時に人に憧れを抱き、
時に人に憧れを抱かれた貴方へ

映画『ファイブ・デビルズ』

時に人に憧れを抱き、
時に人に憧れを抱かれた貴方へ

映画『ファイブ・デビルズ』
©2021 F Comme Film – Trois Brigands Productions – Le Pacte
– Wild Bunch International – Auvergne-Rhône- Alpes Cinéma – Division

-Introduction-

セリーヌ・シアマ(『燃ゆる女の肖像』)、ジュリア・デュクルノー(『TITANE チタン』)に続く才能、今フランスで最も注目を浴びる新鋭レア・ミシウス監督作日本劇場初公開。アルノー・デプレシャン、ジャック・オディアールなど錚々たる巨匠監督たちの脚本を手掛けてきたミシウス監督最新作は<香りの能力でタイムリープする少女とその家族>の物語。『アデル、ブルーは熱い色』で世界を魅了したアデル・エグザルコプロスが能力者の娘を持ち自身も“ある秘密”を抱える母親を熱演した。<ファイブ・デビルズ>という架空の村を35mmフィルムで捉えた映像が美しくも恐ろしく、「ツイン・ピークス」『シャイニング』『アス』に影響を受けたとミシウスが語るオマージュシーンも見所。全く新しい奇妙な世界観を纏った怪しげな家族ドラマは、SFの世界へ突入し、やがて情熱的な愛の物語へと昇華する。斬新なストーリー展開もさることながら本作では女性たちの連帯を力強く活写し、カンヌ国際映画祭でLGBTQ +がテーマの作品に授与されるクィア・パルムにノミネートされた。

-Story-

秘密の記憶が明かす〈衝撃の真実〉を知ったとき、
あなたを待つのは絶望か、希望か――

嗅覚に不思議な力をもつ少女はこっそり母の香りを集めている。そんな彼女の前に突然、謎の叔母が現れたことをきっかけに彼女のさらなる香りの能力が目覚め、自分が生まれる前の、母と叔母の封じられた記憶にタイムリープしていく。やがてそれは、家族の運命を変える予期せぬ結末へと向かっていくー

伊藤さとり’s voice
伊藤さとり’s voice
映画『ファイブ・デビルズ』

子どもは興味深い。

まだ小さな娘だけれど、私のパンプスを履きたがり、ある時はブラジャーを着けて鏡の前でポーズを取る。周囲の家庭を見ていても女の子は母親に憧れ、アイドルの女の子に憧れる。それは多くの女の子に訪れる当たり前の儀式であり、もしかしたら「憧れ」から「好き」を知る最初の愛という感情なのかもしれない。

この映画はそんな感情をミステリーとして綴った傑作だ。

カメラは母親について回る父親似の小さな女の子を映し出す。この子はこっそり母親の身体に塗るクリームの余りを瓶に集めて匂いを嗅ぎ、ありとあらゆる匂いを瓶に詰めて収集する趣味を持っている。実はそれが伏線となり、彼女は匂いを嗅ぐことでその人の過去へとタイムスリップできる特殊能力を自分が持っていることを知る。
やがて目にする若かりし頃の母と叔母が、この村で起こしてしまったある事件の真相とは?

『パリ13区』で話題となったフランス人のレア・ミシウス監督の視点は、色遣いにこだわり、35mmフィルムによって映し出された閉鎖的な世界は絵画の様であり、観客を白昼夢へと誘う。しかも燃え上がる炎は、秘めたる愛のように情熱的であり攻撃的。

これは娘が母へ抱く感情なのか、それとも……。

『ツイン・ピークス』的世界観の中で、『炎の少女チャーリー』のような存在感を放つ無垢なる少女の未来を案じつつ、自由な感情だけでは生きられない社会の目へのアンチテーゼといえる作品だった。

映画『ファイブ・デビルズ』
2022年11月18日(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、アップリンク吉祥寺 ほか公開

出演:アデル・エグザルコプロス サリー・ドラメ スワラ・エマティ
   ムスタファ・ムベング ダフネ・パタキア パトリック・ブシテー 
監督:レア・ミシウス
脚本:レア・ミシウス ポール・ギローム 

映画『ファイブ・デビルズ』
©2021 F Comme Film – Trois Brigands Productions – Le Pacte – Wild Bunch International – Auvergne-Rhône- Alpes Cinéma – Division
『映画のセリフでこころをチャージ 愛の告白100選』

2022年12月16日(金)発売

名作映画100本に登場する“愛の告白”をこの一冊に!
『映画のセリフでこころをチャージ 愛の告白100選』


伊藤さとりが選んだ、2000 年代を中心とした珠玉の映画に登場する愛を伝えるセリフ、そして心理カウンセラーの資格を活かした恋愛アドバイスを収録。
大ヒット映画『花束みたいな恋をした』で菅田将暉が演じる麦のイラストを担当した、イラストレーターの朝野ペコによる描き下ろしイラスト 100 点も必見!
映画が好きな方に、日常に愛を感じたい方におすすめしたい。
心のチャージをしたい自分に、そして大切な人に贈りたい一冊。

著者:伊藤さとり
イラスト:朝野ペコ

全国の書店 ※12 月 16 日(金)より発売