「恋に落ちる」を知りたい貴方へ

映画『よだかの片想い』

「恋に落ちる」を知りたい貴方へ

-映画『よだかの片想い』-

映画『よだかの片想い』
©島本理生/集英社
©2021映画「よだかの片想い」製作委員会

-Story-

自分と距離を置くアイコ。まっすぐ心に入ってくる飛坂。
近づくほどに苦しくて、遠のくほどに愛おしい――。

理系大学院生・前田アイコ(松井玲奈)の顔の左側にはアザがある。幼い頃、そのアザをからかわれたことで恋や遊びには消極的になっていた。しかし、「顔にアザや怪我を負った人」をテーマにしたルポ本の取材を受けてから状況は一変。本の映画化の話が進み、監督の飛坂逢太(中島歩)と出会う。初めは映画化を断っていたアイコだったが、次第に彼の人柄に惹かれ、不器用に距離を縮めていく。しかし、飛坂の元恋人の存在、そして飛坂は映画化の実現のために自分に近づいたという懐疑心が、アイコの「恋」と「人生」を大きく変えていくことになる…。

伊藤さとり’s voice
伊藤さとり’s voice
映画『よだかの片想い』

「普段、人の左側に座る癖があるんです。でも今日は右の席に座りました。あなたなら私の左側を否定しないと思ったから」

これは、島本理生原作、安川有果監督、城定秀夫脚本による『よだかの片想い』で、広場のトラのオブジェに座る際、主人公のアイコ(松井玲奈)が飛坂(中島歩)に向けた言葉だ。

アイコは顔の左側に生まれながらのアザがあり、出版社に務める友人の勧めで本に登場したことで、アイコの人生を映画にしたいと言う監督の飛坂と出会う。物腰柔らかくアザのある自分の顔に見惚れたという飛坂に惹かれるアイコの恋は、自分でも気づかなかったもう一人の自分を芽生えさせるのだ。

実はここのシーンから物語は色合いを変え、今まで大人しかったアイコは積極的になっていく。ある時は飛坂の元カノと会い、自分はカレと付き合っている、とまで発言する。
アイコにとっては初めて“ありのままの自分”を受け入れてくれた男が飛坂なのだろう。

映画は更に私たちに驚きを与えるのだけど、それはアイコが小学生の時、自分のアザをクラスメイトに「琵琶湖みたいだ」と言われ、その生徒が先生に怒られたことが悲しかったと言うのだ。
実はその時、目立たない自分が皆に注目されたのが嬉しかったのに、先生が叱ったことで自分のアザがヒドいものだと感じてしまったのだ。
そんなまさかのトラウマを飛坂の賛辞によって解消されたのだから、彼女は“飛坂を愛することに決めた”気がする。

恋とは不思議なもので、気付いたら恋に落ちていたはなく、どこかのタイミングで相手を恋の相手として見始めた時に“恋に落ちる”ものなのだ。その瞬間を見事に名セリフとして残した作品が『よだかの片想い』だった。
であれば恋の終わりもそうなのか?そしてその感情は本当に恋なのか?それは映画を観てのお楽しみということで。

映画『よだかの片想い』
2022年9月16日(金)公開

出演:松井玲奈 中島 歩
   藤井美菜 織田梨沙 手島実優
   青木 柚 池田 良 三宅弘城
原作:島本理生『よだかの片想い』(集英社文庫刊)
監督:安川有果 脚本:城定秀夫

映画『よだかの片想い』
©島本理生/集英社
©2021映画「よだかの片想い」製作委員会