【ボランティア・みらいこども財団】
自分の5%をシェアする世界へ——
こどもたちの“夢の灯火”を守るため
画面越しでみらいを支える「オンライン里親制度」
「5%」
この数字は、児童養護施設の子どもたちに向けてボランティア活動を行っている『一般財団法人 みらいこども財団』の「誰もが自分の5%を誰かのためにシェアする。社会貢献があたり前の世界に」という理念に込められた “5%”を指しています。現在日本では、約7人に1人の子どもが貧困家庭(※1)で暮らしているとされ、経済的な困難や家庭の孤立化などを背景に、児童虐待の相談件数は年々増加。児童相談所が対応する虐待相談は、年間20万件を超えるといわれています。そのうち、児童相談所が一時的に保護する子どもの数はおよそ2万5000人。さらに、長期的な養育が必要と判断され、児童養護施設で暮らす子どもは全国で約2万3000人。年間20万件を超える虐待相談の規模から見ると、施設で生活できている子どもはごく一部にすぎません。
こうした児童相談所での対応件数が増える一方で、児童養護施設の受け入れ枠は限界に近づいているのが現状。支援を必要とする子どもの数が増えているのに対し、受け止められる場所のキャパシティーが追いついていない——これは、いまの日本が抱える、静かで深刻な課題です。
みらいこども財団は、大阪本部・東京支部・オンライン支部を合わせて、約200名のボランティアクルーが所属する一般財団法人。月に一度、全国の児童養護施設にて、訪問ボランティアやオンライン交流会を実施しています。加えて、児童養護施設を卒園した子どもたちの“居場所づくり”を目指す『みらい基地プロジェクト』、大学や専門学校への進学から卒業までをサポートする『オンライン里親募集プロジェクト』なども展開。今回は、未来を担う子どもたちの“夢の灯火”を守ろうと奔走するDOER〈実行者〉こと、みらいこども財団・代表理事の谷山昌栄さんに「いま、本当に必要とされている支援」について、お話を伺ってまいりました。
※1 貧困家庭…貧困家庭とは、生活に使えるお金(可処分所得)が、
全国の平均の半分に満たない世帯を指します。
厚生労働省「2022年国民生活基礎調査」によると、子どものおよそ
7人に1人(11.5%)がこの状態で暮らしていると言われています。
※上記データの出典:
「厚生労働省 令和2年度 児童相談所での児童虐待相談対応件数」
「厚生労働省 児童虐待防止対策の状況について」
「厚生労働省 II各種世帯の所得等の状況」

ちいさな手が教えてくれた
「こんな僕でも子どもの
役に立てるかもしれない」
みらいこども財団のはじまり
代表の谷山さんは、20年以上にわたり会社を経営してきたベテランの経営者。社会貢献活動をはじめたきっかけは、「社員たちに、人間的に成長できる機会をつくってあげたい」という想いだったといいます。
最初に取り組んだのは、ゴミ拾い。当初はイヤイヤだった従業員たちも、通りすがりの人に「ありがとう」と声をかけられるうちに、少しずつ表情が変わっていったそう。「見たことがないくらい、みんなの表情が輝いていて。あのとき『あぁ、社会貢献って人を成長させるんだ』と実感したんです。」 そうして、“誰かのために動く経験”に宿る力を信じるようになった頃、谷山さんのもとに、児童養護施設との縁が舞い込んできました。

忘れられない遊園地
「ご縁があって、児童養護施設のお子さんたちと遊園地に行ったときの出来事が、財団設立の直接的なきっかけになりました。」——それまで「従業員のために」と社会貢献活動を行っていた谷山さん。しかし、施設の子どもたちとはじめて会ったその日、自身の“社会貢献への姿勢”がどこか私的だったことに気づかされたといいます。「はじめて子どもたちと会ったとき、顔やからだにアザが残っている子が何人もいて胸が詰まったのを覚えています。その子たちと一緒に一日遊園地で遊んだのですが、ある子が僕の手を握って離さなかったんです。そのときに『あ、僕でも子どもたちの役に立てるかもしれない』という気持ちがわいてきて。こんな自分でもそう思えるのなら、もっとやさしい人たちがこの子たちに関われば、社会はきっとよくなる。そう感じたんです。」その日を境に、谷山さんは“子どもと、子どもを支える大人のための仕組みづくり”をはじめました。そしてその想いは実を結び、みらいこども財団は今年で設立12年を迎えます。


“信じられる大人”として、
子どもたちのそばにいること
みらいこども財団の特色は「継続性」
みらいこども財団のボランティアクルーとして正式に登録をするには、4回の研修と面接を受ける必要があります。また、活動がはじまってからも、月に一度の全体ミーティングや勉強会への出席、感想シートの提出など、子どもたちとの交流以外の取り組みが多いのも本財団の特徴です。一見ハードルが高いように思えますが、これらはすべて〈信頼性〉を高めるための仕組み。財団が目指す、“長く寄り添い続ける支援”のための準備でもあります。「日本では、18歳で公的支援が打ち切られます。家も、家族も、頼れる大人もいないなかで、子どもたちは就職や進学に挑まなければなりません。」と、語る谷山さん。勉強して進学ができたとしても、施設を卒園した子どもたちの中退率は6~7割にのぼるのだとか。中退の理由は、金銭的なものから「朝起きられない」などといった、ほんの小さな生活の綻びまでさまざま。「子どもたちは可哀想なわけではないんです。ただ、支えてくれる大人がいないだけ。誰かが『大丈夫?』と声をかけるだけで、人生が変わることもあります。だからこそ、僕らは継続的に支援をし続けることが大切だと思っています。」

オンライン里親たちが支える、子どもたちの夢の灯火
「夢をもって」の残酷さ
ここ数年、SNSの普及によって“キラキラした世界”が目に入りやすくなりました。画面越しに広がるその景色は、時に卒園後の子どもたちのやる気をそいでしまうこともあるといいます。「どうしても、SNSに映る世界と自分の境遇を比べてしまうんですよね。『施設卒園者であることを隠したい』という思いから、人間関係が希薄になり、仕事や学生生活のなかでも苦労する子が多いです。」一方で、きらびやかな世界に憧れながらも、その世界に自分の居場所を見つけられずにいる子どもたちに「夢をもて」と言うことは、とても残酷なことだと谷山さんは言います。「もし“夢をもってほしい”と願うのなら、子どもたちがその夢を叶えるためのお金や時間を、大人が提供しなければならない。そこに生まれる責任は、親と同じなんです。」施設卒園者のなかには、アルバイトをして学費を稼ぎながら、ギリギリの状況で学校に通っている学生たちも少なくありません。何かのきっかけで糸が切れてしまい、金銭的な理由で在学を諦めてしまう子もいるそう。そんな現実を前に、みらいこども財団は『オンライン里親制度』を立ち上げました。

オンライン里親制度とは
オンライン里親制度とは、施設卒園後、大学や専門学校への進学を希望する学生たちと、全国の「誰かを支えたい」と願う大人をつなぐプロジェクト。「オンライン里親制度を利用して、大学・専門学校に通いたい!」と希望する学生(※2)一人につき、約10名の里親がチームとなり、金銭的・精神的に在学期間を支えるという仕組みです。年間12万円の寄付金(里親一人あたりの寄付額)のうち、7割を学生の奨学金に、3割を財団運営費とする透明性の高い制度で、これまでにこの制度を利用して、無事に学校を卒業した子どもたちの数は15人にのぼるといいます。プライバシーへの配慮も徹底されており、学生とオンライン里親は、大学・専門学校卒業後、双方の同意があるまでは互いにニックネームで関わるのだとか。「オンライン里親は金銭的支援だけでなく、子どもたちの“心のブレーキ”になる存在でもあると思っています。というのも、施設を出たあと、危ないことをしてしまいそうになったとき、子どもたちは“心のブレーキ”が利かなくなってしまうことがあるんです。怒ってくれる親や大人がいれば、『怒られる!』と思って立ち止まることができる。でも、彼らにはそんな大人がいない。だからこそ、オンライン里親がそのブレーキ役を担えるのではないかと思います。」2、3ヶ月に一度、支援対象の学生たちは、オンライン里親とリモートで交流会を開き、近況を話したり、相談をしたりする時間を持ちます。その時間もまた、子どもたちにとっては大切なひととき。「自分だけを見てくれる大人がいるという体験は、彼らの心に大きな変化を生みます。一度きりの支援ではなく、“続いていく関係”を育てることが目的なんです。」
※2 学生が奨学生となるまでには、説明会への参加・エントリー(書類の提出)・財団審査があります。

子どもの夢の灯火を守る
DOERたち
未来を担う、
これからの“守り人”に伝えたいこと
みらいこども財団は、児童養護施設の子どもたちを支援している団体です。けれど、その先に見据えているのは「やさしい社会をつくること」。子どもたちが本当に求めているものは、お金や物ではなく、“自分だけを見てくれる大人の存在”なんです。皆さんの時間やスキルの1%でも分け与えていただけたのなら、その小さな行動が、子どもたちの大きな支えになります。ボランティア活動は、普段の生活では得られない学びと出逢いに満ちている時間です。研修などハードルは高いかもしれませんが、思いきって飛び込んでみてください。そこには、子どもたちとの関わりはもちろん、同じ想いをもつ仲間たちとの交流を通して、自分自身も成長できる場所が待っています。ぜひ、皆さんの力をお貸しいただけたら嬉しいです。

「〈好き〉の想いで、世界を変える。」

あなたも支えることができる、
みらいこども財団への入り口
遊ぶことが〈好き〉、勉強が〈好き〉、運動が〈好き〉など、あなたの〈好き〉の5%を子どもたちにシェアしてみませんか?みらいこども財団では、ボランティアクルーやオンライン里親を随時募集中です。まずはぜひ、公式サイトをのぞいてみてください。その小さな一歩が、誰かの未来の“灯火”になるかもしれません。

みらいこども財団の活動に興味がある
https://miraikyousou.com/about/
オンライン里親に興味がある
https://miraikyousou.com/projects/fostercare/
ボランティアクルーに興味がある
https://miraikyousou.com/join/
Staff Credit
インタビュー・記事:満斗りょう
ページデザイン:Mo.et



