次の日に急に「昨日は馬刺しが好きって言ってごめんなさい!」と謝られて。「え、いいじゃないですか、僕も馬刺し好きですよ!」と言ったら「Wikipediaで調べたら、趣味に乗馬って書かれていたので…」って(笑)。なんて良い人なんだと思いました(笑)。
可愛すぎるエピソードですね(笑)。
では、この作品に込めた〈声〉をお願いします。
「日本が沈没する」といった状況の中で「こんな人がいたら、ちょっと明るくなったり幸せを感じられるな」という、僕が思い描いた『蒔田奇跡』を演じられたと思います。目には見えないけれど、作中と似た空気が流れている現在。彼の言葉や作中で生きている人たちの言葉が、いまを乗り越えるためのパワーとなって皆さんに届いてくれたら嬉しいです。
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