神聖な美しさに心惹かれる貴方へ

映画『脛擦りの森』

神聖な美しさに心惹かれる貴方へ

映画『脛擦りの森』
©『脛擦りの森』プロジェクト

-Introduction-

荒木飛呂彦の人気コミック「岸辺露伴は動かない」シリーズを実写化し、大ヒットシリーズへと導いた渡辺一貴監督が、岡山の地に足を運び、この地に古くから伝わる妖怪伝承にインスピレーションを得て脚本を執筆した、自身初のオリジナル作品『脛擦りの森』。主演は高橋一生。本作では4時間におよぶ特殊メイクによって森の奥深くで暮らす老人に扮する。そこにいるだけで立ち現れる圧倒的な存在感、想像力を無限に掻き立てる演技力。彼にしかできない表現が、本作でより一層豊かな映画体験へと、観るものを導いてくれる。謎の女・さゆり役には弱冠17歳の新星・蒼戸虹子、森に迷い込む若い男を『見はらし世代』で初主演を果たした黒崎煌代が務める。横溝正史作品のロケ地としても知られる岡山県の高梁市、新見市で撮影を敢行。穏やかな時の流れ、澄んだ空気、美しい緑に包まれた大自然と歴史的な建造物、そしてそこに佇む俳優の演技のすべてが見事に調和し、観客を異世界に誘う。人々に語り継がれてきた普遍的な伝承に新たな解釈を加え、圧倒的な映像美で描く、まだ誰も見たことのない「すねこすり」の物語が誕生した。

-Story-

人里から離れた深い森で、足に傷を負った若い男(黒崎煌代)は、女の甘い歌声に導かれ、古めかしい神社にたどり着く。そこには謎の男(高橋一生)と、若く美しい妻・さゆり(蒼戸虹子)が暮らしていた。傷の手当てを受けながら、若い男はこの場所で夢のような、時の止まったような時間を過ごす。繰り返される穏やかな日々、すべては永遠に続くかに思えたが……

伊藤さとり’s voice
伊藤さとり’s voice

日本独自の美しさに改めて気付かされた。山奥の洞窟を抜けると巨大な神社。時折、しめ縄越しに人物を捉える画を挿入することでそこが神聖なものに見え、結界のような空間にさえ見えてくる。台詞が少なくとも見入ってしまうのは、そんな自然と密接な神道が織りなす荘厳な場所でロケを行い、人間が静かに囚われていく様を最小限のキャストでミステリアスに映し出したからだろう。

しかもキャストは存在感も兼ね備えた3人のみ。全体を捉えたアングルで撮影された画は、ゆったりとした編集で彼らの表情や手の動きを捉えていくので、観客は目が離せなくなる。特に約4時間という特殊メイクで老人に扮した高橋一生は、老人というより口数の少ない仙人のようなアプローチで、謎めいた演技につい惹きつけられてしまう。更に2025年公開『見はらし世代』で新人賞を多数受賞する黒崎煌代の表情豊かな演技は、純粋な青年が居心地の良い空間と淡い恋心に酔いしれていく様を体現。対する蒼戸虹子は2025年公開『白の花実』に続く映画2作目ながら、その初々しさと言葉をほぼ発しない可憐な姿にすっかり魅了されるのだ。この空間に居る3人を見ながら、人は神聖でミステリアスなモノに強く惹かれる生き物なのかもしれないと思った。

本作は、日本で生まれた妖怪伝承から着想を得たオリジナル脚本なのだが、神秘的に感じる理由は他にもあり、衣装の存在が大きいように感じる。和服のようでいて遊び心がある組み合わせだったり、レトロなのにスタイリッシュであったりと、古代と現代が混じり合ったデザインなのだ。そこは監督である渡辺一貴と荒木飛呂彦原作の実写化「岸辺露伴は動かない」シリーズで組んだ柘植伊佐夫が、人物デザイン監修と衣裳デザインを担当したからこそ成し得た世界観だろう。まさに時が経つのを忘れる感覚を味わう映画が誕生。異空間に迷い込む不思議体験を映画館で。

映画『脛擦りの森』
4月10日(金)全国公開

出演:高橋一生 蒼戸虹子 黒崎煌代
監督・脚本:渡辺一貴
配給:シンカ

映画『脛擦りの森』
©『脛擦りの森』プロジェクト