〈正しさ〉と〈優しさ〉が両存する
世界を生きる私たちへ

-Introduction-
刑務所や拘置所に収容された人への
差入を代行する「差入屋」
あやまちの数だけ希望を届ける、
何度つまずいても
立ち上がれると信じて──
今この時代にこそ放つ魂を震わせる
感動のヒューマンサスペンス
厳しい審査や検閲がある差入のルールを熟知した差入屋。様々な事情から面会に行くことができない人たちに代わって、面会室へ出向くこともある仕事だ。そんな差入店を営む家族の絆と、彼らが巻き込まれる不可解な事件を描く、ヒューマンサスペンスが誕生した。
差入店の店主を務める主人公の金子には、『泥棒役者』以来8年ぶりの主役を演じる丸山隆平。共演は、真木よう子、三浦綺羅、川口真奈、北村匠海、村川絵梨、甲本雅裕、根岸季衣、岸谷五朗、名取裕子、寺尾聰。監督はオリジナル脚本も手掛けた期待の新鋭、古川豪。主題歌は古川監督が助監督を務めた『東京リベンジャーズ』シリーズで結んだ友情からオファーされたSUPER BEAVERの「まなざし」。この混迷の時代を懸命に生きる者たちへの熱い想いが込められた歌詞が心に響く。罪を犯した人々や、その家族に対峙する金子。そこには不可解な事件があり、謎が渦巻き、胸を締め付けるドラマがある。誰も観たことのない設定で、人間の可笑しさと切なさ、ダークサイドから希望に満ちた光までを追いかける感動のヒューマンサスペンス。
-Story-
金子真司は妻の美和子と差入店を営んでいる。伯父の星田から引き継いだ住居兼店舗で、引退した星田と10歳になる息子の和真と一緒に暮らしていた。ある日、和真の幼馴染の花梨が何の関係もない男に殺害される。一家が花梨の死から立ち直れないでいた時、犯人の小島の母親から差入の代行と手紙の代読を依頼される。金子は差入屋としての仕事を淡々とこなそうとするが、常軌を逸した小島の応対に感情を激しく揺さぶられる。さらに、小島の母親から息子には話し相手が必要だと思うと再度の差入を頼まれた金子は、小島と話せば話すほど「なぜ、何のために殺したのか」という疑問と怒りに身を焼かれる。そんな時、毎日のように拘置所を訪れる女子高生と出会う金子。彼女はなぜか自分の母親を殺した男との面会を強く求めていた。2つの事件と向き合ううちに、金子の過去が周囲に露となり、家族の絆を揺るがしていく──。

伊藤さとり’s voice

新人監督がオリジナル脚本を映画化するには、脚本力と人望がなければ成立は難しい。本作は長年助監督を務めてきた古川豪監督の長編初監督作品であり、彼が11年温めてきた企画だという。しかも実際に存在する職業から物語を生み出した完全オリジナル作品なのだ。
確かに刑務所や留置所への差入には検閲が入るが、差入出来るものを事前に振り分けたり、面会に行けない人の代わりに差入代行をする職業があるとは知らなかった。映画は丸山隆平演じる差入代行屋・金子真司の目を通して加害者のバックボーンを知ることから、多角的に人を見る大切さに気づかれる作品だった。
その人は何故、罪を犯したのか?
もちろん凶悪犯であることは大前提。ただ犯人の内面を知ることで、歪んだ生育環境や社会の理不尽さが見えてくることもある。この映画の素晴らしい点は、些細な行動でその人物の複雑な心理状況を表現するという手法だった。
更に映画は、「職業」に対する偏見と意味のないイジメにもしっかりと目を向けている。
それは犯罪を犯した家族に関わる仕事をしただけで、イジメに合うという理不尽さなのだが、身近なことに置き換えれば、事件に関わっていない他者が、加害者に関わる人さえも罰する近年のSNSにも見受けられる傾向だ。そんな大人の思考は子ども達に伝染し、知らないうちに子ども達が罪のない子どもをイジメるという問題行動にも繋がってしまう。
丸山隆平演じる金子真司が父親の設定であることもその理由で、彼が以前、刑務所に入っていたことから、残虐な罪を犯した犯人の家族に差入代行を頼まれても、「差入屋」という仕事が必要なことを理解して受けており、息子にも社会の白い目が飛び火する理不尽な状況を観客に知ってもらい、どちらが間違っているのか考えて欲しかったのではないか。
本作では、様々な状況に置かれた人達を、子役や大人の俳優が見事な演技で表現している。確かに世界は、様々な環境下で暮らす人々が共存して社会が成り立っている。これを物語で表現した本作には、私たちが生きる為に必要なことが描かれていた。それは「正しさ」を他者に要求するのではなく、「優しさ」を他者に与えることではないか。そうすることで犯罪は減っていくのかもしれない。少なくとも私は映画からそう受け取った。
映画『金子差入店』
5月16日(金)より全国公開中
出演:丸山隆平
真木よう子/三浦綺羅 川口真奈
北村匠海 村川絵梨 甲本雅裕 根岸季衣
岸谷五朗 名取裕子
寺尾聰
監督・脚本:古川豪
主題歌:SUPER BEAVER「まなざし」
(ソニー・ミュージックレーベルズ)
製作:「金子差入店」製作委員会
製作幹事:REMOW
製作プロダクション:KADOKAWA
配給:ショウゲート
